バイオハザード リベレーションズ2のファイル集


実験体収容の注意事項



実験体収容に従事する者は以下の点を守ること

・監視は24時間体制で行うこと。
・常にセンサーの変化に注意し、
 10分ごとに記録を残すこと。
・実験体に"異常"が発生した場合は、
 即座に処分すること。





警備強化の通知


所長からの指示に従い、実験に使用していた
"火炎放射像"を、出入り口に移設した。

火炎の威力はすさまじく、
多数の脱走者が突入しても難なく焼き殺せる。
こいつは実に頼りになる門番といえるだろう。

これで、実験体たちの脱獄は不可能に近い。




『流刑地にて』の書き写し

旅行者はたずねた。
「あの男は、自分自身に課せられた判決を
知らないのですかね?」

将校は答えた。
「教えてやっても意味はないでしょう。
なにしろ自分の身体に刻まれるわけですから」


フランツ・カフカ 『流刑地にて』より



囚人の手紙
母さん…
助けて、母さん…

実験体と呼ばれて、
拷問を受ける毎日が続いている…

僕が何をしたと言うんだろう?
どうして僕はこんな目にあってるんだ!?

痛いよ
怖いよ

もう気が狂いそうだ…


実験に際しての注意事項

実験体の状態を表すセンサーは、
アドレナリンとノルアドレナリンの分泌量による
"恐怖"の度合いによって色が変化する。

  緑 :平常
  橙 :緊張
 赤点滅:恐怖
  赤 :発症

実験中に実験体のセンサーが“赤”
すなわち“発症”した場合は、即射殺せよ。



『掟の門』の書き写し

男は門の中へ入れて欲しいと申し出た。

門番は答えた。

「そんなに入りたいなら、禁止にそむいて入るがいい。
だがいいか、わしはいちばん下っぱだ。
この先にいる門番たちは、ふるえあがるほど恐ろしい」


フランツ・カフカ 『掟の門』より



脱獄についての報告書




脱獄を計った被検体J038号を射殺。
死体は廃棄物として処理。

2階の入り口側にある1号房は
壁の補修完了まで使用禁止とする。






囚人の日記
8月7日

理由も分からず捕らえられて数日。

奴らはここで実験と称して、来る日も来る日も
拷問を繰り返している。

他にも同じように捕らえられている人がいるのか?
なぜ? なんのためにこんなひどいことを?



8月8日

共に囚われた弟は、火を噴く像に左腕を焼き尽くされ、
さらに回転する刃物を備えたイカれた像で、
左足を吹っ飛ばされた。

明日は、残りの腕と脚に同じことをするらしい。
弟の「早く殺してくれ」という叫び声が耳から離れない。

看守は、恐怖に震える俺に、
「弟が生きながらえるよう祈れ。
弟が死ねば、次はおまえの番になるのだ」と告げた。
8月9日

待ち受ける苦痛への恐怖と絶望しか
感じられない日々。

死んだ方がマシだ…

弟の声が聞こえなくなった…
看守の足音が、近づいてくる…





脱獄者の密告


傷だらけにはなったが、
どうにか施設から逃げ出せた。

今でも信じられない…
あそこで行われていたのは、
ただひたすら、人に恐怖を与え続ける行為…

まったく狂ってるとしか言いようがない。





森で会った連中にその話をしても、
どうにも信じてもらえない。

やはりみんな、あの救世主を
絶対の存在と信じている。

確かに俺も信じていた、事実を知るまでは…。




島の外に助けを求めようと、
通信塔から連絡をとろうとしたが、
まるで通じない。

この島は孤立しているんだ!

この事実を早く誰かに伝えなければ、
島の連中はみんな食い尽くされてしまう!

救世主と崇められる、あの女に…



旅人の日記
2008.10.11
地図には存在しない島。
ある文献からその存在を知った私は、
好奇心に駆られるままに島へと降り立った。

着いて間もなく、とんでもないことになった。
上陸するために乗ってきたヘリを没収され、
島の者たちに捕らわれてしまったのだ。

今は廃屋に監禁されている。
私に対するこの島の者たちの反応は異常だ。
言葉にするのは難しいが、何かがおかしい。
何だ…?

2008.10.12
島の者たちが、私の処遇について
話し合いをしているようだ。

私が怪しい者ではないことを
必死で訴えてみるが、一向に耳を貸そうとしない。

私は、どうなってしまうのか…





2008.10.19
素性のわからないよそ者に、
この島が知られてしまったことを
よく思っていないのだろうか。

興味本位で来てしまったことを本当に深く
後悔している。






2008.12.10
外の様子がおかしい。
一体何が起きているのか?

周囲に人の気配が感じられず、
ときおり獣のようなうなり声が聞こえる。

私は…捨てられてしまったのか?







2008.12.19
食事も水も つきた。

わたしは このまま
ここで ころされてしまうのか。









2008.12.26

みず   のみ たい








模擬実験記録
2009/11/8

今回は、"本番"に近い状況を想定し、
11人の実験体に腕輪型特殊センサーを装着、
強い精神的負荷を断続的に与えて、
実験体の経過を観察した。

結果、3人は即死。
8人は"発症"したため射殺処理。

全員が負荷による恐怖に耐えられなかった、
という結果をもって実験は終了。


市街の住民の手記


あの方の施設に行ったきり
帰ってこない夫を、迎えに行った。

施設の人たちは、私の不安を察して、
とても親切にしてくれた。

感染防止のための注射を打ってくれたり、
お守りだと言って腕輪までつけてくれた。





こんな立派な施設を建ててくださるなんて、
やっぱりあの方は、この島を救ってくれた
素晴らしい救世主だわ。

一瞬でも、あの方を疑ってしまった
自分が恥ずかしい。






気のせいか、さっきから、頭がフラフラする…

通された奥の部屋で、夫とやっと会うことができた。
でも困ったわ。

首から下が ないんだもの。
これじゃ一緒に帰れない じゃない。





さっきから、お守りの腕輪が、
ビービーと鳴って耳障り

早く夫 の 体をみつけ て
かえらない と

息子がお なかを す かせ
ま てる




ペドロの腕輪解析メモ
・GPSユニットを確認。おそらく俺たちの場所は探知されている。

・送受信機で向こうからの音声はもちろん、こちらの声も届いてる。

・周波数解析の結果、送信はこの島の中心で障害の少ない高い位置、
 つまり、あの塔だ。あの女はそこにいるに違いない!

