実験体収容に従事する者は以下の点を守ること ・監視は24時間体制で行うこと。 ・常にセンサーの変化に注意し、 10分ごとに記録を残すこと。 ・実験体に"異常"が発生した場合は、 即座に処分すること。 |
所長からの指示に従い、実験に使用していた "火炎放射像"を、出入り口に移設した。 火炎の威力はすさまじく、 多数の脱走者が突入しても難なく焼き殺せる。 こいつは実に頼りになる門番といえるだろう。 これで、実験体たちの脱獄は不可能に近い。 |
旅行者はたずねた。 「あの男は、自分自身に課せられた判決を 知らないのですかね?」 将校は答えた。 「教えてやっても意味はないでしょう。 なにしろ自分の身体に刻まれるわけですから」 フランツ・カフカ 『流刑地にて』より |
母さん… 助けて、母さん… 実験体と呼ばれて、 拷問を受ける毎日が続いている… 僕が何をしたと言うんだろう? どうして僕はこんな目にあってるんだ!? 痛いよ 怖いよ もう気が狂いそうだ… |
実験体の状態を表すセンサーは、 アドレナリンとノルアドレナリンの分泌量による "恐怖"の度合いによって色が変化する。 緑 :平常 橙 :緊張 赤点滅:恐怖 赤 :発症 実験中に実験体のセンサーが“赤” すなわち“発症”した場合は、即射殺せよ。 |
男は門の中へ入れて欲しいと申し出た。 門番は答えた。 「そんなに入りたいなら、禁止にそむいて入るがいい。 だがいいか、わしはいちばん下っぱだ。 この先にいる門番たちは、ふるえあがるほど恐ろしい」 フランツ・カフカ 『掟の門』より |
脱獄を計った被検体J038号を射殺。 死体は廃棄物として処理。 2階の入り口側にある1号房は 壁の補修完了まで使用禁止とする。 |
8月7日 理由も分からず捕らえられて数日。 奴らはここで実験と称して、来る日も来る日も 拷問を繰り返している。 他にも同じように捕らえられている人がいるのか? なぜ? なんのためにこんなひどいことを? |
8月8日 共に囚われた弟は、火を噴く像に左腕を焼き尽くされ、 さらに回転する刃物を備えたイカれた像で、 左足を吹っ飛ばされた。 明日は、残りの腕と脚に同じことをするらしい。 弟の「早く殺してくれ」という叫び声が耳から離れない。 看守は、恐怖に震える俺に、 「弟が生きながらえるよう祈れ。 弟が死ねば、次はおまえの番になるのだ」と告げた。 |
8月9日 待ち受ける苦痛への恐怖と絶望しか 感じられない日々。 死んだ方がマシだ… 弟の声が聞こえなくなった… 看守の足音が、近づいてくる… |
傷だらけにはなったが、 どうにか施設から逃げ出せた。 今でも信じられない… あそこで行われていたのは、 ただひたすら、人に恐怖を与え続ける行為… まったく狂ってるとしか言いようがない。 |
森で会った連中にその話をしても、 どうにも信じてもらえない。 やはりみんな、あの救世主を 絶対の存在と信じている。 確かに俺も信じていた、事実を知るまでは…。 |
島の外に助けを求めようと、 通信塔から連絡をとろうとしたが、 まるで通じない。 この島は孤立しているんだ! この事実を早く誰かに伝えなければ、 島の連中はみんな食い尽くされてしまう! 救世主と崇められる、あの女に… |
2008.10.11 地図には存在しない島。 ある文献からその存在を知った私は、 好奇心に駆られるままに島へと降り立った。 着いて間もなく、とんでもないことになった。 上陸するために乗ってきたヘリを没収され、 島の者たちに捕らわれてしまったのだ。 今は廃屋に監禁されている。 私に対するこの島の者たちの反応は異常だ。 言葉にするのは難しいが、何かがおかしい。 何だ…? |
2008.10.12 島の者たちが、私の処遇について 話し合いをしているようだ。 私が怪しい者ではないことを 必死で訴えてみるが、一向に耳を貸そうとしない。 私は、どうなってしまうのか… |
2008.10.19 素性のわからないよそ者に、 この島が知られてしまったことを よく思っていないのだろうか。 興味本位で来てしまったことを本当に深く 後悔している。 |
2008.12.10 外の様子がおかしい。 一体何が起きているのか? 周囲に人の気配が感じられず、 ときおり獣のようなうなり声が聞こえる。 私は…捨てられてしまったのか? |
2008.12.19 食事も水も つきた。 わたしは このまま ここで ころされてしまうのか。 |
2008.12.26 みず のみ たい |
2009/11/8 今回は、"本番"に近い状況を想定し、 11人の実験体に腕輪型特殊センサーを装着、 強い精神的負荷を断続的に与えて、 実験体の経過を観察した。 結果、3人は即死。 8人は"発症"したため射殺処理。 全員が負荷による恐怖に耐えられなかった、 という結果をもって実験は終了。 |
あの方の施設に行ったきり 帰ってこない夫を、迎えに行った。 施設の人たちは、私の不安を察して、 とても親切にしてくれた。 感染防止のための注射を打ってくれたり、 お守りだと言って腕輪までつけてくれた。 |
こんな立派な施設を建ててくださるなんて、 やっぱりあの方は、この島を救ってくれた 素晴らしい救世主だわ。 一瞬でも、あの方を疑ってしまった 自分が恥ずかしい。 |
気のせいか、さっきから、頭がフラフラする… 通された奥の部屋で、夫とやっと会うことができた。 でも困ったわ。 首から下が ないんだもの。 これじゃ一緒に帰れない じゃない。 |
