麗 | ライオス、これをそちらへ。 |
ライオス | ガー。 |
牧瀬紅莉栖 | あれは、ロボットを路上に展示してる…? 民間でこんな運用が可能になってるなんて…! |
椎名まゆり | あっちのコスプレイヤーさんが持ってる武器、 まるで本物みたい。 |
まゆしぃはこんなに細かく作られたものを見るのは 初めてです! | |
見て見て! 動きもスムーズだよ、オカリン! | |
岡部倫太郎 | こ、ここは一体どこだというのだ!? いや……これは……おそらく……。 |
椎名まゆり | どうしたの、オカリン? |
岡部倫太郎 | フゥーハハハ! |
これは本物だ、まゆり! | |
椎名まゆり | 本物って、あのコスプレイヤーさんの後ろの置物の事? |
岡部倫太郎 | 違うぞまゆり、それは置物ではない! 俺の魔眼は真相を見抜いた…。 |
それは紛れもない、本物の二足歩行型ロボットだっ!! | |
全てはシュタインズゲートの選択! | |
この俺、鳳凰院凶真が世界の隙間で、 エンジニアリングの最高の奇跡と出会った――。 | |
牧瀬紅莉栖 | また一人で盛り上がっちゃって… こんなに興奮しちゃって、岡部は大丈夫なの? |
椎名まゆり | うん、大丈夫だよ〜。 |
男の子はロボットが好きだからね。 きっと、オカリンも嬉しいんだと思うんだ。 | |
牧瀬紅莉栖 | それにしても、大型ロボットにこんなに自然な動きが 可能だなんて…さすがに気になるわね。 |
二足歩行型ロボットは実用的な形での発展はせず、どこ かで淘汰されると思ってたけど…。 | |
まさかここまで実用レベルに発展しているなんて。 | |
でも、消費効率と機能面の観点から、やっぱり二足歩行 型ロボットは最適解にはなり得ないわ。 | |
このロボットに何か特別な所があるのなら 話は別だけど…。 | |
椎名まゆり | 紅莉栖ちゃんも気になるんだ〜。 |
岡部倫太郎 | お前も興奮しているではないか、助手よ! |
牧瀬紅莉栖 | い、異世界の科学技術は好奇心を刺激するのよ! |
…もしかしたら、ここは私たちの世界とは異なるテクノ ロジーがたくさん発展しているかもしれないわね。 | |
椎名まゆり | まゆしぃは、 ここと東京にはあまり違いはないと思うのです。 |
あ、ここにもメイドカフェってあるのかな? ん〜、もしかしてロボットカフェ? | |
麗 | ……?誰か近くにいるの? …気のせいかしら。 |
あの3人、ライオスに興味があるみたいだよ? | あの白衣の人、ライオスをずっと見てるけど…? |
岡部倫太郎 | この感覚… リーディング・シュタイナーが発動した…?だが、俺は なにもしていないはずだが…。 |
牧瀬紅莉栖 | 岡部じゃないわ、あそこの人よ! 私たち、逆に観測されてる! |
見つからないはずじゃなかったの!? | |
椎名まゆり | ねえ、二人とも見て見てー、 まゆしぃのうーぱ、こんなにおっきくなっちゃった! |
――… | |
岡部倫太郎 | おお本当にでかいな…ではなく! なぜ観測対象が我々を視られるのだ!? |
まさか、向こうにもリーディング・シュタイナーを持つ 魔王級の存在が―― | |
麗 | 騒々しい人たちだわ。 まったく、いつの間に現れたのかしら…。 |
岡部倫太郎 | さらなる観測者の出現…だと…! くっ、ここは撤退だ! |
牧瀬紅莉栖 | 撤退って、どうやって!? |
岡部倫太郎 | 緊急脱出ボタンだ! |
このような危機的状況を覆すために、ダルに付けさせた はず…! | |
牧瀬紅莉栖 | あんな自爆装置みたいなもの、 外してあるに決まってるでしょ。 |
椎名まゆり | 大丈夫だよオカリン。 |
ここ、うーぱが巨大化しているだけの 素敵な世界だよー。 | |
まゆしぃは心配いらないと思うのです。 | |
岡部倫太郎 | それが何より異常なのだが… はっ、これはまさか、機関の仕業!? |
まさか、あのロボットも俺やクリスティーナを誘い込む ための罠だったというのか…!? | |
麗 | ライオスに何か文句でもあるのかしら? |
岡部倫太郎 | いやまったく文句はない、むしろ素晴らしいと言える。 |
というか… そのロボットに触らせてはもらえないだろうか? | |
