また『マジカミ』と『STEINS;GATE』のコラボですって? 互いの世界線にどんな影響があるか予想もつかないわね...... ねえ、あなたにもこのイベントを観測してもらいたいのだけど、いいかしら? |
「ワタクシチャンサマのような天才がラボのひとつも構えていなかった事が、そ もそもの間違いなのですわ。さあ、ラボメン達! ワタクシの名を轟かせますわ よ!」 |
ふっふっふ。ワタクシには分かっていますのよ。他の誰 を差し置いてもワタクシを助ける道を選ぶと! まさか 陽彩ルートがいいなんて言いませんわね……? |
頭と胸以外 | ずいぶん気軽に触ってくれやがりますわね。いくらワタ クシが魅力的でも、アナタでは役不足ですわ♪ |
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胸 | だからアナタでは役不足って……んっ、んんんっ! い、いい加減にしないと酷い目に遇わせますわよ ……! |
手に入れたドレスから残留思念が流れこんでくる。 突如として、耐えがたい睡魔が俺を襲う。 視界がぼんやりとしたモヤに包まれる中で、 俺の知らないエリザの記憶が、 脳内で映画のスクリーンのように映し出される。 | |
エリザ | よくぞ生き残ってきた! 我がラボメン達よ! |
陽彩 | お前は何を言っているんだ? |
マリアンヌ | おっほー! これはまた古いネタっスね! 風雲なんとか城なんて 今時のヤングは知らないっスよー |
りり | なになに? そのなんとか城ってなんなの? |
マリアンヌ | 吊り橋でバレーボールを避けたり、お相撲したり、 穴に入ったりして、最後に光線銃で戦う番組っスよ |
りり | 全然意味が分かんないけどなんか面白そうじゃん。 それ、テレビでやってたワケ? |
マリアンヌ | 何言ってるんスか! 当時の大人気番組っスよ! 優勝賞金100万円を求めて緑山に集結し…… |
エリザ | いつまで訳の分からない話をしていますの!? |
陽彩 | エリザがエサを撒いたんじゃないか。 それに食いついたマリアンヌにも驚いたが…… |
エリザ | もう風雲再起の話はいいですわ! それよりワタクシチャンサマの話をお聞きなさい! |
マリアンヌ | さりげなくネタをぶっ込む所が流石っスね〜。 今にも東方が赤く燃えてきそうっス! |
エリザ | 燃えなくてもいいので話を聞くのですわ。 アナタ達ラボメン候補生を呼んだ理由、 それは計画の発動を宣言するためですの |
陽彩 | 勝手にぼくをメンバーに入れるな |
エリザ | ふふふっ、本当は入りたかったくせに。 でもまだ候補生! 正式加入の道は険しいのですわ! |
りり | 姫ちん、相変わらずハイテンションで面白いわー♪ |
そんでー? 計画って何よ? 面白い話だったら乗るけどー? | |
エリザ | よくぞ聞いてくれやがりましたわね! せっかくラボを作ったのだから、エリザシステム以外の オモシロユカイな道具を開発したいのですわ! |
陽彩 | エリザシステム……? なんだそれ |
エリザ | 電子レンジとブラウン管とパソコンを組み合わせた、 全く新しい装置の名前ですわ。もう忘れましたの? |
マリアンヌ | またも風雲……! 姫さんの引出しにはシャッポを脱ぐしかないっスな〜 |
陽彩 | その名前は初耳だけど、装置の事は思い出した。 それでエリザは何を開発するつもりなんだ? |
エリザ | それを聞きたくてラボメン候補生達を呼んだのですわ。 なにか開発したいものはありませんの? |
陽彩 | いきなり呼び出されて答えられるはずないだろう。 まずはエリザが然るべき方向性を示して…… |
りり | あー、アタシはアレが欲しいわ! 無くしても見つかる傘! よく忘れるんだよねー |
マリアンヌ | だったら僕は夢を映像化する道具が欲しいっス。 この前もマンガのネタになりそうな夢を見たのに、 ディテールを思い出せなくて悔しかったんスよ〜! |
