モニタの横にいるのは、今一番お気に入りのアニメ、 ブラチュー――『ブラッドチューン THE ANIMATION』の 星来たん(1/8スケール・覚醒前ver)だ。 |
萌えるポーズを取って僕に微笑みかけてくれている。 |
モニタの横には、今一番お気に入りのアニメ、 ブラチュー――『ブラッドチューン THE ANIMATION』の 星来たん(1/8スケール・覚醒前ver)が、 萌えるポーズを取って僕に微笑みかけてくれている。 |
「Fly and cross Fly and cross 約束は今――」 |
「Fly and cross Fly and cross 果たされるから――」 |
「Fly and cross Fly and cross 解き放たれた――」 |
「Fly and cross Fly and cross 終末――」 |
(中略) |
---|
「月夜の光が 示された従者よ――」 |
(中略) |
「この場所へ繋がる 幻の道――」 |
(中略) |
「叫びはいつしか 沈黙に変わって――」 |
(中略) |
「落ちてゆく安息 風に手と手を繋いで……」 |
「杭を打て 杭を打て――」 |
(中略) |
---|
「闇夜を切り裂き 月光を浴びて――」 |
(中略) |
「幾千もの鉄槌は 汝の痛みとなりて 今解き放たれる――」 |
(中略) |
「やがて叫びは宙に舞い 夜空は紅く染まるだろう――」 |
(中略) |
「十字の杭は力となり やがて聖域へと辿り着く……」 |
その申し出を無視して、僕はビルのエントランスに向かう。 |
エントランスと言っても、エレベーターホールへ通じる狭い入り口だ。 少し階段状になっていて、そこを登ろうと足を上げた途端、激痛が走っ てまたよろけそうになった。 |
その申し出を無視して、僕はビルのエントランスに向かう。 |
このビル――KURENAI会館っていう8階建ての雑居ビルは、築2 2年っていうオンボロだ。 |
薄汚いし、エレベーターホール――ホールっていうほど広くないけど― ―は照明が切れていて暗いし、階段は急だし、エレベーターは一応つい てるけど三人乗ったらもういっぱいだし昇降スピードもイライラするぐ らい遅い。 |
ここの屋上にあるコンテナハウスが、僕のベースだ。 |
ここに決めたのは、単純に親のコネ。どうやらこのビルのオーナーとは 知り合いらしく、家賃をかなり安くしてくれたんだ。学校まで徒歩10 分っていうのも好条件だった。 |
ホントは秋葉原に住みたかったけど、親がここじゃないとひとり暮らし は認めてくれなかったから、しょうがなくここに決めた。 |
ま、住めば都っていう言葉もある通り、実際に住んでみるとなかなか悪 くなかったのは幸いだったけど。 |
1階はテナントみたいだけど、僕がここに住むようになってからずっと シャッターが閉じたままだ。 |
その1階テナントのすぐ脇に狭い入り口があって、その奥がエレベータ ーホールだった。入る部分が少し階段状になっていて、そこを登ろうと 足を上げた途端、激痛が走ってまたよろけそうになった。 |
ベッドの脇に、星来たん(変身前・天之河星来ver)が立っていた。 |
ベッドの脇に、星来たんが立っていた。 |
判は愛想笑いを浮かべつつ腰を低くし、席に着く。腹を下してトイレに 籠もっていた、という遅刻の理由はとても言い出せる雰囲気ではなかっ た。 |
(中略) |
---|
所轄の刑事たちが、諏訪の報告を聞き逃すまいと必死にメモを取り始 める。 |
(中略) |
画面に、円山町の狭くて汚らしい路地裏が映し出される。 夜で、しかも街灯があまりないせいで、ほとんどなにも見えない。 |
(中略) |
「科捜研で解析した結果、映っている人物は男、年齢は10代後半から20 代とのことッス……で、です」 |
判は愛想笑いを浮かべつつ腰を低くし、上座に並ぶテーブルの端に並ぶ。 腹を下してトイレに籠もっていた、という遅刻の理由はとても言い出せ る雰囲気ではなかった。 |