すでに観測されてしまった以上、もはやコソコソと調べ るのも馬鹿らしい。 | |
牧瀬紅莉栖 | ズルいわよ、岡部! 私だって触ってみたいのに! |
麗 | 何なのかしら、この人たち…。 まさか、売りこみってわけじゃないですわよね…? |
牧瀬紅莉栖 | っと、岡部のペースに飲まれた… えっと、ゴホン。 |
突然なんですけど、私たちを助けてもらえませんか? | |
特に観測者であるあなたには、是非ここにいて欲しいん ですけど。 |
いやいや、皆さんでゆっくりと話してて。私はこれで。 | 観測者って、私? |
牧瀬紅莉栖 | そう、あなたです。 私たちが帰れるかどうかは、あなたにかかってるの! |
麗 | 電車賃に困っているってことかしら? でしたら、家まで送ってあげてもいいですけど。 |
牧瀬紅莉栖 | いえ、私たちが戻りたいのは… こことは違う、もう一つの世界―― |
麗 | ……。 |
牧瀬紅莉栖 | ……。 |
…………。 | |
…ああ、ダメ! この恥ずかしい空気はなんなの!? | |
私は本当のことを言っただけなのに! | |
岡部倫太郎 | フゥーハハハ! まだまだだなクリスティーナ! |
ここはこの狂気のマッドサイエンティスト、 鳳凰院凶真が説明してやろう! | |
椎名まゆり | いつもの調子になったね、オカリン。 |
岡部倫太郎 | 我々はこことは異なる、もうひとつの世界にある未来ガ ジェット研究所所属の中核メンバー… |
ラボメンナンバー001、002と004だ。 | |
申し訳ないが、実名を教えることはできない。 | |
知りすぎると、お前たちも機関に狙われることになるか らな…。 | |
麗 | さっき、鳳凰院凶真と自称していた気がしますが、 ラボメンナンバー001さん? |
岡部倫太郎 | な、なかなか鋭いではないか…。 |
と、とにかく、我々がここに突然現れたのは、 未来ガジェット77号機の超進化バージョンの実験を 行っている最中に… | |
事故が発生してこの世界へと飛ばされたからだ。 | |
椎名まゆり | 未来ガジェット77号機は、 6インチの中古テレビ20台で造ったタワーなのです。 |
…でも、とっても大きいから、 お部屋が狭くなっちゃうんだ。 | |
牧瀬紅莉栖 | こんな無茶なテレビタワーが、 本当に起動できるなんてね…。 |
元々は、世界線を観測するための装置だったんだけど、 実験中の事故でこの世界を観測できたってわけ。 | |
椎名まゆり | まゆしぃは、この実験に参加できて嬉しいのです! こんなに素敵な世界を見ることができたし。 |
岡部倫太郎 | 別の世界を観測しているだけなら、 何の問題もないはずだった…しかし! |
こちらの観測者によって我々が発見されたことにより、 状況が変わった! | |
リーディング・シュタイナーの持ち主! | |
お前のせいで、我々の安全な観測が、危険極まりない異 世界跳躍になってしまったのだ! | |
牧瀬紅莉栖 | 私たちは観測中、一時的に「どちらの世界にもいる」状 態になっていた。 |
二つの世界に同時に存在するようになっていた。簡単に 言うなら、シュレーディンガーの猫状態、かしら? | |
エヴェレットの多世界解釈では、 共存状態の量子を観測すると、 | |
その共存状態の崩壊を引き起こし、量子が粒子の性質だ けを顕現するようになるって言われているの。 | |
岡部倫太郎 | つまり、お前が我々を指さしその存在を公示した瞬間、 シュレーディンガーの猫が入れられた箱の蓋が開かれ た。 |
もともと「あちら」と「こちら」の世界に同時に存在し ていた我々は「こちら」の蓋が開けられたせいで、この 世界に定着させられたというわけだ。 |
わ、私のせいってこと…? |
麗 | なるほど。 |
要するに異世界からやってきた 落ちぶれ科学者どもってことですわね。 | |
まったく、早まった実験をしたものね。通りすがりの 人間に見られただけで、危機に陥るなんて。 | |
牧瀬紅莉栖 | …ずいぶんあっさりと納得しちゃうのね。 |
麗 | この指揮使いが何もない所に向かって喋ったら、貴方た ちが姿を現した。それを確かにこの目で見ましたわ。 |
起こったことは事実と認めるしかありません。 | |
椎名まゆり | 異世界でまゆしぃたちと目があった最初の人なんて、 なんだかロマンチックだね〜。 |
