……ほ……ほんとに雛見沢ってところに飛んで来ちゃった…… って、岡部! 戻る手段は ちゃんと用意してあるのよね? |
あの岡部たちと つるんできたおかげで、並大抵のことでは驚かなくなった つもり……だったけど、妄想じみた この現実を目の当たりにさせられると、驚きすぎて もう渇いた笑いしか出てこないな。 |
自然に囲まれた田舎の集落って、たまにはいいものね。 研究や実験で少し疲れ気味になった頭と心を癒してくれる感じがして。 元の世界に戻った後で、温泉旅行にでも出かけてみようかしら。 |
それぞれの世界線に存在する あらゆる時、あらゆる場所に自分がいて、他の誰かがいる。 そして、さまざまな社会と環境を構築している。 だとしたら……この雛見沢って村も、その一環として生まれた一つの、現実……なのかもしれない。 |
少しは気持ちが、落ち着いてきたのかも。 |
だんだん慣れてきている自分が怖い。 |
いいわよ。ちょうど研究が行き詰ってたところだから。 |
いいリフレッシュになった。サンクス! |
これは渡せないわよ…… だ、ダメだってば! |
知恵留美子 | ……それでは、北条さん。 来週明けに再テストを行いますので、 そのつもりで勉強をしてきてください。 |
北条沙都子 | わ、わかりましたわ……はぁ……。 |
知恵留美子 | そんなに悲しい顔をしなくても、 これまでやってきたことを きちんと復習すれば大丈夫ですよ。 |
あなたは、やればできる子だと 先生は信じています。頑張ってくださいね。 | |
北条沙都子 | …………。 |
園崎魅音 | おっ……? 戻ってきたね、沙都子。 これから待ちに待った部活の時間だけど、 なにして遊ぶ? |
赤坂美雪 | もしくは、家にいる岡部さんたちを誘って 興宮にお出かけとかもいいかもねー。 |
竜宮レナ | あははは、それも楽しそうだねっ。 どこがいいかな? かな? |
北条悟史 | 沙都子は何がしたいかな……って、沙都子? |
北条沙都子 | ……せっかく誘っていただいたのに 申し訳ありません。私はこのまま帰宅して、 テスト勉強をさせていただきますわ。 |
竜宮レナ | はぅ……どうしたの、沙都子ちゃん。 今回のテストの結果、 あんまり良くなかったのかな……かな? |
北条沙都子 | あんまりどころか、 頭を抱えてしまうくらいの点数でしたわ……。 |
古手梨花 | 沙都子……元気を出してくださいなのです。 |
北条悟史 | えっと……そんなに酷い点だったの? |
赤坂美雪 | どれどれ……うわっ、確かにこれは……。 |
鳳谷菜央 | 一応、全部の解答欄は埋まってるのね。 答えもあてずっぽうではないし、 頑張ってる痕跡は見られるけど……。 |
古手羽入 | あ、あぅあぅ……沙都子は頑張っているのです。 ただ、努力と頑張りが点数に 繋がっていないだけなのですよ。 |
園崎魅音 | うーん、むしろそれが一番厄介なんじゃ……。 |
公由一穂 | ど……どんまいだよ、沙都子ちゃんっ! |
赤坂美雪 | 一穂……応援したい気持ちはわかるけどさ。 このタイミングにその台詞で励まされても、 沙都子が返事に困っちゃうよ。 |
公由一穂 | ご、ごめんなさい……。 |
北条沙都子 | いいんですのよ。一穂さんのお気持ちは 十分に伝わりましたわ。 |
園崎魅音 | んで沙都子、これからどうするの? |
北条沙都子 | ……知恵先生が言うには、このままだと 梨花や羽入さんとの学力の差が開きすぎるので、 勉強のやり方を変えるべきでは……と。 |
竜宮レナ | やり方を変えるって……例えばどんな感じに? |
