海翔 | 「はぁ……」 |
あき穂 | 「やっと着いたね……」 |
淳和 | 「ここが……秋葉原……」 |
愛理 | 「…………」 |
海翔 | 「ていうかさ、東京ってなんでこんなに広いんだ ろね」 |
あき穂 | 「ほんとだよ。新宿も渋谷も池袋も……どこもど こもビルばっかり」 |
海翔 | 「無駄に物ばっかり溢れててさ。こんな所によく 住めるもんだよね」 |
昴 | 「まあ、それも慣れればたいしたことはないはず ですよ」 |
フラウ | 「デュフフ。都会ものぶるメガネ、テラワロス」 |
淳和 | 「愛理ちゃんのほうは大丈夫だった?」 |
愛理 | 「はい。今のところ、どこにも以上はないそうで す」 |
海翔 | 「種子島じゃ、なかなか細かい検査まではできな いからね」 |
昴 | 「だからって、全員でついてくる必要はなかった でしょうに」 |
あき穂 | 「でもさ、来れてよかったよね。ロボ博も無事に 見れたし」 |
昴 | 「おかげで部費はすっからかんですが」 |
あき穂 | 「そこはほら、次の世代が頑張ってくれるってこ とで!」 |
昴 | 「だそうだぞ、古郡」 |
フラウ | 「メメ、メガネがコスプレ写真集でも売って稼ぐ べき」 |
あき穂 | 「コスプレって、ミスター・プレアデスの?」 |
昴 | 「お断りだ!」 |
フラウ | 「え、映画のヒーローのコスプレならどうか」 |
淳和 | 「ヒーローならいいんじゃない?」 |
フラウ | 「ちな、ブリーフ一枚で女ものパンティー被った ヒーローな」 |
昴 | 「ふ・ざ・け・る・な!」 |
海翔 | 「(やれやれ。みんなの希望を聞いて、帰る前に 秋葉原まできたはいいけど……)」 |
海翔 | 「(大丈夫なのかね……)」 |
海翔 | 「さてと、それぞれ行きたいところがあるって言 ってたけど……」 |
「……あれ?」 | |
「(誰も……いない……)」 | |
「(言ったそばからはぐれたみたいだね……)」 | |
「(どうしたもんかな……)」 |
海翔 | 「…………」 |
「これで良し、と」 | |
「(なんとなく今いる場所をあげておけば、適当 に合流するでしょ) | |
「とはいえ……ひとりになったところで、特にや ることないんだよね」 | |
あき穂 | 「あ、カイ、見つけた!」 |
海翔 | 「アキちゃん?」 |
あき穂 | 「も〜。どこ行ってたのさ。探したんだからね」 |
海翔 | 「俺は普通に歩いてただけだよ。アキちゃんこ そ、どこ行ってたの」 |
あき穂 | 「うちはほら。建物とか眺めながら歩いてたら、 いつの間にかはぐれちゃってて……」 |
海翔 | 「(典型的なおのぼりさんじゃないか)」 |
「そもろも、アキちゃん、東京は初めてじゃない でしょ」 | |
あき穂 | 「そうだけど、アキバは初めてだもん」 |
「それにしても凄いよね、ホント」 | |
「さっき道聞いたんだけど、その人がすっごく可 愛い人で……」 | |
「でも実はその人、男の人でさ。びっくりしちゃ ったよ、ほんと」 | |
「あんな可愛い男の人もいるんだねぇ……」 | |
海翔 | 「ふ〜ん」 |
あき穂 | 「カイも見てみたいでしょ? 確か、あっちの方 に……」 |
海翔 | 「悪いけど俺、そういう趣味はないよ」 |
あき穂 | 「そう? 絶対ビックリすると思うけどなぁ」 |
海翔 | 「それより、他の皆は?」 |
あき穂 | 「え? カイ、一緒じゃなかったの? てっきり はぐれたのはうちだけだと思ってたけど」 |
海翔 | 「(みんな好き勝手バラバラになったみたいだ な)」 |
「(ツイぽにもまだ連絡きてないみたいだ し……)」 | |
あき穂 | 「どうする? 探したほうがいいかな?」 |
海翔 | 「そうだな……」 |
海翔 | 「とりあえず投稿しといたよ」 |
「愛理ちゃんだけは早く合流したいんだけどさ。 一応これでお保護者だからね」 | |
あき穂 | 「電話やメールは?」 |
海翔 | 「それが、カバンに入れっぱなしなのかマナーモ ードなのか……」 |
あき穂 | 「そっか……」 |
海翔 | 「ん? ね、あれ……あそこにいるのって……」 |
あき穂 | 「あ、あれ、ジュンじゃない?」 |
海翔 | 「だよね? 何してるんだろ?」 |
淳和 | 「…………」 |
あき穂 | 「なんか、おろおろしてるみたいだけど……」 |