エリザ | ふむふむ、なかなかいい着想ですわね。 でもハイパーツールの第1弾は もう決まっていますの! |
マリアンヌ | ハイパーツール……。 空間湾曲させたり光にしたりしそうな名前っスね |
陽彩 | ……ぼく達に開発したいものを聞いた理由は? |
エリザ | まあまあ、そんな事はどうでもいいですわ。 まずはワタクシチャンサマのアイデアをお聞きなさい |
コホン……ワタクシは空撮ドローンをもっとお手軽に、 誰にでも使えるものとして普及させたいのですわ | |
りり | 空撮ドローン? あー、スマホで操作する空飛ぶオモチャの事ね |
マリアンヌ | もっとお手軽にって、具体的にどうするんスか? 個人的にはもっと安くなって欲しい所っスけど |
エリザ | ふふふ、目の付け所がいいですわね。 ワタクシも同じ部分に着目しましたの |
そこで揚力を得る為の動力、 及びバッテリーをまるっと排除する事にしましたわ! | |
陽彩 | まさか、グライダーにでもするのか? |
エリザ | ちっちっち! それでは定点撮影できませんわ。 動力不要、人力だけで飛行可能なもの……それは! |
タケトンボ〜〜! | |
りり | なあ、マリ夫。風船に付けるんじゃダメなワケ? |
マリアンヌ | それは何処までロマンを追い求めるかって話っスな。 それに風船だとヘリウムを入れたりで 結構手間っスよ? |
りり | あー、そっかそっか。 凧にくっつけるのも考えたけど、低いトコは無理かー |
陽彩 | ぼくにはマトモな映像が撮れるとは思えない。 それに定点撮影だって無理じゃないのか? |
エリザ | 作りもせずに非難しますの? ハッ、陽彩の野暮天ぶりには喘ぎ声しか出ませんわね |
陽彩 | 喘ぎじゃなくて、溜息だろう…… |
エリザ | 陽彩、アナタはもっと夢を見るべきですわね。 でも安心なさい。 Eガジェットが夢を与えてくれますわ |
陽彩 | E……ガジェット……? |
エリザ | エリザ・スペシャル・ディビジョン・ガジェット、 略してEガジェットですわ |
陽彩 | さっきハイパーツールって呼んでなかったか? |
エリザ | 古い話を持ち出すものではありませんわね。 それと、アナタ達を正式なメンバーにしてあげるから 喜びに打ち震えるといいですわ♪ |
マリアンヌ | それは僕達もって事っスか? |
エリザ | 当然ですわ。そして正式メンバーの証として、 アナタ達に『ラボネーム』を付けて差し上げますわ |
りり | なにそれ? ラボってそんな事するもんなの? |
陽彩 | ぼくの知ってる範疇では聞いた事がないな。 エリザ、ぼくには付けなくていいから…… |
エリザ | まず、陽彩! アナタは『助手』ですわ! ワタクシチャンサマの助手として頑張りなさい! |
陽彩 | ちっとも話を聞いてないな…… |
エリザ | そして、りり! アナタは『スイーツ(笑)』ですわ |
りり | あはははっ、おけおけ! これからはスイーツ(笑)って事でよろ〜♪ |
マリアンヌ | そ、それでは僕はどうなるんスか? |
エリザ | アナタは……うーん、そうですわね。 『眼鏡大好きっ子』あたりでどうですの? |
マリアンヌ | あれれっ!? 僕だけちょっと違うっスよ? そこは実験大好き…… |
エリザ | ダメですわ! それ以上は禁句と心得なさい! |
マリアンヌ | あー……なるほど、色々と察したっス |
エリザ | さあ! アナタ達も正式なラボメンとなったわけで、 明日からはEガジェットの開発に邁進しますわよ! |
陽彩 | ぼくは何一つとして了承してないけどな…… |
俺はそこで目が覚めた。 この先の記憶もありそうな気がするが……。 |
手に入れたドレスから残留思念が流れこんでくる。 突如として、耐えがたい睡魔が俺を襲う。 視界がぼんやりとしたモヤに包まれる中で、 俺の知らないエリザの記憶が、 脳内で映画のスクリーンのように映し出される。 怪しいガジェットの開発を始めた記憶の続きのようだ。 | |
