ちょいと聞いてくれよ>>1よ、さっき『マジカミ』起動したんです。 そしたらまた『STEINS;GATE』コラボとかやってるんです。コラボだよコラボ。 お前去年も同じようなことやってて今度は何するつもりかと... |
「なんのてらいもなくネットスラングを口にする度胸には驚いたっス! 僕も彼 を見習って、今まで以上にスラングを連呼するっスよ。まずは手始めにクマーに してみるッスよ、クマー!」 |
なんだか不思議っスねー、この帽子を被ってるだけで スーパーハカーになったような気がするっスよ。どうい うわけか無性にピザが食べたくなるっスけど…… |
頭と胸以外 | い、今、僕のお腹を触るのはNGっす! ちょっと油断 してピザを食べ過ぎちゃっただけで、すぐに痩せるっス から! |
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胸 | きゃあっ!? いっ、いきなりなんて事をするっス! 前 振りもなく胸に触っていいのは殿様だけっスよ常考! |
手に入れたドレスから残留思念が流れこんでくる。 突如として、耐えがたい睡魔が俺を襲う。 視界がぼんやりとしたモヤに包まれる中で、 俺の知らないマリアンヌの記憶が、 脳内で映画のスクリーンのように映し出される。 | |
マリアンヌ | それにしても、姫さんには驚かされるっスね |
りり | うんうん。ワタクシチャンサマは天才ですのよ! って、ドヤ顔してるだけはあるって感じだわー |
マリアンヌ | いくらユラギの中で見つけたものとは言え、 電子レンジとブラウン管 |
それに30年以上昔のPCで 過去にメールを送る装置を作るなんて、 冗談みたいっスね | |
りり | それもそうだし、どういう仕組みになってんの? 説明されたかもしれないけど、 全然覚えてないんだよね |
マリアンヌ | 僕はSF関係の作品もある程度カバーしてるっスが、 これはもっとガチ系なんスよ |
りり | そういう時は専門家に聞くのが早いっしょ。 おーい、陽彩っち〜♪ |
陽彩 | ……ぼくに聞かれても困る |
りり | って事は、陽彩っちも仕組みとか分かんないワケ? |
陽彩 | いや、理論は分かる。 問題はガラクタを組み合わせる事で動作する理屈だ |
マリアンヌ | いやあ……理論が分かるだけでもスゴいっスよ。 ちなみにどういう理論なんスか? |
陽彩 | 簡単に言うとだな、 シュワルツシルト・ブラックホールを回転させる事で カー・ブラックホールにするんだ |
すると遠心力によって特異点がリング状になるから、 エルゴ領域を通らずにコーシー地平面に到達し、 特異点にアプローチする事が可能になる | |
知っての通り、特異点は無限大の密度があるので 時空間にひずみや穴を空けている | |
だから特異点が生み出した『ひずみ』に入れば、 別の空間、別の時間に移動する事が出来るんだ | |
りり | ……は? マリ夫、意味分かる? |
マリアンヌ | 薄ぼんやりとなら……。 いくつか初耳のSFワードがあるっスけど…… |
りり | あのさ、そのブラックホールとかコーヒー面とかを この電子レンジが作ってるって事なの? |
陽彩 | それが意味不明な部分なんだ。 それとコーヒー面ではなく、コーシー地平面 |
マリアンヌ | そう言えば、インターなんとかって映画でも 似たような理論を提唱してたっスよね |
陽彩 | つまり、映画の題材になるような理論という事だな。 言うなれば『想定される理論に基づいた科学』、 想定科学の範疇というわけだ |
りり | 想定科学ねー。だけど実物がここにあるわけで、 陽彩っちも不思議でたまらないっしょ |
陽彩 | 全くだ。ぼくとしては何か問題が起きる前に 破棄した方がいいと思うんだがな |
りり | ええっ? ちょっ、そんなの勿体ないって! だってなんでも出来るじゃん! 試してないけど、昔の自分に宝くじを買わせたりさー |
陽彩 | それが大問題なんだ。 りりが昔の自分に宝くじを買わせたとしよう。 すると本来当たるはずの人はどうなる? |
りり | そりゃまあ、外れるんじゃね? |
陽彩 | ただ外れるだけじゃない。 当選した結果で発生する全ての事象が消滅するんだ。 例えば家を買ったとしても、買っていない事になる |
するとどうなると思う? 家を売った会社の利益がなくなり、決算が変化する。 上場企業であれば株主配当が減るかもしれない | |
受けとるはずの配当がなくなる事で消費が落ち込み、 日用品を販売している小売店が倒産する。 その結果、解雇された社員が世を儚んで自殺する | |
りり | えええっ、それはちょっと大げさすぎない? アタシが宝くじを買っただけでどうしてそうなるの? |
陽彩 | これはバタフライ効果という予測困難性の現象で、 あらゆる事象は相互に関与しているという力学の話だ |
