バイオハザード ヴィレッジのファイル集


冷蔵庫のメモ
☆ローズのごはん(2月)

 6日 ライスシリアル つぶしたバナナ

 7日 さつまいものポタージュ
    ほうれん草のクリーム煮


 メモ:ハチミツ、黒砂糖はダメ。
    あと、キノコ類は「絶対」NG!









古新聞
「ダルヴェイ有毒ガス事故 調査終了へ」

 2017年に起きたルイジアナ州ダルヴェイの
 有毒ガス流出事故について、事故調査委員会は
 18日、事故原因を地下泥岩層からの自然噴出
 によるものと結論付け、調査を終了することを
 公式発表した。










事故では近隣に住むジャック・ベイカーさん
(当時57歳)ら一家4人が犠牲になり、
また事故当時、現場を訪れていたと思われる
イーサン・ウィンターズさん夫妻については 
現在まで所在がわからない状態となっている。

事故現場の一帯は隔離壁で封鎖されており
会見によれば封鎖は少なくとも今後10年は
解除されないとのこと。










イーサンの日記
2021/02/06

 またミアと喧嘩した。
 はずみでつい、3年前の事件のことを
 口にしてしまったのが原因。

 ヨーロッパでの暮らしにも慣れてきて
 ローズの世話もできるようになった。

 でも…俺の心の一部は、
 まだあのベイカー邸に囚われたままだ。






ミアが神経質になるのもわかる。
だけど、全て忘れて過去を封印することが
本当に正しいんだろうか?

ローズとの未来を紡ぐには、あの日俺たちが
経験したことに、もう一度向き合う必要が
あるんじゃないか。

それがあの子への責任だと思う。

…本当は、ミアもわかっているはずだ。
でなければ病院であんな取り乱したりしない。







定期健診の結果
検診結果:ローズマリー・ウィンターズ

 誕生日 2020/08/02
 身長 62.3cm  体重 6.57kg
 視診・触診・聴診 すべて問題無し

 特記事項
  追加実施の真菌感染症検査の結果については
  検査協力機関のBSAAより別途連絡を
  お待ちください。

          アッペルフェルド記念病院







作戦指示書
【作戦概要】
  ・目標の殺害および遺体収容
  ・ローズマリー・ウィンターズ
   イーサン・ウィンターズ 両名確保

   両名は検査のためサイトCまで移送。
   最低2名の武装兵を添乗させること。












乱れた書き置き
おお ライカンよ
おとぎ話の 悪魔の狼どもよ

我らを食らいに来るがよい
血肉を食らいに来るがよい














「魔除けの山羊」の添え書き
村を守る「魔除けの山羊」をお捧げする

「壊したり」すれば、ミランダ様の罰が下ろうぞ
















獣害の報告
ルイザ、また家畜がやられた。
このままじゃ冬を越すのは無理だ。
消えたエルネストも、まだ見つかってない。

ミランダ様は、俺たちを見捨てたのか?














来客名簿
01/05
 レドニク様 納品 男1/女3

01/28
 ミランダ様 奥様との会談

02/01
 デューク様 商談











迷球模型の目録
収蔵目録
「ノルシュティンの迷球模型」

 19世紀末の造形作家の作。
 祖国で異端の烙印を押され
 放浪の果てに村に辿り着いたと言う。

 ノルシュティンは「古城」「丘の館」
 「水車」「鉄塔」の4作品を作り上げた後
 拳銃で頭を撃って自殺した。







模型は可動式になっており、
専用の金属球を終点に導く遊具になっている。

4つの模型にはそれぞれ
色水晶で彩られた人骨が納められている。

一説によると、これらは彼の愛した
4人の妻の遺骨であるとも言われる。











ワイン醸造の歴史
ドミトレスク城におけるワイン醸造の歴史は
現在の城主様一家が移住されるより遥か昔
15世紀にまで遡ります。

オルチーナ様は伝統的製法に「独自の工夫」を
加え、むせ返るようなコクと芳香を与えることに
成功しました。

中でもその年で最も出来の良いワインは
「サン・ヴィエルジェ(処女の血)」と呼ばれ
花をあしらった特別なボトルに保存されます。








侍女の手記
1958/06/09

 今日からお城で勤めることになった。
 使用人が女の人ばかりでびっくり。

 城主様とお嬢様たちの機嫌だけは
 損ねないように強く言われた。

 どんな人たちなんだろう?