さっきから、お守りの腕輪が、 ビービーと鳴って耳障り 早く夫 の 体をみつけ て かえらない と 息子がお なかを す かせ ま てる |
・GPSユニットを確認。おそらく俺たちの場所は探知されている。 ・送受信機で向こうからの音声はもちろん、こちらの声も届いてる。 ・周波数解析の結果、送信はこの島の中心で障害の少ない高い位置、 つまり、あの塔だ。あの女はそこにいるに違いない! ・生体センサーでつけている者のヴァイタルサインが送られている。 あの女はマジで俺たちのことを監視しているらしい。 こいつはウィルスの投与もハッタリじゃねぇ。 早くなんとかしなきゃ、マジでやべぇ! |
「この島に囚われてきた者たちへ」 俺たちは何者かに拉致され、ここで目覚めた。 ニール、ペドロ、エドワード、ゲーブの4人だ。 ここがどこだか、他に誰かいるのか、 何もわからない。 周りからは、人間のものとも獣のものともつかない 遠吠えが聞こえる。それも、複数だ。 いったい、何がどうなってやがる!? |
手には妙な腕輪が付けられている。 そこから女の声がして"ヴォセク"とかいう場所へ 向かえと言われた…。 もし、このメモを見た仲間がいたら、 腕輪の指示通り"ヴォセク"で落ち合おう。 幸運を祈る。 ゲーブ |
愛するあなたへ 鉱山へ出稼ぎに出て、一年になるわね。 島を復興させたあの方の計らいで、 あなたも、村の仲間もみんな、 鉱山の仕事にありつけて、本当に良かったわ。 でも、なぜなの? 約束の期間は過ぎたのに、あなたは帰ってこない… |
いいえ、あなただけじゃないわ 仲間の誰一人として、 この村には帰ってきていない… 鉱山では、生物が有毒ガスの影響を受けて、 目に見えない恐ろしいバケモノに変異したという、 信じられない噂も耳にしたわ。 あなたの無事を心から祈っています。 一日も早く、帰ってきて。 |
救世主様がこの島に来られてからというもの、 島は見違えるように好況になった。 鉱山に新たに建設された施設に、 俺たち島民を、雑用だけでなく研究員としてまで、 大量に雇用してくれるなんて。 まさに救いの神だ。 |
中には救世主様を疑う連中もいるが、 意味が分からない。 気に入らないのなら、そいつらが 島から出ていけばいいんだ。 |
2010/1/24 試験ウィルス「t-Phobos」は、完成まであと一歩。 先の改良によって、t-ウィルスの持つ致死性は抑制され、 「精神的な強い負荷によって発症する仕組み」は、 みごとに実現された。 また、実験体の抗体率も2%以下と、目標値を達成している。 我々に与えられた時間はあと少し。 本番は近い。ミスは許されないのだ。 |
憐れなる我が父よ。 新世界の秩序を自ら創造する望みも、 老いと病には逆らえなかった。 全てを手にした貴方を裏切った命に捧げる。 叡智の限りを注いだ"息子"の手で、 忘却の無へと葬り去られた、 憐れなる我が父よ。 |
ここに誓いましょう。 不遜なる貴方の"娘"めが、 貴方の強大な力と莫大な富を、 貴方が忘却した無の底より、 手をのばし貰い受け、 新世界の秩序を、永劫の叡智を、不滅の命を、 必ずやつかんでみせましょう。 この先、貴方の霊が救われることなく、 憤怒の歯ぎしりが永遠の無で響くことを…。 |
ただ静かに、"死"を受け入れよ |
困ったことになった。 親から譲り受けたこの工場を、 なんとか潰すまいと必死の努力を続けて来たが、 もうダメかもしれない。 理由は単純だ。 ぱったりと注文が途絶えちまったからだ。 こいつは間違いなく、あの女の仕業だ! この工場を明け渡すように、 執拗に要請し続けていやがったからな…。 |
こちらが思い通りにならないとわかって 強硬手段に出やがった…というわけだろう。 ふざけやがって! 女王気取りか!? やはり、あいつに逆らってこの島で 生きていくのは、今となっては もう不可能ってことなのか。 工場長の立場は保証すると言ってやがるし、 悔しいが従うしかないみてぇだ…。 |
光が射す場所に、"道"はひらかれる |
俺の大切な工場が、 大変なことになっちまってる…! いったい何を考えてやがるんだ! あの女は! 「セキュリティのため」だとか言ってるが、 配置されたのはどれもイカれた仕掛けじゃねえか! これになんの意味があるってんだ!? 全く意味が分からねぇ。 どう育てられたら、あんな風になるんだ? どういう趣味をしてやがるんだ。 |
俺にできたことと言えば、どうしようもない怒りを あの女にぶつけまくっただけ。 その結果、工場長の立場も奪われ、 工場は完全にあの女に乗っ取られちまった…。 まあ、これ以上あの女に逆らうのは 賢明じゃないってことは身にしみて分かった。 おとなしく謝ることにしよう。 俺も我が身は可愛いからな。 |
答えもなく先へ進むのは、ただの命知らずだ。 決断は"確信"を持って、行われるべきである。 ただし、目の前に答えがあるとは限らない… |
ザインと呼ばれるこの地で、 改革から繁栄を、共に聖母様に仕えし者たちよ。 神聖なる儀に備え、その身を捧げし我が同胞たちよ。 同じ絆で結ばれし、スチュアート、 我らが聖母様の「転生の儀」を見届けるまで、 お守りすることを、誓う。 後、君たちと相まみえる、その時まで。 ともに絆で結ばれし同胞たちよ。 安らかに眠れ。 |