北条沙都子 | 先生には、今まで分校でやってきたような 自習主体ではなく、誰かにみっちり教わる方法が 私に合っているかもしれない、と言われましたわ。 |
赤坂美雪 | んー、なるほど。 自主的な学習って、人によって合う合わないが 明確に出るからねぇ……。 |
園崎魅音 | あんたも向いてそうにないけどね、美雪。 そのわりに結構点数がいいけど、 今までどうやって勉強していたの? |
赤坂美雪 | 私は緊張感がないと気が抜けるタイプだから、 似たような友達と見張り合ってたよ。 あとは、わからない所は塾で聞いたり……かな。 |
鳳谷菜央 | あんまり参考になりそうにないわね。 沙都子は普段、どうやって勉強してるの? |
北条悟史 | 普段は僕が教えているつもりなんだけど、 教え方が悪いのかあんまり伝わっていない みたいなんだよ……。 |
鳳谷菜央 | 勉強ができる、と勉強を教えるのは違う技術よ。 ……雛見沢に塾がないなら、教えてくれる人を 見つけるのが先決かもしれないわね。 |
園崎魅音 | といっても、分校だと教師は知恵先生だけだから つきっきりってわけにはいかないと思うんだよね。 ……どうする、沙都子? |
北条沙都子 | 他のどなたかに教わると言っても、 正直心当たりがありませんわね……。 |
赤坂美雪 | 塾がダメなら、家庭教師とかはどう? そういうのができそうな人に頼んでみるとかね。 |
公由一穂 | うーん……家庭教師ができそうな人って、 この村だと誰だろう? |
竜宮レナ | 純粋に頭がいい人ってことなら監督とか、 鷹野さんとか……? |
園崎魅音 | あの2人かぁ……忙しいとは思うけど、 頼めば引き受けてくれるんじゃないかな。 |
北条沙都子 | いえ、監督と鷹野さんには普段から色々と お世話になっているので……さすがにこれ以上、 ご無理を申し上げるわけにはまいりませんわ。 |
公由一穂 | ……だったら、岡部さんたちに お願いしてみるってのはどう? |
竜宮レナ | あっ……そういえば岡部さんと牧瀬さんは、 大学生だって言っていたよね。 |
もしかすると、独学のコツとかも 知っているんじゃないかな、かなっ。 | |
園崎魅音 | よーし、そうと決まれば善は急げだね。 岡部さんたち、一穂たちの家にいるんでしょ? さっそくお願いしに行こうよ! |
公由一穂 | うん! |
鳳谷菜央 | あっ、ちょっと待ってよ。 2人はフィールドワークに行くって言って、 朝から出ていったんじゃなかった? |
赤坂美雪 | あ、そうだった……漆原さんが 留守番してくれてるから、 すっかり2人も家にいる気になってたよ。 |
鳳谷菜央 | もう戻ってるのかしら? 村の中を歩き回って居場所を探すのは、 さすがに大変かもだし……あら? |
牧瀬紅莉栖 | こんにちは、みんな。 ちょうど近くを通りがかったから、 立ち寄ってみたんだけ、ど……? |
園崎魅音 | おぉっ、グッドタイミングっ! 岡部さん牧瀬さん、2人に話があるんだけど ちょっと聞いてくれる? |
岡部倫太郎 | ん? なんだ、こっちはまだダルからの 連絡待ちだが……ひょっとして元の世界に 戻る方法が見つかったのか? |
赤坂美雪 | いや、そっちよりもある意味深刻なんだよ……! |
北条悟史 | あの……すみません。 お2人の力を貸していただきたいんですが、 話だけでも聞いてもらえませんか? |
牧瀬紅莉栖 | い、いいけど……何をすればいいの? |
竜宮レナ | はぅ、実は……。 |
竜宮レナ | ……というわけなんです。 もしよければ、沙都子ちゃんのために 協力してもらえませんか? |