一先ずは拠点の確保だ!となる三人。 とは言え三人に行くあてはない…。 | |
騒ぐ岡部、青ざめる紅莉栖、相変わらずなまゆり。 そうこうしている内に、時間は無為に過ぎていく…。 | |
そんな三人を見かねた麗は、この不思議な三人組を、 中央市街地にある会社まで連れていくことにした。 | |
岡部倫太郎 | ふ…住処まで提供してくれるとは、 |
どうやら機関からのスパイというのは、 俺の勘違いだったようだな。 | |
この鳳凰院凶真が、 未来ガジェット研究所を代表して礼を言う! | |
この運命的な出会いは、 必ずや後の歴史に刻まれるであろう! | |
麗 | 礼なんていらないわ。 |
貴方たちがあのまま街でウロウロとしている方が迷惑で したし。それに、ここは空き部屋も多いから。 | |
椎名まゆり | すごい! |
麗ちゃんは、フェリスちゃんみたいなお嬢様なんだね! | |
牧瀬紅莉栖 | 本当に助かったわ。 異世界で野宿をする羽目になるかと思ってたから…。 |
岡部倫太郎 | 甘いぞ、助手よ! |
我々は何の手掛かりもないまま、おでん缶もドクペもな い世界に閉じ込められているのだぞ! | |
椎名まゆり | でもオカリン、今までは手掛かりを探す暇がなかった だけだよね? |
まゆしぃは、この街がまゆしぃたちがいた元の世界と似 てると思うんだ。 | |
牧瀬紅莉栖 | 私もまゆりと同じ意見。 |
この2つの世界には、 なにか共通性があるのかもしれない。 | |
ここにある通信設備を借りてもいいかしら? | |
パソコンかケイタイ… なければラジオや古新聞でも構わないわ。 |
紅莉栖 | まずはネットを調べてみたんだけど、私たちの世界で起 きた重大な事件は、この世界でも起きていたわ。 |
つまり、2つの世界はとても似てるってことね。 | |
椎名まゆり | まゆしぃは、タイムトラベラーが手掛かりを残したって いうBBSを見つけたのです。 |
その人、オカリンが言ってたジョン・タイターって人と は別人みたいだけど。 | |
牧瀬紅莉栖 | 言ってることはジョン・タイターとほとんど同じね…。 |
椎名まゆり | 見つけたのはこの人なんだけどね。 えぇと、アカウント名は…第七の元老…? |
岡部倫太郎 | これは…! フフ…。 |
フゥーハハハ! | |
麗 | …その芝居がかった笑い方、 何かに気付いたってことかしら? |
椎名まゆり | オカリン、どうしたの? |
岡部倫太郎 | フフフ…第七の元老とは、ジョン・タイターがこの世界 で使っているハンドルネームに違いあるまい! |
よくやってくれた、ラボメンナンバー002! | |
お前はこの世界に潜むタイムトラベラーの痕跡を発見し たのだ! |
ジョン・タイターって誰? | 第七の元老って誰なの? |
牧瀬紅莉栖 | 岡部の勝手な推測はともかく…ジョン・タイターってい うのは私たちの世界の未来から来た人物のことよ。 |
こっちの世界では、第七の元老って名乗ってるみたい。 | |
かつて私たちの世界でも彼はBBSに書き込みをしてい たの。 | |
そのメッセージは真に迫っている上に理に適っていて、 信ぴょう性が高いと言われていたわ。 | |
第七の元老が残したメッセージを見るに、 彼は2036年から過去に戻った軍人みたいね。 | |
目的は1975年に行き、ある旧式コンピューターを手 に入れること。 | |
21世紀に留まっているのは、自分の両親と会うためだ そうよ。 | |
岡部倫太郎 | 我々の世界でも、ジョン・タイターは屈強な戦士だった な。そこも一致している、間違いあるまい! |
麗 | 他のタイムトラベラーとも接触していたなんてね。 てっきり、また貴方の設定とやらかと思っていたわ。 |
岡部倫太郎 | ジョン・タイターは、 確かに実在するタイムトラベラーだ。 |
もしかすると、安全に異世界跳躍する方法を知っている かもしれない。 | |
牧瀬紅莉栖 | どうかしら? |
私たちは実験中のエラーで異世界を渡ってしまったよう だけど、この第七の元老のタイムワープ理論も同じ原理 なの? | |
岡部倫太郎 | さっき、この世界の論文を検索してみたが、我々の世界 と同じく重量子に関する仮説と超ひも理論は既に発表さ れていた。 |