「真実を知るものよ、順に盟友を弔え。 さすれば、罪の枷は解き放たれる!」 1人目は、愚か者だったため墓が無い 2人目は、顔が背中についている 3人目は、4人目の3つ隣の前にいる 4人目は、首がなくなっている |
スチュアートへ 暗黒の大陸より忌むべき「闇の血」が届いた。 感染力が極めて高く、多くの可能性を 秘めている。 さすが我が兄、アルバートが完成させた だけのことはある。 時を待たず所長へ送り、 「闇の血」の研究を進めさせよ。 |
t-Phobosの完成も間近である。 これで「儀」の式へむけ、 必要なものはすべて揃った。 我らの計画は、必ずや達成されるであろう。 |
聖母様 「転生の儀」へ向けた実験の成功、心より祝福申し上げます。 このスチュアート、長年にわたりお手伝いをさせて頂きましたこと、 身に余る光栄でございます。 選別された"器"に申し分はございません。 「儀」の式は、無事成功すると確信しております。 新たな世界に秩序をもたらす、創造の主となられること、 絆で選ばれし同胞たちにとって、この上なき喜びであります。 |
しかしながら、神聖なる「儀」の式へむけた計画のためとはいえ、 数多の犠牲を払ってきたことも事実であります。 その罪、産みの苦しみと覚悟しておりました。 そして、成功にはその罪を浄化する罰が必要であると考えます。 来る「転生の儀」を滞りなく転生へと導くため、 聖母様の産みの苦しみをわかちあうため、 我が身を罰し、この命を捧げます。 心配にはおよびません。 このスチュアート、同胞たちとの邂逅が、待ち遠しい限りです。 |
親愛なる新世界を望む者たちへ よろこんでくれ。 いよいよ我が師に報いる時だ。 ようやく目的の物を手にする時がきた。 ここまではすべて、私の筋書き通り。 あとはあの女と、最期の取引を終えるのみだ。 あれを手につかめば、 いよいよ世界の秩序は変わる。 |
そう、この「ザイン」を見舞った 狂った惨劇の数々が、ほどなく全世界でも 繰り広げられることになるだろう。 そのときこそ再び、我々の名が世に響く時、 怠惰をきめた世界に裁きを下す。 私はただ、我が師、モルガン様が かつて行った「テラグリジア」での計画を、 役者を変えてやり直しているに過ぎない。 |
あの女はそのために利用させてもらった。 しかし、仲間までも欺いたことにも 罪悪感はない、と言えば嘘になる。 だが、世界を目覚めさせるためには やむを得ない。 崇高なる理想は、尊き犠牲の上に成り立つ。 彼らの犠牲は、決して無駄にはしない。 |
スチュアートへ リストの通り、テラセイブ関係者の中でも 特に耐性がありそうなメンバーを選んだ。 皆、過去にバイオテロやウィルス絡みの 事件事故で、強い恐怖体験をしているが、 精神的ダメージが少なかった者たちばかり。 恐怖への耐性は保証済みというわけだ。 望み通りの被験者だろう? |
あとは好きにすればいい。 「ザイン」を凶夢に染めろ。 俺は、お前たちのバックアップにまわる。 何かオーダーがあれば連絡しろ。 |
01 ニール・フィッシャー 02 クレア・レッドフィールド 03 ガブリエル・チャベス(ゲーブ) 04 ジーナ・フォリー 05 (黒く塗りつぶされている) 06 モイラ・バートン 07 ペドロ・フェルナンデス 08 (黒く塗りつぶされている) 09 ナタリア・コルダ 10 (黒く塗りつぶされている) 11 エドワード・トンプソン |
1988.7.19. 娘が生まれた。 名は、イリーナとママがつけた。 去年死んだオレのばあさんの名と同じだ。 反対したが、ママには逆らえない。 目と鼻が、オレにそっくりだ。口元はママだな。 島の短い夏に生まれた子は丈夫に育つときいた。 今年も採鉱のおかげで島の景気は上々。 それもこれもイリーナの恵み、親バカだな。 こんな暮らしがいつまでも続いてくれれば、 娘を安心して育てられる… |
1994.7.19. イリーナが6歳になった。 早いものだ。 ちかごろは、パパのマネをするとママがおこる。 算数がとくいなのは、ママよりばあさんの血だ。 いよいよあぶないと噂だった鉱山資源がカラッケツ、 底をついたようで家もスッカラカンだ。 このままでは、オレも仕事がなくなってしまう。 イリーナのためにも、がんばらねば。 |
2000.7.19. イリーナももう12歳。 オレとも口をきかなくなった。何を考えているのか。 にらむときだけ、オレの目をみるぐらいだ。 そっくりなのが気に入らないとは、こまった。 ザインに来た資産家の女のおかげでオレにも仕事ができた。 枯れたはずの鉱山に新しい施設をつくったとか。 島の連中は、やれ救世主さまだの、聖母さまだのと、 もてはやしているようだが、オレは気にくわない。 金持ちは信用するなって、死んだばあさんもいってた。 とはいえ、助かっているのは間違いないが。 |
2008.7.19. イリーナがハタチになった。 来週から鉱山に働きに出ることになった。 オレは反対したが、あの娘が聞くはずもない。 頑固なのは、オレにそっくりだと、 去年いっちまったママもいっていたが、そのとおりだ。 施設の連中を嫌うオレは、 いまでは町でもかわりモンあつかいだ。 きっとイリーナは、それも嫌だったんだろう。 それにしても、気がかりで仕方ない。 次はいつ会えるだろうか… |