牧瀬紅莉栖 | な、なるほど……。 てっきり世界線に関わることかと思って、 少し身構えちゃったわ。 |
岡部倫太郎 | ふっ……分室ラボメンたちの前で動揺してどうする、 助手よ。たとえ何がもたらされようとも この俺のように、泰然と振る舞う心を持つがいい。 |
牧瀬紅莉栖 | あらゆる可能性を想定してこそ、 科学に携わる者としての心構えでしょ。 ……て言うか、助手言うな! |
園崎魅音 | で、効果的な勉強方法なんですけど…… 何か秘訣ってあったりしますか? |
牧瀬紅莉栖 | ふむん、そう言われても……。 私は子どもの頃から、父の影響もあって 理系の学問が好きだったから……。 |
その延長で、自然と学力が身についた感じね。 ……ごめんなさい、あまり参考にはならないかも。 | |
岡部倫太郎 | うむ、確かに参考にはならんな。 好きが高じてというわりに、飛び級で大学院に 進むほどの超絶学力を身につけるなど……。 |
まさかお前、ヤバい薬でも飲んだか、 改造手術を受けて既に人間を辞めていたとか……!? | |
牧瀬紅莉栖 | どっちもしてないわよ、失礼な! これ以上変な言いがかりをつけるなら、 海馬に電極ブッ刺すぞ! |
北条悟史 | ま、まぁまぁ…… ところで、飛び級って何のことですか? |
岡部倫太郎 | なんだ、知らんのか? 本来は高校を18歳で卒業してからでなければ、 大学に入学することはできんのだが……。 |
極めて優秀な学力を持つ者は、それ以下の年齢でも 大学、さらには大学院へ入学することが可能なのだ。 欧米の教育機関ならではの特例措置だな。 | |
牧瀬紅莉栖 | 日本でも、最近は認められるようになったわよ。 といっても、それは私たちの「世界」での話だけどね。 |
赤坂美雪 | えっ……じゃあ牧瀬さんって、 いわゆる帰国子女ってことですか? |
牧瀬紅莉栖 | ん……まぁ、そうなるわね、 だからここにいる岡部よりも、私の方が ずっと上級生ってことになるのかしら。 |
岡部倫太郎 | おい! その言い方だと、まるで俺が 落第したようにも聞こえるではないか! 異常なのはお前だ、わが助手よ! |
牧瀬紅莉栖 | 誰が異常だ! あと、助手言うな! |
赤坂美雪 | あ、あの……喧嘩はそのくらいにして、 こちらの本題に入ってもらえませんか? |
牧瀬紅莉栖 | あ……あぁ、ごめんなさい。 勉強を効率よく進めるための秘訣……だったかしら。 |
よかったら沙都子ちゃん、あなたの答案を 見せてくれる? ステイ先で家庭教師の経験も あるから、アドバイスくらいはできると思う。 | |
北条沙都子 | は、はい……ど、どうぞ。 あの……あんまり笑わないでくださいましね? |
牧瀬紅莉栖 | そんなの当然よ。 科学で大事なのはトライ&エラーの繰り返し…… 失敗があってこそ、成功があるんだもの。 |
岡部倫太郎 | 失敗は成功の母、とも言うだろう? 失敗を真正面から見つめるのは精神的に 負担もあるが、成功するためにはそこから……。 |
牧瀬紅莉栖 | いいこと言ってるのはわかるから、 ちょっと黙ってて。集中するから。 |
岡部倫太郎 | ……あ、はい。 |
公由一穂 | (よ、弱い……! 岡部さん、牧瀬さんに弱い!) |
牧瀬紅莉栖 | ふむん……なるほど。ひょっとして沙都子ちゃんは、 記憶の整合に時間がかかってしまうタイプかしら? |
北条沙都子 | えっ? 記憶の整合……と申しますと? |
牧瀬紅莉栖 | あぁ、ごめんなさい。わかりにくかったわね。 |