(中略) |
---|
判たち本庁組と正対するように下座に並べられたテーブルに座ってい る渋谷署の刑事たちが、諏訪の報告を聞き逃すまいと必死にメモを取 り始める。 |
(中略) |
画面に、円山町の狭くて汚らしい路地裏のモノクロ映像が映し出される。 夜で、しかも街灯があまりないせいで、ほとんどなにも見えない。 |
(中略) |
「科捜研で解析した結果、映っている人物は男、年齢は10代後半から20 代とのことッス……です」 |
>>510 ニュージェネ予言ってコレのことか? 月夜の光が 示された従者よ この場所へ繋がる 幻の道 叫びはいつしか 沈黙に変わって 落ちてゆく安息 風に手と手を繋いで ちなみに漏れはアンチファンタでつ凸(-_-#) ファン怖いしwww なんかみんな洗脳されてんじゃね? |
(中略) |
---|
(カット) |
(中略) |
解釈次第では、『集団ダイブ』のことを意味していると見えなくもない。 |
しかもこの詞は、2ヶ月前に発表された歌のものだ。 つまり『集団ダイブ』事件が起こってから書かれたものじゃない……。 |
(中略) |
ただ、@ちゃんには『妊娠男』と『張り付け』について予言したとされる 歌の歌詞は載ってなかった。 |
>>510 ニュージェネ予言ってコレのことか? 杭を打て 杭を打て 闇夜を切り裂き 月光を浴びて 幾千もの鉄槌は 汝の痛みとなりて 今解き放たれる やがて叫びは宙に舞い 夜空は紅く染まるだろう 十字の杭は力となり やがて聖域へと辿り着く ちなみに漏れはアンチファンタでつ凸(-_-#) ファン怖いしwww なんかみんな洗脳されてんじゃね? |
(中略) |
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「十字の杭……」 |
(中略) |
どう見ても僕がこの目で見たあの『張り付け』のことを意味していると しか思えない。 |
しかもこの詞は、2ヶ月前に発表された歌のものだ。 つまり『張り付け』殺人事件が起こってから書かれたものじゃない……。 |
(中略) |
ただ、@ちゃんには『集団ダイブ』と『妊娠男』について予言したとさ れる歌の歌詞は載ってなかった。 |
僕は電柱の陰に隠れながら、ライブハウス『GIGANTES』の様子を窺っ ていた。 |
(中略) |
---|
GIGANTESは、渋谷の高架線路沿いの細い道を入っていったところに ある、赤レンガの外観が特徴的な建物だ。 |
(中略) |
ついさっきまで、GIGANTESの前にはファンタズムのファンと思われ る、まるでコスプレイヤーと間違えそうなすごい格好をしたファンた ちがたくさんいた。 |
(中略) |
そのとき、GIGANTESの階段の上にある扉が開き、一瞬だけ中からド ラムの激しく叩かれる音が響いた。 |
(中略) |
僕ひとりじゃ、GIGANTESの前に辿り着くこともできなかっただろ う。 |
(中略) |
三住くんに背中を押され、GIGANTESの階段を無理矢理上らされる。 |
僕は電柱の陰に隠れながら、ライブハウス『GIG−ANTIS』を窺ってい た。 |
(中略) |
---|
GIG−ANTISは、渋谷の高架線路沿いの細い道を入っていったところ にある、赤レンガの外観が特徴的な建物だ。 |
(中略) |
ついさっきまで、GIG−ANTISの前にはファンタズムのファンと思わ れる、まるでコスプレイヤーと間違えそうなすごい格好をしたファン たちがたくさんいた。 |
(中略) |
そのとき、GIG−ANTISの階段の上にある扉が開き、一瞬だけ中から ドラムの激しく叩かれる音が響いた。 |
(中略) |
僕ひとりじゃ、GIG−ANTISの前に辿り着くこともできなかっただ ろう。 |
(中略) |
三住くんに背中を押され、GIG−ANTISの階段を無理矢理上らされる。 |
