すべては偶然だった。 だがその偶然は、 運命ともいえるような出会いをもたらすものだった。 | |
マリアンヌ | き……………… |
キタ―――(゚∀゚)――――!! | |
りり | マリ夫テンション高っ!? いきなりぶち上げじゃん! |
マリアンヌ | あたり前じゃないっスか! 秋葉原っスよ、秋葉原! ここは今も昔もぼくの聖地っスから! |
花織 | ここが噂に聞く秋葉原かぁ……。 なんか圧倒されちゃう街だね |
蒼 | ふむ。アニメの巨大広告にゲームセンター。 電化製品の店にビラ配りのメイドさん…… |
セイラ | 渋谷とはまったく別世界、って印象ね |
いろは | ねぇねぇ、まずはどこ行く!? あたし、メイド喫茶に行ってみたい! |
マリアンヌ | だったらここは、 王道を往くアットマークカフェに…… |
オムニス | って、お前ら! 目的が違うだろう目的が! |
陽彩 | まったく……オムニスの言うとおりだ。 今日は観光じゃなく、悪魔を倒しに来たはずだぞ |
エリザ | ふふん、そんなこと言われなくてもわかってますわ。 ドカンとやっつけて秋葉原観光に行きますわよ |
依子 | イコは地下アイドルの視察に行きた〜い☆ |
邪魔に――じゃなかった、ライバルになりそうな娘は、 今のうちに潰し――じゃない、 調査しなきゃだからね! | |
いろは | よ〜し! それじゃあサクッと悪魔を倒して 秋葉原を楽しんじゃおう! |
魔法少女たち | おおーー!! |
いろは | よしっ、今のが最後だね |
花織 | あ、見て。ユラギが晴れていくよ |
オムニス | お前らなぁ…… |
そう言いつつ、俺も浮かれていたのかもしれない。 この時に浮かれていたせいで、俺は後々まで 大事なことを見落としたままになっていた。 | |
いろは | じゃあ悪魔も倒せたことだし、さっそく観光に―― |
エリザ | ……ワタクシチャンサマはパスですわ |
いろは | えっ!? どうして!? あんなにノリ気だったじゃん!? |
エリザ | ふふん。 コレを見つけたから、調査するために帰りますのよ! |
エリザが自分の足元を指さす。 するとそこには、 ゴテゴテとした電子機器類が転がっていた。 | |
オムニス | お前、いつの間にそんなモノ買ってたんだよ? |
エリザ | 買ったんじゃありませんわ。 コレらはユラギの中で見つけましたの |
見なさいな! こんな機械、今まで一度も見たことがありませんわ! | |
コレを研究して解明すれば、 きっと陽彩がアッと驚くに違いな―― | |
りり | いや、それテレビじゃん。どっからどう見ても |
セイラ | ブラウン管型の……古いテレビね。懐かしいわ |
エリザ | えっ!? これがテレビ!? だってテレビというのはもっと薄くて、 1.87m×1.06mの85インチ以上で…… |
マリアンヌ | なんちゅー大型テレビっスか。 セレブここに極まれりっスね…… |
陽彩 | ふむ……しかしこのブラウン管テレビ、 少し変わった形をしているな |
それにこっちの電子レンジも少し変わった形だ。 ユラギの中で見つけたモノだからだろうか | |
だが、このもうひとつの機器は……X68000――。 つまり1987年のコンピューターだな。 これは現実の形と一緒だ | |
ここあ | ふ〜むふむ? なんでユラギの中に こんなモノが落ちてたのかにゃ? |
エリザ | ふふん! その謎を解き明かす人物こそが ワタクシチャンサマですわ。 そして陽彩をアッと驚かせ―― |
陽彩 | テレビと電子レンジとパソコンの謎を 解明したぐらいじゃ、ぼくは驚かないぞ |
エリザ | う、うるさいですわね! コレはユラギの中にあったんですのよ!? きっと特別なブツに違い有りませんわ! |
あとで驚くことになっても知りませんわ。 覚悟しておきなさい! | |
そう言い残し、エリザは本当に帰っていった。 機器は執事たちを呼び寄せて運んでもらったようだ。 誰もが無駄な努力に終わるだろうと思いつつ、 その日は、秋葉原観光を楽しんで帰った。 | |
しかし……それから数日後。 | |
エリザ | ふふん、みんな来ましたわね。 さっそくワタクシチャンサマの研究の成果を―― |
オムニス | いやいやいや、ちょっと待て。 まずは状況を説明しろ。ここは何なんだ? |
セイラ | あら、オムニス知らなかった? ここはエリザのラボよ |
エリザ | ええ。 研究に必要だからここを買って改装しましたの |
ここあ | 相変わらずやることが大胆ですにゃ〜 |
エリザ | そんなことよりっ! 世紀の大発明ですわよ、みなさん! |
実はワタクシチャンサマ、作ってしまいましたの。 そう! タイムマシンをね! | |
一同 | た、タイムマシン!? |
エリザ | ええ。あのユラギで見つけた電子レンジとブラウン管、 そしてX68000とスマートフォンを組み合わせて 作ってしまいましたの! |
なんとこの装置! 過去にメールを送ることができますのよ! | |
これさえ使えば、過去の自分に現在の状況を伝えて 失敗や危険を回避することができますわ! | |
いろは | すごいねエリザちゃん! 本当に、これがあれば過去を変えられるの!? |
エリザ | ええ。すでに実験も完了してますわ! 間違いありません! |
いろは | すごい、すごい! ちょっとあたしにも見せて! |
いろはを皮切りに、エリザが発明したという タイムマシンに少女たちが群がりだす。 | |
だが……俺と陽彩はその場を一歩も動こうとしなかった。 過去を変える……経験上それは、危険なことに 思えていたからに他ならない。頭のいい陽彩も それがなんとなくわかっていたのだろう。 |
マリアンヌ | ふーむ。コレがタイムマシンっスか。 某猫型ロボットが使っているタイプとは別モノっスね |
ここあ | 見た感じ、この前拾った機械たちを 無理やり接続しているだけって感じだにゃ〜 |
依子 | ちょっとぉ! イコにも見せてよ! 前に群がってたら見えないでしょーが! |
エリザ | ふふん、焦らなくてもタイムマシンは逃げませんわ。 順番待ちの間、おやつでも食べて待ってなさい |
オムニス | な、なんだこのグロテスクな食べ物は? |
エリザ | コレは『ゲルバナ』ですわ。 タイムマシンを作る過程で生まれた副産物で、 コレのおかげで過去改変のヒントを得られましたのよ |
オムニス | これが過去改変のヒント? どういうことだ? |
エリザ | まず研究の最初期の頃、お腹が空いたからバナナを 温めて食べようと思いましたの |
オムニス | いや、なんで温めるんだよ |
蒼 | バナナはそのままでもエネルギー食として優秀だが、 温めることでより効果を発揮するんだ |
オムニス | お、おう……そうなのか |
エリザ | で、温める時にいちいち立ったり座ったりも 面倒だから、『電話レンジ(仮)』を作ったんですの |
これが本当にすごい発明ですのよ? 使用したい秒数をレンジに繋げたスマホに送れば、 セットしておいた食べ物を遠隔で温められますの! | |
花織 | でも、あらかじめ食べ物をセットしに行くのなら その時に温めボタンを押せばいいんじゃないの? |
エリザ | っ!? なるほど、そういう考え方もありますわね |
陽彩 | で? そのヘンテコな発明が どうやって『ゲルバナ』に繋がってくるんだ |
エリザ | えーと……あるとき、バナナを房から切り離して 一本だけ電話レンジで温めていましたの |
そしたら……消えたんですわ。 電話レンジの中から、バナナが忽然と | |
一同 | !? |
エリザ | そして……ふと振り返ると、切り離したはずのバナナが 房に戻っていましたの。その1本だけゲル化したまま |