簡単に言うと、解答方式が2択や4択になった時 ……正解がいくつも浮かんで、その中から1つを なかなか絞り切れないってこと。心当たりはない? | |
北条沙都子 | っ、……ど、どうしてそのことを……? |
古手梨花 | みー……! 確かに沙都子は、似ているものを 見分けるのがあまり得意ではないのですよ。 |
牧瀬紅莉栖 | やっぱりね。沙都子ちゃんの記憶力自体は、 それほど悪いとは思わない。解答欄には、 答えと似たような文言を書き込んでるんだから。 |
でも、それは裏を返すと似たような文言を 同じカテゴリーで覚えてしまってると いうことになるのよ。そう、たとえば……。 | |
沙都子ちゃん。キャベツと、レタス…… 2つを並べられてる状況を思い浮かべた時、 その違いを見分けることってできる? | |
北条沙都子 | キャベツとレタスの、違いを……? それはもちろん、簡単に……。 |
……あれ? 両方ともサラダに使うもので、 形もほとんど同じ……。え、えっと…… キャベツは緑で、レタスも緑……あれ、あれっ? | |
古手羽入 | あ、あぅあぅ…… 沙都子が混乱しているのですよ〜。 |
牧瀬紅莉栖 | じゃあ、次に行きましょう。 お好み焼きを作ろうとした時に、 あなたはどちらを買いに行く? |
北条沙都子 | それはもちろん、キャベツですわ。 レタスだと水分が多すぎますし、焼くと しなびて食感が悪くなりますもの。 |
牧瀬紅莉栖 | そうよね。……じゃ、どんなキャベツを 買いに行くのか、シンプルに思い浮かべて。 |
で、しばらくしてからレタスを。 そうね……ハンバーガーに合いそうな、 みずみずしい新鮮なものをね。 | |
北条沙都子 | えっ……あ、あぁっ……?! すごく、はっきりと区別することが できましたわ……!! |
竜宮レナ | はぅ……えっと、つまりそれって どういうことなんですか? |
牧瀬紅莉栖 | 短期間で単語、もしくは公式を覚えようと した時に陥りがちな、記憶の混同よ。 だったらそれを、明確に整理すればいいの。 |
どうして、この説明にこの単語が 使われるのか……この計算で、 この公式がなぜ使われるのか……。 | |
その前後に存在する因果関係を理解せずに 覚えてしまうと、どれをどこで使うかが わかりづらくなってしまうのよ。 | |
公由一穂 | な、なんだか難しい話ですね……。 |
牧瀬紅莉栖 | 原理はともかく、根本はそう難しい話じゃない。 簡単に言うと、沙都子ちゃんはキャベツとレタスを 葉物野菜って同じ記憶の箱に入れているの。 |
北条悟史 | それは、みんな同じじゃないんですか? |
牧瀬紅莉栖 | えぇ、その通り。みんな同じよ。 |
でも、沙都子ちゃんは判断力が低下した状態…… 慌てて箱を覗き込むと、キャベツとレタスを 見間違えてしまう可能が高い。それがミスの原因ね。 | |
竜宮レナ | つまり、焦らずにしっかり箱を覗き込んで どっちが今必要な野菜か、見極めることが 大事なんですね。 |
牧瀬紅莉栖 | その通りよ! ……だからね、沙都子ちゃん。 |
北条沙都子 | は、はいっ! |
牧瀬紅莉栖 | 大丈夫よ。あなたの記憶力は決して、 他の人と比べても劣ってはいない。 ただちょっと欲張りすぎかもしれないわね。 |
北条沙都子 | 欲張ることは、いけないことですの? |
牧瀬紅莉栖 | そうとは思わない。……でも、一気に 全部を手に入れるのは大変でしょ? |
私だって、全部のことはすぐに覚えられない。 この村にあるものを一度に全部知ろうと思っても、 そのためには相当な時間が必要。 | |