1958/06/23

 お城に来て、今日で2週間。
 なんだかこの城は少し怖い。

 同僚のアデラがダニエラお嬢様に粗相をして
 顔をナイフで切られた。

 夜になると、亡霊みたいな呻き声が聞こえる。
 家に帰りたい…。







1958/07/08

 どうしよう。

 お嬢様たちが食事している時、
 あまり暑いから、少しだけ食堂の窓を開けた。

 そうしたらお嬢様たちが、いっせいに
 私を見て叫んだ。「すぐに閉じろ!!」って。

 きっと、私も地下に連れてかれる。
 どうしよう。どうしよう。どうしよう。







処置リスト
‐適合‐
  アリーナ ミハエラ ロイス イングリド

‐廃棄‐
  ディアンドラ グレタ ナディン カメリア
  ビアンカ メリナ アストリド リュドミラ
  ロザリンダ リナ ステファナ ガブリエラ










体験版では「イングリド」の部分が抜けている。


観察記録
‐アリーナ  食欲旺盛

‐ミハエラ  食欲旺盛

‐ロイス   食欲旺盛

‐イングリド 不安定 時おり意識覚醒












料理番の手記
またひとり、地下送りになった。
あの娘は、スープを少しこぼしただけなのに。

みんなが知ってる。
地下に行ったら、もう帰ってはこれない。
血を抜かれて、恐ろしい幽鬼に変えられる。

骨と皮だけになったあの娘は
腐ったネズミの死骸をかじっていた。

次は誰の番かしらね。








オルチーナ・ドミトレスクの手記
ミランダお母様に呼ばれる。
「御子」の父の処遇を話し合えとのこと。

血の繋がりはないとは言え…
奴らと兄妹扱いされると虫唾が走る。

特にあのハイゼンベルク!!
下品で粗野な、卑しい血の男。

お母様が止めなければ
この手で引き裂いていた。






なぜ…お母様はわたしを奴らと同じに扱う?

城を与えてくださったのも
従順な娘や不死の血肉を与えてくれたのも
わたしが特別だからでは?