2009.7.19. 娘と別れてもう1年だ。 ザインには病をかかえた者があふれて、 どんどんおかしなことになっている。 あの女がオレたちに何かしたにちがいない。 ばあさんのいいつけを娘にまもらせるべきだった。 もう手遅れだ。オレはすべてをすてて町を出た。 しかし、島から出るのは不可能だ。 この下水道に逃げ込むのがやっとのことだ。 イリーナ…お前にあいたい。必ず助けに行く。 オレには、お前だけが最後の希望だ… |
・リフト、電動ドアなど施設内の設備は、 発電機を所定の位置に置くことで動作する。 ・発電機がなくなった場合、 奥の倉庫のものを利用すること。 ・発電機を運ぶ場合は、ベルトコンベアを利用すること。 |
この採掘場には死体が どんどんはこばれてくる。 お父さんが言ってたとおりだった。 あのひと、アレックスは、 ザインをたすけにきた、 救世主さまなんかじゃない。 あのひとの目的は、 「ばけもの」たちをつくること…。 |
あたしたちは、知らないうちに、 手伝いをさせられていたんだ。 みんな、おかしな薬を打たれて、 もうメチャクチャ…だよ。 パパに会いたい…。 今、どこ…? きっとこの島はもう、 お終いなん だ。 |
あ たしも、もうメチャ くちゃ みえ なくなってき た あ たま くちゃっとし て じ かけない か ゆ くて かいた ら くず れ た お もしろ い もろ い あた し て あ し ぐ す く ず れて い く |
あ たし か らだ が めち ゃ ぐし ゃ ぱ ぱ ごめ ん なさ ぱぱ ぱ ぱ ぱ ぱ |
2010/2/8 本日のt-Phobosの実験においても、 多数の実験体が処分となった。 3日分の実験で出た実験体の死骸はおよそ30体。 いつも通り回収し、採掘場に廃棄すること。 |
スチュアートへ 適合者はやはり、例の小娘で決まりだな。 他の被験者にも見込みはあったが、 彼女は次元が違う。 何せ、"恐怖"の感情そのものが欠落している。 おそらく幼少時、故郷のテラグリジアで起こった バイオテロ事件での、隣人たちの大量虐殺に加え、 両親を目の前で失ったことが原因だろう。 |
耐え難い体験によるトラウマは、 彼女から"恐怖"の感情を奪った。 唯一の欠点は、少しばかり幼すぎることだが、 それもやがて時間が解決する。 彼女こそ、お前たちが、 求めていた"器"とやらにふさわしいだろう? |
「転生の儀」のために記す… 憐れなる我が父スペンサーが、その晩年に ワラにもすがる思いで執着していた不滅の力、 "不老不死"の研究は、未完成で終わっていた。 私は彼の研究を引き継ぎ、その核となる技術、 "精神と記憶の転移システム"の実験改良を 繰り返してきた。 一定の成果は得られたが、いまだ不安定な 部分も多い。 |
現時点で判明している必要条件は、以下のとおり 1."器"は新たな精神と相対する"恐怖"に打ち克つ、 強い精神力を有していなくてはならない。 2."器"への負荷を最小限にするため、 転移後の定着と安定に約半年の期間を要する。 私に与えられた時間は決して長くはない。 一刻も早く、完成を急がねば… |
私は、この醜悪な物語を深く愛し憎んでいる。 これは、兄妹にまつわる死の刻印だ。 物語は、主人公グレーゴル・ザムザが、 ある朝、目覚めると巨大で醜い毒虫に 変身していたことからはじまる。 家族は、突如姿を変えた彼に 戸惑いつつもはじめは守ろうとするのだが、 毒虫に変身した彼を理解することは出来ず、 やがて見捨てられていく。 |
ついに献身的であった妹・グレーテにすらも 見捨てられた時、その命運は尽き、 やがて兄・グレーゴルは独り静かに死を迎える。 私は、グレーテのように、兄弟を見捨てはしない。 血を分けた兄弟と命運を共にする。 私は、グレーゴルのように醜い毒虫に変身はしない。 創造主にふさわしい姿へと生まれ変わる。 |
先月の状況報告 ノルマ達成率:80% 落下死者数:4人 仕事中に事故が起こると、 人員の補充に時間が取られ、 毎月のノルマ達成に支障をきたします。 落下しないよう、安全を心がけてください。 |
今月の状況報告(半月分) ノルマ達成率:55%(概ね順調) 落下死者数:1人 落下原因 クレーン最上部に乗った状態で作業中、 下の者がクレーンを動かしたことによる転落。 人員補充済み、ノルマ達成に現状支障なし。 クレーン最上部に上がっての作業は、 くれぐれも注意してください。 |
研究所から、ウィルスが流出した。 男は、ほとんどが醜い狂人になり、 女は、もがき苦しみながら死んでいった…。 襲いかかってくる狂人たち… かつては仲間だった者たちを撃ち殺しながら、 必死で逃げ回った…。 |
最後にたどり着いたのは、仕事場だった。 30年間、苦楽を共にしたクレーン。 その上に今、俺はいる。 無意識にここにたどり着くなんて、 俺ってやつは骨の髄まで 仕事人間らしい。 |
銃の弾はまだ残っている。 ここを死に場所に決めた。 俺にはお似合いだ。 仕事ばかりでかまってやれなかった家族に、 あの世で謝りたい。 |
付近の地脈から、 有毒ガスが発生している。 少しの間なら害はないが、 長時間吸い続けると、呼吸困難に陥り、 意識を失って命を落とす危険がある。 作業する際は、時間に十分注意して 作業をすること。 |
有毒ガスが日に日に濃度を増し、 範囲を広げている。 地下施設へ通じるエレベーターは、 もう空調なしでは使えない。 だが、換気システムは 膨大な電力を消費するため、 常時運転させることはできない。 |