そうなれば、理論上この二つの世界は同じ物理法則で形 作られていると言えるだろう。 | |
椎名まゆり | あの…難しいことはよく分からないけど、 それほど複雑なことじゃないと思うんだ。 |
だって、第七の元老さんはジョン・タイターさんと同じ 人なんでしょ? | |
岡部倫太郎 | …はっ!つまりジョン・タイター、もとい第七の元老は 二つの異なる時間を行き来したのではなく、我々と同じ く異なる世界を移動したということか! |
牧瀬紅莉栖 | ということは、第七の元老を見つければ、元の世界に帰 る方法を知ることができるかもしれない! |
椎名まゆり | あっ、でもこの第七の元老さんがメッセージを残したの は、今から十年前だよ。 |
岡部倫太郎 | …十年前? |
椎名まゆり | うん、十年前に「私はここを去り任務を続行する。さら ばだ、境界線都市よ」って書きこんだのが最後みたい。 |
岡部倫太郎 | 馬鹿な…!まさか、ここまで来てすれ違うとは…! これもシュタインズゲートの選択か…。 |
牧瀬紅莉栖 | 十年も経っていれば、すれ違うどころじゃないでしょ。 やっぱり、うまくはいかないものね。 |
椎名まゆり | あとは、えぇと…。 |
本人はもういないみたいだけど、第七の元老さんについ ての討論はまだ盛り上がってるみたいだよー。 | |
岡部倫太郎 | ならば、その討論の中に手がかりが潜んでいるやも知れ ん…!待っていろ第七の元老! |
この狂気のマッドサイエンティスト鳳凰院凶真が、十年 の時間差など絶無に等しいと証明してやろう! | |
フゥーハハハ! | |
牧瀬紅莉栖 | はいはい…。 |
岡部倫太郎 | これより、全員で第七の元老に関する手掛かりを探し出 すぞ! |
作戦名――オペレーション・アテナ発動!! | |
作戦が実行されてから30分が過ぎた。 | |
牧瀬紅莉栖 | みんな、この画像を見て。第七の元老の話によると、 これが彼の乗ってきたタイムマシンみたいなの。 |
椎名まゆり | タイムマシンっていうより、 まゆしぃには黒いオープンカーに見えるな。 |
牧瀬紅莉栖 | 1966年産の旧式オープンカー。 |
見た目はただの古い車だけど、実際にはタイムワープ用 のコクピットとなっているみたいなの。 | |
でも、第七の元老のメッセージによると、彼が十数年前 にここを去った際にはこのオープンカーを使わず、 | |
一台のトラックを新たなコクピットに改造して旅を続け たそうよ。 | |
岡部倫太郎 | この世界に彼の残したタイムマシン… いや、異世界跳躍機が残っているかもしれない。 |
それが、この黒いオープンカー…。 | |
椎名まゆり | この「終末機関執行者」ってアカウントの人が、第七の 元老が残した遺産の手掛かりを握ってるって書き込んで るよ? |
もしこの人がオープンカーを持ってるなら、 まゆしぃたちに貸してくれるかな? | |
牧瀬紅莉栖 | なんなの、この中二病的なアカウント名は…。 |
岡部倫太郎 | この隠す気のないアカウント…。 間違いなく、機関のエージェントだ! |
牧瀬紅莉栖 | どう見てもあんたの同類です、 本当にありがとうございました。 |
もしかしたら、本当に何か手掛かりがつかめるかも知れ ないし、この人を捜してみましょう。 | |
岡部倫太郎 | ついに始まるのか…第三種接近遭遇、 終末機関のエージェントとのコンタクト…! |
牧瀬紅莉栖 | どうせただのマニアでしょ? たぶん学生…もしかしたら教師かも。 |
岡部倫太郎 | 助手よ、なぜそんなことがわかる? |
牧瀬紅莉栖 | それはアカウントを特定した位置が―― ここの学園エリアだから。 |
椎名まゆり | ここの制服、可愛いね。 |
岡部倫太郎 | 呑気なことを言っている場合ではないぞ、まゆりよ。 |
機関のエージェントとの接触は、 極めて危険なのだからな…。 | |
…それはそれとして、写真を撮っておいて、 元の世界に戻ってから自分で作ったらどうだ? | |
椎名まゆり | オカリン、ナイスアイデアだよ。 そうするー。 |
岡部倫太郎 | …感謝などいらん。狂気のマッドサイエンティストには 無縁なものだからな。 |