「“密教の首飾り”」 |
(中略) |
---|
鳥肌が立つ。周囲の温度が、瞬間的に氷点下まで落ちたように思えた。 |
【ポジティブ】 |
僕はようやく理解した。 これは、FESという魔女による淫靡なる宴。 |
【スルー】 |
GIGANTESの外階段を駆け下り、一番下の段にしゃがみ込む。 |
(中略) |
全ての歌詞が聞き取れたわけじゃなかったけど、やっぱりあの歌はニュー ジェネ事件のことを歌っているとしか思えない。 |
「“罪過に契約の血を”」 |
(中略) |
---|
鳥肌が立つ。瞬間的に、周囲の空気が数度落ちたように思えた。 |
【ポジティブ】 |
僕はようやく理解した。 これは、FESという魔女による淫靡なる宴。 信者はFESと悪魔に忠誠を誓い、乱交に耽る。 |
【スルー】 |
GIG−ANTISの外階段を駆け下り、一番下の段にしゃがみ込む。 |
(中略) |
全ての歌詞が聞き取れたわけじゃなかったけど、やっぱりあの歌は 『張り付け』事件のことを歌っているとしか思えない。 |
グリム>つhttp://a07.gyotaku.jp/http://page16.auctions.taboo. co.jp/jp/auction/u15524569 |
(中略) |
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いや、そんなことより星来たんハァハァな画像はどこでつか!? マウスのホイールを回転させて、ページをスクロールさせていった。 |
グリム>つhttp://page16.auctions.Taboo.co.jp/jp/auction/u1552 4569 |
(中略) |
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いや、そんなことより星来たんハァハァな画像はどこでつか!? マウスのホイルを回転させて、ページをスクロールさせていった。 |
言っとくけど萌えない。全然萌えないぞこんなの! |
(加筆) |
「あ、おにぃ! ちょっと待ってよ!」 |
言っとくけど萌えない。全然萌えないぞこんなの! |
本気でウザくなった僕は、まだポカンとしている七海を置き去りにして、 先を急いだ。 |
「あ、おにぃ! ちょっと待ってよ!」 |
「杭が、たくさん、死体に突き刺さってて…… あれ、500本は絶対、こ、超え、超えてた……異常だ……」 |
(中略) |
---|
「ニュージェネの、は、犯人はっ……! 人を、こ、超えた、存在なんだ……!」 |
「杭が、たくさん、死体に突き刺さってて…… あれ、500本は絶対、こ、越え、越えてた……異常だ……」 |
(中略) |
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「ニュージェネの、は、犯人はっ……! 人を、こ、越えた、存在なんだ……!」 |
「うは、覚醒バージョンのコス、エロすぎ。パンもろじゃんか。ふひひ、 だがそれがいい」 |
「ふひひ。顔かわいいよ顔、原作再現度はいまいちだけど、ぷんぷんと 漂うエロスがキジマヨシオらしさだよな。これはこれでGJ」 |
「うは、四つん這いエロすぎ。後ろから見たらパンツ丸出しじゃんか。 ふひひ、だがそれがいい」 |
「ふひひ。テラエロ顔。やっぱこの泣きそうっつーかイキそうにしか見 えない顔がキジマヨシオのいいとこだよな。マジでキジマGJ」 |
「半脱ぎイイ! ヘタに隠してる方がエロいし! この左手の位置とか、 ヤバすぎ」 |
思い出せ……思い出さないとこの悪夢は終わらない……! |
(加筆) |
「ディ……ソード……」 |
そのあまりの安さに、最初自分の耳を疑った。 |
そのあまりの安さに、最初自分の耳を疑った。まさかフィギュアより安 いとは思わなかった。 |
三次元の女子としてはまあまあのレベルは行っているかもしれない。な ぜか目尻に涙をためて、うつむいている。 |