・生体センサーでつけている者のヴァイタルサインが送られている。
 あの女はマジで俺たちのことを監視しているらしい。

 こいつはウィルスの投与もハッタリじゃねぇ。
 早くなんとかしなきゃ、マジでやべぇ!


ゲーブの書き置き

「この島に囚われてきた者たちへ」

俺たちは何者かに拉致され、ここで目覚めた。
ニール、ペドロ、エドワード、ゲーブの4人だ。

ここがどこだか、他に誰かいるのか、
何もわからない。

周りからは、人間のものとも獣のものともつかない
遠吠えが聞こえる。それも、複数だ。
いったい、何がどうなってやがる!?



手には妙な腕輪が付けられている。
そこから女の声がして"ヴォセク"とかいう場所へ
向かえと言われた…。

もし、このメモを見た仲間がいたら、
腕輪の指示通り"ヴォセク"で落ち合おう。
幸運を祈る。

ゲーブ




漁村の女の手紙

愛するあなたへ

鉱山へ出稼ぎに出て、一年になるわね。

島を復興させたあの方の計らいで、
あなたも、村の仲間もみんな、
鉱山の仕事にありつけて、本当に良かったわ。

でも、なぜなの?
約束の期間は過ぎたのに、あなたは帰ってこない…


いいえ、あなただけじゃないわ

仲間の誰一人として、
この村には帰ってきていない…

鉱山では、生物が有毒ガスの影響を受けて、
目に見えない恐ろしいバケモノに変異したという、
信じられない噂も耳にしたわ。

あなたの無事を心から祈っています。
一日も早く、帰ってきて。



市街の住民のメモ


救世主様がこの島に来られてからというもの、
島は見違えるように好況になった。

鉱山に新たに建設された施設に、
俺たち島民を、雑用だけでなく研究員としてまで、
大量に雇用してくれるなんて。

まさに救いの神だ。






中には救世主様を疑う連中もいるが、
意味が分からない。

気に入らないのなら、そいつらが
島から出ていけばいいんだ。






臨床実験記録
2010/1/24

試験ウィルス「t-Phobos」は、完成まであと一歩。

先の改良によって、t-ウィルスの持つ致死性は抑制され、
「精神的な強い負荷によって発症する仕組み」は、
みごとに実現された。

また、実験体の抗体率も2%以下と、目標値を達成している。

我々に与えられた時間はあと少し。
本番は近い。ミスは許されないのだ。


父への悼辞

憐れなる我が父よ。

新世界の秩序を自ら創造する望みも、
老いと病には逆らえなかった。

全てを手にした貴方を裏切った命に捧げる。

叡智の限りを注いだ"息子"の手で、
忘却の無へと葬り去られた、
憐れなる我が父よ。


ここに誓いましょう。

不遜なる貴方の"娘"めが、
貴方の強大な力と莫大な富を、
貴方が忘却した無の底より、
手をのばし貰い受け、
新世界の秩序を、永劫の叡智を、不滅の命を、
必ずやつかんでみせましょう。

この先、貴方の霊が救われることなく、
憤怒の歯ぎしりが永遠の無で響くことを…。



鷹の間の壁文字






ただ静かに、"死"を受け入れよ








工場長の日記(1)
困ったことになった。

親から譲り受けたこの工場を、
なんとか潰すまいと必死の努力を続けて来たが、
もうダメかもしれない。

理由は単純だ。
ぱったりと注文が途絶えちまったからだ。
こいつは間違いなく、あの女の仕業だ!

この工場を明け渡すように、
執拗に要請し続けていやがったからな…。

こちらが思い通りにならないとわかって
強硬手段に出やがった…というわけだろう。

ふざけやがって! 女王気取りか!?

やはり、あいつに逆らってこの島で
生きていくのは、今となっては
もう不可能ってことなのか。

工場長の立場は保証すると言ってやがるし、
悔しいが従うしかないみてぇだ…。



光の間の壁文字






光が射す場所に、"道"はひらかれる








工場長の日記(2)
俺の大切な工場が、
大変なことになっちまってる…!
いったい何を考えてやがるんだ! あの女は!

「セキュリティのため」だとか言ってるが、
配置されたのはどれもイカれた仕掛けじゃねえか!
これになんの意味があるってんだ!?

