テキスト | 必ず成功させます! |
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ボイス | こんにちは。こんばんは。おはよう! ふふっ、たくさんご挨拶させてね。 |
おっとりとした性格の、温かな笑顔の少女。 しかしその実体は、世界の現状維持のために作られた人工生命で ある。 友達であるキョウが大好き。 演目『天の階段』より。 |
『キョウちゃん、この部品はこっ ちにくっつけるので合ってたっけ ?』 |
今回の舞台、想像以上に色んな演 出ができるようになったってB組の みんなも喜んでたの♪ |
純那ちゃん、この衣裳すごく似合 ってるよね。あとで一緒に写真撮 らなきゃ♪ |
方舟の大道具、お客さんからの評 判がすっごく良かったの。記念に 写真もいっぱい撮っちゃった♪ |
鳳凰院さんが楽しそうに言ってた 『メイクイーン+ニャン2』ってい うカフェに私も一度行ってみたい な♪ |
鳳凰院さん、『天の階段』につい てすごく理解していたの。それこ そ何十、何百回も舞台を観てきた みたいに。 |
鳳凰院さんに好きなものを聞いた ら『選ばれし者の知的飲料』って 答えられちゃった。 |
『マッドサイエンティスト』、お 芝居の中でも重要な言葉なんだ♪ |
未来ガジェットはいろんな種類が あるそうだから、舞台の演出に使 えるものもあるのかも。 |
『私ね、絵本がだいすきなんだぁ。 いろんな奇麗な風景や生き物のお 話や絵がいっぱい描かれてるの』 |
なな | 何度でも繰り返すほどの執着……。 鳳凰院さんにもきっとそれがあったんだね。 |
――トンカン、トン、カン…… | |
B組の生徒A | あの、鳳凰院さん…… このセットの相談なんですけど……。 |
鳳凰院凶真 | どうした、なにか問題か……ああ、その照明角度なら問題ない! 観客席から仕掛けは見えなくなると既に証明されている!! |
B組の生徒A | は、はあ……なら、それで……。 |
B組の生徒B | えっと、鳳凰院さん……実はここのライトが……。 |
鳳凰院凶真 | なに、足りないだと!? クッ、まさかもう奴らの手が回って……!? |
よかろう、急いで手配してやる!! | |
B組の生徒B | え、えーーっと……それじゃあ、お願いします……。 |
なな | ……。 |
華恋 | おおっと、ばなな発見! |
なな | あ、華恋ちゃんに真矢ちゃん。 |
真矢 | 今からよろしいでしょうか? 第二幕中盤での三人の掛け合いを確認しようと思いまして。 |
なな | もちろん! お誘い嬉しいです♪ |
華恋 | やったあ!! |
真矢 | 大場さん……こちらにいるということは 鳳凰院さんになにか用事があったのでは。 |
なな | あ……差し入れ持ってきたんだけど、 忙しそうでタイミングをうかがってたの。 |
それで見てるうちに……なんだか色々考えちゃって。 | |
真矢 | 色々、とは? |
なな | うん……鳳凰院さんって、不思議な人だなあって。 |
真矢 | それは…… そうですね、かなり浮世離れされている方かと。 |
なな | それもだけど、身にまとう雰囲気だけじゃなくって…… 存在感っていうのかな? |
華恋 | あっ、存在が不思議って感じ、わかるわかる! 鳳凰院さんって、物語に出てくる魔法使いみたいじゃない? |
ほら、あの……なんだっけ。 える……える夫妻……?? | |
真矢 | エル・プサイ・コングルゥ、ですね。 |
華恋 | さっすが天堂さん、それそれえ! |
あれもなんだか、魔法使いの呪文みたいだよね!? | |
なな | そうね。 華恋ちゃんの例え、すごくしっくりきちゃう。 |
不思議なお話の登場人物みたい、というか、 物語の登場人物そのもの、のような――。 | |
真矢 | それは言い得て妙ですね。 |
華恋 | みょう?? |
真矢 | はい。 あの方は、特異な二面をお持ちのような気がするのです。 |
たとえば自らを高らかに名乗る際の素振りと、 不意に見せる深い思考……普段の言動に、明らかな溝がある。 | |
あれはどこか…… | |
なな | ……私たちが誰かになるときに、似てるよね。 |
華恋 | なるほど、鳳凰院さん劇場だ!! |
んん? まってまって?? だとしたらほんとの鳳凰院さんはどこにいるんだろ……。 | |
なな | ……そうなの。 実は、それがずっと気になってて。 |
鳳凰院さんは、本当はもっとずっと…… いろんなことを心配したり、我慢したりしてくれてるんじゃないかな。 | |
真矢 | そうですね……しかし、正直に話してくださるとも思えない。 |
なな | うん……。 |
華恋 | それじゃあ、話はかんたん!! |
私たちも、鳳凰院さん劇場に飛び込めばいいんだよ!! | |
なな | !! |
華恋 | 同じ舞台じゃないと声は届かない…… 観てるだけじゃなく、一緒に立たなきゃ! |
私たちはいつでもそうやって、 物語のみんなとお話してきたでしょ? できるできる!! | |
なな | そっか……そうだよね。 |
真矢 | ええ、愛城さんの言う通りです。 例えるならばあの方は、ときに宮本武蔵のように力強く…… |
華恋 | ファントムみたいにややこしくって、 幸福の王子、にはええと、似てない……? |
真矢 | ふふっ、本当にむずかしい人物です。 |
そんな一筋縄ではいかない方ですが、必ず同じ舞台に立てる。 いいえ……私たちは、立てているはず。 | |
なな | うん、そうだね! そうやって鳳凰院さんに全力で応えていったら、きっと――…… |