せっかく再開したこの鉱山開発も、 このままでは長くはもたないだろう…。 鉱山での仕事がなくなれば、 この島はいよいよお終いだ…。 |
2.11 ついに俺も念願の、女神様のお膝元、 鉱山施設で働くことになった。 ここで一財産稼いでやる。 働くことになってわかったことだが、 ここの下層には薬品開発の研究所があるらしい。 許可された者しかアクセスできないとか、 ずいぶんと厳重なようだが、 何の研究をしてやがるんだ? |
3.24 研究所には、女神様のお抱えの研究員どもがいて、 島の連中も下働きだが、高給で雇われているらしい。 最初は俺も、羨ましいと思っていた…。 だが最近、下働きとして見ても、 大して知恵のなさそうな、使えない連中までもが 呼ばれるようになった。 それも、多いときは数十人単位ときている。 そして誰一人、帰って行く姿を見たことがない…。 どっか別のところに出口でもあるのか? |
4.2 たまたまだったんだ。 奥に運びだされる荷物の中を見てしまった。 あれはもしかすると人間… いやいや、そんなはずはない…と思いたい。 いくらなんでも、そんなむごいマネは…。 …胸騒ぎがする。 家族が心配になってきた。 |
4.15 くそったれ。 やっぱりあの研究所で行われていることは、 ただごとじゃない! 俺はついにこの目で確かめたんだ! 研究員が毎日運んでいる荷物の中身… 島民たちのバラバラにされた姿を。 なにが女神様だ。 あいつはこの島をメチャクチャにする気だ! |
4.25 俺は真実を知るために、 あの女への面会を申し出たが、断られた。 こうなったら力ずくで行くしか無い。 あんなか細い女、腕をひねり上げれば、 泣いてすべてを喋るだろう。 過酷な労働にこれまで耐え抜いてきたんだ。 力には自信がある。 俺は島を救う。ヒーローになってやる。 待っていろよ、アレックス! |
以下の研究用素体を培養プラントへ輸送 素体数:70人分 対象者:工業地区 17-21ブロックの住民 |
今思えば、t-Phobosのプロトタイプを 発見できたことは、とても運が良かった。 人が恐怖したときに分泌される、 ノルアドレナリンに反応するウィルス。 それを見つけた時、研究所の仲間に話しても、 「そんなものは役に立たない」と一蹴された。 しかし、アレックス様は違った。 |
私の報告書に目を通されたアレックス様は、 その特性に深く興味を持たれ、 私を研究リーダーに抜擢してくださった。 t-Phobosが完成間近となり、その実績が買われて 所長の地位につけたのも、あの方のおかげだ。 アレックス様に貢献できたことを、 とても光栄に思う。 |
今日から死体を使った、 「ウロボロス・ウィルス」の実験研究を 行うことになった。 施設には毎日、大量の死体が 届くことになっている。 スチュアート様の周到な手配のおかげで、 研究のための材料には事欠かない。 |
さっそく死体に投与すると、 まるで操り人形のように動き出した。 しかもこいつは実に攻撃的で、 目の前の人間に襲いかかろうとしてくる。 こいつはまるで生物兵器…B.O.W.のようだ。 |
1.ウロボロス・ウィルスは有機物から増殖する。 死体に投与すると、核を形成し増殖をはじめ、 有機物を取り込み、生命活動を開始する。 2.核を中枢として増殖を行うため、 核を破壊すると生命活動は維持できない。 3.有機物の取り込みによる増殖能力は非常に高く、 万が一このウィルスが施設外に流出してしまうと、 島中に蔓延してしまうおそれがある。 セキュリティは厳重に取り扱う必要がある。 |
実験体に殺害された研究員の遺体を、 培養監察室の奥にある 死体安置所へ移動し、殺菌処理を施した。 鍵などの遺品についても、 念のため安置所において殺菌し、保管する。 |
培養プラントのセキュリティレベルが、 Lv2に設定された。 実験中の事故により研究主任が死亡した事が 原因だろう。 所長室にて、Lv2の認証カードの配布が 行われるそうだが、俺は対象外になりそうだ。 ウロボロス・ウィルスを用いた培養実験は ずいぶん危険らしい。 |
本日、スチュアート様から「闇の血」と呼ばれる モノが届いた。あのアルバート様が完成させた、 「ウロボロス・ウィルス」のサンプルだ。 t-Phobosについては研究開発は終了したので、 次はこいつがメインの研究材料となる。 施設の地下部分はウロボロス・ウィルスの研究用に おおきく改造を施した。 アレックス様へのさらなる貢献のため、尽力したい。 |
私は…いまだ生きている… あの死は、私の死ではなかった… それは全て自らが招いたこと、 ああ。 あの引き金を引く瞬間、 私が、世界から消滅することに、 私が、恐怖を覚えるなんて… 死に損ない、病魔に侵された肉体を、 ウィルスの力にすがり、 生き存えるとは… |
私は…なんて醜いのか、 私が、醜い醜い醜い、 ワタシじゃない、私が醜い… しかも、まもなく、 転生したもう一人の私が、覚醒する、 その時、醜い姿に変身し生き存えている。 許されない、 私は、認めない、 こんな姿を覚醒した、 私が、私に笑いものにされる。 |
私は…なんて醜いのか。 私こそ、私なのに。 私こそ、覚醒した私だったのに。 そうよ。 ああ。そうだわ。 私は、私しかワタシじゃない、 だから、ヤツはワタシじゃない…! だから、ヤツはニセモノ…まがいもの! だから、消滅するのは…ヤツ 殺さなければ… |