喉が渇く。












侍従長の貼り紙
奥様の「口紅」を見つけた者は、
浴室に戻しておくこと。

非常に高級な特注品です。
決して良からぬ心を起こさぬように。

             侍従長より












経過観察記録
術後1日目。

「処置」が終わってから
3人とも死んだように動かない。

「長女」となる娘の口から、1匹の羽虫が出る。 
蝿のように見える。










術後2日目。

3人の体に、無数の虫が湧いている。
体の各部が虫に食われているように見える。

窓を開けると、虫がぽろぽろと床に落ちる。
どうやら冷気にあたると硬直する性質らしい。  
慌てて窓を閉じる。









術後4日目。

ほぼ全身を虫に食い尽くされた。
ヒト型の黒い塊がうごめいている。

昼過ぎ、娘たちの体の部位ごとに
虫の色が変化してくる。
顔の虫は青白く、唇の虫は赤くといった具合。 









術後6日目。

虫の塊が娘たちの姿に戻る。   
もう人間にしか見えない。

3人が起き上がり、わたしを見つめる。
うつろな視線だが、親子の情を感じる。     

名前はもう決めてある。
ベイラ、ダニエラ…そしてカサンドラ。









羽虫の観察記録
学名なし。体長5〜6cm。
体構造はオオクロバエに似るが、顎が異常発達。
肉食性で、性質は極めて獰猛。

カドゥが宿主の人体に産卵することで発生する。
卵管が退化しており、虫自体に生殖能力はない。

集合フェロモンで群体を形成し、人間に擬態。
獲物を油断させ接近、捕食する。








特徴として、急激な気温変化に弱い。

特に摂氏10度以下の外気に触れると
全身の筋肉が硬直し、生命活動を停止する。

クマムシやネムリユスリカに見られる
クリプトビオシスと似た状態か。












短剣の噂
「死花の短剣」なるものが、城にあると聞く。

それは中世の品で、なんでもその刀身には
古今東西のあらゆる「毒」が塗られているとか。
妄想にとりつかれたかつての当主が
悪魔や魔物を殺すために作らせたそうだ。

実に興味深い…が、もう誰も所在を知らない。











細工師の書き置き
依頼されていた例の細工ができた。

洞窟から遺跡を抜けて
赤い煙突の家に運んでおいてくれ。















レオナルドの書き置き
向かいの煙突の家から、悲鳴が聞こえた。

これから様子を見に行くが
ガレキが邪魔で、集落を大回りするしかない。
馬小屋の壁の穴が、こんな時に役立つとはな。

朝までに俺が戻らなければ…
お前ひとりでルイザの屋敷まで行け。

                レオナルド







楽器職人宅の貼り紙
ご用の方へ

 家主が長期不在のため、
 家の鍵を預かっております

       ベネヴィエント家 庭師
          ヨーゼフ・シモン






オイゲンの日記
2月1日

 ミランダ様に、山羊2頭を献上。














2月3日

 ミランダ様に、毛織物を献上。

 指定された薬品と器具を
 数日内に用意するよう言われる。

 何に使われるのだろうか?









2月8日

 ミランダ様からの連絡なし。

 やけに家畜どもが騒がしい。












2月9日

 夜明け前、件の品を
 岩の教会まで届けるよう言われる。

 そこで私は…恐ろしいものを見た。











そこには、四人の貴族様と
見知らぬ赤子を抱くミランダ様がいた。

ミランダ様が何かつぶやき
そっと…その子の顔に触れた。

すると…なんということだ…
見る間に赤子の身体が…白く…
結晶のように変わっていくではないか。

そして…その結晶を…ああ!






わたしは思わず尋ねた。
いったいなぜ、こんなことを?

ミランダ様は微笑み、言った。

この子は選ばれし子
いかなる姿になろうと、やがて元に戻る…と。

そして…貴族様たちが
結晶をひとつずつ授かり、去っていった。







わたしはミランダ様への礼儀も忘れ
その場を逃げ出した。

恐ろしい。
いったいあの子は…何なのだ。 














小教会の端末
作戦記録 2021/02/09  記録者:NH

 1135 事故現場到着。
     EW/RWいずれも発見できず。

 1210 村に侵入。数体のB.O.W.と交戦。
     EWの痕跡を数点発見。RWは不明。

 1310 小教会を一時拠点とし作戦会議。
     LB/TD/KNは研究室の捜索。
     NH/UEは菌糸の採取と分析。
     R隊長は村外れの工場に単独潜入。







庭師の日記
11月10日

 ドナ様がミランダ様の養子となられた。
 長年仕えた身としてこんな嬉しいことはない。

 幼い頃より極度の対人恐怖を
 お患いだったドナ様。

 ご両親の死後は閉じこもりがちになり    
 お父上の作った「アンジー」という人形を
 通じてしか、人と話せなくなってしまわれた。

 ミランダ様の慈悲に感謝するばかりだ。




11月27日

 ドナ様は、お加減がよろしいようだ。
 気のせいか人形のアンジーまで
 以前より生き生きとして見える。

 今日も庭園に来て、アンジーを介して
 あれこれ楽しそうにお話しになっていた。

 なんでも「お母様に力をもらった」とのこと。







11月29日

 ドナ様が一輪の黄色い花を持ってこられ
 庭園に植えるようお申し付けになられた。

 クラウディア様の墓前に植えていると
 花の香のせいか、どうにも頭がぼうっとする。
 夢うつつに、死んだ家内が見える始末だ。 

 ドナ様に話すと、たいそうお喜びになって
 明日、お屋敷に来るよう言われた。
 もっと家内と会わせてくださるという。

 何やらわからぬが…なんとお優しいことか。





ヴァシレの遺書
傷が深い。もう長く保ちそうにない。

小屋のまわりを「あいつ」が
うろついているのが聞こえる。

あいつは銃にひるみもしなかった。
俺の抵抗を、楽しんでいる風ですらあった。

あいつは…普通の狼じゃない。








だが畜生、もう少しだったんだ!