(加筆) |
なにも言おうとしない転校生に、クラスのざわつきはさらに大きくなる。 担任が気遣うように転校生の肩をポンポンと叩く。 |
(中略) |
---|
転校生は一瞬だけ、僕の席のすぐ横で足を止めた。でもこっちを振り返 ろうとはしない。 |
(加筆) |
「同じクラスでよかった」 |
そう言えばさっきの転校生、転校してきた日に僕になにか言ってきたよ うな覚えがある。 |
同じクラスになれてよかったとかなんとか。 |
梨深のことがあってすっかり忘れてたけど、あれってどういう意味だっ たんだろう……。 |
よく分かってるじゃないか。さすが、仮にも僕の妹だな。 三次元妹なんてまったく必要ないけど。 |
よく分かってるじゃないか。仮にも僕の妹だな。 三次元妹なんてまったく必要ないけど。 |
この鎖を辿っていくべきだ、っていう強迫観念めいたものに心を支配さ れていた。 |
(中略) |
---|
白い鎖はやはり、その開放されている扉部分から車内へと伸びていた。 |
(中略) |
できればシートに座りたかったけど、それをすることでまたこの女にな にか言われやしないかと思うと、結局行動に移すことができない。 |
(加筆) |
「お前は何者なんだ?」 |
この鎖を辿っていくべきだ、っていう不思議な錯覚が心を支配していた。 |
(中略) |
---|
白い鎖はやはり、その開放されている扉部分から車内へと延びていた。 |
(中略) |
できればシートに座りたかったけど、それをすることでまたこの女にな にか言われやしないかと思うと、結局行動に移すことができない。 |
「お前は何者なんだ?」 |
それでいいんだよね、星来たん……。 |
覚醒後の星来が、切なそうな表情で僕を見ていた。 |
きっと僕のことが心配で心配でたまらないんだね、ふひひ。 |
モニタ上に、彼女が流麗な仕草で打ち込む文字のひとつひとつが順に表 示されていく。 |
さっき消した文章に比べると、いたってシンプルで短い、用件を伝える だけの内容だ。 |
書き終えると、優愛は少しためらってから、思い切って“送信”のアイ コンをクリックした。 |
「あ……送っちゃった……」 |
モニタ上に、彼女が流麗な仕草で打ち込む文字のひとつひとつが順に表 示されていく。 |
そこまで書いて優愛は手を止める。 |
さっき消した文章に比べると、いたってシンプルで短い内容だった。 |
優愛は少しためらってから、思い切って“送信”のアイコンをクリック する。 |
「あ……送っちゃった……」 |
優愛はショックを受けたかのように、表情を強張らせた。 |
優愛はショックを受けたかのように、表情を青ざめさせた。 |
特徴的な、赤レンガの外壁。ライトアップされた『GIGANTES』 の大きな看板。 |
特徴的な、赤レンガの外壁。ライトアップされた『GIG−ANTIS』 の大きな看板。 |
【ポジティブ】 |
---|
ついつい、スカートの中のVゾーンへと目が行っちゃいそうになる。 その欲情を必死に理性で抑えつけた。 |
【ネガティブ】 |
ついつい、太ももの付け根――Vゾーンへと目が行っちゃいそうになる。 その欲情を必死に理性で抑えつけた。 |
(中略) |
それとも、無理に理性を抑えつけずに、欲情したら襲っちゃっても構わ ないよ、って誘ってるのかな? |
【ポジティブ・ネガティブ共通】 |
そんな価値観なんて一撃でぶっ飛んでしまうほどの破壊力が、今の梨深 にはあった。 |
【ポジティブ】 |
---|
ついつい、スカートの中のVゾーンへと目が行っちゃいそうになる。 その欲情を必死に理性で押さえつけた。 |
【ネガティブ】 |
ついつい、太ももの付け根――Vゾーンへと目が行っちゃいそうになる。 その欲情を必死に理性で押さえつけた。 |
(中略) |
それとも、無理に理性を押さえつけずに、欲情したら襲っちゃっても構 わないよ、って誘ってるのかな? |