陽彩 | ば、バカな! そんなことがあるわけ…… |
エリザ | ワタクシチャンサマも、さすがに何かの見間違え、 もしくは夢かと思いましたわ。でも事実は事実ですの |
そのあと何度も再現実験を試みつつ、お腹が空いたので 『ジューシーからあげNo.1』を電話レンジで 温めていましたの | |
ですが、温め終わったと思い 電話レンジの扉を開いた瞬間…… 強烈な放電現象が起きたんですの | |
そして……実は放電現象と同時に、電話レンジと 接続していたワタクシチャンサマのスマホに、 いろはからメールが届いていましたの | |
ほら、これ | |
オムニス | えっと……『エリザちゃん、今日もラボ?』か。 いたって普通のメールだな |
エリザ | ええ。ですが、日付を見てくださいませ |
オムニス | 受信日時は……5日前だな |
いろは | え? それは変だよ。だって、送ったのは昨日だもん |
エリザ | 私もメールを見ておかしいと気づきましたわ。 なぜなら、ラボを買ったのは3日前ですもの |
陽彩 | なんだと? 辻褄が合わないじゃないか! まるで、いろはのメールが過去に転送された としか…… |
エリザ | ゲル状になりながらも元の房に戻ったバナナ。 そしてラボの購入よりも前に送られていた、 いろはからのメール…… |
ワタクシチャンサマは、すぐに確信しましたわ。 電話レンジは一種のタイムマシンとして 機能していると! | |
いろは | す、すごーい! エリザちゃんすごいよ! まさに世紀の大発明だね! |
はなび | いや、発明したというよりは偶然発見した って感じだろ |
エリザ | あら、偶然の発見が 歴史的な発明へつながるのはよくあることですわ |
それに、当初はこの電話レンジへ接続したスマホにしか 過去へのメールは送れませんでしたが…… | |
ワタクシチャンサマが改良に改良を重ねた結果、 この『電話レンジ2nd Edition Ver1.03』は―― | |
任意の相手に、過去メールを 送れるようになったんですのよ! | |
もちろん、過去の自分へメールを送って 失敗などを回避することも 理論上は可能ですわ! | |
いろは | すごいすごい! やっぱりエリザちゃんは天才少女だったんだね! |
エリザ | ふふん。おだてたって何も出ませんわよ? ですが、このタイムマシンを使うことを 許可してあげましょう。存分に使うがいいですわ |
いろは | やったー! それじゃあ、そうだなぁ……昨日買えなかった 限定のドーナツが買えるようにしたいなー |
夕方に行ったら売り切れてたから、 『お昼から並ぶように』って過去のあたしに 教えてあげよっかな | |
エリザ | わかりましたわ。 では全角文字で18文字、半角文字で36文字以内で その内容を送ってくださいませ |
いろは | えっと…… 『ドーナツお昼に並ばないと売り切れる』っと |
よーし! それじゃあ、そうしーん! | |
オムニス&陽彩 | ――っ |
なんだ、今の、感覚は……? いや、そんなことよりも……! | |
セイラ | ふたりとも、ボーッとしてどうしたの? |
いろは | ねぇねぇ、ふたりとも早く食べようよ! この『限定ドーナツ』、とっても美味しいよ! お昼から並んで、ギリギリ買えたんだから |
オムニス | か、変わっている……本当に過去が改変された! |
いろは | へ? どういうこと? |
オムニス | どういうことって、お前が過去を変えたんだろう? 限定ドーナツが買えなかったら エリザのタイムマシンで過去を改変して…… |
いろは | ? |
オムニス | お、覚えてないのか? |
陽彩 | オムニス。いろははウソを言っているようには 見えない。どうやら過去改変を覚えているのは、 ぼくたちだけのようだ |
ぼくは……一度悪魔に喰われたことが原因だろう。 みんなとの違いを考えると、それぐらいしか 思い浮かばない | |
マリアンヌ | ほほう? つまり、アレってことっスね |
仮に今の話を信じるとしたら…… ふたりは改変される前の記憶を 保持できる能力があるってことっスか | |
オムニス | お前、やけに呑み込みが早いな |
マリアンヌ | 昔、そういうゲームをやったことがあるんス |
エリザ | よくわかりませんが、陽彩がワタクシチャンサマの タイムマシンのすごさを思い知ったようですわね |
花織 | はいはいはーい! だったらウチも、試したいことがあるんだけど! |
ウチ、4日前にスマホを機種変したんだけど…… その翌日に、アイポン11が発売されちゃったから そっちにしたいの! | |
ここあ | んにゃ? 今のスマホじゃダメなのかい? |
花織 | だって アイポン11はカメラが20個も付いてるんですよ!? 絶対、そっちの方がいいはずです! |
丹 | それじゃあ私もタイムマシンを使っていいかしら? 元気な子供が産めるよう、野菜も多めに食べなさい。 って過去の私に送ってみたいの |
オムニス | なっ!? 丹……いつの間に子どもなんか! |
丹 | いえ、別に出産の予定はないのよ? ただ、いつ何があるかはわからないし、 常日頃から健康には気をつけないとって思ったの |
それに、最近太り気味だったし、 お肉ばっかりもなーって | |
マリアンヌ | だったら僕も過去改変したいっス! |
実はこの前、リアルな方のガチャガチャで 欲しいキャラがいたのに目の前で小学生男子に 引き当てられちゃったんっス | |
だから、その小学生よりも早く ガチャガチャを回せって伝えてあげたいっス | |
エリザ | ふふん、いいでしょう。 機種変も妊活もガチャ運も、全ては ワタクシチャンサマの思いのままですわ! |
そう高らかに宣言したエリザ。 彼女が再びメールをタイムマシンへ送った次の瞬間。 俺と陽彩はまた、あの目眩に襲われたのだった。 |
エリザのタイムマシンは、 彼女の言うとおり世紀の大発明だった。 | |
花織は変えたがっていたアイポン11に機種変できたし、 丹はダイエットに成功していた。 | |
マリアンヌも欲しがっていたガチャガチャのフィギュア (『メタルうーぱ』と言うそうだ)をゲットした。 だが――その日を境に何故か 秋葉原では悪魔の出現が増えていた。 | |
CAUTION! CAUTION! CAUTION! | |
---|---|
マリアンヌ | うげっ!? またっスか!? |
りり | マジ、今日悪魔多すぎじゃね? さっきも出たばっかなんだけど! |
はなび | 今日だけで5回目か……いったいどんな確率だ? |
丹 | ここのところ多いわね……秋葉原に出る悪魔。 代わりに、渋谷の方は落ち着いてるけれど…… |
蒼 | うだうだ言ってても仕方ない、みんな急ごう |
セイラ | 蒼、やっぱり私たちも手伝うわ。 人手は多い方が…… |
蒼 | いや、さっきは出撃してもらったんだ。 今回はオレたちだけで何とかするさ。 ゆっくり休んでいてくれ |
花織 | それにしても……丹さんの言うとおり、 ここのところ多すぎじゃない? 秋葉原に現れる悪魔 |
ここあ | 最初に秋葉原に悪魔が出た時は、 こんなことなかったと思うんだけどにゃ〜 |
いろは | うーん……なにが原因なんだろう |
エリザ | ほらほら、みなさん。今は考えても仕方ありませんわ。 さっきの戦いで体力も減ってることでしょうし、 まずはコレでも食べて陰気を養うべきですわ |
陽彩 | それ言うなら『英気を養う』だ。 陰気を養ってどうする |
依子 | って、またゲルバナー!? コレ全然味しないから、イコ食べたくないんだけど!! |
エリザ | 実験の過程で大量に出来てしまったんですもの。 タイムマシンの使用料だと思って、責任を持って 食べてくださいませ |