海翔 | 「ひょっとして……迷子?」 |
あき穂 | 「おーい、ジュン!」 |
淳和 | 「八汐くん! あき穂ちゃん!」 |
「わーん、よかったよ〜! やっと見つかった 〜!」 | |
「気づいたらみんないなくなってるし、変な人に 声かけられるしで、怖かったよ〜」 | |
海翔 | 「変な人?」 |
淳和 | 「うん。なんかおっきくて不思議なしゃべり方す る人」 |
「『ちょい、そこのもえもえ褐色肌のお嬢さん。 ああ、別に怪しいものじゃないですお』っ て……」 | |
海翔 | 「それで逃げ出したの?」 |
「…………」 | |
あき穂 | 「なにか気になるの、カイ?」 |
海翔 | 「いや、それって、もしかしたらジュンちゃんが 困ってそうだから、声かけてくれたのかな…… って」 |
淳和 | 「え? だったら悪いことしちゃたかも……」 |
あき穂 | 「その人はどこに?」 |
淳和 | 「えっと……ごめん、走って来ちゃったからわか らない……」 |
「あうぅ、悪いことしちゃった……」 | |
海翔 | 「(ま、しょうがない。縁があれば、そのうち会 うこともあるかもしれないし……)」 |
「ていうかさ、ジュンちゃん。困ったならメール なり電話なりすればよかったのに」 | |
淳和 | 「あ、そっか……」 |
海翔 | 「(それすら忘れるくらいテンパってたってこと か……)」 |
「そうだ、ジュンちゃん。愛理ちゃん見なかっ た?」 | |
淳和 | 「いえ……あ、ううん、待って。ほら、あれ。あ のお店から出てきたの、愛理ちゃんじゃ……」 |
あき穂 | 「あ、ほんとだ。おーい、アイリー!」 |
海翔 | 「良かった。こんなところにいたんだ」 |
愛理 | 「い、いえ。ちょっと……」 |
海翔 | 「ん? 愛理ちゃん、なにか落としたよ?」 |
愛理 | 「あ、それは……」 |
あき穂 | 「なに、これ、本? それにしては随分薄っぺら いけど……」 |
淳和 | 「ほんとだ……って、え? これ……」 |
あき穂 | 「うわっ!」 |
淳和 | 「わわわわっ!」 |
海翔 | 「あの……愛理ちゃん……?」 |
愛理 | 「えっと……これはその……」 |
「……東京秋葉原は南西の風、晴れ、ときどき曇 り、でしょう」 | |
海翔 | 「いや、そういう時だけゲジ姉になってもダメだ から……」 |
あき穂 | 「あ、あのさ、カイ。別に無理に合流しなくても いいんじゃないかな?」 |
海翔 | 「でも、何かあったら困るでしょ」 |
あき穂 | 「みんな子どもじゃないんだし、大丈夫だよ」 |
「それよりさ、その……せっかくだから、一緒に ぶらぶらしない?」 | |
海翔 | 「どこか行きたいところ、あるの?」 |
あき穂 | 「それは特にないけど……」 |
海翔 | 「だったら、みんなで合流したほうがいいでし ょ。これだけ人が多いなか、無駄に歩いても疲 れるだけだし」 |
あき穂 | 「う〜、もう〜!」 |
海翔 | 「どうしたの、アキちゃん?」 |
あき穂 | 「わっかんないな、カイは! うちはカイとふた りで歩きたいって言ってるの!」 |
海翔 | 「え?」 |
あき穂 | 「せっかく東京まで来たんだしさ……少しくらい はふたりの時間があっても、いい……じゃ ん……」 |
海翔 | 「アキちゃん……」 |
あき穂 | 「ダメ……かな?」 |
海翔 | 「いや。うん、そうだね。せっかくだし、少しふ たりで歩こうか……」 |
あき穂 | 「カイ……」 |
海翔 | 「……えっと、それじゃあ……」 |
あき穂 | 「う、うん。行こっか……」 |
あき穂 | 「……カイ」 |
海翔 | 「ん?」 |
あき穂 | 「実はさ……うち、いつかこういう風にしたいっ て思ってたんだ」 |
海翔 | 「こういう風?」 |
あき穂 | 「カイとふたりでこうやって、都会の街を歩いた り……それから、ああいうオシャレなカフェで お茶したり……」 |
海翔 | 「前に東京きた時だって、ふたりだったでしょ」 |
あき穂 | 「それはそうだけど、あの時とは違うじゃん」 |
海翔 | 「(アキちゃん……)」 |
あき穂 | 「や、やっぱり変かな?」 |
海翔 | 「いや、そんなことないよ」 |
「(アキちゃんも、やっぱり女の子だね。いつま でもロボットロボット言ってるわけじゃないっ てことか……)」 | |