だから、みんなに色々教えてもらったり フィールドワーク……自分の足で歩いたりして、 この村のことを少しずつ勉強してるのよ。 | |
岡部倫太郎 | ふむ……天才少女がそう言うと説得力があるな。 |
牧瀬紅莉栖 | 天才かはともかく、全てを一度に覚えることは、 どんなに頭のいい人だってできることじゃない。 沙都子ちゃんだけじゃなく、他の皆もね。 |
だから、10問を全部解いて100点を取ることを 目指すより、解けそうな5問を確実に正解して 50点を目指すのはどうかしら? | |
その後は、少しずつ目標を60点70点と 上げていけば……いつかきっと100点に 手が届くはずよ。 | |
勉強の秘訣は『急がば回れ』、 そして『千里の道も一歩から』……ってね。 | |
北条沙都子 | わ……わかりましたわ! ありがとうございます牧瀬さん、 そのつもりで私、頑張ってまいりますわ! |
牧瀬紅莉栖 | えぇ、頑張ってみて! |
古手羽入 | あぅ……沙都子はまた、知恵に 呼ばれているのですか? |
公由一穂 | もしかして……今日の再テストも、 あまり点数がよくなかったのかな……? |
赤坂美雪 | まさか今頃、怒られてるとか……ないよね? |
古手梨花 | ……沙都子はあれから、一生懸命頑張っていたのです。 それで結果が出ないなんて、あんまりなのですよ。 |
園崎魅音 | ……。私、ちょっと様子を見に行ってくるよ。 |
竜宮レナ | それは、やめたほうがいいんじゃないかな……かな。 心配なのはわかるけど、もし怒られていたら 沙都子ちゃんが逆に可哀想になっちゃうし……。 |
北条悟史 | …………。 |
鳳谷菜央 | あっ、誰か来るわよ! |
北条悟史 | 沙都子!……って、え? |
牧瀬紅莉栖 | あ、ごめんなさい。お邪魔だったかしら? |
鳳谷菜央 | 牧瀬さん……どうしてここに? |
牧瀬紅莉栖 | 朝、今日はテストがあるって言ってたでしょう? 沙都子ちゃんが気になって、様子を見に来たのよ。 |
北条悟史 | 牧瀬さん……あの、沙都子の点が 今回もよくなかったら、少しの間だけでも 家庭教師をしてあげてくれませんか? |
牧瀬紅莉栖 | えっ? |
北条悟史 | 牧瀬さんみたいな飛び級をした天才に、 家庭教師を頼んだらどれだけお金が かかるのか、僕は知りませんけど……。 |
アルバイトして、きちんと払います。 だから、お願いします……! | |
園崎魅音 | 悟史……。 |
北条沙都子 | 梨花ぁー! にーにーっ! |
って……あら、牧瀬さん? | |
牧瀬紅莉栖 | こんにちは、沙都子ちゃん。 テストの点、どうだった? |
北条沙都子 | やりましたわ! ほんの少しですが、点数アップしましたの! |
園崎魅音 | えっ……本当っ? 見せてみせてっ! |
竜宮レナ | はぅ……前よりもミスが少なくなっているね。 |
北条沙都子 | その代わり、難しくて後回しにしていた いくつかの問題が、空欄のままになって おりますけど……。 |
古手梨花 | それは、後から埋められるようになれば いいのです。頑張りましたね、沙都子。 |
古手羽入 | あぅあぅ! 沙都子はすごい子だって、 みんな知っていたのですよ〜! |
北条沙都子 | ありがとうございます、皆さん! なにより、牧瀬さんのおかげですわ! 本当に、なんて言ってお礼すれば……! |
牧瀬紅莉栖 | いいのよ、気にしなくても。 私はちょっとアドバイスしただけで、 これはあなたの実力と頑張りの成果よ。 |
鳳谷菜央 | よかったわね、沙都子。 |