あら? メールですわ。 差出人は……ん? | |
オムニス | どうした、エリザ。何かあったのか? |
エリザ | いえ、それが……妙なメールが届いたんですの。 ワタクシチャンサマから、数日前の日付で |
陽彩 | 過去からのメール? どんな内容が書いてあるんだ |
エリザ | えーと……『変動率0.733277%』とだけ 書かれていますわね |
いろは | 変動率? 何それ? |
陽彩 | ……価格変動率、平均変動率、予測変動率。 色んな種類の変動率があるが……その一文だけじゃ 何を表しているのか、サッパリだな |
しかし、過去からということは タイムマシンに何か関係して―― | |
一同 | っ!! |
陽彩 | な、なんだ? ぼくの携帯に見知らぬ番号から着信が…… |
花織 | ど、どうする? なんかタイミングよすぎて怖いんだけど…… |
セイラ | で、出るなら出るで早くしないと切れちゃうわよ? |
陽彩 | ……とりあえず、出てみよう |
頭のよさそうな少女 | もしも――ん? これは……テレビ電話!? |
み、見て! 画面に何か映し出されてるみたい! | |
ハロー? | |
オムニス | な、なんだ? いきなり誰なんだ? |
おっとりした少女 | あー! すごーい! うーぱみたいな猫ちゃんが喋ってるー♪ |
太った男 | こんなにたくさんの女の子がいるってことは…… エロゲですねわかります |
頭のよさそうな少女 | 黙れ橋田 |
……これ、テレビ電話かしら。 どういう原理で繋がってるかは不明だけど | |
オムニス | こ、こいつらは一体…… |
厨二病な男 | フゥーハハハ |
ヤツらめ……そういうことか。すでに俺たちの居場所は 掴んでいるとでも言いたいんだな? | |
最後に現れた、仰々しい物言いの男。 彼は携帯電話を取り出すと、素早く自分の耳へと当てた。 | |
厨二病な男 | 俺だ。ついにヤツらに居場所を特定されてしまった |
……ああ、分かってる。 コード856を発動する時が来たようだ | |
生きていたらまた会おう。エル・プサイ・コングルゥ | |
突如、陽彩のスマホに映し出された謎の男女4人。 彼らとの出会いが、文字通り 『時を巡る』壮大な戦いの始まりになるとは…… この場にいる誰もが予想していなかった。 |
岡部倫太郎 | おい、そこの貴様。俺たちが見えているか? |
……なぜなにも答えない。貴様に聞いているんだぞ? モニタのそっち側にいる、貴様にだ | |
ふん。間抜け面をしおって。つまらんヤツだ。 貴様からだと、俺たちはテレビのモニタの中に いるように見えるだろうな | |
ククク、だがそれは大きな間違いだ | |
モニタの中にいるのは貴様なのだよ。 貴様が現実だと思っている世界は、実はすべて虚構。 もちろん貴様自身もな | |
真の現実。それはこちら側に―― | |
椎名まゆり | ねーねー、オカリンオカリン。 さっきからゲームに向かって何喋ってるのー? |
牧瀬紅莉栖 | 厨二病乙 |
岡部倫太郎 | 厨二病ではない! ゲームだゲーム! 育成ゲーム! |
このゲーム『アルパカマン2』は付属のマイクに 話しかけることでゲーム上のキャラが学習および 成長をするのだ。お前も知っているだろう、助手 | |
牧瀬紅莉栖 | 助手じゃない! |
橋田至 | でもさー、今どきアルパカマンをプレイとか…… 敢えて言おう、暇であると! |
岡部倫太郎 | ……仕方ないだろう、実際暇なんだから。 こうやって時間をつぶすより他ないじゃないか |
椎名まゆり | そうだねー。いま外に出るのは危険だし、 ここでジッとしてるのがいいと思うのです |
橋田至 | まぁ、昨日から立て続けに秋葉原で事故が 続いてるしね。地盤沈下に謎の火災…… |
椎名まゆり | メイクイーン+ニャン2の近くでも 突然地面がえぐれちゃったし |
お店にまでとんでもない衝撃が伝わってきて、 とっても怖かったのです | |
牧瀬紅莉栖 | ネットによると、まだ色んな災害が拡大中のようね。 事件の線も含めて調査中だって |
でも、なぜ秋葉原でだけこんな局所的に…… | |
椎名まゆり | わっ! ビックリしたー |
岡部倫太郎 | すまん、メールが届いたようだ |
ん? | |
牧瀬紅莉栖 | どうしたのよ、岡部 |
岡部倫太郎 | いや……知らないアドレスからだ。 まさか、機関の奴らが――! |
橋田至 | あるあ……ねーよ。開いておKっしょ |
岡部倫太郎 | ふん、情緒のないヤツめ |
ん? なんだこの内容は…… 『ワタクシチャン様の発明を見よ』……だと? | |
椎名まゆり | わわー!? |
牧瀬紅莉栖 | っ! 何が起きて…… |
岡部倫太郎 | っく……全員、大丈夫か!? |
椎名まゆり | だ、大丈夫だけど……眩しくて見てられな―― |
頭のよさそうな少女 | ハロー? |
オムニス | な、なんだ? いきなり誰なんだ? |
突如繋がった謎のテレビ電話。 そこには見知らぬ男女が4人映っていた。 | |
いろは | ねぇねぇ、この人たち誰? 陽彩ちゃんの知り合い? |
陽彩 | いや……まったく見覚えがない |
オムニス | おい! お前たちは誰なんだ! いったい、なぜ陽彩の番号を知ってたんだよ! |
厨二病の男 | 誰だと? フッ、白々しい。その程度の演技力で、 この鳳凰院凶真を出し抜けるとでも思ったか? 貴様らの計画はすべてわかっている! |
オムニス | なっ!? 別に俺らは怪しい者じゃないぞ! むしろいきなり電話をかけてきたお前らの方が 怪しいだろう! |
厨二病の男 | さーて、どうだかな。貴様らこそ、俺の携帯に 例のメールを送って来たじゃないか。 怪しいのはそちらの方だろう |
オムニス | なんだと!? そんなに言うなら証拠を―― |
太った男 | はい、はい! ストップストップ! 落ち着けって! |
いろは | ふたりとも、喧嘩はよくないよー |
おっとりした少女 | トゥットゥルー♪ オカリンも猫ちゃんうーぱさんも 落ち着いたほうがいいと思うなー |
オムニス&厨二病の男 | ぐぬぬ…… |
頭のよさそうな少女 | 一旦、私たちで状況を整理しましょう。 お互い、なぜ交信ができているかの過程を 割り出すべきよ |
陽彩 | ふむ。ぼくもそれに賛成だ |
牧瀬紅莉栖 | それでえっと……今そっちにいるのが いろは、花織、ここあ、セイラ |
椎名まゆり | 陽彩ちゃん、エリザちゃん、イコちゃんに 猫ちゃんうーぱさんだね |
オムニス | 違う! オムニスだと言っただろう! |
いろは | そっちにいるのが、ラボメンのみんなだね! |
紅莉栖ちゃん、ダルくん、まゆりちゃん、 あと、オカリン! | |
岡部倫太郎 | オカリンではない! 鳳凰院凶真と呼べと言っただろう! |
椎名まゆり | まゆしぃのことは、まゆしぃと呼んでほしいのです。 トゥットゥルー♪ |
いろは | わかった! まゆしぃちゃんだね! トゥットゥルー♪ |
牧瀬紅莉栖 | ……とりあえず、自己紹介も終わったことだし、 改めて状況をまとめましょう |
まず……あなたたちは『魔法少女』として 悪魔という存在と戦っているのよね? | |
陽彩 | ああ。にわかには信じられないかもしれないが事実だ |
橋田至 | うひょおおお! リアル魔法少女キター! 僕はイコたんが推しだお |
依子 | えへへ、ありがとー☆彡 イコのことずーっと応援してくれたら嬉しいな♪ |
牧瀬紅莉栖 | こほんっ。話を元に戻すわよ? |
まぁ……この際だから、あなたたちが 魔法少女かどうかというのは置いておくわ | |