全く意味が分からねぇ。

どう育てられたら、あんな風になるんだ?
どういう趣味をしてやがるんだ。

俺にできたことと言えば、どうしようもない怒りを
あの女にぶつけまくっただけ。

その結果、工場長の立場も奪われ、
工場は完全にあの女に乗っ取られちまった…。

まあ、これ以上あの女に逆らうのは
賢明じゃないってことは身にしみて分かった。
おとなしく謝ることにしよう。

俺も我が身は可愛いからな。



4つの扉




答えもなく先へ進むのは、ただの命知らずだ。

決断は"確信"を持って、行われるべきである。

ただし、目の前に答えがあるとは限らない…






同胞たちへの弔魂碑

ザインと呼ばれるこの地で、
改革から繁栄を、共に聖母様に仕えし者たちよ。
神聖なる儀に備え、その身を捧げし我が同胞たちよ。

同じ絆で結ばれし、スチュアート、
我らが聖母様の「転生の儀」を見届けるまで、
お守りすることを、誓う。

後、君たちと相まみえる、その時まで。
ともに絆で結ばれし同胞たちよ。
安らかに眠れ。



盟友を解放する巡礼への誘い

「真実を知るものよ、順に盟友を弔え。
 さすれば、罪の枷は解き放たれる!」

 1人目は、愚か者だったため墓が無い

 2人目は、顔が背中についている

 3人目は、4人目の3つ隣の前にいる

 4人目は、首がなくなっている



スチュアートへの指示

スチュアートへ

暗黒の大陸より忌むべき「闇の血」が届いた。

感染力が極めて高く、多くの可能性を
秘めている。
さすが我が兄、アルバートが完成させた
だけのことはある。

時を待たず所長へ送り、
「闇の血」の研究を進めさせよ。




t-Phobosの完成も間近である。

これで「儀」の式へむけ、
必要なものはすべて揃った。

我らの計画は、必ずや達成されるであろう。





スチュアートの遺書
聖母様

「転生の儀」へ向けた実験の成功、心より祝福申し上げます。

このスチュアート、長年にわたりお手伝いをさせて頂きましたこと、
身に余る光栄でございます。

選別された"器"に申し分はございません。
「儀」の式は、無事成功すると確信しております。

新たな世界に秩序をもたらす、創造の主となられること、
絆で選ばれし同胞たちにとって、この上なき喜びであります。
しかしながら、神聖なる「儀」の式へむけた計画のためとはいえ、
数多の犠牲を払ってきたことも事実であります。

その罪、産みの苦しみと覚悟しておりました。
そして、成功にはその罪を浄化する罰が必要であると考えます。

来る「転生の儀」を滞りなく転生へと導くため、
聖母様の産みの苦しみをわかちあうため、
我が身を罰し、この命を捧げます。

心配にはおよびません。
このスチュアート、同胞たちとの邂逅が、待ち遠しい限りです。


新世界を望む者たちへの手紙

親愛なる新世界を望む者たちへ

よろこんでくれ。
いよいよ我が師に報いる時だ。

ようやく目的の物を手にする時がきた。
ここまではすべて、私の筋書き通り。
あとはあの女と、最期の取引を終えるのみだ。

あれを手につかめば、
いよいよ世界の秩序は変わる。


そう、この「ザイン」を見舞った
狂った惨劇の数々が、ほどなく全世界でも
繰り広げられることになるだろう。

そのときこそ再び、我々の名が世に響く時、
怠惰をきめた世界に裁きを下す。

私はただ、我が師、モルガン様が
かつて行った「テラグリジア」での計画を、
役者を変えてやり直しているに過ぎない。



あの女はそのために利用させてもらった。

しかし、仲間までも欺いたことにも
罪悪感はない、と言えば嘘になる。

だが、世界を目覚めさせるためには
やむを得ない。

崇高なる理想は、尊き犠牲の上に成り立つ。
彼らの犠牲は、決して無駄にはしない。




ニールの被験者リスト

スチュアートへ

リストの通り、テラセイブ関係者の中でも
特に耐性がありそうなメンバーを選んだ。

皆、過去にバイオテロやウィルス絡みの
事件事故で、強い恐怖体験をしているが、
精神的ダメージが少なかった者たちばかり。

恐怖への耐性は保証済みというわけだ。
望み通りの被験者だろう?





あとは好きにすればいい。
「ザイン」を凶夢に染めろ。

俺は、お前たちのバックアップにまわる。
何かオーダーがあれば連絡しろ。





01 ニール・フィッシャー
02 クレア・レッドフィールド
03 ガブリエル・チャベス(ゲーブ)
04 ジーナ・フォリー
05 (黒く塗りつぶされている)
06 モイラ・バートン
07 ペドロ・フェルナンデス
08 (黒く塗りつぶされている)
09 ナタリア・コルダ
10 (黒く塗りつぶされている)
11 エドワード・トンプソン



下水道の老人の日記
1988.7.19.
娘が生まれた。
名は、イリーナとママがつけた。
去年死んだオレのばあさんの名と同じだ。
反対したが、ママには逆らえない。

目と鼻が、オレにそっくりだ。口元はママだな。
島の短い夏に生まれた子は丈夫に育つときいた。

今年も採鉱のおかげで島の景気は上々。
それもこれもイリーナの恵み、親バカだな。
こんな暮らしがいつまでも続いてくれれば、
娘を安心して育てられる…
1994.7.19.
イリーナが6歳になった。
早いものだ。
ちかごろは、パパのマネをするとママがおこる。
算数がとくいなのは、ママよりばあさんの血だ。

いよいよあぶないと噂だった鉱山資源がカラッケツ、
底をついたようで家もスッカラカンだ。

このままでは、オレも仕事がなくなってしまう。
イリーナのためにも、がんばらねば。


2000.7.19.
イリーナももう12歳。
オレとも口をきかなくなった。何を考えているのか。
にらむときだけ、オレの目をみるぐらいだ。
そっくりなのが気に入らないとは、こまった。

ザインに来た資産家の女のおかげでオレにも仕事ができた。
枯れたはずの鉱山に新しい施設をつくったとか。

島の連中は、やれ救世主さまだの、聖母さまだのと、
もてはやしているようだが、オレは気にくわない。
金持ちは信用するなって、死んだばあさんもいってた。
とはいえ、助かっているのは間違いないが。
2008.7.19.
イリーナがハタチになった。
来週から鉱山に働きに出ることになった。

オレは反対したが、あの娘が聞くはずもない。
頑固なのは、オレにそっくりだと、
去年いっちまったママもいっていたが、そのとおりだ。

施設の連中を嫌うオレは、
いまでは町でもかわりモンあつかいだ。
きっとイリーナは、それも嫌だったんだろう。
それにしても、気がかりで仕方ない。
次はいつ会えるだろうか…
2009.7.19.
娘と別れてもう1年だ。
ザインには病をかかえた者があふれて、
どんどんおかしなことになっている。
あの女がオレたちに何かしたにちがいない。