牧瀬紅莉栖 | こほん…「終末機関執行者」からのメールによると、 放課後に屋上で私たちと会うそうよ。 |
相手を誘い出すために、私たちが異世界から来たタイム トラベラーだって話したけど… | |
本当に信じてくれたのかしら? | |
どのみち、今のうちに校舎に潜り込まないとよね。 屋上に上がるための階段も探さなきゃだし…。 | |
岡部倫太郎 | 待て、助手よ。屋上で待っているというのは、 あそこにいる怪しいやつか? |
椎名まゆり | あっ、ホントだ! 女の子がこっちを見てるね! |
牧瀬紅莉栖 | いやいや、なんでセーフティーネットを越えた危ない場 所に立ってるわけ…? |
まゆり | トゥットゥルー。はじめまして、椎名まゆりで す。 あなたが終末機関執行者さんですか? |
牧瀬紅莉栖 | ちょっと待って、まゆり! 大勢の人の前で恥ずかしいアカウント名を言うなんて、 岡部に任せておけばいいのよ! |
岡部倫太郎 | 聞き捨てならんぞ「栗悟飯とカメハメ波」! |
終末機関執行者 | ほお、そなたたちか。異世界の旅行者と自称し、 第七の元老の遺産を狙う者は。 |
牧瀬紅莉栖 | あんな荒唐無稽な話を信じたわけ!? てっきり笑われるものだと思ってたのに…。 |
終末機関執行者 | 残念ながら、ここがそなたたちの終着点だ。 |
ああ、やっと言えた…こほん! | |
このまま異世界の果てで、 永遠の孤独と未練に苛まれるといい! | |
岡部倫太郎 | …中二病なのか? |
椎名まゆり | オカリンやフェリスちゃんみたいだねー。 |
牧瀬紅莉栖 | 岡部の方がまともになっちゃってるわね…。 |
岡部倫太郎 | 何故こんな所で中二病の相手をしなくてはいかんのだ! |
牧瀬紅莉栖 | うそ、こっちに来る…! |
岡部倫太郎 | 屋上から飛び降りただと!? |
終末機関執行者 | さあ、我が力の前に平伏すがいい! |
麗 | 眩暈がするようなやり取りに閉口していたけれど… 来るというなら迎え撃って差し上げますわ! |
牧瀬紅莉栖 | 迎え撃つって言われても…! |
椎名まゆり | 人数ならこっちの方が多いし、大丈夫だよー。 |
終末機関執行者 | ここまでか…。絶望と暗闇は未だ大地を染めていないと いうのに、暁が訪れようとは…。 |
椎名まゆり | どういう意味なのか、 まゆしぃには分からないのです…。 |
終末機関執行者 | それはさて置き、魔王の掟により、ガーディアンを倒し た勇者たちに、進むべき道を知らせよう。 |
そなたたちは、第七の元老の遺産たるオープンカーを探 しているのだな? | |
牧瀬紅莉栖 | 話題を切り替えた! |
終末機関執行者 | 私はこれまで、第七の元老が残した遺産の動向を追い続 け、あの車を発見した。 |
魔王として過去を滅ぼし、世界の連鎖を断ち切るのも悪 くはない…。 | |
しかし、残念だったな。 あれはもう使えない、ただの廃車同然のものだ。 | |
岡部倫太郎 | フゥーハハハ!愚かなり終末機関執行者! |
ここにはタイムマシンを造りあげた実績がある科学者が いるのだ。修理する方法などいくらでもある! | |
終末機関執行者 | ほう?ずいぶんと自信があるようだな。 では、日が暮れたらもう一度ここで落ち合おう。 |
さすればあの車の下まで案内してやろう。ただの鉄くず が役に立つというのなら、持っていっても構わん。 | |
岡部倫太郎 | なぜ、日が暮れてからなんだ? 今からではダメなのか? |
終末機関執行者 | ダメだ。 日が暮れたらここで集合だ。 |
椎名まゆり | あ、行っちゃった…。なんだか面白い子だったね。 |
岡部倫太郎 | 風のように去っていくとは、大魔王のなんたるかをしっ かりと心得ているようだな。 |
牧瀬紅莉栖 | いきなり襲ってきたから驚いたけど、ちゃんと手掛かり もくれたし、変だけど結構いい人なのかも? |
岡部倫太郎 | その判断を下すのは、 車が本物かどうかを見てからだな。 |
まゆり | トゥットゥルー。 終末機関執行者さん、来ましたよ〜。 |
終末機関執行者 | まさか本当に来るとはな。 |
夜の旧市街地を恐れて、 尻尾を巻いて逃げ出すかと思っていたぞ。 | |
岡部倫太郎 | この狂気のマッドサイエンティスト鳳凰院凶真に、 恐れるものなどあるわけなかろう! |