私たちの存在もあなたたちからすれば 突拍子もない話だろうし、お互い様ってところね | |
陽彩 | タイムリープマシンを作成した学生集団……か。 それが本当だとしたら、世界がひっくり返る話だな |
牧瀬紅莉栖 | ええ。だけど、いま重要なのはそこじゃない |
陽彩 | なぜぼくたちの世界と君たちの世界が テレビ電話でつながっているか、だな |
牧瀬紅莉栖 | ……これはあくまで仮説なんだけど、 まずあなたたちの作ったタイムマシンが―― |
CAUTION! CAUTION! CAUTION! CAUTION! | |
椎名まゆり | わ!? いまの音はなに!? |
ここあ | 今のは悪魔が出現したという通知にゃ〜。 場所は……ありゃ、また秋葉原だって |
オムニス | お、おい! お前たち大丈夫か!? |
岡部倫太郎 | ああ……何とかな。ラボの窓ガラスが いくつか割れたが、幸い怪我人はいない |
オムニス | いったい、何があったんだ? |
牧瀬紅莉栖 | おそらく爆発事故よ。ここ最近、『こちら側』 の秋葉原ではこの手の事故が頻発しているの |
セイラ | 悪魔の出現とほぼ同時に爆発事故…… |
陽彩 | ふむ……偶然の一致とみるには、 あまりにも出来すぎた状況だな |
牧瀬紅莉栖 | これは、さっき言いかけた仮説なんだけど…… |
あなたたちはユラギの中で『ブラウン管』などを拾い、 なおかつ『電話レンジと同じ機能を持つ機械』を 発明してしまった…… | |
そして過去改変を繰り返した結果、 世界線が変動して、今この状況を作り出した と考えられるわ | |
陽彩 | ……この変動率の世界は そちらの世界と『何らかの繋がり』が生まれた世界 ということか |
エリザ | デュナミスフィアでドレスを引っ張ってくる原理と 似ているものかもしれませんわね |
陽彩 | ああ。とにかく、こちらの世界での悪魔出現が そちら側での局所的な事故を引き起こしている 可能性がある、ということだな? |
牧瀬紅莉栖 | ええ。あくまで仮説にすぎないけどね |
DANGER! DANGER! DANGER! DANGER! DANGER! | |
セイラ | ま、またデュナミスフィアに通知が! しかも……今度は大量の悪魔が秋葉原に! |
橋田至 | ッ……揺れ、さっきよりも激しくなってね? |
牧瀬紅莉栖 | くっ……このままじゃラボがもたないわ。 お願い、あなたたちの力で悪魔を退けて! |
花織 | ねぇねぇ陽彩ちゃん……本当に信じるの? |
だって、こんなこと今までなかったじゃない。 別の世界とリンクするとか……。 なんか壮大なドッキリなんじゃないの? | |
オムニス | いや…… ドッキリなんかじゃないさ。充分、ありえる話だ |
いろは | 行こう、みんな! 秋葉原とラボのみんなを救うために戦おう! |
花織 | はぁ……はぁ……倒しても倒してもキリがないね |
いろは | うん…… こんなにたくさんの悪魔、今までみたこと―― |
陽彩 | くっ……このままじゃ囲まれてしまう! みんな、一度エリザのラボに撤退するんだ! |
魔法少女たち | うん! |
オムニス | い、急げエリザ! 早くしないと退路が閉ざされるぞ! |
エリザ | わ、わかってますわ! でも体力を消耗して…… |
くっ!? 間に合わな―― | |
陽彩 | ふたりとも、無事か? |
エリザ | え、ええ。感謝しますわ、陽彩 |
陽彩 | 礼はいい。 それより早く行け。ここはぼくが殿を務める |
オムニス | なっ!? 待てよ! お前だけ置いていくわけには…… |
陽彩 | 心配ない。ぼくは指揮を執っていたから、 ある程度体力を温存してる。 今、この中で一番戦えるのはぼくだ |
エリザ | あなた、本気で言ってるんですの? |
陽彩 | ああ。むろん本気だ |
エリザ | ………… |
陽彩 | さぁ、時間がない。退路が閉ざされる前に早く! |
オムニス | くっ……わかった。行こうエリザ |
エリザ | 陽彩、ここは貸しにしておいてあげますわ。 だから……だから、必ず追いつきなさい! いいですわね!? |
陽彩 | ふんっ、お前がぼくに貸してどうする。 普通、ここは逆だろう |
さて、あとは可能性に賭けるしかないな。 自称天才の力……今回ばかりは信じてるぞ、エリザ | |
オムニス | はぁはぁ……どうにか悪魔の包囲を切り抜けたな |
あとは陽彩を呼んで―― | |
そう言って振り返った瞬間……俺は、言葉を失った。 無数の悪魔たちが、 さっきまで陽彩のいた場所で 幾重にも重なりあい蠢き合っている。 | |
陽彩を呼ぶ? どうやって? あの大量の悪魔の中から、どうやって彼女を…… | |
オムニス | くそっ、待ってろ! 今助けに! |
エリザ | 行ってはダメ! |
陽彩は元々……自分を犠牲にするつもりでしたわ。 あの子が、自分の状況を見誤るはずありませんもの | |
行きますわよ……オムニス。 陽彩の思いを、無駄にしないでくださいませ | |
そう言ったエリザの唇は 血で赤く染まっていた――。 | |
いろは | そ、そんな……陽彩ちゃんが…… |
エリザのラボに戻り、今起きたことをみんなに報告した。 魔法少女たちも、ラボメンすらも言葉を失っている。 | |
オムニス | くそっ……! |
ここで自分の能力を…… つまり「他の可能性世界を引き寄せる力」を 使おうかとも思った。 だが、それでは根本的な解決にはならない。 この世界の陽彩を救うことはできない。 | |
岡部倫太郎 | ……助手よ。少しいいか? |
ヤツらに……伝えるべきじゃないか? 俺たちの知識を | |
牧瀬紅莉栖 | ……そうね。私も今、同じことを考えていた。 それに元を辿れば私が彼女たちに助けを 求めたせいでもあるしね |
牧瀬紅莉栖 | ちょっといいかしら? |
陽彩のことは本当に残念に思う。 ただ……こんなことを言うと冷たいと 思われるかもしれないけど、この結末は変えられる | |
オムニス | な、なにっ!? それはどうすればいいんだ!? |
牧瀬紅莉栖 | 原因を取り除けばいいのよ。こちらの世界と そちらの世界がリンクしたことによって今の結果に なったのなら、リンクしないよう過去を変えればいい |
花織 | そっか……エリザの作ったタイムマシンを使えば! |
エリザ | いいえ、それでは『原因』自体を変えることは できませんわ。メールを読まない可能性もありますし、 読んでも従わない可能性もありますもの |
牧瀬紅莉栖 | そのとおりよ。 だから、これからあなたたちには―― タイムリープマシンを作ってもらう |
マリアンヌ | タイムリープマシン!? そ、そんなモノ実在するわけ…… |
エリザ | もとより……最初からそのつもりですわ! |
マリアンヌ | なっ!? 本気で言ってるんスか? タイムリープって…… 過去にメールを送るレベルの代物じゃ……! |
エリザ | ええ、わかってますわ。 でも、覚悟していますわ |
牧瀬紅莉栖 | 決まりね。私たちの持っている タイムリープマシンの知識をあなたに共有する |
エリザ | ええ……お願いしますわ |
みなさん、ひとつだけお願いがありますわ。 しばらくの間、ワタクシチャン様と ラボを守ってくださいませ | |
陽彩を救うために、どうか! | |
いろは | もちろんだよ、エリザちゃん。 必ず守るって約束する。 だから必ず完成させてね、タイムリープマシン! |
花織 | 見て! 窓の外!! 悪魔たちがそこまで来てる! |
いろは | 行こう、みんな! エリザちゃんとラボを守るために! |
蒼 | はぁはぁ……くそっ、キリがないな |
依子 | いくら倒しても、おかわりがこんなに来ると さすがのイコちゃんでもちょっとしんどいかな |