ばあさんのいいつけを娘にまもらせるべきだった。
もう手遅れだ。オレはすべてをすてて町を出た。
しかし、島から出るのは不可能だ。
この下水道に逃げ込むのがやっとのことだ。

イリーナ…お前にあいたい。必ず助けに行く。
オレには、お前だけが最後の希望だ…


発電機の取り扱いについて




・リフト、電動ドアなど施設内の設備は、
発電機を所定の位置に置くことで動作する。
・発電機がなくなった場合、
奥の倉庫のものを利用すること。
・発電機を運ぶ場合は、ベルトコンベアを利用すること。






イリーナの遺言

この採掘場には死体が
どんどんはこばれてくる。

お父さんが言ってたとおりだった。

あのひと、アレックスは、
ザインをたすけにきた、
救世主さまなんかじゃない。

あのひとの目的は、
「ばけもの」たちをつくること…。


あたしたちは、知らないうちに、
手伝いをさせられていたんだ。

みんな、おかしな薬を打たれて、
もうメチャクチャ…だよ。

パパに会いたい…。
今、どこ…?

きっとこの島はもう、
お終いなん だ。


あ たしも、もうメチャ くちゃ
みえ なくなってき た
あ たま くちゃっとし て
じ  かけない

か ゆ くて かいた ら
くず   れ  た
お もしろ い もろ い

あた し て あ し
ぐ す く ず れて い く




あ たし  か らだ  が
めち ゃ ぐし ゃ

ぱ ぱ   ごめ ん   なさ

ぱぱ   ぱ ぱ ぱ  ぱ





実験体廃棄指示書



2010/2/8

本日のt-Phobosの実験においても、
多数の実験体が処分となった。

3日分の実験で出た実験体の死骸はおよそ30体。
いつも通り回収し、採掘場に廃棄すること。





ニールの報告書
スチュアートへ

適合者はやはり、例の小娘で決まりだな。

他の被験者にも見込みはあったが、
彼女は次元が違う。

何せ、"恐怖"の感情そのものが欠落している。

おそらく幼少時、故郷のテラグリジアで起こった
バイオテロ事件での、隣人たちの大量虐殺に加え、
両親を目の前で失ったことが原因だろう。


耐え難い体験によるトラウマは、
彼女から"恐怖"の感情を奪った。

唯一の欠点は、少しばかり幼すぎることだが、
それもやがて時間が解決する。

彼女こそ、お前たちが、
求めていた"器"とやらにふさわしいだろう?




転生の儀のための覚書
「転生の儀」のために記す…

憐れなる我が父スペンサーが、その晩年に
ワラにもすがる思いで執着していた不滅の力、
"不老不死"の研究は、未完成で終わっていた。

私は彼の研究を引き継ぎ、その核となる技術、
"精神と記憶の転移システム"の実験改良を
繰り返してきた。

一定の成果は得られたが、いまだ不安定な
部分も多い。

現時点で判明している必要条件は、以下のとおり

1."器"は新たな精神と相対する"恐怖"に打ち克つ、
  強い精神力を有していなくてはならない。

2."器"への負荷を最小限にするため、
  転移後の定着と安定に約半年の期間を要する。

私に与えられた時間は決して長くはない。
一刻も早く、完成を急がねば…



フランツ・カフカの『変身』について

私は、この醜悪な物語を深く愛し憎んでいる。
これは、兄妹にまつわる死の刻印だ。

物語は、主人公グレーゴル・ザムザが、
ある朝、目覚めると巨大で醜い毒虫に
変身していたことからはじまる。

家族は、突如姿を変えた彼に
戸惑いつつもはじめは守ろうとするのだが、
毒虫に変身した彼を理解することは出来ず、
やがて見捨てられていく。



ついに献身的であった妹・グレーテにすらも
見捨てられた時、その命運は尽き、
やがて兄・グレーゴルは独り静かに死を迎える。

私は、グレーテのように、兄弟を見捨てはしない。
血を分けた兄弟と命運を共にする。

私は、グレーゴルのように醜い毒虫に変身はしない。
創造主にふさわしい姿へと生まれ変わる。




クレーン作業報告書(1)


先月の状況報告

ノルマ達成率:80%
落下死者数:4人

仕事中に事故が起こると、
人員の補充に時間が取られ、
毎月のノルマ達成に支障をきたします。
落下しないよう、安全を心がけてください。




クレーン作業報告書(2)
今月の状況報告(半月分)

ノルマ達成率:55%(概ね順調)
落下死者数:1人

落下原因
クレーン最上部に乗った状態で作業中、
下の者がクレーンを動かしたことによる転落。

人員補充済み、ノルマ達成に現状支障なし。

クレーン最上部に上がっての作業は、
くれぐれも注意してください。


水門番の遺書


研究所から、ウィルスが流出した。

男は、ほとんどが醜い狂人になり、
女は、もがき苦しみながら死んでいった…。

襲いかかってくる狂人たち…
かつては仲間だった者たちを撃ち殺しながら、
必死で逃げ回った…。





最後にたどり着いたのは、仕事場だった。
30年間、苦楽を共にしたクレーン。
その上に今、俺はいる。

無意識にここにたどり着くなんて、
俺ってやつは骨の髄まで
仕事人間らしい。






銃の弾はまだ残っている。
ここを死に場所に決めた。
俺にはお似合いだ。

仕事ばかりでかまってやれなかった家族に、
あの世で謝りたい。





有毒ガス発生の警告


付近の地脈から、
有毒ガスが発生している。

少しの間なら害はないが、
長時間吸い続けると、呼吸困難に陥り、
意識を失って命を落とす危険がある。

作業する際は、時間に十分注意して
作業をすること。




鉱山労働者の走り書き


有毒ガスが日に日に濃度を増し、
範囲を広げている。
地下施設へ通じるエレベーターは、
もう空調なしでは使えない。

だが、換気システムは
膨大な電力を消費するため、
常時運転させることはできない。






せっかく再開したこの鉱山開発も、
このままでは長くはもたないだろう…。

鉱山での仕事がなくなれば、
この島はいよいよお終いだ…。






鉱山労働者の日記1枚目
2.11
ついに俺も念願の、女神様のお膝元、
鉱山施設で働くことになった。
ここで一財産稼いでやる。

働くことになってわかったことだが、
ここの下層には薬品開発の研究所があるらしい。

許可された者しかアクセスできないとか、
ずいぶんと厳重なようだが、
何の研究をしてやがるんだ?