【ポジティブ・ネガティブ共通】 |
そんな価値観なんて一撃で破壊されるほどの破壊力が、今の梨深にはあ った。 |
セナは押し黙ると、持っている大剣を両手で軽々と振り回し、霞の構え を取った。 グッと腰を落とし、上半身を前のめりにする。 |
セナは押し黙ると、持っている大剣を両手で軽々と振り回し、居合いの ような構えを取った。 グッと腰を落とし、上半身を前のめりにする。 |
最初は平然な顔をしていた他の刑事たちも、やがて事態の深刻さに気付 いて次々とその場にしゃがんだり、テーブルの下に潜り込む。 |
最初は平然な顔をして他の刑事たちも、やがて事態の深刻さに気付いて 次々とその場にしゃがんだり、テーブルの下に潜り込む。 |
蒋軍さんが入室しました 現在のメンバー:2人 |
蒋軍:久しぶり |
蒋軍:僕のことキライ? |
蒋軍:プレゼントを贈るよ |
蒋軍:喜んでもらえると嬉しい |
【ポジティブ】 |
---|
蒋軍:ころしてやる |
【以下、共通】 |
蒋軍さんが退室しました 現在のメンバー:1人 |
将軍さんが入室しました 現在のメンバー:2人 |
将軍:久しぶり |
将軍:僕のことキライ? |
将軍:プレゼントを贈るよ |
将軍:喜んでもらえると嬉しい |
【ポジティブ】 |
---|
将軍:ころしてやる |
【以下、共通】 |
将軍さんが退室しました 現在のメンバー:1人 |
あやせは目を開き、渋谷のビル群の上に横たわる赤錆色の空へと視線 を巡らせた。 |
(中略) |
---|
冷たい風が頬を優しく撫でるのを感じて。 眼下に目をやれば。 |
迫り来るのは、空中に浮かぶ扉。 その扉の向こうに、あやせが求める“空”があった―― |
あやせは目を開き、渋谷のビル群の上に横たわるくすんだ色の空へと 視線を巡らせた。 |
(中略) |
---|
冷たい風が頬を優しく撫でるのを感じて、あやせはすべてから解放さ れた気分になった―― |
『世紀の超能力者、ユーリ・ブライトマンが推薦する驚異のエスパー少 年。緊急生出演!』 『ニュージェネ犯人の正体を透視か!?』 |
『世界の超能力者、ユーリ・ブライトマンが推薦する驚異のエスパー少 年。緊急生出演!』 『ニュージェネ犯人の正体を透視か!?』 |
「帰ったらさ、あたしのパンツ見ながら、いっぱいエッチなこと想像して いいから」 |
「帰ったらさ、あたしのパンツ見ながら、いっぱいオナニーしていいから」 |
その場に尻餅をついた男から一歩だけ後ずさり、奇妙なポーズを取る。 腰を落とし、両手の拳を自身の耳の横に添えるような形。 |
その場に尻餅をついた男から一歩だけ後ずさり、奇妙なポーズを取る。 前屈みになって腰を落とし、両手はその腰の横に添えた。 |
「なにか違いに気付きませんか?」 |
「あ……!」 |
会議室にどよめきが起きる。 |
「背景がね、違うんです」 |
「投稿映像のカメラは北東へ向かってる。5人が転落したのが北東だった から間違いない」 |
「で、映像では3分29秒から約15秒間、カメラが左右へ大きく振れるん ですが」 |
「そのときに、東に向いたときの映像が、この右側の写真なわけです」 |
「コーネリアスタワーの東。つまり六本木方面ですね」 |
「東京タワーが夜景の中にしっかり映ってる。赤いから目立ちますね」 |
「でもね……。もうひとつ、よく目立つものが、映ってないんですよ」 |
判は、その目を細め、顎のヒゲを手のひらでさすりながら、口許に自嘲 気味な笑みを浮かべた。 |
「六本木ビルズですよ」 |
確かに、投稿映像から抜き出したという写真の方には、六本木ビルズの 明かりが見られない。 |
「なにか違いに気付きませんか?」 |
判は思わせぶりな態度で、広い会議室をゆっくりと見回し、最後に松永 へと視線を据えた。 |
「君は弁護士にでもなったつもりかね?」 |
「要点を分かりやすく説明したまえ」 |