紅莉栖 | あの…あなた名前を教えてもらえないかしら? |
アカウント名で呼ぶのもなんか恥ずかしいし…。 | |
チモシカ | むっ…仕方あるまい。 |
我が真名はチモシカ! 今後はチモシカと呼ぶがいい。 | |
よし、真名も明かしたことだし、 会場へ向かうぞ!オークションがもうすぐ始まる。 |
椎名まゆり | わあ〜、ここがオークション会場か〜。 |
みんな黒いスーツを着てて、 なんか上流階級って感じだね。 | |
紅莉栖 | いやいや、ここの人たちは上流階級っていうより…。 |
岡部倫太郎 | …ヤクザだろ!? |
チモシカ | そう、ここはヤクザの地下オークション。 だから、真夜中にしかやらないんだ。 |
椎名まゆり | でも、チモシカちゃんはすごいね。 こんな場所でも制服のまま来ちゃうんだから。 |
岡部倫太郎 | 見ろ、彼女の放つ魔王のオーラにあてられて、 周りのヤクザたちが完全に圧倒されているぞ…。 |
紅莉栖 | 麗も相当注目されていると思うけど…。 |
麗 | 私は常に人の注目を集めてしまう存在ですから。 まぁ、いつものことですわ。 |
岡部倫太郎 | 入場する前からこんな状態では、 先が思いやられるな…。 |
麗の助けもあり、岡部たちは無事にオークション会場へ と辿りつく。 | |
チモシカ | あれが、第七の元老が残したオープンカーだ。 |
今まで誰も手に入れられなかった幻の遺産、 ここにいる全員が注目している。 | |
私も長い間狙っていたが、なかなか手を出せなかった。 | |
椎名まゆり | 手が出せないって、不思議な力に守られてて手を出した らケガをしちゃうとか? |
チモシカ | いや、金がないからだ。 |
紅莉栖 | ……。 |
岡部倫太郎 | ……。 |
チモシカ | しかし、そなたたちには手に入れる自信があるのだろ? さあ、今こそ気合と財力で勝負する時だ! |
地下オークションの司会 | いよいよ登場するのは今夜のクライマックス―― 不思議なタイムトラベラー、第七の元老の遺産! |
世界を変えるかもしれないこの車、 まずは200万からスタートだ! | |
初めての買い手が現れた、300万だ! | |
早速2人目、400万! | |
どうした、あの第七の元老の遺産だぞ。 | |
たがか、数百万じゃ物足りないとは思わないか? もっと、大胆にいこう! | |
よし、600万がきた! ようやく本気を出してくれたな! | |
椎名まゆり | どうしようオカリン…。 まゆしぃは、そんなにお金持ってないのです…。 |
紅莉栖 | そもそも、この世界の貨幣なんて持ってないわよ…。 |
岡部倫太郎 | 黒いスーツの連中にこうも囲まれていては、 強引に奪うのも無理か…。 |
麗 | 1000万。 |
椎名まゆり | ええ!? |
地下オークションの司会 | 1000万とは、お目が高いなお嬢さん! |
おおっと、早速ライバルが出現! 2000万とはこれまた豪快だ! | |
麗 | 3。 |
地下オークションの司会 | 一応、確かめるんだが… それは、3000万ということでいいのか? |
麗 | おかしいかしら? それじゃ、4000万。 |
地下オークションの司会 | 競争者もないのに1000万プラスだと!? 今夜、第七の元老の遺産に新たな主が誕生するのか! |
………………… | |
しかし、まだ競争者がいるぞ!5000万! どうする、この挑戦を受けて立つかお嬢さん? | |
麗 | ちっ。 |
紅莉栖 | なんか、怪しいわね…。 |
岡部倫太郎 | 麗と争っている連中、皆イヤホンをつけてるな。 |
紅莉栖 | ガードマンたちも同じ物をつけてるわね。 まさか、この人たち…! |
チモシカ | 気付いたか。奴らはオークションの品々を簡単に落札さ せる気はないんだ。 |
本当の金持ちが現れたら、 落札されないようこうして釣り上げていくのさ。 | |
椎名まゆり | そんな…。 |
チモシカ | とはいえ、 そこのお嬢さんならこれくらい惜しむ額でもあるまい。 |
麗 | ええ。でも、親切に寄付するつもりはないわ。 |
もともとは長い間、車を保管してくれたご褒美を与える つもりだっだけど。 | |
でも、お金を手に入れた上で人を馬鹿にするなんて… 好ましくないわね。 | |