3.24
研究所には、女神様のお抱えの研究員どもがいて、
島の連中も下働きだが、高給で雇われているらしい。
最初は俺も、羨ましいと思っていた…。

だが最近、下働きとして見ても、
大して知恵のなさそうな、使えない連中までもが
呼ばれるようになった。
それも、多いときは数十人単位ときている。
そして誰一人、帰って行く姿を見たことがない…。

どっか別のところに出口でもあるのか?


鉱山労働者の日記2枚目
4.2
たまたまだったんだ。
奥に運びだされる荷物の中を見てしまった。

あれはもしかすると人間…
いやいや、そんなはずはない…と思いたい。

いくらなんでも、そんなむごいマネは…。
…胸騒ぎがする。
家族が心配になってきた。


4.15
くそったれ。
やっぱりあの研究所で行われていることは、
ただごとじゃない!

俺はついにこの目で確かめたんだ!
研究員が毎日運んでいる荷物の中身…
島民たちのバラバラにされた姿を。

なにが女神様だ。
あいつはこの島をメチャクチャにする気だ!

4.25
俺は真実を知るために、
あの女への面会を申し出たが、断られた。

こうなったら力ずくで行くしか無い。
あんなか細い女、腕をひねり上げれば、
泣いてすべてを喋るだろう。
過酷な労働にこれまで耐え抜いてきたんだ。
力には自信がある。

俺は島を救う。ヒーローになってやる。
待っていろよ、アレックス!


検体搬送記録




以下の研究用素体を培養プラントへ輸送

素体数:70人分
対象者:工業地区 17-21ブロックの住民






研究所 所長の日記(1)

今思えば、t-Phobosのプロトタイプを
発見できたことは、とても運が良かった。

人が恐怖したときに分泌される、
ノルアドレナリンに反応するウィルス。

それを見つけた時、研究所の仲間に話しても、
「そんなものは役に立たない」と一蹴された。

しかし、アレックス様は違った。



私の報告書に目を通されたアレックス様は、
その特性に深く興味を持たれ、
私を研究リーダーに抜擢してくださった。

t-Phobosが完成間近となり、その実績が買われて
所長の地位につけたのも、あの方のおかげだ。

アレックス様に貢献できたことを、
とても光栄に思う。




研究員の日誌


今日から死体を使った、
「ウロボロス・ウィルス」の実験研究を
行うことになった。

施設には毎日、大量の死体が
届くことになっている。

スチュアート様の周到な手配のおかげで、
研究のための材料には事欠かない。





さっそく死体に投与すると、
まるで操り人形のように動き出した。

しかもこいつは実に攻撃的で、
目の前の人間に襲いかかろうとしてくる。

こいつはまるで生物兵器…B.O.W.のようだ。





ウロボロス・ウィルスについての報告書
1.ウロボロス・ウィルスは有機物から増殖する。
 死体に投与すると、核を形成し増殖をはじめ、
 有機物を取り込み、生命活動を開始する。

2.核を中枢として増殖を行うため、
 核を破壊すると生命活動は維持できない。

3.有機物の取り込みによる増殖能力は非常に高く、
 万が一このウィルスが施設外に流出してしまうと、
 島中に蔓延してしまうおそれがある。

 セキュリティは厳重に取り扱う必要がある。


検体廃棄記録



実験体に殺害された研究員の遺体を、
培養監察室の奥にある
死体安置所へ移動し、殺菌処理を施した。

鍵などの遺品についても、
念のため安置所において殺菌し、保管する。





研究員の覚え書き

培養プラントのセキュリティレベルが、
Lv2に設定された。

実験中の事故により研究主任が死亡した事が
原因だろう。

所長室にて、Lv2の認証カードの配布が
行われるそうだが、俺は対象外になりそうだ。

ウロボロス・ウィルスを用いた培養実験は
ずいぶん危険らしい。



研究所 所長の日記(2)

本日、スチュアート様から「闇の血」と呼ばれる
モノが届いた。あのアルバート様が完成させた、
「ウロボロス・ウィルス」のサンプルだ。

t-Phobosについては研究開発は終了したので、
次はこいつがメインの研究材料となる。

施設の地下部分はウロボロス・ウィルスの研究用に
おおきく改造を施した。

アレックス様へのさらなる貢献のため、尽力したい。



ナタリアへの怨念
私は…いまだ生きている…
あの死は、私の死ではなかった…
それは全て自らが招いたこと、
ああ。

あの引き金を引く瞬間、
私が、世界から消滅することに、
私が、恐怖を覚えるなんて…

死に損ない、病魔に侵された肉体を、
ウィルスの力にすがり、
生き存えるとは…
私は…なんて醜いのか、
私が、醜い醜い醜い、
ワタシじゃない、私が醜い…

しかも、まもなく、
転生したもう一人の私が、覚醒する、
その時、醜い姿に変身し生き存えている。

許されない、
私は、認めない、
こんな姿を覚醒した、
私が、私に笑いものにされる。
私は…なんて醜いのか。

私こそ、私なのに。
私こそ、覚醒した私だったのに。
そうよ。
ああ。そうだわ。

私は、私しかワタシじゃない、
だから、ヤツはワタシじゃない…!
だから、ヤツはニセモノ…まがいもの!
だから、消滅するのは…ヤツ
殺さなければ…
ワタシがワタシにあるために、
ワタシが…ザインで存在するため、
そうよ。
「闇の血」そそぎましょう…
あの忌むべきウロボロスを島中に…
ヤツを…消滅するのよ…
ヤツを…恐怖するまえに…
死が、お前を抱きしめるわ、ナタリア…