あき穂 | 「ああああああっ!!」 |
海翔 | 「どうしたの、アキちゃん?」 |
あき穂 | 「あそこ!!」 |
海翔 | 「あ、アキちゃん!? どこ行くの!」 |
あき穂 | 「見て見て、ほら! このガンヴァレル! 限定 販売でどうやっても手に入らなかったやつ!!」 |
「うわぁ、欲しいなぁ。あー、でもさすがに高い なぁ……」 | |
「あー! これは、イベントで販売されたってい うグッズ!」 | |
「こういうのって、地方じゃ手に入らないんだよ ね!」 | |
「いいなぁ、欲しいなぁ……」 | |
海翔 | 「(前言撤回。やっぱりアキちゃんはいつまでも アキちゃんだよね……)」 |
あき穂 | 「うぅぅ〜、たぎるぅ〜〜!!」 |
海翔 | 「……ま、いいか」 |
「無理に合流しなくても、みんなそれぞれ好きな ようにやるだろうし」 | |
「……とはいっても、ひとりだと特にやることな いんだよね」 | |
「……しょうがない。とりあえずひと通りぶらぶ らしてみようか」 | |
海翔 | 「(うわ……この辺りはすごいな。電気店にメイ ドさんに……戦国武将みたいな人もいる し……)」 |
海翔 | 「ん? あれは……」 |
「いや、でもまさかこんなところに……」 | |
澤田 | 「おや?」 |
「八汐海翔……?」 | |
海翔 | 「やっぱり……」 |
澤田 | 「どうして君がこんなところにいるんだ?」 |
「ああ、そういえば、ロボ博なんてのがやってた な。なるほど、あれを見に来たのか」 | |
海翔 | 「それだけじゃないけどね。そっちこそ……」 |
「(でも、ここって、どう見ても……メイド喫茶 だよな?)」 | |
「もしかしてそういう趣味?」 | |
澤田 | 「限定メニューがあると言うのでな。気になって 来てみた」 |
海翔 | 「限定メニュー?」 |
澤田 | 「マカロンをふんだんに使ったケーキだ」 |
海翔 | 「甘いもの、好きなの?」 |
澤田 | 「おかしいか?」 |
海翔 | 「いや……」 |
澤田 | 「まあ、こういう店もたまには悪くない。それで は、また」 |
海翔 | 「あ、一応教えとくけど、口の端にクリームつい てるよ」 |
澤田 | 「そうか。教えてくれてありがとうニャン」 |
海翔 | 「…………」 |
「……ニャン?」 | |
「まあいいや。それよりみんな、ホントにどこ行 ったんだろう?」 | |
海翔 | 「…………」 |
海翔 | 「よし、っと」 |
「とりあえず、誰か来るかもしれないし、しばら くこの辺りをぶらぶらしておくか……」 | |
海翔 | 「誰も来ない……」 |
「しょうがない。とりあえず向こうに――」 | |
「ん?」 | |
「あれは……こなちゃん?」 | |
フラウ | 「…………」 |
海翔 | 「(なにしてるんだろう? しばらく様子を見て みようか……)」 |
フラウ | 「…………」 |
海翔 | 「(特に動くでもなんでもないし……)」 |
フラウ | 「…………」 |
海翔 | 「(このままじゃどうにもならないな)」 |
「おーい、こなちゃ――」 | |
??? | 「おわっ」 |
海翔 | 「あ、すみません!」 |
??? | 「い、いや、こちらこそすまんね」 |
海翔 | 「(……今の人、大きい人だったな……)」 |
「っと、そんなことより今は……おーい、こなち ゃーん!」 | |
フラウ | 「八汐先輩……」 |
海翔 | 「そこでぼけーっと突っ立って何してるのさ?」 |
フラウ | 「べ、別になにもしてないですしおすし」 |
「つ、つか、八汐先輩もしかして見てた?」 | |
海翔 | 「まあ、ちょっとの間ね」 |
フラウ | 「は!? さ、さては八汐先輩、わ、私のことを 眺めながら、口では言えないような妄想 を……!」 |
海翔 | 「してないよ」 |
フラウ | 「う、嘘だッ!!」 |
「そんなこと言って、頭の中で乱暴したんでし ょ。エロ同人みたいに! エロ同人みたいにー っ!」 | |
海翔 | 「ちょっと、こなちゃん。こんな人の多いところ でなんてこと言ってるの」 |
フラウ | 「だ、大丈夫だ、問題ない」 |
「なぜならここは秋葉原。そういう発言が許され る街」 | |
海翔 | 「いや、それ秋葉原在住の人に聞かれたら怒られ るよ、普通に」 |
