Jessica's Report
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The Case of Terragrigia それは地中海沿岸のメガフロート"テラグリジア"で発生した 2004年のことだ 無人飛行機から降り注いだt-Abyssウィルスの雨と 生物兵器の市街地投入により― テロリストは海上のユートピアを この世の地獄へと創造しなおした 犯行声明を出した組織は ダンテ･アリギエーリの『神曲』に顕れる― 偉大なる猟犬になぞらえ 自らを"ヴェルトロ"と名乗った 国際的には無名のテロリストが 如何にしてバイオ兵器を入手するに至ったのか… その経緯はいまもって不明だ この当時 ヴェルトロについて我々には― 学生運動が先鋭化したゲリラ･グループ程度の知識しかなかったのだ 声明文によれば 開発反対を訴えてのテロ行為であるとされたが… 果たしてそれは真実だったのだろうか 我々に最早知る術はない 世界の価値観を変貌させた この未曾有のバイオテロは― マスメディアにより"テラグリジア･パニック"と銘打たれ報道された テラグリジアの名は哀しみとともに 人々の心に永遠に刻まれたのだ あれから1年… BSAAに信憑性の高い機関から ある情報がリークされた それは近日起こりうる テロ計画の存在を信じるに足る内容だった そしてそこには ヴェルトロの関与を疑う余地があるという あり得ない話だ 公式発表では 潜伏先を特定したFBCの掃討作戦により― 主たるヴェルトロメンバー全員の死亡が確認されたとされているからだ だが実のところ 唯一例外が存在する 実質的指導者と目されるジャック･ノーマン この男の死体は 今をもって確認に至っていないとの話があるのだ この件は 決して公にされていない情報だ 圧倒的なカリスマにより ヴェルトロを統率していたと言われるジャック･ノーマン… 犯行声明時に彼が残した映像は 偉大なる殉教者として一部のマニアの間で神格化され― 今も動画共有サイトなどで配信されることすらある いずれにせよ 我々は即座に行動を開始する必要がある 情報の真偽は我々の手で突き止めればよい 悲劇を2度繰り返すわけにはいかないのだ |
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BSAA_Agent_Data_01.wav ・監査官 エージェント面談記録 対象者ジェシカ･シェラワット 製薬企業連盟 特別監査官により録音 ・監査官 今回のミッションに関わるエージェントについて教えてほしいの ・ジェシカ 主観的になって構わない？ ・監査官 ええ 感じたままでいいわ ・ジェシカ クリス･レッドフィールド… BSAA設立時メンバーであるオリジナルイレブンのひとり 卓越した射撃能力と 近接戦闘格闘術― アメリカ空軍に在籍していたこともあり 航空機の操縦技術も持ち合わせている ・監査官 彼とチームを組んだことは？ ・ジェシカ ないわ このミッションが初めてよ でも適役だと思いません？ 彼の背中を私が守り 私の背中を彼が守る "ジェシカ、無事か？" "ええ、クリス、問題ないわ" まるでハリウッド映画のワンシーン ・監査官 次は彼の経歴について聞かせて ・ジェシカ 了解 ・ジェシカ クリスのバイオ兵器との戦いは 1998年 アンブレラ･アークレイ研究所で起こった― t-ウィルスの漏洩事件 通称"洋館事件"に始まる ・監査官 ラクーン市警察のS.T.A.R.S.時代ね 連盟が重要視した彼の経歴のひとつよ ・ジェシカ 彼は現実のヒーロー ―マントとマスクはしてないけど― 歴戦に次ぐ歴戦の末も 彼は必ず生き残った そしてそのたびに戦果をあげ 遂にアンブレラを壊滅させた その経歴は BSAA内でもトップクラス ・監査官 製薬企業連盟の一員として 彼には感謝しているわ 彼がアンブレラを追い詰めなかったら 我々の問題はさらに大きくなっていた ・ジェシカ だからこそ連盟は BSAAを組織し そのメンバーにクリスを招聘したと… ・監査官 そうね 私たちにはバイオテロに対することのできる組織が必要だった 技術を有する者の責任としてね ・ジェシカ ジル･バレンタイン… 彼女もオリジナルイレブンのひとりであり クリス同様 S.T.A.R.S出身 重火器の扱いに長け 実戦もそつなくこなし― キーピックで簡単な鍵ならこじ開けることもできる そうそう 爆発物処理のスキルも持っていると聞きました 正直 ジルの優等生っぽいところはちょっと苦手 でも 彼女のスキルは尊敬に値すると思っています 仕事は友達付き合いとは違うから それで問題ないでしょ？ ・監査官 いいわ 成果をあげてくれれば我々として問題は何もない ・監査官 ジル･バレンタインは "ラクーンシティ壊滅事件"の数少ない生存者のひとりなんでしょ？ ・ジェシカ ええ 洋館事件後 彼女はラクーンシティに残り 独自調査を続けた ラクーンシティ全体がバイオハザードに見舞われたのは その2ヶ月後よ 尤も公式発表からは "t-ウィルス"のことはきれいに抹消されていましたが… ・監査官 あの当時 バイオ兵器の存在が公になることは 誰にとっても都合が悪かったのよ ・ジェシカ "誰にとっても"… もちろんそれは政府にも適用される 滅菌作戦と称して政府が発射したミサイルが街を消滅させたのは― 彼女がラクーンシティを脱出した直後… 彼女 きっとあの光景を一生忘れることはできないと思う ・監査官 あなたも同じ経験をしたから？ ・ジェシカ そうね でも私はあのとき 無力感しか感じることができなかったわ ・ジェシカ パーカー･ルチアーニ FBCあがりのエージェントよ ・監査官 じゃあ あなたと同じね ・ジェシカ 彼はFBCからの同僚 だからよくも悪くもって意味で… よく知ってる 彼は…頑固で融通利かなくて ―不適切な表現でごめんなさい― はっきり言っちゃえば "クソ"不器用 ・監査官 なるほど… それで彼はなぜBSAAに？ ・ジェシカ パーカーがBSAAに移籍したのは1年前 きっかけは… もうおわかりとは思いますが テラグリジア･パニックが原因よ 現場で下されたあの決定がFBCの面子を守るためでもあった事実を否定できず― 彼は悩んでいた 酒を浴び 自分を失わせてやり過ごそうとしていた時期もあった でも彼がたどり着いた結論は― より人々を守るための闘いをするため BSAAに移籍することだったの ・監査官 確かに "クソ"不器用ね ・ジェシカ そこがかわいいところでもあるんですけど 本当に ・ジェシカ キース･ラムレイとクエント･ケッチャム この2人は一緒のほうが説明しやすいわ ・監査官 問題ないわ 1セットで ・ジェシカ インドアとアウトドア 思考派と行動派 慎重派と大胆派… 彼らを理解するには およそ思いつく限りの正反対の対義語を並べてみてください 情報分析を専門とし 機械ヲタクのクエントと― 特殊傭兵部隊での戦歴を持ち 実戦で鍛えたキース 2人はいつも意見が合わず 口喧嘩しているように見えるけど― 彼らが実力を最も発揮するのは 2人を組ませたとき ・監査官 互いの欠点を自然と補う…と 理想的なチームね ・ジェシカ BSAA代表のクライヴ･R･オブライエン… 今回の作戦指揮は 彼が直接執っているわ だからみんなちょっとピリピリしてる ・監査官 珍しいわね 今まで彼が表立って指揮を執るなんて ほとんどなかったはず ・ジェシカ 彼は自分が目立つことを好まないの "右手の行いは左手に知らせるな" オブライエンの口癖よ ・監査官 『マタイ伝6章3節』ね 栄光を求める動機は それ自体不純である ・ジェシカ それだけじゃない "賢者は沈黙を貫く" 飄々とした態度でかわし 手の内は明かさない 服装もラフでいつもだらしない感じだけど 実はああ見えて老獪なのよ ・監査官 でなければ BSAAを率いることは難しいわ 確か… 彼はテラグリジア･パニック時に BSAAで唯一現地派遣されていたはずね 解決方法を巡って FBC側と確執があったとも聞いてるけど ・ジェシカ どうでしょうね 少なくとも現場の指揮権はあくまでFBC側にあった オブザーバーとしてのオブライエンの意見は ほぼ無視されていたと言っていいわ ・監査官 FBCについても話してくれる？ ・ジェシカ ええ ・ジェシカ 合衆国の対バイオテロ部隊である"フェデラル･バイオテロリズム･コミッション" 通称FBCの長官モルガン･ランズディール 初代長官にして 現在に至るまで唯一の長官よ つまり FBCにおける彼の権力は絶対的 ・監査官 独裁的とも言えるわ FBCでは どんな些細な事象も モルガンを通さなければ動くことすらできない 逆に彼しか知らない事実も山ほどあるでしょうけど ・ジェシカ でも結果から言えば 今やFBCは世界最大の対バイオテロ組織 バイオテロの脅威を知った世論を味方につけ 大幅な組織強化を議会に承認させた それも モルガン･ランズディールという強固な意志があってこそ成しえたとも言えるわ ・ジェシカ FBC所属エージェントのレイモンド･ベスター 私とパーカーがFBCにいたころはまだ新人で かわいい後輩って感じだったわ 今も時々噂は聞くけど… ・監査官 あまりいい話は聞かないわね 強引な捜査 現地警察に対しても排他的で非協力的 BSAAの活動を妨害したことも一度や二度じゃないと聞いている ・ジェシカ そうみたいね こっちに移籍してから彼とは連絡取っていないの だからそれ以上のことは私もわからないわ ・監査官 ありがとう あなたの見解は興味深いわ あなた自身のことを理解する上でも非常に参考になった ・ジェシカ どういたしまして ご褒美は… そうね こないだ出した休暇申請の受理でお願い ・監査官 いいわ ホームワークの提出が条件よ ・ジェシカ ワオ ここってハイスクールだったのね じゃ交渉成立 素晴らしい報告を期待して |