お前が消える時、
その時、ワタシはワタシに転生するのよ、
ああ。
ナタリア…死ね…ナタリア…




シークレットファイル


スチュアートの覚書/クレアとモイラ@


今回の実験において
重要な「キーパーソン」だとされているのは、
被験者番号02、クレア・レッドフィールド。
そして、そのクレアと行動を共にしている
被験者番号06、モイラ・バートン。

二人の関係に興味を覚え関係資料を整理すると
興味深い繋がりに気づく。


二人の出会ったきっかけをさかのぼると、
そこには全世界にバイオテロが蔓延するきっかけ
1998年の「ラクーン事件」に辿りつくのだ。

1998年当時、学生だったクレアは、
「ラクーン事件」に巻き込まれるも、
生還した数少ない人物の一人である。

そんなラクーンシティの治安を守る
特殊部隊「S.R.A.R.S」の生存者が
モイラの父、バリー・バートンと
クレアの兄、クリス・レッドフィールドだった。

クリスはのちに対バイオテロ特殊部隊
「BSAA」の設立メンバーとなる。
バリーは、クリスに誘われコンサルタントとして
入隊した。

そこでクレアは、バリーとモイラに出会う。
クリス、クレアとバリー親子は意気投合し、
家族のような間柄になったようだ。

この出会いが、モイラをテラセイブへと導き、
今回の被験者リストに名を連ねることになった。




すべてのはじまりは「ラクーン事件」。
それは、今回の実験が行われることになった
経緯と繋がるのだ。

これら偶然を皮肉とかたづけることは出来ない。
すべては運命だったのかもしれない。





クリスへ宛てたバリーの手紙





「BSAA北米支部内のメールサーバーから入手。
参考として下記に転載」









クリスへ

アフリカでの任務から帰還したと聞いた。
ご苦労だった。

行方不明だったジルを救出できたそうだな。
サイコウにハッピーなニュースだ。
報告を聞いたときは、飛びあがって喜んだ。






なんせ俺たち3人は、ラクーンシティを支えた
「S.R.A.R.S」なんて大それた名の特殊部隊時代から、
もう十年以上の付き合いだ。
親友とか戦友とかじゃ語れない間柄になっている。

いろいろと訊きたいことはあるが、
さすがのおまえも今は疲れていることだろう。
まずは、ゆっくり体を休めてくれ。






おまえもジルも、しばらく事後処理で忙しいだろうが、
落ち着いたらゆっくり酒でも飲もうじゃないか。

バリー・バートン






スチュアートの覚書/クリス・レッドフィールド



被験者番号02、クレア・レッドフィールドの兄、クリスは、
数多のバイオテロ事件に関係したことで知られた人物だ。
アルバート・ウェスカーと因縁のあった男である。

クリスは、国連管轄の対バイオテロ部隊、「BSAA」に所属。
“オリジナル・イレブン”と呼ばれる同組織を立ち上げた
メンバーでもある。





2009年、アフリカ・キジュジュで発生した
バイオテロ事件を鎮圧。
この際、アルバート・ウェスカーを殺害したと
記録されている。

現在は、後進の育成に力を入れはじめたようで、
現場のエージェントから離れ、
「BSAA」北米支部でチーム隊長となっている。




スチュアートの覚書/クレアとモイラA




被験者番号02、クレア・レッドフィールド。
被験者番号06、モイラ・バートン。

彼女らの関係についての更なる調査を整理する。






二人の仲がより深まったのは、
モイラが小学生だった頃にさかのぼる。
クレアの兄、クリスとモイラの父、バリーが
「ラクーン事件」以後も連絡をとり続けた結果、
家族ぐるみの付き合いとなったようだ。
モイラは、クレアを実の姉のように信頼し、
慕っている。
証拠にモイラは父、バートンの反対を振り切り、
クレアの後を追うようにテラセイブへ入隊した。



このような調査報告から考えてみても、
モイラのクレアに対する敬慕は深いようだ。

この敬慕が、実験にどのような影響を及ぼすか。
実験をへた二人の関係がどのように変化するのか、
楽しみである。

我々が注目しているのは、
相対的な環境の変化と感情の関係。
恐怖の発生へと繋がる根源に迫ることだ。



スチュアートの覚書/バリー・バートン


「BSAA」北米支部内での記録を入手致しました。
被験者番号06、モイラ・バートンの父に関する略歴です。

氏名:バリー・バートン
血液型:A型
現在:「BSAA」北米支部コンサルタント
家族:妻と娘2人(モイラ・ポリー)の4人家族
在住国:カナダ





1998年の「ラクーン事件」後、関係組織からの報復が、
家族に及ぶことを危惧し、家族を連れカナダに亡命。
その後は数年、家族との隠遁生活を続けていたが、
クリス・レッドフィールド、ジル・バレンタインの
招へいに応じて「BSAA」のコンサルタントに就任。
現在に至る。