赤坂美雪 | よかったよかった……ってあれ、岡部さん? 窓の外でこそこそと、何してるんですか? |
岡部倫太郎 | うっ! それは、その……散歩だ! |
赤坂美雪 | この分校、うちから結構離れてますけど……。 |
鳳谷菜央 | もう。素直に沙都子のテストの点と牧瀬さんが 気になって追いかけてきた、って言えばいいのに。 |
岡部倫太郎 | べべべ別に、気になってなどいない! |
だが……こほん。仮にも未来ガジェット研究所の 分室メンバーを名乗る以上、赤点を取られては 研究所のメンツに関わるのでな。 | |
牧瀬紅莉栖 | ……普通に心配だって言えばいいじゃないの。 |
岡部倫太郎 | 心配などしてない! 仮にも天才、牧瀬紅莉栖が教えを説いた存在が、 無様を晒すはずがないだろう! |
牧瀬紅莉栖 | か、仮にもは余計よ! 余計! |
赤坂美雪 | あはは、牧瀬さん照れてる照れてる。 ねー、一穂……。 |
……って、どうしたの? 複雑な顔しちゃって。 | |
公由一穂 | あ、うん……。 |
このまま世界が元に戻ったら、沙都子ちゃんが 頑張ってテストの点を上げたこととか、 全部無かったことになっちゃうのかなって……。 | |
赤坂美雪 | …………。 |
公由一穂 | もちろん、岡部さんやこの世界のためにも、 元に戻さなくちゃいけないのはわかってるよ。 でも、沙都子ちゃんはせっかく頑張ったのに……。 |
牧瀬紅莉栖 | 消えないわよ。 |
公由一穂 | えっ……? |
牧瀬紅莉栖 | あの子が努力して結果を出した事実は、 決して消えたりなんかしない。 |
世界線が変わっても、彼女が努力した結果は ここにちゃんと存在してるんだから……ね。 | |
公由一穂 | でも……世界が元に戻ったら、 沙都子ちゃんはこのことを忘れてしまうと思います。 |
牧瀬紅莉栖 | ……そうかもしれないわね。 でも、あなたたちは覚えてくれるんでしょう? |
公由一穂 | 私たちが……ですか? |
牧瀬紅莉栖 | えぇ。あなたたちが世界線が変わった後も この時何が起こったのか、覚えてくれるなら…… それは、今が存在してる何よりの証拠。 |
だからもし、世界が元に戻った後…… 違う世界線であの子が悩んでいたら、 教えてあげて。 | |
沙都子ちゃんは、きちんと努力を 実らせることができる子だ、ってことをね。 | |
公由一穂 | ……はい、わかりました。 |
牧瀬紅莉栖 | ありがとう……よろしくね。 |
北条沙都子 | 牧瀬さーん、これから皆さんご一緒に どこかへお出かけしようと考えておりますけど、 いかがかしら〜? |
園崎魅音 | 沙都子の点数アップ祝いも兼ねて、 ちょっと遠出しませんか? ご馳走だったら、エンジェルモートもありですよ♪ |
牧瀬紅莉栖 | あら、いいわね。さて、どうしようかしら? |
赤坂美雪 | うーん……牧瀬さんはなんていうか、 ほんとにいい女ですねー。 |
岡部倫太郎 | 言い方がおっさん臭いぞ、JC。 まぁ、だが……それは否定できないな。 |
鳳谷菜央 | あら……素直に認めるんですね。 |
岡部倫太郎 | ……まぁな。 |
牧瀬紅莉栖 | 岡部ー。これからエンジェルモートって ファミレスに行くらしいから、 漆原さんを迎えに行くわよー。 |
岡部倫太郎 | わかった、すぐ行く! ……分室メンバーたちよ、 今の話はクリスティーナには内密でな。 |
赤坂美雪 | いいけど、お代は高く付きやすぜボス♪ |
鳳谷菜央 | なんせあたしたち、忘れないものね♪ |
岡部倫太郎 | くっ……! |
公由一穂 | もう、2人とも……あははっ。 |