鳳凰院凶真 | ――おい、なんだなんだ、さっきからこちらをチラチラと! 気が散るんだが!? |
華恋 | えへへ〜〜! |
真矢 | いえ、少し話を……。 |
なな | うん、ファントムでもなく宮本武蔵でもない…… 誰でもない人の話をしてました! |
鳳凰院凶真 | なんだそれは…… まさか、機関の刺客か!? |
フッ! だがいかなるものを連れてこようと、 我が『世界混沌化計画(プロジェクト・カオティック)』を阻むことは―― | |
華恋 | 『プロジェクト・カオティック!? ……まさかあの計画を始める気なの!?』 |
真矢 | 『いいえ、むしろ今こそが好機……』 |
なな | 『そうだな……己の事と惑いもせず、企みに気づかない、今こそ!!』 |
鳳凰院凶真 | な……え? |
う、うむ、その心意気やよし! まずは計画を説明する!! | |
なな | ふふっ……♪ |
『ああ、曝け出すがいい! お前の手の内、胸の内を――……!』 |
なな | みんなが諦めなかったおかげで 『天の階段』はあのエンデイングを迎えられた。 |
それはどんなトラブルや失敗にも負けない強い意志、 そして仲間を信じる思いがあってこそ――。 | |
ラボメンナンバー877、バナーンヌ! これからも『天の階段』をも超える素晴らしい舞台を創り続けます!! |
なな(リン) | 『――ねえキョウちゃん、もう寝ちゃった?』 |
『キョウちゃん……わたしたちはどうして生まれたのかな? 【星】になるためだけに生まれたのだとしたら、どうして……』 | |
『……どうして必要のない、【心】なんて芽生えたのかな?』 | |
――ガララッ…… | |
鳳凰院凶真 | とくと見るがいい! 完成した『聖遺物(エターナル・レリック)』を―― |
なな | ……あ。 |
鳳凰院凶真 | ……――と、すまない。 今は休憩時間だったと記憶してたんだが。 |
なな | はい、自主練をしてました♪ 雨宮さんと眞井さんですか? |
鳳凰院凶真 | ああ。 完成した小道具の確認を頼もうと思ってな。 |
なな | ふたりなら、まだ教室じゃないかな…… 私が伝えておきますよ? |
鳳凰院凶真 | なら、頼むとしよう。 中庭で大道具の制作を進めると伝えてくれ。 |
なな | 了解です♪ |
鳳凰院凶真 | ……では、邪魔をしたな。 |
第二幕前半の独白は……とても良かった。 楽しみにしているから、頑張れよ。 | |
なな | え……? |
鳳凰院凶真 | な、なんだ、変なことを言ったか? |
なな | いいえ、場を当てられたのにびっくりしちゃって。 |
鳳凰院凶真 | ああ、そういうことか…… ひとりでできる場面といえば、あそこしかないだろう。 |
眠るキョウのとなりで、 誰にも言えない不安な胸のうちを明かすリン……。 | |
第二幕の中盤までは、以前の脚本のままだからな。 | |
なな | ……だけど今回の脚本で、そんなリンの気持ちも報われる。 |
鳳凰院凶真 | そう! 改定された二幕終盤の天の御使いとのやりとりで、 本当はその胸の内を聞いていたことがわかるんだ……! |
あれは、なんど脚本を読み返しても胸が熱くなる展開で……!! | |
なな | ……………………。 |
鳳凰院凶真 | んん……まあ、悪くない。 |
なな | ふふっ、ほんとに詳しい! |
鳳凰院凶真 | いや、まあ……以前の『天の階段』は何度も見たから。 |
なな | ありがとうございます。 こんなに切ないお話を、何度も……。 |
鳳凰院凶真 | そうだな。 この感覚は、いつまでも慣れない。 |
なな | 悲しい物語に慣れることなんて……ないですもんね。 |
鳳凰院凶真 | ああ、そうだな……。 |
……――悪かった。 | |
なな | え? 謝る事なんて…… |
鳳凰院凶真 | いいや……この物語を繰り返させたのは、俺だ。 |
なな | あ……。 |
鳳凰院凶真 | ……ときどき、自分がしていることが恐ろしくなる。 何度も何度も、悲劇を変えようと藻掻いて……。 |
本当はすべて俺のエゴで、世界の大切な物語を書き換えているんじゃないか…… そんなふうに思う事さえあるんだ。 | |
本当の正解なんて、当事者によって変わるものだからな。 | |
なな | ……………………。 |
鳳凰院凶真 | すっかり話し込んでしまったか。 それじゃあな――…… |
なな(リン) | 『――鳳凰院さん、ありがとう!!』 |
鳳凰院凶真 | きゅ、急になんだ? |
なな | ……なにが正解かは、私にもわかりません。 わかるなんて、言っちゃいけないもの。 |
だからこれは私と……私の演じるリンの気持ちです。 | |
なな(リン) | 『鳳凰院さん…… わたしを、キョウを、みんなを……諦めないでくれて、ありがとう!』 |
『みんなと一緒に、笑顔でいっぱいの未来にいこうね!!』 | |
鳳凰院凶真 | …………!! |
クク、……フゥーハハハハハ!! | |
当然だ、間違いなどあろうはずもない! マッドサイエンティストであるこの鳳凰院凶真が切り拓く未来こそが、 まさに正史!! | |
しかし腑抜けたことを言うにはまだ早いぞバナーンヌよ…… 舞台の幕は、まだ上がったばかり! | |
この鳳凰院凶真の足を引っ張らぬよう、せいぜい稽古に励むがいい! フゥーハハハハハ!!!!! | |
なな | ……――本当にありがとう、鳳凰院さん。 |
うん、がんばろう。 『天の階段』を、あたらしい未来を…… | |
みんなで最高の物語にするんだから――……! |