丹 | もう長いこと戦ってるけど…… タイムリープマシンの完成はまだなのかしら |
はなび | このままだと……こちらが全滅する確率の方が上だな |
いろは | 諦めちゃダメだよ! エリザちゃんが完成させるって言ったんだもん! あたしたちは信じて戦い続けなきゃ! |
エリザ | で……出来ましたわー! |
牧瀬紅莉栖 | すごい、エリザ。あなた、本当に天才だったのね |
私たちのサポートがあったとは言え、 これだけの時間でタイムリープマシンを完成させる なんて | |
岡部倫太郎 | お前たち、 今は慣れ合っている場合ではないのではないか? |
オムニス | ああ、そのとおりだな。 さっそくタイムリープマシンを試そう。 1秒でも早くしないと、いろはたちが危ない |
エリザ | ……本当にいいんですわね、オムニス。 あなた自ら実験台になるなんて…… |
オムニス | もちろんだ。 誰一人として危険な目に あわせるわけにはいかないからな |
それに……天才少女の作った装置だろ? だとしたら心配なんかいらないさ。 俺は大船に乗った気持ちでいるよ | |
エリザ | オムニス…… |
わかりましたわ。ではヘッドギアをセットして―― | |
CAUTION! CAUTION! CAUTION! CAUTION! | |
エリザが用意したヘッドギアに挟まるように 身体をねじ込ませる。 こういうとき、物体に触れられないというのは めんどくさいものだ。 | |
オムニス | くっ……まずいぞエリザ! 悪魔たちがもう近くに! |
エリザ | わ、わかってますわ! あとは設定して……! |
起動できましたわ! 予定では48時間前にタイムリープできますが…… | |
まだ、なにが起こるかはワタクシにもわかりませんわ | |
どうか、無事でいてくださいませ。 そして……陽彩を頼みましたわよ | |
牧瀬紅莉栖 | オムニス。今のところ、どの出来事が 2つの世界をリンクさせたのかはハッキリしていない |
もしかすると、1つ1つの行動が 複雑に絡み合って招いた結果なのかもしれない | |
それでも、きっかけは必ずどこかにあるはずよ。 始まりとなった原因が | |
オムニス | ああ、わかってる。その原因とやらを見つけ出して、 必ず阻止してみせるさ |
陽彩……待ってろ。必ず俺が助け―― | |
オムニス | ――ッ |
ここは…… | |
CAUTION! CAUTION! CAUTION! | |
マリアンヌ | うげっ!? またっスか!? |
りり | マジ、今日悪魔多すぎじゃね? さっきも出たばっかなんだけど! |
はなび | 今日だけで5回目か……いったいどんな確率だ? |
この光景は…… たしか、ラボメンと通信がつながる直前の…… | |
オムニス | ッ! だとしたら、ココじゃ間に合わないじゃないか! |
花織 | キャッ!? い、いきなりなに? 大きな声ださないでよー |
予定では48時間前に跳んで、 事件の原因を発見してソレを阻止する予定だった。 だが……タイムリープマシンに不具合があったのか、 ここはせいぜい12時間前の世界だ。 | |
今この状況では、すでに悪魔の出現は始まっている。 もっと前の時間に跳ばないと、 原因を取り除くどころか……陽彩を救うこともできない。 | |
オムニス | エリザ、すぐに準備してくれ! もう一回タイムリープマシンを起動して…… |
エリザ | た、タイムリープマシン? いったい、何を言ってますの? |
ワタクシチャンサマが発明したのは、 過去にメールを送る装置ですわよ? | |
そんな非現実的な装置、 いくら天才のワタクシチャンサマでも 作ることはできませんわ | |
エリザの発言を聞いた瞬間、俺は重大なミスに気付いた。 彼女の言うとおりだ。まだタイムリープマシンは作れない。 ラボメンに知識を共有してもらわない限りは…… | |
そして……その知識を共有してもらう頃には、 秋葉原に大量の悪魔が現れて陽彩は…… | |
オムニス | み、みんな聞いてくれ! これから秋葉原に大量の悪魔が現れる! |
俺はそれを防ぐために未来からやって来たんだ! みんなの力を貸してほしい! | |
りり | ちょっ……いきなり何言ってんのオムっち。 未来から来たとか、マジ意味わかんないんだけど |
蒼 | 悪いがオムニス、 今は冗談に付き合っている場合じゃないんだ。 あとにしてくれないか? |
オムニス | ――ッ! |
蒼、丹、りり、マリアンヌ、はなびは 『さっきと同様』に出現した悪魔の迎撃に 向かってしまった。 | |
オムニス | くそっ……またなのか!? 俺は、なんのためにここへ…… |
陽彩 | ……オムニス。ちょっとこっちに来い |
オムニス | え? |
陽彩 | いいから来い。 おそらくぼくなら、きみの状況を理解してやれる |
陽彩 | なるほど。ぼくは未来で大量の悪魔に喰われ、 きみはそれを阻止するためにタイムリープを 行ったわけか |
オムニス | 信じて……くれるのか? |
陽彩 | ああ。エリザの作ったタイムマシンで過去を改変しても ぼくは記憶が上書きされないようだからな |
どうにかきみの話も受け入れることができる。 無論、信じがたい話ではあるが…… | |
……きみはこの手のウソはつかない。そうだろ? | |
オムニス | 陽彩…… |
陽彩 | さて、それじゃあさっそく対策を考えよう。 まずは―― |
エリザ | あ、いたいた |
ふたりとも、緊急事態ですわよ! | |
突然、知らない人たちから テレビ電話がかかってきましたの! 早く来てくださいませ! | |
俺は言葉を失った。 世界は、また同じ展開を辿ろうとしている。 このままじゃ陽彩は……陽彩は! |
橋田至 | こんなにたくさん女の子がいるってことは…… エロゲですねわかります |
牧瀬紅莉栖 | 黙れ橋田 |
オムニス | くそっ、遅かったか! もうラボメンと繋がって…… |
椎名まゆり | あー! 見て見てオカリン! うーぱみたいな猫ちゃんが出てきたよー! |
岡部倫太郎 | いや、どう見てもうーぱではないだろう。よく見ろ! |
牧瀬紅莉栖 | それよりも……『遅かった』ってどういうこと? |
私たちのことも知ってるみたいだし、まるで こうなることを予見していたような…… | |
オムニス | あ、ああ…… 実は信じてもらえないかもしれないが―― |
岡部倫太郎 | ほほぅ? つまり貴様は、 すでに俺たちと接触しているというわけだな? |
牧瀬紅莉栖 | そして大量の悪魔から陽彩を助けるために タイムリープマシンを開発して過去へ跳んだ、 というわけね |
花織 | ねぇ、オムちゃん……その話、本気で言ってるの? タイムリープとか未来とか、さすがにちょっと 信じられないんだけど…… |
岡部倫太郎 | いや、そいつの話は本当だろう。 ならば、これからしばらくもしないうちに―― |
CAUTION! CAUTION! CAUTION! CAUTION! | |
---|---|
依子 | な、なんじゃあ!? また悪魔が出たんか!? |
セイラ | でも、ちょっと待って! この大量の反応は……!! |
ここあ | オムにゃんの言ってたこと、本当だったんだ!? |
いろは | ……みんな、行こう! オムオムの言っていた未来を絶対に阻止しないと! |
花織 | うん。わかった! |
オムニス | ま、待ってくれみんな! 俺も一緒に―― |
陽彩 | 待て、オムニス |
どうせこのまま行っても、 同じ未来を辿るだけだろう? | |
だったら……エリザ、わかってるな? | |
エリザ | ええ、言われなくても |
未来のワタクシチャンサマに作れたんですもの。 タイムリープマシンの1つや2つ、 すぐに作ってさしあげますわ |