水車小屋まで行ければ
あいつを「あの武器」で仕留められたのに。
小屋はもう、目の前なのに。

くそ、ひどく寒い。足に力が入らない。

俺を許してくれ、ルイザ。










人造湖と怪魚
ハンス親方が死んじまったから、
しばらく漁は止めだ。

ボートの鍵は
坑道の奥の小屋に返しておいてくれ。

親方が死んだのは事故なんかじゃねえ。
怪物に、舟ごと食われちまったのさ。











クランク交換について
どうもクランクにガタがきてるようだ。

壊れちまったら、悪いが湖の反対側の
2号機まで替えを取りに行ってくれ。















モローの日記1
10がつ 1にち はれ

 ミランダさまにおねがいして
 村びとを 5にん つれてきてもらった。

 くすりでねむらせて
 「カドゥ」をおなかにうえつけた。

 はやくこいつらのなかで
 カドゥがせいちょうするのが たのしみだ。







10がつ 2にち くもり

 あさになったら 4にんは死んでた。
 ひとりはライカンに なりかけてたから
 山のうえの じっけんじょうにおくった。

 またしっぱいだ。おかあさまがほしいのは
 もっとつよい「うつわ」なのに。

 もっといっぱい
 村びとを おくってもらわないと。








モローの日記2
ミランダおかあさまから
ローズのびんを ひとつあずかった。

みんな 仲がわるいから 自分だけ
ぎしきの なかまはずれにされると思ってる。

だから 4にんが1つずつローズをあずかるって
ハイゼンベルクが 言いだしたんだ。

みんなあつまらないと ぎしきできないように。
おかあさまは「すきにしろ」って。






おかあさまが言ってた。
ローズが「うつわ」なんだって。

「うつわ」があれば おかあさまは
ほんとうの子どもを 手にいれられる。

ずっとまえに 死んじゃったおんなの子。










でも そうしたらおれはどうなるんだろう?

本当の子どもじゃないから
すてられるのかな?

そんなのいやだ!











いやだ!いやだ!いやだ!いやだ!い
やだ!いやだ!いやだ!いやだ!いや
だ!いやだ!いやだ!いやだ!いやだ!
いやだ!いやだ!いやだ!いやだ!い
やだ!いやだ!いやだ!いやだ!いや
だ!いやだ!いやだ!いやだ!いやだ!
いやだ!いやだ!いやだ!いやだ!い
やだ!いやだ!いやだ!いやだ!いや
だ!いやだ!いやだ!いやだ!いやだ!
いやだ!いやだ!いやだ!いやだ!い
やだ!いやだ!いやだ!いやだ!いや
だ!いやだ!いやだ!いやだ!いやだ!







モローの実験記録
ミランダおかあさまに 山をひとつもらった。

ここならカドゥの実けんがたくさんできる。

おれの ひみつのけんきゅう所だ。












きょうは 実けん台のおなかに
カドゥを3つ入れてみた。

はじけて ぐちゃぐちゃになった。













きょうは 実けん台にカドゥを入れたあと
せきずいに おおかみの血を 注しゃしてみた。

いきなりあばれだして 助しゅをくいころした。

てにおえないから おりに入れた。
もっとえさを つれてこないと。












調査記録
DNAシークエンシング完了。
ダルヴェイの特異菌と99.95%一致した。
差分は人為的な加工のためと思われる。
おそらくは、こちらが原種。

コネクションがどうやって菌を見つけたのか
入手経路の調査が必要。










菌コロニーは村の地下全域に広がっている模様。

ベイカー邸の事例では、特異菌が感染者の
「意識ネットワーク」を形成していた。
ネットワークがここまで肥大化した場合
それ自体を一種の「データストレージ」と
見なすこともできるだろうか?

だとすればミランダの求める「データ」とは?