エリザ | さあ、プロトタイプが完成しましたわよ |
りり | おーー、もう出来たんだ |
って……なんつーか、 メチャクチャ手作り感溢れてね? | |
マリアンヌ | プロトタイプってのは大抵こんなもんっスよ。 プロトがカッコイイのは アニメやマンガの世界だけっス |
りり | この軸にくっついてる小っこいカメラで撮るワケ? |
エリザ | その通り! この超小型CCDカメラで撮影し、 プロペラ部に組み込んだトランスミッターで スマホに映像データを送信するという仕組みですわ |
さらにプロペラ基部には高効率発電機を組み込み、 カメラとトランスミッターの電力を賄っていますのよ | |
陽彩 | 仕組みに問題はないと思う。 それをこんな筐体に詰め込んだ技術力も賞賛に値する |
エリザ | そうでしょうとも! さすがの陽彩も賞賛するしかないと諦めましたのね。 さあさあ、もっとワタクシを褒め称えなさい! |
陽彩 | いや、それは試験飛行を見た後にさせてもらう |
エリザ | ふふふ、だったら度肝を引っこ抜いてあげますわね |
栄えあるEガジェット1号機、 『フェアリー・イン・ザ・ハース』の 初飛行ですわよ! | |
エリザ | な……なんて事ですの! これは想定外ですわ! |
陽彩 | ぼくからしたら想定内だった |
マリアンヌ | 考えてみれば当たり前っスよね。 軸が回転しているんだからカメラも回るっス |
エリザ | くっ、ううう……一生の不覚ですわ |
りり | あのさー、アタシは悪くないと思うよ? 半端な早さだったら気持ち悪くなるけど、 こんだけ早いと別物に見えてくるんだよね |
マリアンヌ | 言われてみれば、面白い映像っスね。 なんて言うか色の洪水みたいな、不思議な感じっス |
エリザ | ふ、ふふ…… どうやら分かる人には分かるようですわね。 まさに青びょうたんから鷹が生まれたという事実に! |
陽彩 | ……それを言うなら瓢箪から駒だ |
エリザ | んん? なんだか悔しそうな顔をしていますわね。 ワタクシのアヴァンギャルドフェアリーに 嫉妬ですの? |
陽彩 | ぼくは嫉妬なんかしてない。 ただ怪我の功名だなと思ってるだけだ |
エリザ | ふふふっ、ワタクシは怪我なんてしていませんわよ。 それより陽彩も成功を祝して乾杯するのですわ |
陽彩 | えっ、こんな飲み物は見たことがない…… |
エリザ | あら、これはアメリカで大人気のコーラですのよ? 言わば『選ばれし者だけの知的飲料』ってヤツですわ |
陽彩 | ううっ……なんだか妙な薬の味がする。 これ、本当に飲んでいいものなのか? |
マリアンヌ | 慣れると癖になるっスよ? これに慣れると、 普通のヤツじゃ満足できなくなるっス。 例の麦コーラと同系統っスね |
エリザ | ところでラボメン達。 もうひとつ試してみたいEガジェットがありますの |
りり | なになに、どんなヤツ? って言うか、いつの間にそんなの作ってたワケ? |
エリザ | ふふん、ワタクシほどの天才となると、 手で作りながら同時に足でも作れるのですわ。 これは足で作った分ですのよ |
マリアンヌ | 時計……? しかもペアウォッチみたいっスね |
エリザ | ふっふっふ、これは時計ではありませんわ。 恋人や友達同士の信頼度を調べる装置ですの |
陽彩 | エリザにしてはマトモなものを作るじゃないか。 仕組みはどうなってるんだ? |
エリザ | ふふふ、気になるなら着けてみるといいですわ。 陽彩だったらすぐに分かると思いますわよ |
陽彩 | なるほど、これはぼくへの挑戦状ってわけだ。 そういう事だったら受けて立つしかないな |
エリザ | かかりましたわね、陽彩! これをご覧なさい! ワタクシも装着済みですのよ! |