エリザ | で……出来ましたわー! |
牧瀬紅莉栖 | すごい、エリザ。あなた、本当に天才だったのね |
私たちのサポートがあったとは言え、 これだけの時間でタイムリープマシンを完成させる なんて | |
ラボメン協力のもとタイムリープマシンが完成した。 だが、ひとつ大きな問題が残っていた。 | |
陽彩 | それで……ここから先はどうする? オムニスの話によれば、このタイムリープマシンは 12時間前にしか戻れないのだろう? |
牧瀬紅莉栖 | たしかに、今のところ作り方に 間違いはなかったと思うけど…… 急造したものだし可能性はないとも言い切れないわね |
岡部倫太郎 | ここまでは、タイムリープ前と同じ過程を辿っている。 もしまた同じように12時間前に戻ったとしても…… |
橋田至 | 同じことの繰り返しだお。無限ループって怖くね? |
牧瀬紅莉栖 | この事件を阻止…… つまり、2つの世界のリンクを防ぐには さらに時間をさかのぼる必要があるわね |
オムニス | くそっ……もっと時間があれば、完ぺきな タイムリープマシンを作れたんだろうけど…… |
なんとなく口をついて出た、諦めにも近い言葉。 だが、この言葉を聞いた瞬間――エリザがハッとした。 | |
エリザ | ッ!! そ、それですわ! |
牧瀬紅莉栖 | どうしたの、エリザ? まさか、何か思いついたの!? |
エリザ | ふふん、ワタクシチャンサマとしたことが ウットリしていましたわ! |
陽彩 | それを言うならウッカリだろ。見惚れてどうする |
エリザ | オムニス。あなたは12時間前に跳んだあと、 すぐに過去のワタクシチャンサマにこの伝言を つたえてくださいませ |
『変動率0.733277%』と | |
そして! その世界の可能性をドレスとして 呼び出しなさいと言ってくださいませ | |
オムニス | よ、よくわからないが…… それを伝えれば事態が好転するんだな? |
エリザ | ええ。過去であろうが未来であろうが、 ワタクシチャンサマは天才ですもの。 それで全てを悟りますわ |
陽彩 | オムニス! さっそくヘッドギアを付けるぞ! |
オムニス | あ、ああ。わかっ―― |
CAUTION! CAUTION! CAUTION! CAUTION! | |
---|---|
陽彩 | くっ……まずいぞ! 近くに悪魔が……! |
椎名まゆり | わわー!? |
牧瀬紅莉栖 | まずい……こっちも近くで大規模な爆発が…… |
みんな、窓から離れて! 何が起こるかわからないわ! | |
オムニス | だ、大丈夫なのか!? みんな怪我は…… |
岡部倫太郎 | こっちの心配をしている場合じゃないだろう! |
いいからお前は、タイムリープの準備を進めるんだ! | |
陽彩 | オムニス! 装置の起動は完了した! 早くヘッドギアを! |
オムニス | わ、わかった。いま行く! |
岡部倫太郎 | おい、猫ちゃんうーぱ! |
オムニス | だ、誰が猫ちゃんうーぱだ! |
岡部倫太郎 | 最後にひとつだけ……タイムリープの先駆者として、 お前にアドバイスをやろう |
オムニス | ……厨二病発言なら、もう間に合ってるぞ |
岡部倫太郎 | いや、大事な話だ。よく聞け |
諦めるな | |
たとえ絶望的な状況になろうと、 難しい選択に迷おうと……絶対に諦めるな。 何だったら仲間を頼ったっていい | |
そうすれば、いつかきっと…… 運命石の扉は開くだろう | |
オムニス | ふん、なんだよ。やっぱり厨二病発言じゃねーか |
でも……悔しいけど、俺もお前と同じ意見だよ。 諦めないことに関しちゃ、もう何度も体験済み だからな | |
岡部倫太郎 | ほう? つまりお前もリーディング・シュタイナー、 すなわち運命探知の魔眼を持つ苦労はわかっている というわけか |
オムニス | 例えどんな絶望が襲って来ても、 陽彩とお前たちの世界を救ってみせるさ |
岡部倫太郎 | フッ……猫ちゃんうーぱの分際で、言うではないか |
オムニス | だから、猫ちゃんうーぱ言うな! この厨二病! |
岡部倫太郎 | さぁ、行くがいいオムニス! 『オペレーション・デリング』開始だ! |
オムニス | いや、作戦名勝手に決めるなよ! |
橋田至 | 厨二病乙! |
エリザ | 任せましたわよ……オムニス。 次こそ、世界を救ってくださいませ |
オムニス | ああ。 それじゃあみんな、行ってくる |
??? | オムオム? オムオム! |
??? | ぼーっとすんなって、オムっち! |
オムニス | いったー!? |
花織 | あ、やっと気づいた |
セイラ | どうしたの、オムニス? 急に黙り込んじゃって…… |
オムニス | ッ!! みんないる! |
蒼 | 何を言ってるんだ? ずっとみんないたじゃないか |
はなび | 変なヤツだな? 起きたまま夢でも見ていたのか? |
オムニス | いや、そういうわけじゃ―― |
CAUTION! CAUTION! CAUTION! CAUTION! | |
---|---|
マリアンヌ | うげっ!? またっスか!? |
りり | マジ、今日悪魔多すぎじゃね? さっきも出たばっかなんだけど! |
はなび | 今日だけで5回目か……いったいどんな確率だ? |
どうやら俺は、また同じ過去に戻ってきたようだ。 | |
丹 | ここのところ多いわね……秋葉原に出る悪魔 |
蒼 | うだうだ言ってても仕方ない、みんな急ご―― |
オムニス | いや、待ってくれ |
出撃の前に聞いて欲しいことがある。大事な話だ | |
俺は今まで起きたことを伝えた。 みんなは、やはり信じられないといった反応だった。 しかし――それでも俺にはやるべきことがある。 | |
オムニス | エリザ。俺は、未来のお前から伝言を預かってきた |
エリザ | 未来のワタクシチャンサマから? いったい、なんですの? |
オムニス | 変動率0.733277% |
そして『その世界の可能性を ドレスとして呼び出せ』と言っていた | |
陽彩 | 変動率0.733277%だと? |
いろは | それって、 さっきエリザちゃんに届いたメールのことだよね? |
オムニス | エリザ、俺には伝言の意味がサッパリわからない。 未来のエリザは過去の自分に伝えれば、 必ずわかるはずだと言っていた |
頼む、エリザ。お前にこの世界の命運がかかって―― | |
エリザ | ふふふふ……… |
オムニス | え、エリザ? |
エリザ | あはははは! |
陽彩 | こ、壊れた!? やはりエリザには荷が重すぎて…… |
エリザ | いいえ、壊れてなどいませんわ。 過去、現在、そして未来。どの時間においても、 天才すぎて思わず笑ってしまっただけですわ |
オムニス | ということは! |
エリザ | ええ、当然ひらめきましたわ! |
ワタクシチャンサマの理論が正しければ、 ブラウン管テレビと電子レンジ、X68000と デュナミスフィアを組み合わせれば…… | |
こうしてはいられませんわ。 陽彩、手伝ってくださいませ! 一秒でも早く完成させますわよ! | |
陽彩 | わ、わかった。今回ばかりは従おう。 その代わり、詳しく内容を教えるんだぞ |
エリザ | おまたせしましたわね! 完成しましたわ! |
かっこよく意味のわからないポーズを取るエリザ。 衣装こそ先程までと大きく変わっていないが―― | |
オムニス | おい。髪、どうしたんだ? |
エリザ | ふふん! 呼び寄せた可能性の力が強いせいか、 ドレス以外にも影響がでたみたいですわね |
丹 | あら、金髪じゃないエリザも可愛いわね |