ライオス―― | |
ライオス | ガー。 |
地下オークションの司会 | か、会場にロボットが現れた!? どうやって、ここに入ったんだ! |
麗 | 5000万。 |
地下オークションの司会 | 悪いが、5000万ならさっき出た。 こいつが欲しいなら5000万より高くしないと―― |
麗 | これが最後よ、5000万。 |
地下オークションの司会 | お嬢さん、あんたは一体…。 |
お、おい!あれを出せ!今すぐにだ! | |
チモシカ | はははっ、面白い! |
ついさっきまで冷静だったお嬢さんが、いまじゃ本物の ヤクザより様になっているではないか! | |
…おや、どうやら招かれざる客のお出ましのようだ。 ますます面白くなってきたではないか! | |
紅莉栖 | 全然、面白くないんだけど! どうしてモンスターがここにいるのよ!! |
チモシカ | 地下オークションでは、秘密裏にモンスターの飼育や密 輸までやっているとは聞いていたけど…。 |
どうやら、噂は本当だったようだな! | |
面白い!最早値切りなど不要! 魔王の使いらしく堂々と宝を奪ってやろうぞ!! | |
行くぞ! | |
紅莉栖 | また、こんな展開なわけ!? |
岡部倫太郎 | はぁ…はぁ…。 |
こ、この…狂気のマッドサイエンティストに… 肉体労働をさせるとは…。 | |
椎名まゆり | まゆしぃはちょっと慣れてきたのです。 |
岡部倫太郎 | まゆりのうーぱはなかなか強いな…。 |
椎名まゆり | えっへへ〜。 |
岡部倫太郎 | それで、こちらはどうする? |
地下オークションの司会 | お、おい、待ってくれ…。 |
麗 | 待つのは構わないけど、 まだオークションを続けるつもりかしら? |
どうやら、ここに立っている買い手は、 私たちしかいないみたいだけど。 | |
気絶中の寝言はオファーにはならないわよね。 それとも、あなたも一緒に夢の世界へ行きたい? | |
地下オークションの司会 | ど、どうぞ持って行ってください… 毎度ありがとうございました…。 |
椎名まゆり | トゥットゥルー。 おうちに帰るためのオープンカー、ゲット〜! |
まゆり | この車で帰れるんだね。 |
あれ、ここになにか書いてある…。 C204世界変動…だって。 | |
牧瀬紅莉栖 | 外見は普通の車みたいだけど、エンジン部分はまったく の別物ね。どうやら、これは本物みたい。 |
岡部倫太郎 | それにしても、消耗がかなり激しいな。これなら第七の 元老が、新しくマシンを造ったことにも頷ける。 |
椎名まゆり | 燃料が入ってないね。 |
岡部倫太郎 | 燃料だけではない、部品も足りてない部分が多い。 これは、しばらく帰れそうにもないな。 |
牧瀬紅莉栖 | 申し訳ないけど、 ここでもうしばらくお世話になりそうだわ。 |
麗 | 別に構いませんわ。 |
牧瀬紅莉栖 | そういえば、この車のお金って結局どうなったの? 確か5000万までいってた気がするけど…。 |
麗 | あの人たちには、受け取る度胸が無かったようですわ。 |
牧瀬紅莉栖 | うわ…。 |
麗 | 勘違いしないで、 ちゃんとライオスに持たせましたのよ? |
けれど、結局最後まで誰も近づいてきませんでしたの。 | |
チモシカ | あれって「命が惜しくなければ金を取りにこい」って 意味ではなかったのだな。 |
岡部倫太郎 | …なぜ、お前がここにいる。 |
チモシカ | 私の情報のおかげで車を手に入れたんだから、見にきて 当然だろう? |
牧瀬紅莉栖 | チモシカが居てくれると助かるわ。自分以上の中二病患 者がいることで、岡部が普通の喋り方になるから。 |
岡部倫太郎 | ……。 |
椎名まゆり | この車の燃料と部品って、 ガソリンスタンドとかカーショップで買えるのかな? |
牧瀬紅莉栖 | 恐らく無理だと思うわ。 |
これは道路を走る車じゃなくて、 閉じたひもの重力子を使ってブレーンワールド間を異世 界跳躍するマシンだから。 | |
岡部倫太郎 | しかし、これだけ発展している都市ならば、 修理に必要な材料くらいはあるだろう。 |
どこか、そんなものがありそうな場所を知らないか? | |