陽彩 | ……やっぱり何か仕込んでたんだな |
りり | そりゃそうだろうねー。 姫ちんってば、チョー嬉しそうな顔してたしさ |
マリアンヌ | 明らかに何か企んでるって顔っスよね〜 |
エリザ | な、なんですの! まるで何もかもバレバレみたいな雰囲気ですわね! |
陽彩 | 結局の所、これはどういう装置なんだ? |
エリザ | それはさっきも言った通り、恋人であれば愛情を、 友人であれば友情を調べる装置ですわ |
マリアンヌ | それだけを聞くと特に怪しい感じじゃないっスね |
りり | でもさ、どうやって愛情とか調べるのよ? それに結果は何処かに表示されるワケ? |
エリザ | そんなものを示す必要はありませんわ。 愛情にしろ友情にしろ、重要なのは信頼の深さ |
その信頼が揺らいだと判定された瞬間、 お互いの端末から超強力低周波が放たれるのですわ♪ | |
陽彩 | それはぼくだけなのか? |
エリザ | なにを言ってますの、ワタクシも同じですわ。 そんな所で差別するわけないでしょう? |
りり | はーー……。 アタシ、姫ちんがいい子だってのはよく分かったわー |
マリアンヌ | ホントっスねーー……。 僕も姫さんのポンコツ度に萌え狂いそうっス |
陽彩 | ……もうひとつだけ質問するが、 信頼の揺らぎはどうやって判定しているんだ。 心拍か血圧あたりをモニターしているのか? |
エリザ | 初めはそうするつもりだったのだけど、 今回はとりあえず距離だけで判定していますわ |
陽彩 | 距離……? 本当に距離だけなのか? |
エリザ | ええ。信頼を寄せているのなら離れるはずがない。 つまり距離が離れるという事は 信頼が揺らいだ証ですわ |
それと無理に外そうとするのもNGですわ。 つまり陽彩は永久にワタクシから離れられませんのよ | |
そもそもワタクシチャンサマが ライバル視していると言うのにアナタときたら 我関せず! | |
そんな事が許されると思ったら大間違いですわ! | |
陽彩 | だからこんなものを作ったのか…… |
エリザ | なあに、しばらく一緒にいればツーカーになりますわ。 その時こそワタクシがライバルだと理解できるはず! |
あ……ちょっと失礼しますわね。 どうもコーラを飲み過ぎてしまったみたいで…… | |
陽彩 | えっ? ちょっ、ちょっと待―― |
エリザ | な゛あ゛あ゛っ!? ん゛お゛お゛お゛お゛お゛っ!! |
マリアンヌ | な……なんて凄まじさ! まるで嫉妬深い鬼娘が放つ電流みたいっス……! |
りり | ひ、姫ちん! とりあえず戻った方がいいんじゃね!? |
エリザ | わわわわ、わがっで、まず、わぁぁ! よよよ、よぞういじょうに、づづよよよいいいい! |
エリザ | はあはあ……! な、なんて恐ろしい装置ですの!? これぞ『鬼女の嘆き』の名に相応しい威力ですわ! |
陽彩 | そんな名前を付けているなら先に教えて欲しかったな。 それとぼくの端末には不具合があるみたいだ |
エリザ | あぁ……た……確かに、 ワタクシがあんな目に遇ったのに、 陽彩は無傷そのもの……! これは空元気ですわね!? |
陽彩 | 空元気に見えるならそれでもいいが、本当の事だ。 発信器かバッテリーに問題があるんじゃないか? |
まあ取り敢えずぼくには影響がない様子だから、 そろそろ引き上げさせてもらっていいか? | |
エリザ | 涼しい顔で何とんでもない事を言っていますの!? |
絶対に逃がしませんわよ、陽彩! 少なくともこの端末を外せるようになるまでは、 ワタクシと一緒にいてもらいますわ! | |
……それと、ひとつお願いがありますの | |
ワタクシと一緒におトイレに……! うぅ、もう……おしっこが漏れちゃいそうで…… ううっ | |
陽彩 | はあ……。ぼくのライバルを自称するのだったら、 少しでいいから後先を考えて欲しいな…… |