エリザ | ワタクシチャンサマとしては、 アイデンティティがなくなった気もしないでも ないですが |
もちろん、変わったのは髪型だけではありませんわ! | |
陽彩 | これは、ラボメンのいる世界線の可能性を 引っ張り出すことのできるドレス |
エリザ | このドレスを介して、オムニスのいう『牧瀬紅莉栖』 という少女の経験値がワタクシチャンサマに 流れ込んでくるというわけですわ |
オムニス | そ、そういうことか! じゃあ、この白衣があれば タイムリープマシンを作れるわけだな? |
エリザ | ええ。今までよりも早く、そして精度も高くね |
ですが、牧瀬紅莉栖とワタクシチャンサマの 頭脳だけでは、完成は不可能ですわ | |
いろは | え? こ、この電話ってもしかして…… |
花織 | オムちゃんの言ってた、 ラボメンって人たちからの電話じゃない……? |
セイラ | だとしたら、マズイいわね。 このままいくと同じ結末に…… |
エリザ | いいえ。そんなことにはさせませんわ! 陽彩、出てくださいませ! |
陽彩 | ああ、わかった。 オムニス、話は任せたぞ |
牧瀬紅莉栖 | み、見て! 画面に何か映し出されて―― |
オムニス | 紅莉栖! 事情は後で話す! だから俺たちの話を聞いてくれ! |
牧瀬紅莉栖 | ちょっ!? なんなのこの生き物……ていうか、 なんで私の名前を知ってるわけ!? |
オムニス | ラボメンのみんな。 俺は……未来からタイムリープしてきた! |
牧瀬紅莉栖 | !! |
オムニス | 頼む、ここにいるエリザにアドバイスをくれ。 世界を救うため……タイムリープマシンを 完成させたいんだ! |
マリアンヌ | デュフフ……ついにゲットしたっス! この輝く『メタルうーぱ』を! ここまで長かったっス〜! |
りり | そんなに珍しいフィギュアなん? それ |
マリアンヌ | そうっスよ。いやぁ〜、学校帰りに ダッシュで回しにいってよかったっス |
少し遅れたら小学生の男の子が先に回してて、 目の前で奪われるという屈辱に震えるところ だったっスもん | |
りり | 大人げないなぁ〜。ま、マリ夫っぽいけど |
エリザが再びタイムリープマシンを完成させ、俺は過去へと跳んだ。 そしてふと気づくと、そこは先ほどまでいたはずのエリザのラボだった。 | |
だが……ハッキリとわかることがある。 マリアンヌたちがしている会話は、数日前の内容。 つまり――タイムリープは成功したということだ。 | |
だが、喜んでばかりもいられない。 『原因』がなにかは分からないが…… だったら、すべての可能性を潰すまでだ! | |
オムニス | 陽彩。話があるんだ。ちょっといいか? 外で話したい |
陽彩 | ……話? ああ、構わないが…… ここじゃだめなのか? |
オムニス | 頼む |
陽彩 | ……わかった |
こちらの真剣さが伝わったのか、 陽彩は多少疑問に思いつつも、ついてきてくれた。 | |
ラボの外に呼び出した陽彩に、 今まで起きたことを話す。 | |
タイムリープのこと。 悪魔の大量発生。 そして――陽彩の死。 | |
陽彩 | ……にわかには信じられない話だが…… |
そう言いながらも、 陽彩は俺の話を信じてくれたらしい。 二つ返事で協力してくれることになった。 | |
陽彩 | とりあえず、 起こした過去改変を1つずつ元に戻していこう |
オムニス | ああ。過去改変は、 マリアンヌがほしかったフィギュアを手に入れたこと。 それに丹が野菜を多めに食べるようになったこと |
それと花織の機種変、 それにいろはの限定ドーナツだったな | |
陽彩 | ああ。改変した順番を逆走していくように、 マリアンヌの改変から戻そう |
花織 | へぇ〜〜。それじゃ、 結局限定ドーナツ買わなかったんだ |
いろは | そうなの。買えってメールが来た後に、『絶対 買っちゃダメ! 魔法少女じゃいられなくなる!』 なんてメールが来ちゃって |
なんか怖いから、買うのやめちゃった。 魔法少女でいたいしね! | |
陽彩の協力もあり、 過去改変は無事に『なかったこと』になった。 すべての過去改変につながる原因を阻止した以上、 これであの最悪の世界にはつながらないはずだ。 | |
新たな過去改変が起きないように、 陽彩と電話レンジを見張っているが、 どこかで処分したほうがいいかもしれない。 しかし、これでようやく―― | |
オムニス | (……これでようやく、陽彩の命が助か――) |
ッ!? | |
陽彩 | な、なんだ? ぼくの携帯に見知らぬ番号から着信が…… |
全身に悪寒が走った。このタイミングで 見知らぬ番号からの着信……嫌な予感しかしない。 | |
セイラ | 出るなら出るで 早くしないと切れちゃうわよ? |
陽彩 | そうだな……とりあえず、出てみよう |
陽彩がスマホの通話マークをスライドさせた。 そして……繋がった相手は―― | |
牧瀬紅莉栖 | ハロー……ん? これは……テレビ電話!? |
オムニス | そ、そんな…… |
再びラボメンのいる世界とリンクしてしまい、 俺は気が遠くなった。 | |
無理なのか? この運命を変えることは…… 陽彩の死は、回避することができないのか? | |
陽彩 | おい、オムニス |
さっきから、何を一人で抱え込んでいるんだ? | |
オムニス | ………… |
陽彩 | 話してみろ。何か、力になれるかもしれないぞ |
話してみろ――か……。 | |
岡部倫太郎 | ……絶対に諦めるな。 何だったら仲間を頼ったっていい |
くそっ!! 俺は何を弱気に……! | |
オムニス | ……悪かった、陽彩。すべて話すよ |
そして…… みんな――紅莉栖やラボメンのみんなも、俺の話を聞い て欲しい! | |
牧瀬紅莉栖 | ちょ……なんでこの猫、私たちのこと知ってるわけ!? ていうか猫なの? |
オムニス | 俺は、リーディング・シュタイナーに 近い能力を持っている |
岡部倫太郎 | なにっ!? |
オムニス | 頼む! 俺に、知恵を貸してくれ! |
岡部倫太郎 | なるほど……質問したいところは山ほどあるが、 時間がないなか、よく話してくれた |
牧瀬紅莉栖 | 問題は、思い当たるような原因をすべて潰したのに、 今こうして私たちが話せていることよね |
エリザ | オムニス。 本当に思い当たる原因は全て潰しましたの? |
オムニス | ああ……俺の知る限りではな |
いろは | タイムマシンって、便利なんだか 不便なんだかわかんないねー。 こんなに複雑なことになっちゃうなんて |
牧瀬紅莉栖 | ええ、本当にね。夢の装置でも、実際に使ってみると 事故や不便なことが起きるというのは昔から―― |
岡部倫太郎 | ん? どうした助手よ。 鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をして |
牧瀬紅莉栖 | そうよ! それだわ、いろは! |
オムニス。まだひとつだけ、 あなたも知っているけれど試していない可能性がある | |
それは……タイムマシンを作らないこと | |
あくまで仮説にすぎないけど、 ブラウン管・電子レンジ・X68000があるから、 この結末に収束するんじゃないかしら? | |
たしかに、紅莉栖の言う通り エリザが過去にメールを送る機械を作らなければ この世界線にやってくることはなかっただろう。 なら、もう一度タイムリープマシンを使い その事実をなかったことにすれば―― | |
エリザ | た、単純すぎて逆に気づきませんでしたわ。 たしかに、それらを最初から拾わなければ、 この事件は起きようがありませんわ |
陽彩 | そもそもの原因がよく言う。 しかし、賭けてみるだけの可能性はあるな |