「で、こなちゃん、何してたの?」 | |
フラウ | 「べ、別に……ちょっと人を待ってただけ」 |
海翔 | 「人?」 |
フラウ | 「スーパーハッカー」 |
海翔 | 「知り合い?」 |
フラウ | 「ね、ネット上では」 |
海翔 | 「ふーん。約束してたの?」 |
フラウ | 「してませんがなにか?」 |
海翔 | 「してないの?」 |
フラウ | 「つ、ツイぽ見たら近くにいるっぽかったから」 |
海翔 | 「連絡すれば?」 |
フラウ | 「だが断る!」 |
海翔 | 「なんで?」 |
フラウ | 「ぐ、偶然会えたら会おうという複雑な乙女ゴコ ロ」 |
海翔 | 「ふーん……」 |
「(こなちゃんが、人を、ね。どんな人だろ?」 | |
フラウ | 「ど、どうせ薄い本でも買いに行ってると思って たに100ペリカ」 |
海翔 | 「思ってないよ」 |
フラウ | 「わ、私だって四六時中そんなこと考えてるわけ じゃないですしおすし」 |
海翔 | 「…………」 |
フラウ | 「そ、それじゃ私はこれで……」 |
海翔 | 「え? 待ち人は?」 |
フラウ | 「あきらめましたがなにか?」 |
海翔 | 「いや……別にいいけど……で、どこいくの さ?」 |
フラウ | 「う、薄い本を買いに行くにきまってますお、キ リッ!」 |
海翔 | 「ま、いっか。もうちょっとぶらぶらしてみよ う」 |
海翔 | 「へぇ……この辺りまでくると、結構静かなんだ な……」 |
海翔 | 「…………」 |
「(どうしよう……)」 | |
「(特に興味があるわけでもないけど、喉も乾い たし……)」 | |
「(よし。話のタネに、思い切って入ってみよ う!)」 | |
「(でも、その前に……)」 | |
「よし……これでオッケー。さて……」 | |
昴 | 「よくぞ帰って来たな、わが祝福の女神よ――」 |
海翔 | 「え? 昴くん……?」 |
昴 | 「にゃあああっ! や、八汐先輩っ!? にゃん でここにっ!?」 |
海翔 | 「ちょっと喉が渇いて……っていうか、昴くんこ そなにしてるの?」 |
「もしかして、そういう……」 | |
昴 | 「ち、違う! 違うんです! ただその……秋葉 原をぶらぶらしていたら、どうしても欲しいパ ーツが……」 |
海翔 | 「パーツ?」 |
昴 | 「今作ってるロボット用の」 |
「でも資金が足りなくて悩んでたら、たまたま通 りがかったここのオーナーが一日バイトしない かと……」 | |
「ちょうど今、イベント週間だからと……」 | |
海翔 | 「そ、そう……でも、なんでその格好で……」 |
昴 | 「素だと恥ずかしいじゃないですか」 |
海翔 | 「(そっちの方がよっぽど恥ずかしけど……てい うか、なんで持ってきてたの、その服……)」 |
昴 | 「そ、そういうわけで、僕はもう少しここでバイ トしなければなりません」 |
「ですから、皆には適当に誤魔化しておいてくだ さい」 | |
海翔 | 「誤魔化す? 素直に言えばいいじゃない」 |
昴 | 「い、嫌ですよ! こんな格好でバイトしてたな んて知られたら、なんて言われるか……」 |
海翔 | 「(まあ、そうだろうけど……)」 |
昴 | 「いいですか? 絶対にみんなには言わないでく ださいよ。絶対ですよ」 |
海翔 | 「昴くん。それ言ってくれってことじゃ……」 |
昴 | 「違います!」 |
海翔 | 「だよね」 |
「(あ、しまった。だったら……)」 | |
昴 | 「失礼。お客さんが来たようです」 |
「アイアム・ミスター・プレアデス! よくぞ帰 って来たな、わが祝福の女神よ――」 | |
あき穂 | 「え?」 |
淳和 | 「日高……くん……?」 |
昴 | 「にゃっ!?」 |
愛理 | 「ミスター・プレアデス……?」 |
フラウ | 「こ、コスプレメガネktkr!」 |
昴 | 「にゃ、にゃんで皆さんが……」 |
海翔 | 「ごめん、昴くん。店に入る前に、ツイぽにここ にいるって言っちゃった」 |
あき穂 | 「おぉぉ、やっぱかっこいいね、ミスター・プレ アデス!」 |
淳和 | 「え? そ、そうだね……」 |
愛理 | 「えっと……趣味はそれぞれですよね」 |
フラウ | 「おまわりさんこのひとです」 |
昴 | 「よ、400光年の彼方まで逃げたい……」 |