瀬乃宮あき穂を中心として、 アニメの登場ロボットを実物大に造る 『ガンヴァレル試作1号機』 通称、『ガンつく1』を完成させるのを 目標として活動していた。 八汐海翔はそんなあき穂の部活の手伝いはせず、 FPSロボット対戦格闘ゲーム 「キルバラッドON−LINE」 通称「キルバラ」というゲームを いつも彼女の近くでしていただけだったが、 あき穂が本当に困った時だけ力を貸していた。 当初そんな2人だった部活も、 ホビーロボット大会への 出場をきっかけに、段々と部員が増えていく。 完成までの紆余曲折を経て ついに、ガンつく1の稼働が目前に迫った そんなある日… |
あき穂 | いよいよだね、カイ。 お姉ちゃんの代から数えて苦節9年… ロボ部として、こんなたぎる日はないでしょ!? |
海翔 | たぎらないよ、別に |
あき穂 | またまたー、そんなこと言ってっ! |
海翔 | いや、本気で言ってるんだけど… |
ん…? | |
昴 | …! |
あき穂 | あれ!? スバル! |
って、ちょちょちょっ! | |
昴 | な、なんですか…離してください |
あき穂 | どこ行くの…? 今日はハンガーに来てもらうからね |
昴 | 後で行きますよ… |
あき穂 | 絶対だからね。 今日はガンつく1が動くんだよ! |
昴 | …今、あそこで色んな人が 作業してるから、行くの嫌なんですよ。 父親にロボ部のこと黙ってますし… |
そもそも人前に出るのが好きじゃありません | |
海翔 | へえ〜…ミスター・プレアデスで、 あんな恥ずかしくて派手な格好してたのに? ほら、なんだっけ。アルシオン、とかなんとか… |
昴 | アルシオーネ、エレクトラ、マイア、タイゲタ、 ケラエノ、アステローペ、メロペー… |
7人の女神の祝福により、我、 400光年の彼方よりここに降臨 | |
アイアム…! | |
あき穂 | ミスタープレアデス! |
海翔 | ……… |
昴 | …にゃああ、つ、ついやってしまった…! |
こ、こりぇは、ホビーロボットの 大会のディレクターに言わされて…! | |
海翔 | へえ…言わされた、ねえ…? |
昴 | ううう… |
あき穂 | 大会かあ… ほんの1ヶ月くらい前の話なのに、 随分前に感じるなあ… |
なんてたって、優勝と準優勝のメンバーが、 チュウタネロボ部なんだもん! 考えるとあの大会がロボ部躍進の第1歩だよね! | |
ね、スバル! だから今日は… | |
海翔 | アキちゃん。 昴くん、もういないよ |
あき穂 | え!? ホントだ! もうあんな所に! |
待ってよー! | |
海翔 | 本気で走らないでよ、アキちゃん。 発作出るから |
あき穂 | スバルぅーーー! ちゃんと来てよぉーーー! |
…っていうか、カイもちゃんと引き留めてよ! | |
海翔 | 嫌だね。 もし俺に言うこと聞かせたいなら… |
キルバラで勝負して勝ったら良いよ | |
あき穂 | またゲームの勝負…? はぁ…ロボ部がこんなバラバラで ホントに大丈夫なのかなあ… |
ううん、駄目駄目! 無駄に前向きなのがうちの取り柄なんだから! | |
…よし、充電しよ! こういう時はあれを観るっきゃないよね!! | |
海翔 | ガンヴァレルのアニメ見てるし…。 アキちゃんも人のこと言えないでしょ… |
って、もう聞いてないし | |
(ん? こなちゃんから電話…?) |
海翔 | 電話、繋げて |
フラウ | え、永遠の17歳…神代フラウ…キリッ! |
海翔 | 切るよ |
フラウ | いきなり電話切るとか、な、なんたる所業… や、八汐先輩はテラドSですしおすし |
海翔 | いや、用がないなら切るでしょ、普通…? |
フラウ | よよ、用があるから、 で、電話までしてるんだろjk…! |
八汐先輩には、ま、また チーター狩りをお願いしたい… | |
クーラーが効いた冷たい部屋で…メ、メガネとの 絡みを想像しながら! やれば良いじゃない! デュフフ… | |
海翔 | …この間やったばっかでしょうが… |
フラウ | ホビーロボットに プログラム提供してあげた件について… |
海翔 | うっ… |
フラウ | や、八汐先輩があのホビーロボット大会で 準優勝できたのは… |
海翔 | キルバラのゲームを元にした プログラムがあったからだね… |
フラウ | そ、そしてそのゲームもプ、プログラムも 制作者は私…つ、つまり… 言いたいことはわかるな? |
海翔 | はいはい…やれってことね。わかったよ… |
あき穂 | ねえ、フラウ坊! 今日はガンつく1の稼働テストの日だよ! |
フラウ | ヒェッ!? |
あき穂 | もー…カイ! フラウ坊と話してるなら教えてよ! |
海翔 | いや、アニメ見てたから… |
あき穂 | フラウ坊、今日はハンガー来てね! 絶対、テンション上がるから! |
フラウ | だ、だが断る…! 南国テラヤバス。日差しのキツさがヤバス。 と、東京育ちには無理ぽ。自宅警備員ナメんな |
あき穂 | お願い、フラウ坊! ほら、今日だけはさ! |
フラウ | ……… |
考える猶予をキボンヌ | |
あき穂 | え? きぼ…? |