マリアンヌ | ええと、アレっすよアレ。 『風が吹けば桶屋が儲かる』って 聞いた事ないっスか? |
りり | あー、どっかで聞いた事あるわ。風が吹くと バンバン埃が立つから目が見えなくなって、三味線が バカ売れすっから猫が減って桶屋が儲かる話ね |
マリアンヌ | メチャクチャ省略されてるけど、まさしくそれっス。 巡り巡って予想外の影響を及ぼすって意味っスね |
りり | そういや、バタフライ効果だっけ? そーいう映画あってさ、この前ネットで観たわー |
マリアンヌ | りりちゃんが観たのはどれっスか? あの映画って実は第3弾までやってるんスよ |
りり | えっ、マジで? アタシが観たのはどれだったかなー。 続きのヤツも面白い? |
マリアンヌ | だったら自分で観た方がいいっスよ。 連作する事でクソ化するのも含めて楽しむっス♪ |
陽彩 | ……まあ、映画はさておき。 軽々しく過去を変えるものじゃないという事だ |
今日はもう来ないみたいだから、ぼくは帰る事にする。 それと過去改変だけはやめた方がいい。分かったな? | |
マリアンヌ | わ、分かったっス。 陽彩たんがそこまで心配するなら指一本触れないっス |
陽彩 | そうしてくれると助かる。 あとエリザにも同じ事を言っておいて欲しい |
マリアンヌ | ……それじゃ、僕達も帰るっスか? |
りり | あのさー、陽彩っちが心配するのは分かるんだけど、 ちょっと試してみたい事があるんだよね |
マリアンヌ | マ、マジっスか……? あれだけ脅されても気にしないなんて、 りりちゃんは大物っスね……! |
りり | だってもうやっちゃってるしさー。今更みたいな? |
それより、マリ夫だってやりたい事あるっしょ? アタシと一緒に一線を越えちゃおうぜー♪ | |
マリアンヌ | クロス・ザ・ルビコンっスなぁ……。 ちなみにりりちゃんはどんな事をしたいんスか? |
りり | アタシさ……へへっ、マリ夫と姉妹になりたいんだわ |
マリアンヌ | ぼ、僕とっスか!? どうしてそんな事を…… |
りり | だってマリ夫と姉妹だったらチョー面白そうじゃね。 ま、マリ夫はアタシと姉妹なんかなりたくねー感じ? |
マリアンヌ | 僕だってりりちゃんとなら……。 だけど、それはちょっと無理そうっスね。 だって過去にメールを送るだけなんスよ? |
りり | そりゃそっか。もしアタシらにメールが届いて、 今日から姉妹とか言われても、はあ? って感じだわ |
マリアンヌ | 行動を伴う事しか変えられないって事っスね。 陽彩たん風に言うなら、 事象の書き換えは出来ない、と |
りり | でもさ、せっかくだしやってみない? 仮に失敗したって何にも起こらないんだしさ |
マリアンヌ | ……なるほど。どうせ失敗するんだから、 陽彩たんに怒られる事もないっスね |
りり | そーいう事♪ そんじゃ、さっそくやってみよ! |
マリアンヌ | ターゲットは僕とりりちゃんの二人にするっス。 送信文は 『りりとマリアンヌは実の姉妹になる』……と |
りり | 送る時間だけどさ、出来る限り昔に出来る? |
マリアンヌ | 了解っス! それでは最大限過去に、っと。 それじゃりりちゃん、メール送信はお任せするっスよ |
りり | おけー! そんじゃあ……メール送信っ! |
俺はそこで目が覚めた。 この先の記憶もありそうな気がするが……。 |
手に入れたドレスから残留思念が流れこんでくる。 突如として、耐えがたい睡魔が俺を襲う。 視界がぼんやりとしたモヤに包まれる中で、 俺の知らないマリアンヌの記憶が、 脳内で映画のスクリーンのように映し出される。 マリアンヌ達が装置を起動した記憶の続きのようだ。 | |
陽彩 | ……んん? 珍しいな、あの二人が喧嘩をするなんて |
りり | ちょっと、そこにいたら邪魔っしょ! マリ夫のくせにアタシの邪魔をしないでくれるぅ? |
マリアンヌ | 邪魔なのはりりちゃんの方っス! それにここは僕のエリアだって 前から決まってるっス! |
りり | なに言ってんのよ! そんなの誰が決めたワケ? アタシはそんなの聞いてないしー! |
マリアンヌ | りりちゃんが忘れっぽいだけっスよ! あー、なにやってるんスか! お菓子ぼろぼろ零して! |
りり | うざーーー! マリ夫、神経質すぎて超ウザいし! |
エリザ | 陽彩ったら、なにポカンとしてますの。 これが噂の男根状態というヤツですわね |
陽彩 | 男根状態じゃなくて、脱魂状態だろう。 というか、ぼくも言葉として発するのは初めてだ |
……いや、そんな事はどうでもいい。 りりとマリアンヌに何があったんだ? | |
エリザ | 何がって、いつものくだらない姉妹喧嘩ですわ。 毎日毎日、飽きもせずに良くもまあ |
陽彩 | ああ、そうか。いつもの姉妹喧嘩か |