麗 | それなら、研究所か港区の工業エリアがいいかしら。 中央庭も抑えておくべきかもしれないわね。 |
岡部倫太郎 | そう簡単に入れるような場所ではないように思えるのだ が…。 |
麗 | その通りよ。金銭で取引するのも難しいわ。 |
チモシカ | おいおい、ここまできてそんなに慎重でどうする? 最悪、強引に突破すればいいだろう? |
牧瀬紅莉栖 | できれば、穏便にすませたいんだけど…。 |
チモシカ | それだったら、(プレイヤー)にやって貰おう。 |
私のことを言っているの? | 聞こえていないフリをしよう…。 |
チモシカ | なに聞こえてないフリなんてしてるんだよ! ちゃんと聞こえてるのは、わかってんだから。 |
岡部倫太郎 | お前が材料を手に入れてくれるのなら、 俺たちも車の修理に専念できる。 |
牧瀬紅莉栖 | 私たちが行っても、門前払いされるだけだものね。 申し訳ないのだけど、お願いしてもいいかしら…? |
椎名まゆり | まゆしぃも、ここで応援してるからね〜。 |
牧瀬紅莉栖 | でも、やってもらってばかりも悪いわよね…。 なにか私たちにして欲しいこととかない? |
できることなんて限られてるけど、 それでもちょっと考えておいて。 | |
岡部倫太郎 | 遠慮する必要はないぞ。 |
この鳳凰院凶真にかかれば、世界の半分をくれてやるこ とすら、たやすいのだからな! | |
牧瀬紅莉栖 | それで、あの…。 |
唐突なんだけど、材料が揃うまでの間、 ライオスを解体して調べてみてもいいかしら…? | |
ライオス | ………………。 |
牧瀬紅莉栖 | ちゃ、ちゃんと元通りにするから! |
椎名まゆり | それじゃあ、 まゆしぃはみんなのためにおやつを探そうかなぁ。 |
こっちの世界でもバナナってあるのかなぁ? |
(カンッカンッ――) | |
岡部倫太郎 | これでよし…と。 |
勝利のときは来た! | |
この俺はあらゆる陰謀にも屈せず、 己の信念を貫き、ついに最終聖戦を戦い抜いたのだ! | |
この勝利のため、 我が手足となって戦ってくれた仲間たちに感謝を! |
どういたしまして…。 |
岡部倫太郎 | このC204世界変動が再び起動すれば、両方の世界は 同時に書き直される! |
そして、こちらの世界は我々を失い、 あちらの世界は再び我々を「捕獲」するのだ! | |
麗 | つまり、この車に乗ると、 貴方たちは消えるということかしら? |
牧瀬紅莉栖 | ええ、そういうことよ。 |
椎名まゆり | ちょっと寂しいね…。 |
戻っちゃったら、ここでの記憶は全部なくなっちゃうか もしれないんでしょ? | |
向こうの世界のまゆしぃたちにとって、 ここでの出来事は存在していないことになるから。 | |
牧瀬紅莉栖 | でも、この世界にとっては、 「猫の箱が再び閉ざされる」という事象が起きる。 |
記憶が存在しなくなるかは、非常に微妙なところね。 | |
岡部倫太郎 | 俺たちは確定した粒子状態から、不確定な量子状態へと 戻る。ここにあって、ここにいない状態だ。 |
だが、完全な記憶を残すお前…そう、 観測の目を持つ者が、我々が残した痕跡を観測すること で、再び奇跡を引きおこせるかも知れない。 | |
牧瀬紅莉栖 | やっぱりダメ!もうしばらくこの世界にいましょう! |
だって、ライオスみたいな精密な二足歩行ロボットを造 る技術をまだ身につけていないんだもの! | |
たとえ忘れるかもしれないとしても、 やっぱり気になるもの! | |
椎名まゆり | まゆしぃもまだここに居たい。 だって、このままお別れするなんて寂しいよ。 |
岡部倫太郎 | そして、ある朝ひっそりと姿を消す…。 意外とあり得ることかも知れんな…。 |
椎名まゆり | まゆしぃたちは忘れちゃうかも知れないけど、 あなたはまゆしぃたちとの出会いを覚えていてね。 |
この楽しかった時間をきっと忘れないでいてね! | |
岡部倫太郎 | もしかすると… |
リーディング・シュタイナーを持つ俺も、この世界での 記憶が残るかも知れない。 | |
輪廻と世界線を超えた記憶は、観測者への罰でもあり、 贈り物でもある。 | |
だから…決してなかったことにしてはいけない。 | |
この世界でしっかり頑張れよ、 「もう一人の観測者」。 |