ワタシがワタシにあるために、 ワタシが…ザインで存在するため、 そうよ。 「闇の血」そそぎましょう… あの忌むべきウロボロスを島中に… ヤツを…消滅するのよ… ヤツを…恐怖するまえに… 死が、お前を抱きしめるわ、ナタリア… お前が消える時、 その時、ワタシはワタシに転生するのよ、 ああ。 ナタリア…死ね…ナタリア… |
今回の実験において 重要な「キーパーソン」だとされているのは、 被験者番号02、クレア・レッドフィールド。 そして、そのクレアと行動を共にしている 被験者番号06、モイラ・バートン。 二人の関係に興味を覚え関係資料を整理すると 興味深い繋がりに気づく。 |
二人の出会ったきっかけをさかのぼると、 そこには全世界にバイオテロが蔓延するきっかけ 1998年の「ラクーン事件」に辿りつくのだ。 1998年当時、学生だったクレアは、 「ラクーン事件」に巻き込まれるも、 生還した数少ない人物の一人である。 そんなラクーンシティの治安を守る 特殊部隊「S.R.A.R.S」の生存者が モイラの父、バリー・バートンと クレアの兄、クリス・レッドフィールドだった。 |
クリスはのちに対バイオテロ特殊部隊 「BSAA」の設立メンバーとなる。 バリーは、クリスに誘われコンサルタントとして 入隊した。 そこでクレアは、バリーとモイラに出会う。 クリス、クレアとバリー親子は意気投合し、 家族のような間柄になったようだ。 この出会いが、モイラをテラセイブへと導き、 今回の被験者リストに名を連ねることになった。 |
すべてのはじまりは「ラクーン事件」。 それは、今回の実験が行われることになった 経緯と繋がるのだ。 これら偶然を皮肉とかたづけることは出来ない。 すべては運命だったのかもしれない。 |
「BSAA北米支部内のメールサーバーから入手。 参考として下記に転載」 |
クリスへ アフリカでの任務から帰還したと聞いた。 ご苦労だった。 行方不明だったジルを救出できたそうだな。 サイコウにハッピーなニュースだ。 報告を聞いたときは、飛びあがって喜んだ。 |
なんせ俺たち3人は、ラクーンシティを支えた 「S.R.A.R.S」なんて大それた名の特殊部隊時代から、 もう十年以上の付き合いだ。 親友とか戦友とかじゃ語れない間柄になっている。 いろいろと訊きたいことはあるが、 さすがのおまえも今は疲れていることだろう。 まずは、ゆっくり体を休めてくれ。 |
おまえもジルも、しばらく事後処理で忙しいだろうが、 落ち着いたらゆっくり酒でも飲もうじゃないか。 バリー・バートン |
被験者番号02、クレア・レッドフィールドの兄、クリスは、 数多のバイオテロ事件に関係したことで知られた人物だ。 アルバート・ウェスカーと因縁のあった男である。 クリスは、国連管轄の対バイオテロ部隊、「BSAA」に所属。 “オリジナル・イレブン”と呼ばれる同組織を立ち上げた メンバーでもある。 |
2009年、アフリカ・キジュジュで発生した バイオテロ事件を鎮圧。 この際、アルバート・ウェスカーを殺害したと 記録されている。 現在は、後進の育成に力を入れはじめたようで、 現場のエージェントから離れ、 「BSAA」北米支部でチーム隊長となっている。 |
被験者番号02、クレア・レッドフィールド。 被験者番号06、モイラ・バートン。 彼女らの関係についての更なる調査を整理する。 |
二人の仲がより深まったのは、 モイラが小学生だった頃にさかのぼる。 クレアの兄、クリスとモイラの父、バリーが 「ラクーン事件」以後も連絡をとり続けた結果、 家族ぐるみの付き合いとなったようだ。 モイラは、クレアを実の姉のように信頼し、 慕っている。 証拠にモイラは父、バートンの反対を振り切り、 クレアの後を追うようにテラセイブへ入隊した。 |
このような調査報告から考えてみても、 モイラのクレアに対する敬慕は深いようだ。 この敬慕が、実験にどのような影響を及ぼすか。 実験をへた二人の関係がどのように変化するのか、 楽しみである。 我々が注目しているのは、 相対的な環境の変化と感情の関係。 恐怖の発生へと繋がる根源に迫ることだ。 |
「BSAA」北米支部内での記録を入手致しました。 被験者番号06、モイラ・バートンの父に関する略歴です。 氏名:バリー・バートン 血液型:A型 現在:「BSAA」北米支部コンサルタント 家族:妻と娘2人(モイラ・ポリー)の4人家族 在住国:カナダ |
1998年の「ラクーン事件」後、関係組織からの報復が、 家族に及ぶことを危惧し、家族を連れカナダに亡命。 その後は数年、家族との隠遁生活を続けていたが、 クリス・レッドフィールド、ジル・バレンタインの 招へいに応じて「BSAA」のコンサルタントに就任。 現在に至る。 |
カフカの「変身」に登場するグレーゴルの人生は、 まるで生前のカフカ自身を象徴するかのようだ。 堅実な仕事場に勤める 平凡な毎日を補うかのように 狂気と孤独に溢れた作品をあてもなく 書き綴る生活。 その上、狂気に満ちた作品群が、 周囲に理解されることは少なく、 友人、家族とも孤立した存在だったのでは ないだろうか。 |
やがて病に倒れ、病室で苦痛を友に過ごした時間は、 死への恐怖、無理解への恐怖、孤立への恐怖と 戦う日々だったのではないだろうか。 しかし、それらの恐怖から生まれた感情こそが、 作品世界を濃厚な狂気と冷静な分析で、 構築する原動力となったことは、確かだろう。 |