(待て! どうしてぼくは『納得』したんだ? りりとマリアンヌが姉妹のはずないだろう!?) | |
念のための確認なんだが、 エリザはりりとマリアンヌが姉妹だと言ったな? | |
エリザ | いっ、一体なんですの? そんな当たり前の事を聞くのに怖い顔をして |
陽彩 | いや、それならいいんだ。 エリザにとってはそれが『当然』なんだな |
すまないが、ぼくの話を聞いてくれるか? | |
りり | なによ、陽彩っちには関係ないっしょ。 それともなに? マリ夫の肩を持つつもりなの? |
マリアンヌ | さすが東山氏! 僕が正しいと証明してくれるんスね! |
陽彩 | 東山……氏? いや、どちらの肩も持つつもりはない。 ぼくが聞きたいのは、どうして姉妹になったのか、だ |
りり | は……? どうしてって、 昔からそうだから仕方ないじゃん。へっ、 アタシはこんな妹、欲しくなかったんだけどさー |
マリアンヌ | それはこっちの台詞っス! それに妹って言うけど、 たまたまそっちの方が先に生まれただけっスよ |
りり | たまたまでも先に生まれたのはアタシだもんねー。 だから妹はお姉様の言う事を聞いてればいいっての |
マリアンヌ | あーもー! 姉ガチャを引き直させて欲しいっス! もっと優しいお姉ちゃんが欲しいっスよ! |
りり | 姉ガチャ? そんな事ばっかり言ってるから、 キモオタ呼ばわりされるんじゃね? |
マリアンヌ | 黒ビッチに言われたくないっス! 僕のBL同人誌を持っていって何かしてたくせに! |
りり | そっ、そんなのマリ夫に関係ねーしー! それよりアタシのリップ、勝手に使うなし! |
陽彩 | (完全に姉妹として認識されているわけか。 恐らくエリザの装置を使ったんだろう。まったく) |
(とはいえ、こんな大掛かりな改変が出来るのか? それにここまで事象が改変されているとなると……) | |
エリザ | どうしましたの、陽彩? アナタ、さっきから様子がおかしいですわよ |
陽彩 | (エリザには改変前の記憶が残っていないか。 そういう事なら、いくら質問しても無駄だな) |
(マリアンヌ達が姉妹になった影響で この世界線はかなり変異していると考えて然るべきだ。 問題はその内容だが……) | |
エリザ | そうそう、言い忘れていた事がありましたわ。 マリアンヌが例のハッキング、やってくれましたのよ |
マリアンヌ | いやー、あれは結構手強かったっスなー。 でもプロテクトが強固な方が破り甲斐があるっスよ♪ |
陽彩 | マリアンヌが……ハッキングだって? |
りり | 陽彩ってば、なに不思議そうな顔してんの? マリ夫は超一流のスーパーハカーなんだから 当然っしょ |
マリアンヌ | スーパーハカーじゃなくてスーパーハッカーっス常考。 でもりりちゃんに褒められると嬉しいっス。デュフフ |
りり | もー、そんな嬉しそうな顔すんなってー♪ えっとさー、さっきはつまんない事で怒って ゴメンね? |
マリアンヌ | 僕の方こそ色々と言い過ぎちゃったっス。 ごめんなさい、りりお姉ちゃん |
陽彩 | ……いいムードの所で悪いんだが、 マリアンヌはいつからクラッカーになったんだ? |
マリアンヌ | クラッカーなんかじゃないっス! さっきから何言ってるんスか、東山氏は〜! |
エリザ | まあまあ、陽彩もたまにはおかしくなりますわ。 それよりハッキングの成果を見せてくれませんこと? |
マリアンヌ | デュフフフ! これは失禁ものっスよ〜♪ |
陽彩 | これはシステム制御用のコンソールか……? それもLHC……まさか、これは……! |
マリアンヌ | 某研究機関所有の大型ハドロン衝突型加速器っスよ。 ここから操作できるようにするのに 手間がかかったっス |
でも僕にかかれば赤子の手をへし折るようなもの。 そうそう、面白い情報も手に入ったスよ | |
どうやら極秘に計画を進めてたみたいっス。 それも実際に人体を使った試験までしてたみたいで | |
エリザ | これはまた見事にフラクタル化してますわね。 原因は判明していますの? |
マリアンヌ | あー、特異点通過時のミスみたいっスね。 圧縮限界を超えた事で構造体が変化したっス |
僕だったらこんな無様なミスはしないっスよ。 もう幾つかプランは考えているっス、例えば―― | |
エリザ | ふふっ、アナタがいてくれて本当に良かったですわ。 これでワタクシチャンサマの計画も 次のステージに…… |
陽彩 | エリザ……きみ達は何をするつもりなんだ? |
エリザ | あら、何も知らないような反応をしますのね。 今日の陽彩は本当におかしいですわよ? |
陽彩 | ぼくの事はどうでもいい。 それより何をするつもりなんだ? |
エリザ | そんな事、決まってるじゃない |
ワタクシによるワタクシのための、世界の改変ですわ |