アレックスの覚書/カフカ
カフカの「変身」に登場するグレーゴルの人生は、
まるで生前のカフカ自身を象徴するかのようだ。

堅実な仕事場に勤める
平凡な毎日を補うかのように
狂気と孤独に溢れた作品をあてもなく
書き綴る生活。

その上、狂気に満ちた作品群が、
周囲に理解されることは少なく、
友人、家族とも孤立した存在だったのでは
ないだろうか。



やがて病に倒れ、病室で苦痛を友に過ごした時間は、
死への恐怖、無理解への恐怖、孤立への恐怖と
戦う日々だったのではないだろうか。

しかし、それらの恐怖から生まれた感情こそが、
作品世界を濃厚な狂気と冷静な分析で、
構築する原動力となったことは、確かだろう。




そう。恐怖とは、人の生存本能から発生し、
その生命力を測る基準となるモノなのだ。

数多くの作品と紡ぎながらも生前には、
そのほとんどが出版されることはなかった。

そんな彼は自分の死後、
全ての作品を破棄することを数少ない友に託した。

現実という地獄の業火で焼き尽くせ、と。



しかし、友は作品の持つ力に魅せられ、
後世の人間たちに残した。
そして、我々は、残された恐怖という名で
綴られた作品が持つ生命力に時を超えて、魅せられる。

フランツ・カフカ…、
その名は、孤独と狂気が恐怖で綴られた作品によって、
永遠不滅の力を手に入れた。






恐怖は感染する。
現実という名の地獄で。
再び蘇るのだ。
永遠不滅の力を手に…。






スチュアートの覚書/クレア・レッドフィールド



被験者番号02、クレアは少女たちを惹きつける
特別な何かを持っているようだ…。

そのはじまりは「ラクーン事件」の際、
G-ウィルスの開発者であるウィリアム・バーキンの
娘シェリーを死地から救出したことから。
現在も彼女とは、親しい間柄が続いているようである。




そんなシェリーは、事件の際にG-ウィルスの“胚”を
体内に埋め込まれており、
救出後も合衆国の監視下に置かれていた。
だが、合衆国から極秘裏に流れてきた情報によると、
監視が近々解かれる、とのことである。
ただし、監視が解除される理由までは
記録されていなかった。

また2005年、ハーバードヴィル空港での
バイオテロ事件の際も、幼い少女に
懐かれていたという報告もある。


そして、今回の被験者番号06、モイラとも、
クレアは、幼い頃に出会っている。

彼女自身、バートン家とは家族同然で、
モイラの父、バリーを父親のように思っており、
モイラ、ポリーの二人は妹のように可愛がっている。
モイラが、反抗期で家族との関係がこじれている間も、
クレアとだけは仲が良かったと記録されている。
むしろこの時期に、救いとなったクレアに
どんどん傾倒していったようにも考えられる。




クレア・レッドフィールド…
恐るべき少女たらしではないか。

いずれにせよ、二人の姉妹のような関係が、
今回の実験によって、
どのような化学反応を起こすのか。
楽しみである。





アレックスの覚書/スペンサー




計画の成功を目前に、
志半ばで死んだ惨めな老人のことを記しておく。

そう。私の人生を大きく狂わせた存在、
スペンサー卿についてだ。






彼は、この世界で莫大な富と権力を手に入れた。
そして、次なる野望として、
この世界を自分の望む存在へと
進化させることを考えていた。

彼の求める理想的な新たな世界の秩序とは、
選ばれた優秀な人間のみで構成される社会であり、
そこには無能な人間など必要ない、と考えていた。
そんな新世界で《神》になろうとしていたのだろう。



次に彼は、世界中から才能あふれる子供たちを集め、
精神と肉体を高めるための過酷な訓練を強要した。
さらに新しい世界の住人としての資格があるかを試すため、
ウィルスを使った耐性試験まで行った。

子供たちはふるい落とされ、最終的に残ったのは二人、
アルバートと、私…アレックスだけだった。

スペンサーは、アルバートと私に命じた。
「私が神になるために手足となって働け」と。
私たちは、彼の命令に従った。




しかし、私たちは気づいていた。
我ら二人が、病魔に侵された愚かな老人に
従う理由などひとつもない。
全ては、偽りの忠誠で応え、
私たちこそ老人の富と力を利用させてもらおう、と。
そんなスペンサーは、アルバートの手で殺された。
果てなき欲に魅入られた老人に相応しい滑稽な最期だった。






そして、今、必要なものを手に入れた私は理解した。
今なら、あの老人や兄の気持ちが理解出来る。

私こそ、彼らと同じ選ばれた人間なのだ。

世界は、最後に残された私が変えるのだ。





クレアへ宛てたピアーズの手紙




クレアさんへ

先日は、活動現場への訪問と差し入れ、
本当にありがとうございました。




あの日は、現場調査の作業でテラセイブとの
共同作業だと分かった到着時点から、
BSAA内はざわついていました。
「あのクリス隊長の妹さんがいるぞ!」って。

失礼なことに、皆、クリス隊長の妹ということで、
あの見た目をそのまま女性にしたような
パワフルな女性を想像していたようです。
自分はクレアさんを知っていましたので
そんなことはない、と言い聞かせていたのですが、
「隊長と遺伝子の半分が同じで、細身はあり得ない」
などとわかるようなわからないようなことを
言っていました。
ですから、ごあいさつに来てくださったクレアさんの
お綺麗な姿に、隊員内で驚きの声が上がった…というわけです。
あのときクレアさんは何に驚いているのかわからずに
目を丸くしておられましたが、まあ、そういうことです。

バカな連中ですが、皆、クリス隊長を尊敬して、
共に死闘へ立ち向かっていく大切な仲間です。
自分ももちろん、部下を「家族」と呼んで愛し、
命を賭けて守ろうとしてくれる隊長を見て、
いつかはああなりたい、と日々鍛錬にはげんでいます。