判の隣では、諏訪がしきりに首をひねっている。 他の刑事も戸惑いの色を隠そうとしなかった。 |
「背景がね、違うんです」 |
「投稿映像のカメラは北東へ向かってる。5人が転落したのが北東だった から間違いない」 |
「で、映像では3分29秒から約15秒間、カメラが左右へ大きく振れるん ですが」 |
「そのときに、東に向いたときの映像が、この右側の写真なわけです」 |
「コーネリアスタワーの東。つまり六本木方面ですね」 |
「東京タワーが夜景の中にしっかり映ってる。赤いから目立ちますね」 |
「でもね……。もうひとつ、よく目立つものが、映ってないんですよ」 |
「よく目立つもの?」 |
判は、その目を細め、顎のヒゲを手のひらでさすりながら、口許に自嘲 気味な笑みを浮かべた。 |
「六本木ビルズですよ」 |
「あ……!」 |
会議室にどよめきが起きる。 |
確かに、投稿映像から抜き出したという写真の方には、六本木ビルズの 明かりが見られない。 |
普段まったく運動なんてしない、筋肉量ゼロの僕でさえ簡単に押さえ 込むことができた。 |
(中略) |
---|
まずは淫語だ。 淫らな言葉をこの気弱な転校生に言わせてやろう。 ふひひ、なんというエロス。 |
「レマン湖って言え」 |
「…………」 |
転校生は顔をみるみる紅潮させた。涙を目にためながら、それまで以上 に必死に首を振る。 |
「栗とキリギリスって言え」 |
「……っ」 |
嫌がってる仕草に、ますます嗜虐心をかき立てられる。 |
「ちんすこうって言え」 |
「ちんすこう♪」 |
「え!?」 |
ま、まあ、最後のはともかくとして……。 |
僕は自分の席でうつむいたまま、脳内で転校生に屈辱的な行為の数々 をやらせてみた。 |
ふひひ。たまらん。 |
普段まったく運動なんてしない、筋肉量ゼロの僕でさえ簡単に抑え込 むことができた。 |
(中略) |
---|
まずは淫語だ。 淫らな言葉をこの気弱な転校生に言わせてやろう。 ふひひ、なんというエロス。 |
「ちんすこうって言え」 |
「…………」 |
転校生は顔をみるみる紅潮させた。涙を目にためながら、それまで以上 に必死に首を振る。 |
「レマン湖って言え」 |
「……っ」 |
「栗とキリギリスって言え」 |
「っ」 |
嫌がってる仕草に、ますます嗜虐心をかき立てられる。 |
これはもう、この場で公開陵辱するしかないな。『陵辱学園2年蜜組』 っていうエロゲーにあった、僕の気に入っているHシーンを再現してや ろう。 |
自分の手を、ゆっくりと転校生の胸からお腹へと這わせていく。 |
「――っ」 |
転校生はビクンビクンと身を震わせている。 だんだん抵抗する力が弱まってきていた。 |
『悔しい、でも感じちゃう!』っていう感じか? |
ふひひ、かわいい顔してなんという淫乱。 |
僕はこみ上げてくる笑みを隠さず、ニヤニヤと頬を緩めながら、転校生 のスカートの中へと手を突っ込んだ―― |
「ぁ――っ」 |
自分の席でうつむいたまま、そんな妄想に耽る。 |
脳内ではいまや、転校生はあられもない姿で身悶え、可愛らしいあえぎ 声を上げていた。 |
ふひひ。たまらん。 |
転校生は、僕と同じで口ベタなのかもしれない。 |
そう言えば、たまたまかもしれないけど、彼女の喋る声を僕は今まで聞 いたことがなかった。 |
いや、そんなことはどうでもいいんだ。 それより、状況がよく分からない。 |
「それなら簡単なのら。11月13日だよ」 |
「それなら簡単なのら。11月の13日だよ」 |
「グラジオール記黙示録詩編のインスピレーションを受けて作った。第 3章102節よ」 |
「グラジオール・サーガのインスピレーションを受けて作った。第3章 102節よ」 |
ぼくもいると思います。神さまはどこでも見ているから、悪いことをす ると地ごくに行かされるとお母さんも言っていました。 |