そう。恐怖とは、人の生存本能から発生し、 その生命力を測る基準となるモノなのだ。 数多くの作品と紡ぎながらも生前には、 そのほとんどが出版されることはなかった。 そんな彼は自分の死後、 全ての作品を破棄することを数少ない友に託した。 現実という地獄の業火で焼き尽くせ、と。 |
しかし、友は作品の持つ力に魅せられ、 後世の人間たちに残した。 そして、我々は、残された恐怖という名で 綴られた作品が持つ生命力に時を超えて、魅せられる。 フランツ・カフカ…、 その名は、孤独と狂気が恐怖で綴られた作品によって、 永遠不滅の力を手に入れた。 |
恐怖は感染する。 現実という名の地獄で。 再び蘇るのだ。 永遠不滅の力を手に…。 |
被験者番号02、クレアは少女たちを惹きつける 特別な何かを持っているようだ…。 そのはじまりは「ラクーン事件」の際、 G-ウィルスの開発者であるウィリアム・バーキンの 娘シェリーを死地から救出したことから。 現在も彼女とは、親しい間柄が続いているようである。 |
そんなシェリーは、事件の際にG-ウィルスの“胚”を 体内に埋め込まれており、 救出後も合衆国の監視下に置かれていた。 だが、合衆国から極秘裏に流れてきた情報によると、 監視が近々解かれる、とのことである。 ただし、監視が解除される理由までは 記録されていなかった。 また2005年、ハーバードヴィル空港での バイオテロ事件の際も、幼い少女に 懐かれていたという報告もある。 |
そして、今回の被験者番号06、モイラとも、 クレアは、幼い頃に出会っている。 彼女自身、バートン家とは家族同然で、 モイラの父、バリーを父親のように思っており、 モイラ、ポリーの二人は妹のように可愛がっている。 モイラが、反抗期で家族との関係がこじれている間も、 クレアとだけは仲が良かったと記録されている。 むしろこの時期に、救いとなったクレアに どんどん傾倒していったようにも考えられる。 |
クレア・レッドフィールド… 恐るべき少女たらしではないか。 いずれにせよ、二人の姉妹のような関係が、 今回の実験によって、 どのような化学反応を起こすのか。 楽しみである。 |
計画の成功を目前に、 志半ばで死んだ惨めな老人のことを記しておく。 そう。私の人生を大きく狂わせた存在、 スペンサー卿についてだ。 |
彼は、この世界で莫大な富と権力を手に入れた。 そして、次なる野望として、 この世界を自分の望む存在へと 進化させることを考えていた。 彼の求める理想的な新たな世界の秩序とは、 選ばれた優秀な人間のみで構成される社会であり、 そこには無能な人間など必要ない、と考えていた。 そんな新世界で《神》になろうとしていたのだろう。 |
次に彼は、世界中から才能あふれる子供たちを集め、 精神と肉体を高めるための過酷な訓練を強要した。 さらに新しい世界の住人としての資格があるかを試すため、 ウィルスを使った耐性試験まで行った。 子供たちはふるい落とされ、最終的に残ったのは二人、 アルバートと、私…アレックスだけだった。 スペンサーは、アルバートと私に命じた。 「私が神になるために手足となって働け」と。 私たちは、彼の命令に従った。 |
しかし、私たちは気づいていた。 我ら二人が、病魔に侵された愚かな老人に 従う理由などひとつもない。 全ては、偽りの忠誠で応え、 私たちこそ老人の富と力を利用させてもらおう、と。 そんなスペンサーは、アルバートの手で殺された。 果てなき欲に魅入られた老人に相応しい滑稽な最期だった。 |
そして、今、必要なものを手に入れた私は理解した。 今なら、あの老人や兄の気持ちが理解出来る。 私こそ、彼らと同じ選ばれた人間なのだ。 世界は、最後に残された私が変えるのだ。 |
クレアさんへ 先日は、活動現場への訪問と差し入れ、 本当にありがとうございました。 |
あの日は、現場調査の作業でテラセイブとの 共同作業だと分かった到着時点から、 BSAA内はざわついていました。 「あのクリス隊長の妹さんがいるぞ!」って。 失礼なことに、皆、クリス隊長の妹ということで、 あの見た目をそのまま女性にしたような パワフルな女性を想像していたようです。 自分はクレアさんを知っていましたので そんなことはない、と言い聞かせていたのですが、 「隊長と遺伝子の半分が同じで、細身はあり得ない」 などとわかるようなわからないようなことを 言っていました。 |
ですから、ごあいさつに来てくださったクレアさんの お綺麗な姿に、隊員内で驚きの声が上がった…というわけです。 あのときクレアさんは何に驚いているのかわからずに 目を丸くしておられましたが、まあ、そういうことです。 バカな連中ですが、皆、クリス隊長を尊敬して、 共に死闘へ立ち向かっていく大切な仲間です。 自分ももちろん、部下を「家族」と呼んで愛し、 命を賭けて守ろうとしてくれる隊長を見て、 いつかはああなりたい、と日々鍛錬にはげんでいます。 まあ、あんな超一流になるには相当な年月が、 かかりそうではありますが…。 |
自分をふくめ隊員たちも、 クレアさんに会いたがっています。 多忙な身の上、なかなか会えるチャンスは、 少ないかと思いますが、またお話しできればと思います。 さて、次の任務が近づいています。 書きたいことはまだまだありますが、このあたりで。 共に、バイオテロのない平和な世界を願って。 BSAA北米支部 ピアーズ・ニヴァンス |