まあ、あんな超一流になるには相当な年月が、
かかりそうではありますが…。
自分をふくめ隊員たちも、
クレアさんに会いたがっています。

多忙な身の上、なかなか会えるチャンスは、
少ないかと思いますが、またお話しできればと思います。

さて、次の任務が近づいています。
書きたいことはまだまだありますが、このあたりで。

共に、バイオテロのない平和な世界を願って。

BSAA北米支部 ピアーズ・ニヴァンス


スチュアートの覚書/ウェスカー計画

今や聖母様の計画は、
終焉の時を迎えつつある。

もしあのお方が生きておられたら、
今の聖母様に対し、
どんなお言葉をかけられるだろうか…

ウェスカーの姓を持つ、もうひとりの人物、
アルバート・ウェスカー様。
その死から早2年が経過している。




スペンサー卿が企んだ新人類創造計画。
その名は…「ウェスカー計画」。

過酷な試練を乗り越え、
新人類の資格を得たのは
被験者12号アレックス様と、
被験者13号のアルバート様のみだった。



アルバート様は、数年間をスペンサー卿の指示に従い、
製薬会社アンブレラでの研究開発に費やした。

そこで生物兵器B.O.W.の開発を成功させ、
やがてバイオテロの発端とも呼ばれる“洋館事件”、
“ラクーンシティの惨劇”で裏の立役者となった。

その後も彼は、世界中でB.O.W.を利用し様々な事件を
引き起こし、その存在を世に知らしめた。

2006年、ついにアルバート様は師であり父でもある
スペンサー卿をその手で葬り去り、
自らを縛る鎖から解き放された。

そして、2009年。製薬会社トライセルを抱き込んだ彼は、
「ウロボロスウィルス」を使って、世界の人類を選別し、
父にかわって新世界を創造しようとした。
しかし、アルバート様は、クリス・レッドフィールドと争い、
壮絶な最期を遂げてしまう。

血のつながりこそないが、同じ境遇を持つ二人…
いわば兄のような存在であるアルバート様の死が、
聖母様…いや、アレックス様に、
深い悲しみと孤独をもたらした。





彼の訃報を聞いたアレックス様は、
私を呼び出し告げたのだ。
「転生の儀の準備を開始しなさい。
 私には躊躇している時間などない…」と。







失われたアルバート・ウェスカーの計画は、
不老不死となった
アレックス・ウェスカーが引き継ぎ、
必ずや遂行するであろう。

その時こそ、スペンサー卿から連なる
全ての計画が一つになる時だ。





スチュアートの覚書/ナタリア・コルダ


聖母様が“器”として第1候補にしておられる
被験者番号09、ナタリア・コルダ。
あの小さくもか弱い少女のどこに聖母様は、
自らの可能性を委ねる力を見出されたのだろう。

ニール・フィッシャーからの報告をあらためて整理した。







ナタリアは、2004年にイタリア・地中海沖で発生した
バイオテロ…すなわち「テラグリジア・パニック」の被害者だ。

彼女は、この事件で親類縁者すべてをうしなっており、その後は、
テラセイブによる庇護の下、同組織の施設で生活していた。





テラセイブが、一度だけ「テラグリジア・パニック」について
ナタリアに聞き取り調査を行っている。

その記録によると彼女は、現場での光景について、
驚くべき返答を残している。

「きれいだった」と。

数え切れない人間が死に、海に沈んでいく自分の
故郷の姿を、ただ美しいと感じたという。

ニール・フィッシャーは、その後の聞き取り調査結果と合わせて、
「ナタリアには“恐怖”という感情が欠落しているのではないか」
と報告している。

確かに彼女の動向を観察していると、
命の危機が迫ることでの不安は感じている様子は見せるが、
「恐怖」を感じているようには見受けられない。
ただし非常に微細な言動差であり、通常の観察では、
異常さに気づくことはなかなかないだろう…。

「テラグリジア・パニック」でのショックが、
彼女の感情を狂わせた…という推測は正しいのだろう。


「恐怖」を知らない彼女の精神力は、
聖母様が望むとおり、間違いなく強靭なものだ。
しかし、ひとつの懸念が残る。
ナタリアの精神が「強靭すぎる」可能性だ。

強い心身は、聖母様の精神と記憶を移す“器”に
申し分はないが、懸念が的中した場合は、どうなる?
その肉体に転移した聖母様を抑えつけるほどに、
彼女が、強い精神力を有していたとしたら…?




…邪推はここまでにしよう。
私ごときの懸念など、聖母様も分かっておいでだろう。

聖母様が成功すると確信しておられる。
ならば、計画は、成功する。

聖母様のやることに過ちなど、
今まで一度もなかったのだから。




バリーへ宛てたジルの手紙


バリーへ。

元気ですか。おひさしぶり。
知っての通り、先日アフリカから無事生還したわ。

私が3年前のアルバート・ウェスカーとの交戦後、
「BSAA」から公式に死亡と認定されたとき、
「目も当てられないほどの悲しみに暮れていた」って、
クリスからも聞いたわ。






心配をかけて本当にごめんなさい。
ずいぶん色々なことがあったけれど、私は元気よ。

まあ、少し見た目が変わってしまったから、
ちょっと驚くかもしれないけど…。






そう言えば、
奥さんにモイラとポリー、娘さんたちは元気?
その後、モイラとは、仲直りしたの?

彼女たちも思春期だから、
何かとあなたとすれ違うのは分かるけど、
娘たちに干渉し過ぎだと思っていたの。

だけど、3年も経っているから解決しているわね?




今や、あなたはコンサルタントとは言え、
「BSAA」の一員、いつどんな形で
会えなくなるのか分からない。

だから、あなたには家族との時間を
出来るだけ大切に過ごしてほしいの。

あなたのことだから、
これ以上やかましく言うと怒られそうね。



というわけで、
私の方は、検査ばかりの退屈な毎日がもうすぐ終わるわ。
すぐ現場復帰に向けたリハビリを始める予定よ。

近いうちに会いましょう。

ジル・バレンタイン

追伸
盛大な復帰祝いを期待してるわ。バリー?