オムニス | よ、よし。それじゃあさっそく タイムリープマシンの作成に取り掛か…… |
そう言いかけ、俺はふと気づいた。 | |
たしかに、エリザがあの機械を拾わなければ この事件は起きようがない。 しかし……だからこそ、 出会えた存在というのもあるんじゃないのか? | |
岡部倫太郎 | ふんっ、何を今さら呆気に取られているのだ |
運命石の扉を開くというのは、そういうことだ。 どちらも救うという未来は…… 達成できないこともある | |
だが、それでも進め | |
オムニス | ………… |
岡部倫太郎 | お前の選択に胸を張れ、オムニス! |
エリザ・紅莉栖の力により 再びタイムリープは成功した。そして―― | |
いろは | よしっ、今のが最後だね |
花織 | あ、見て。ユラギが晴れていくよ |
状況は、最初に秋葉原で悪魔を倒した時と 何ら変わりがない。 | |
だとすれば今まさに―― | |
オムニス | エリザ! |
エリザ | な、なんですのいきなり? 大きい声を出されるとビックリしてしまいますわ |
危ないところだった。エリザはまさに、 ブラウン管テレビたちを持ち運ぼうとしていた。 | |
オムニス | その機械たちに触れるな。イヤな予感がするんだ |
エリザ | ふんっ、ワタクシチャンサマはそうは思いませんわ。 この珍しいモノたちを組み合わせれば 世紀の大発明ができ―― |
オムニス | いいから、そっとしておくんだ。 ここは俺を信じろ! |
エリザ | な、なんですの急に…… |
もう、オムニスのバカ! 世紀の大発明を逃したらあなたのせいですからね! | |
陽彩 | ふむ、意外とすんなり諦めてくれたな |
陽彩はいつもの表情と変わらないようだが、 内心ホッとしているのがわかった。 | |
俺は、タイムリープしてから真っ先に陽彩に 今までのことを話していた。 | |
これまで起きたことの記憶は彼女にはない。 だが、「論理的に思考すれば、信じるに値する話だな」 と言って受け入れてくれていた。 | |
何かあれば、エリザを殴ってでも 止めるとまで言っていてくれていたのだ。 | |
陽彩 | まぁ、これで一件落着というわけだ。 そろそろぼくらもユラギの外に戻ろう。 |
オムニス | ああ、そうだな |
そう言って、動き出そうとした瞬間だった――。 | |
オムニス | な、なんだいきなり!? |
陽彩 | オムニス……これは! |
岡部倫太郎 | フゥーハハハ! これを見ているということは、 『オペレーション・デリング』は成功したようだな、 リーディング・シュタイナーを持つ同志よ |
どうだ。俺のアドバイスは大いに役に立っただろう。 諦めなかった結果、お前は今そこにいるのだからな | |
だがこれから先、 お前にはもっと困難な壁が立ちふさがることだろう | |
なぜソレがわかるか? 愚問だな。 俺たちは同じ能力を持つ同志なのだから、 手に取るようにわかる | |
話が逸れたな。お前の健闘を祈ると共に…… 再びこの言葉を送ろう | |
諦めるな | |
たとえ絶望的な状況になろうと、 難しい選択に迷おうと……絶対に諦めるな。 仲間にすがってでも諦めるな | |
そうすれば、今回のように必ず運命石の扉は開く | |
お互い、頑張ろうではないか。 さらばだ同志よ。エル・プサイ・コングルゥ | |
オムニス | い、今のは……ビデオ映像? |
陽彩 | フンッ! |
これでもう、タイムリープは確実に起きないはずだ。 いこう、オムニス | |
オムニス | ああ、そうだな |
陽彩 | そういえば……このことを知っているのは ぼくたちだけだな。二人だけの秘密、というやつか |
案外、今回の事件も悪くなかったかもしれないな。 機会があれば、また体験したいものだ | |
オムニス | よく言うよ。こっちがどれだけ苦労したことか |
陽彩 | でも、きみは諦めないのだろう? きっとまた何が起こっても救ってくれるはずさ。 ぼくも……そしてみんなのことも |
オムニス | ……ふんっ。あたり前だ |
それが、アイツらとの約束だからな |
魔法少女たち、そしてラボメンの皆の協力で乗り越えた あの事件から、幾日かが経過していた。 『秋葉原をもっと楽しみたい!』 という、いろはの提案で 俺たちは再び秋葉原の地に足を踏み入れていた。 | |
マリアンヌ | き……………… |
キタ―――(゚∀゚)――――!! | |
りり | ……マリ夫、この間もそれやってたじゃん |
マリアンヌ | いやぁー、 秋葉原は何度来てもテンション上がるんすよね |
ここあ | わかるー! 好きな場所って、何回来てもテンションあがるよね! ここあ、何度目の舞浜でもテンションあがるもん! |
いろは | ねーねー! まずはどこにいく? やっぱりカラオケかなー? |
花織 | いや、それじゃいつもと変わらないじゃん |
依子 | アキバのカラオケ、アニメとかコラボした 特別な部屋もあったりするから 渋谷と違った楽しみ方もできるかも |
はなび | ……へぇ、詳しいじゃん。 ……ひょっとして、依子って結構オタクなのか? |
依子 | ちがうわ! アイドルじゃけぇ 秋葉原にも多少詳しいってだけじゃ! |
丹 | カラオケもいいですけど やっぱり、有名なのはメイド喫茶じゃないかしら。 女の子も楽しめるって聞きますし |
エリザ | いいですわね! 秋葉原のメイド……どれほどのものか、 このワタクシがチェックしてさしあげますわ! |
陽彩 | ……言っておくが、 エリザの家にいるようなメイドさんじゃないからな |
いろは | よーし! じゃあまずはメイド喫茶にレッツゴー! |
マリアンヌ | 了解っす! なら、僕おすすめのお店に案内するっすよ! |
オムニス | ………… |
陽彩 | ? どうした、オムニス |
エリザ | 秋葉原でテンションがあがって フリーズでもしたんじゃないですの? |
オムニス | ……なぁ、エリザ。 タイムマシンって作れるか? |
エリザ | はぁ? なんですの、急に。 タイムマシン? |
……発明家としては、作れないとは 言いたくないですけど、正直難しいですわね | |
宇宙ひも理論や、ワームホール理論―― タイムトラベルに関する理論はいくつかありますが、 どれも現代では実現可能と思えませんもの | |
……魔法少女や悪魔の力……それらを利用すれば、 可能性はあるかもしれませんけど | |
……それで? そんなことを聞いて オムニスはどうしたいんですの? | |
ワタクシチャンサマは 一刻も早く秋葉原を楽しみたいんですけど | |
オムニス | ……いや、なんでもない。 すまないな、急に |
エリザ | ? 変なオムニス |
陽彩 | ……安心したか? |
オムニス | ああ。 ウジウジ考えてても仕方ないってことがわかったよ |
少しはいろはを見習って、ポジティブにいかないとな | |
陽彩 | ……そうだな。 オムニスは、それがいいと思うぞ |
過去を振り返るのも大事だが、 僕たちの未来は、これからずっと続くんだからな | |
いろは | おーい! オムオムー! 陽彩ちゃーん! 早くしないとおいてっちゃうよー! |
陽彩 | 行こうか、オムニス |
オムニス | ……ああ! |
丹 | ねぇ陽彩ちゃん、せっかくの秋葉原だし、 コスプレしてみませんか? 幼稚園の服とか、メイド服とか♪ |
蒼 | いいじゃないか! 似合うと思うぞ! いや、絶対に似合う! 断言する! |
エリザ | そう言うと思って、衣装を購入できるお店は すでに調べてますわ! アニメキャラの衣装から エッチな下着まで、よりどりみどりですわよ! |
陽彩 | き、着るわけないだろー! |