フラウ | 考える時間をくれ… 伝わらなさすぎ… |
あき穂 | ねえ、カイ。フラウ坊、 壁に寸止めパンチしてるんだけど… |
海翔 | 気にしない方が良いよ |
フラウ | と、とにかく、八汐先輩はまた家に来るべき。 じゃ、そういうことで |
あき穂 | あ! 切られちゃった…。 来るかなぁ、フラウ坊も… |
海翔 | さあね |
あき穂 | カイ、冷たい〜 フラウ坊のチーター狩りには付き合うのに… |
海翔 | 借りがあるからね。 結局、この前のチーター狩りは 成果は出なかったけど |
花火大会の帰りに言ったでしょ? | |
あき穂 | そっか。カイはフラウ坊の家に居たんだよね… 花火の日もふたりで… |
海翔 | 蒸し返さないでよ… 花火にいけなかったのは悪かったって… |
あき穂 | でも、ふたりで居たんだ? |
海翔 | いや、あの時は 愛理ちゃんも一緒にいたって言わなかった? |
あき穂 | えー!? 聞いてないよ? |
海翔 | じゃ、本人に説明させるよ |
愛理ちゃん、いる? | |
愛理 | お呼びですか! |
愛理 | なんのお話をしますか? それとも今日の天気が知りたいですか? |
あき穂 | ホント不思議だよね、アイリって。 『居ル夫。』のアプリにいるAIなんでしょ? |
愛理 | そうですよ、アキホ! |
海翔 | 愛理ちゃん、この間の花火大会の時、 こなちゃんの部屋にいたよね |
愛理 | はい! お兄ちゃんのシャツのボタンが 外されそうになってました! |
あき穂 | え? シャツ? |
愛理 | それで… |
海翔 | …愛理ちゃん、余計なことは言わなくていいよ。 もういいや、ありがと |
ゲジ姉 | アクセスを確認しました。 『ゲジ姉』モードに移行します |
海翔 | あっ…間違えた |
ゲジ姉 | 男性の鎖骨をペロペロするだけで ご飯三杯はいけると発言していました。 私もおおむね同意します |
あき穂 | 鎖骨? ペロペロ…って、なんの話? っていうか、アイリこの間となんか違う? |
海翔 | 気のせいじゃない? |
あき穂 | 見間違えたのかな… まあ、うちがアイリと話したのって、 そんなにないしね |
海翔 | そうだっけ? |
あき穂 | そうだよ。うちとアイリが初めて会ったのって カイが鉄塔を登った時でしょ? |
アイリから台風が来てたのに 鉄塔に登ってるって聞いてさ…。 まったく、あの時は心配したんだよ? | |
海翔 | あの時は助かったよ。 本当、死ぬかと思ったからさ… |
淳和 | お、お待たせ〜… ごめんねぇ、遅れちゃった… |
あき穂 | あ、ジュン! 良かった〜来てくれて! |
淳和 | あ、えと…あの… 家のこととかやってたら遅くなっちゃって… |
あき穂 | 大丈夫、大丈夫! じゃあ、ハンガーに向かおっか! |
淳和 | そういえば八汐くん…かごめかごめの件… あの後も調べてみたんだけど、 やっぱりわからないや…ごめんなさい |
海翔 | うーん、そっか… |
あき穂 | なになに? かごめかごめ? |
海翔 | ポケコンがこの間一斉に鳴り出したでしょ。 で、都市伝説が好きなジュンちゃんに 少し聞いてただけ |
あき穂 | あー、あったね、そんなこと |
淳和 | 都市伝説に詳しいって言っても、 結局あたしの知識ってネットだけだし…。 あんまり役に立たないし… |
っていうか、あたし今日来て良かったのかな…。 ロボ部の役にだってあんまり立ってないのに… | |
あき穂 | そんなこと無いよ! ジュンは大事な部員だもん! |
それに、大会に出た時の タネガシマシン3の必殺技は、 ジュンがいなかったら思いつかなかったんだよ! | |
えっと、あの技…スーパー… | |
淳和 | スーパーリンペイ、だよ |
あき穂 | そうそれ! スーパーリンペイ! ジュンがその空手の『形』を教えてくれたから ロボ部は今こうして、ここにあるんだよ! |
海翔 | 放ったが最後、ぶつかるまで走って 自分じゃ止められない技になったけどね |
淳和 | あ…あの…やっぱり…あたし… |
あき穂 | カイ〜〜〜〜〜〜!! |
海翔 | ウソウソ! あの技があったから大会で 優勝したロボットと良い勝負したんだから! |
淳和 | ほ、本当に? あたしの空手 役に立ってたなら…良かったけど… |
あき穂ちゃんが、空手強くないあたしに 急に『形』のこと聞いて来たのは ビックリしたな… | |
あき穂 | いや〜あの時は必死だったから… |
…そっか。そうだよ。 必死でやってきたんだもん。 ここ数ヶ月、ロボ部は頑張ってきたんだ! | |
あの大会からロボ部は飛躍し続けてる。 今日の稼働テストだって、きっとうまくいく! | |
淳和 | う、うん…! そうだね、組み立ても頑張ったし… |
海翔 | (組み立て作業員の人に気を遣うのを 頑張ってた気がするけどね…) |
あき穂 | お姉ちゃんの時代から受け継がれた ロボ部の集大成を今こそ見せる時! |
いくよ、みんな! 疾風怒涛の! 元気一発、ガンヴァレル! ジャキーン! | |
淳和 | え、あ、お、お〜… |
海翔 | それじゃ、やるとしますかね |