今や聖母様の計画は、 終焉の時を迎えつつある。 もしあのお方が生きておられたら、 今の聖母様に対し、 どんなお言葉をかけられるだろうか… ウェスカーの姓を持つ、もうひとりの人物、 アルバート・ウェスカー様。 その死から早2年が経過している。 |
スペンサー卿が企んだ新人類創造計画。 その名は…「ウェスカー計画」。 過酷な試練を乗り越え、 新人類の資格を得たのは 被験者12号アレックス様と、 被験者13号のアルバート様のみだった。 |
アルバート様は、数年間をスペンサー卿の指示に従い、 製薬会社アンブレラでの研究開発に費やした。 そこで生物兵器B.O.W.の開発を成功させ、 やがてバイオテロの発端とも呼ばれる“洋館事件”、 “ラクーンシティの惨劇”で裏の立役者となった。 その後も彼は、世界中でB.O.W.を利用し様々な事件を 引き起こし、その存在を世に知らしめた。 2006年、ついにアルバート様は師であり父でもある スペンサー卿をその手で葬り去り、 自らを縛る鎖から解き放された。 |
そして、2009年。製薬会社トライセルを抱き込んだ彼は、 「ウロボロスウィルス」を使って、世界の人類を選別し、 父にかわって新世界を創造しようとした。 しかし、アルバート様は、クリス・レッドフィールドと争い、 壮絶な最期を遂げてしまう。 血のつながりこそないが、同じ境遇を持つ二人… いわば兄のような存在であるアルバート様の死が、 聖母様…いや、アレックス様に、 深い悲しみと孤独をもたらした。 |
彼の訃報を聞いたアレックス様は、 私を呼び出し告げたのだ。 「転生の儀の準備を開始しなさい。 私には躊躇している時間などない…」と。 |
失われたアルバート・ウェスカーの計画は、 不老不死となった アレックス・ウェスカーが引き継ぎ、 必ずや遂行するであろう。 その時こそ、スペンサー卿から連なる 全ての計画が一つになる時だ。 |
聖母様が“器”として第1候補にしておられる 被験者番号09、ナタリア・コルダ。 あの小さくもか弱い少女のどこに聖母様は、 自らの可能性を委ねる力を見出されたのだろう。 ニール・フィッシャーからの報告をあらためて整理した。 |
ナタリアは、2004年にイタリア・地中海沖で発生した バイオテロ…すなわち「テラグリジア・パニック」の被害者だ。 彼女は、この事件で親類縁者すべてをうしなっており、その後は、 テラセイブによる庇護の下、同組織の施設で生活していた。 |
テラセイブが、一度だけ「テラグリジア・パニック」について ナタリアに聞き取り調査を行っている。 その記録によると彼女は、現場での光景について、 驚くべき返答を残している。 「きれいだった」と。 数え切れない人間が死に、海に沈んでいく自分の 故郷の姿を、ただ美しいと感じたという。 |
ニール・フィッシャーは、その後の聞き取り調査結果と合わせて、 「ナタリアには“恐怖”という感情が欠落しているのではないか」 と報告している。 確かに彼女の動向を観察していると、 命の危機が迫ることでの不安は感じている様子は見せるが、 「恐怖」を感じているようには見受けられない。 ただし非常に微細な言動差であり、通常の観察では、 異常さに気づくことはなかなかないだろう…。 「テラグリジア・パニック」でのショックが、 彼女の感情を狂わせた…という推測は正しいのだろう。 |
「恐怖」を知らない彼女の精神力は、 聖母様が望むとおり、間違いなく強靭なものだ。 しかし、ひとつの懸念が残る。 ナタリアの精神が「強靭すぎる」可能性だ。 強い心身は、聖母様の精神と記憶を移す“器”に 申し分はないが、懸念が的中した場合は、どうなる? その肉体に転移した聖母様を抑えつけるほどに、 彼女が、強い精神力を有していたとしたら…? |
…邪推はここまでにしよう。 私ごときの懸念など、聖母様も分かっておいでだろう。 聖母様が成功すると確信しておられる。 ならば、計画は、成功する。 聖母様のやることに過ちなど、 今まで一度もなかったのだから。 |
バリーへ。 元気ですか。おひさしぶり。 知っての通り、先日アフリカから無事生還したわ。 私が3年前のアルバート・ウェスカーとの交戦後、 「BSAA」から公式に死亡と認定されたとき、 「目も当てられないほどの悲しみに暮れていた」って、 クリスからも聞いたわ。 |
心配をかけて本当にごめんなさい。 ずいぶん色々なことがあったけれど、私は元気よ。 まあ、少し見た目が変わってしまったから、 ちょっと驚くかもしれないけど…。 |
そう言えば、 奥さんにモイラとポリー、娘さんたちは元気? その後、モイラとは、仲直りしたの? 彼女たちも思春期だから、 何かとあなたとすれ違うのは分かるけど、 娘たちに干渉し過ぎだと思っていたの。 だけど、3年も経っているから解決しているわね? |
今や、あなたはコンサルタントとは言え、 「BSAA」の一員、いつどんな形で 会えなくなるのか分からない。 だから、あなたには家族との時間を 出来るだけ大切に過ごしてほしいの。 あなたのことだから、 これ以上やかましく言うと怒られそうね。 |
というわけで、 私の方は、検査ばかりの退屈な毎日がもうすぐ終わるわ。 すぐ現場復帰に向けたリハビリを始める予定よ。 近いうちに会いましょう。 ジル・バレンタイン 追伸 盛大な復帰祝いを期待してるわ。バリー? |