ぼくもいると思います。神さまはどこでも見ているから、悪いことをす ると地ごくに行かされるとお母さんも行っていました。 |
「こっちの文庫本は……なになに、『グラジオール記黙示録詩編』? ファンタジー小説っぽいな」 |
(中略) |
---|
「あ、小説とか読む? 俺さ、グラジオール記黙示録詩編ってのが好き なんだけど。岸本さん知ってる?」 |
「こっちの文庫本は……なになに、『グラジオール・サーガ』? ファンタジー小説っぽいな」 |
(中略) |
---|
「あ、小説とか読む? 俺さ、グラジオール・サーガってのが好きなん だけど。岸本さん知ってる?」 |
「でもあたしの推理は間違ってないはず。 タク、気をつけてね。岸本さんは――」 |
「異常だよ」 |
梨深がそんなことを口にするなんて信じられない。 聞き間違いかと思った。 |
「でもあたしの推理は間違ってないはず。 タク、気をつけてね。岸本さんは――」 |
「狂ってるよ」 |
梨深がそんなことを口にするなんて信じられない。 聞き間違いかと思った。 |
セナの足にしがみつくようにして、こっちに顔を突き出している。その 表情はやけに切迫していて―― |
四つん這いになっていて、こっちに顔を突き出している。その表情はや けに切迫していて―― |
ベッドの下の収納ボックスを開ける。 確かそこに、ナイフが入っているはずだった。 |
机の引き出しを開ける。 確かそこに、ナイフが入っているはずだった。 |
「そりゃ、いつもああしろこうしろ言われて、おにぃもイヤだろうけど ……」 |
「そりゃ、いつもいつもああしろこうしろ言われて、おにぃもイヤだろ うけど……」 |
「Fly and cross Fly and cross 約束は今――」 |
「杭を打て、杭を打て――」 |
「空へと突き出た 戒めの祭壇」 |
「主への冒涜 報いの責め苦」 |
「その目に習って 歩み続くがいい」 |
「一つまた一つと 闇に手と手を繋いで」 |
「砂を咬め 砂を咬め 子を宿すような 苦しみを帯びて」 |
「弧を描く 針の跡は 虚ろを快楽に変え 今天を仰いだ」 |
「来るべき世の罪を断ち 羊の群れを飼い慣らして」 |
「感謝の詩が報われたら ハレルヤ。主を賛美賜え」 |
ただ単に反射的にそうしただけ。 そして案の定、どうすることもできなかった。 |
(加筆) |
いきなり、ものすごい風が吹き付けてきた。 |
早足で歩いていた僕は立ち止まり、指摘された右手を見てみる。なぜか 手に、むき出しで5本の焼き鳥を持っていた。串を1本ずつ、握った指 の間に挟んでいる。 |
(中略) |
---|
あっという間に僕は5本の焼き鳥を平らげていた。 |
(中略) |
先端に突き出した、5本の細い骨は噛み砕けない硬さじゃなかった。 |
早足で歩いていた僕は立ち止まり、指摘された右手を見てみる。なぜか 手に、むき出しで五本の焼き鳥を持っていた。串を1本ずつ、握った指 の間に挟んでいる。 |
(中略) |
---|
あっという間に僕は五本の焼き鳥を平らげていた。 |
(中略) |
先端に突き出した、五本の細い骨は噛み砕けない硬さじゃなかった。 |
改札へと続く通路。 そこに“彼”の姿を認めて。 |
「……拓巳しゃん!」 |
失ったはずの――現実の――声で、 梢はその名を叫んでいた。 |
僕の胸。腹。爪先。全身の至るところへと。 拓巳の胸。腹。爪先。全身の至るところへと。 |
その身体に杭を受け続ける。 太く鋭い杭を容赦なく打ち込み続ける。 |
「虫ピンで標本にされた昆虫みたいだな」 「虫ピンで標本にされた昆虫みたいだな」 |
僕の胸。腹。爪先。全身の至るところへと。 拓巳の胸。腹。爪先。全身の至るところへと。 |
太く鋭い杭が容赦なく打ち込まれ続ける。 太く鋭い杭を容赦なく打ち込み続ける。 |
「虫ピンで標本にされた昆虫みたいだな」 「虫ピンで標本にされた昆虫みたいだな」 |
泣かないで。 |
(加筆) |
ディソードの柄を握る手。 力を込める。 |