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T-Abyss Report さてと ―世の中には碌でもないことが莫大な利益を産み出すことがある 人間の本質が碌でもないからかもしれないけど… ウィルス兵器も そのひとつだ "t-ウィルス" この名前に聞き覚えのある人も多いだろう 巨大製薬企業であったアンブレラ社が開発した このウィルス兵器は― 業界ではそれほどまでに有名だ t-ウィルスには 感染した生体の遺伝子を組み替える特異な性質がある その最たる例が 通称"ゾンビ"と呼ばれる人体への感染現象だろう この悪夢のウィルスが開発された真の目的は t-ウィルスの力で遺伝子操作を施した― "B.O.W."と呼ばれる生物兵器の製造と それによる軍需産業の独占支配にある ハンター ネメシス タイラント これまでにも数々のB.O.W.が開発されてきた 研究者たちのあくなき向上心は ―この言葉が適切かどうかはさておき― 留まることを知らない アンブレラ社が既に崩壊した今日も― 世界のどこかでウィルス兵器の研究と開発は進められているはずだ そして t-ウィルスの改良型と呼ぶに相応しいウィルス兵器が誕生した それがテラグリジア･パニックで使用された"t-Abyss"である t-Abyssは深海探査で発見された新種のウィルス"The Abyss"と― t-ウィルスを遺伝子交配させた新型ウィルス兵器だ t-Abyssは現段階で まだ謎の多いウィルスである 私はその貴重な感染ケースに関するデータを入手する機会に恵まれた "ウーズ"…t-Abyss感染者はこう呼ばれる "滴るもの"の意味を込めて 命名した研究員の感性には同意するわ 彼らの風貌は まるでふやけた水死体よ ウーズの特異性は 何より神出鬼没であること 彼らは身体の軟体性を駆使して 様々な隙間や空間から移動し 獲物を追いつめる その行動パターンは予測不能だ ウーズの行動原理は 水分の枯渇に起因する本能的欲求にある 体内のt-Abyssが増殖の際 過剰に体液を消費するためと想定される 肉を喰らうのではなく 獲物の血を 体液を貪り啜るところが― t-ウィルス感染者のゾンビと大きく異なる点として挙げられる このヒルのような口内の器官が吸血のために進化した舌よ 獲物を捕獲すると ウーズはこの舌を食いつかせて体液を吸引する 舌の先端表層には数百もの細かな牙があり ひとつひとつが別個に稼動 この無数の牙で 獲物の皮膚を切り裂き 獲物の血液を 体液を喰らい尽くすのだ これは "スキャグデット"と呼ばれる感染者の突然変異種だ このケースは通常より強いウィルス耐性を有する個体で発現する ウィルスが通常より長時間かけて浸食した結果 特殊な変異を遂げると考えられている その割合はおよそ1000人にひとり… ホント ラッキーにもほどがある 残念ながら ―いえ 幸運にも…かしら― 彼の意識はない 回路を繋ぎ損ねた機械人形のように 意味をなさぬ言葉を繰り返しつぶやき続けるだけだ 耐久力は 極めて高いレベルといえる 肥大化した体表面が― 活動に必要な重要臓器の損傷を最小限に抑える効果をもたらしているのだ 感染者の突然変異種のデータ その2 "海を這いずるもの"は文字通り水棲のクリーチャーである 水中は彼女の独壇場だ そう "彼女" と呼ばれるシークリーパーへの変異は― XX型染色体保有の女性感染者の一部にのみ発現する 水中を忍び寄ったシークリーパーは― ウィルスの影響で増殖した6本の腕で獲物を捕獲し 体全体で摂食する 彼女の抱擁から逃れる術は…皆無よ 水中に潜むシークリーパーの存在を見分けることは難しい だが バイオスキャナを駆使すれば その存在を探ることができるかもしれない 以上が私が得られたt-Abyssウィルスのデータよ 入手できたのは あくまで感染ケースについてのみであり― 兵器開発されたB.O.W.についての存在の確認には至らなかった だが これまでの経緯からして― 生物兵器の研究開発が すでに進められていたであろうことは想像に難くない 海洋生物の遺伝子影響を色濃く反映した新型B.O.W.との遭遇は― 我々にとっても未知のものとなるだろう 現在のところt-Abyssの実戦データは皆無に等しい 手に入れられたならば 研究は飛躍的進歩を遂げるはずだ |
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ジェシカ･シェラワット ええ どうかしら 素晴らしい報告かはわからないけど 後で送るわ ごめんなさい そろそろ待ち合わせの時間 少しは休暇を楽しませて ええ それじゃ |
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バイオ兵器に利用価値を見出す人々がいる限り 私たちの仕事に終わりはない 今日の休暇は終わり また新たな任務が始まる そう 明日にでも… |
※画質によっては見づらいが、最後のほうの「UPLOADING.....」のウィンドウの右側にトライセルのロゴが描かれている。監査官はエクセラだったのだろうか……？