エルネストの日記
7月8日

今日は、あの太った行商人が来る日。
古新聞をいくつか譲ってもらう。
ミランダ様に禁じられてはいるが、
やはり外の話題は面白い。

新聞を読んでひとつ、妙な発見があった。
ある製薬会社に関する記事だったが
その会社のエンブレムに見覚えがあったのだ。







そうあれは…村の「聖杯」にあった紋章だ。
たしか洞窟の壁画にも同じものが。

あの放射状の「傘」を思わせる紋章。
どうしてあれが、外の企業のエンブレムに?
そういえば昔、この村に滞在した男がいたが…
考えすぎか。












将校の手記
明けに王の伝令が来て、我が軍の撤退を告げた。

国境の要害である砦を異教徒どもに明け渡すのは
口惜しい限りだ。あと少し時間を頂ければ、
戦の趨勢も変わったものを。

いや…それは建前だ。
私は、好奇心からこの地を離れたくないのだ。









この地には、村人が「先史者」と呼ぶ
古代人の遺跡がいくつも残されている。

祭祀場の巨大な四座像。
紋章の刻まれた洞窟壁画。
聖杯と呼ばれる石の台座。

彼らはどこから来て、どこに消えたのか?
それを知らず去ることこそ、真に口惜しい。










実験の記録
「カドゥ」移植実験記録
被験者174〜181















■被験者174 ミハイ・M

 素体:21歳/男性/肺炎の既往歴あり
    銀細工職人。

 結果:適合率低。カドゥ成長せず。
    体組織変異と知能低下。
    (ライカン症例)
    放牧地へ。








■被験者177 ベルナデッセ・B

 素体:21歳/女性/既往歴なし
    特記事項なし。

 結果:死亡。











■被験者181 オルチーナ・D

 素体:44歳/女性/先天性血液疾患あり
    没落貴族の末裔。村の人間ではない。

 結果:適合率極めて高。知能低下見られず。
    体組織変異を、任意で制御可能。
    認識操作処置の後、特別観察対象へ。











開発ノート1
機械化死体兵「ゾルダート」
─────────────────────
 ver.1.00
  成人男性の死体を素体に使用。

  心臓を切除し「カドゥ」を移植。
  電気刺激による起動に成功。

  脳死状態のため高度な思考は不能。
  破壊本能のままの行動に留まる。







ver.1.01
 頭部に制御ヘッドギア装着。
 電極からの擬似脳波で挙動安定化に成功。

 ライカンとの戦闘試験実施。
 3分ほどで解体され、捕食される。

 破壊・殺傷能力に課題。









ver1.10
 下腕部を切除し工業用ドリル移植。
 出力不十分のため稼働せず。

 素体に死体を用いた弊害か。












ver1.15
 胸部に「カドゥ制御リアクター」移植。
 出力の大幅向上に成功。

 ライカンとの第2次戦闘試験実施。
 約1分でライカン3体を殺害。

 良い結果だが、リアクターの耐久性が課題。
 破壊された場合、即座に活動停止する恐れ。








※ver.1.0代とver1.1代とで.の数が減っているが、原文ママ。


開発ノート2
ゾルダート強化発展計画
「ゾルダート・ジェット」
──────────────────────
 「ゾルダート」にロケットエンジンと
  頭部安定翼を装着。噴進飛行により
  機動性の低さを抜本的に改善する。

  試験では短時間の飛行に成功。
  長距離航行は難しいが、起伏の激しい地形で
  立体的な機動が可能となった。







ゾルダート強化発展計画
「ゾルダート・パンツァー」
──────────────────────
 「ゾルダート」に、アルミ合金製の
  全身装甲を装着。胸部リアクターや
  死体露出部の絶対防御を図る。

  試験では通常火器に無敵の防御力を発揮。

  だが爆弾などで強い衝撃を受けると、
  装甲自体が剥離することがある。要改善。








シュツルム
試作機「シュツルム」
─────────────────────
 払い下げのターボプロップ・エンジンを使用。
 リアクター出力を強くしすぎたためか
 突進ばかりでほぼ制御不能となった。

 正面には無敵の性能を誇るものの
 自身の腕をプロペラで切断する
 長時間の稼働で熱暴走するなど問題が多い。

 結論:完全な失敗作。








ハイゼンベルクの手記
ミランダが憎い。
あの女の欺瞞が憎い。















あの女にとって俺は
ただのカドゥの実験台だ。

貴族なんて身分も、たまたま他の村人より
適合率が高かったからにすぎない。

そんな俺を、あの女は「息子」と呼ぶ。

それが…心の底から、許せない。








あの女は、とっくに壊れている。

あの狂った女には
「優れた実験台」も「家族」も同じだ。

俺の身体を変えやがっただけでなく
尊厳まで奪いやがったミランダ。

あいつを殺さないと…
俺の人生は、永久に俺のものにならない。







だが…ミランダは恐ろしい女だ。
あいつは膨大な「菌」を操り
どんな姿にでも自身を変えられる。

カギは、あのローズとか言う餓鬼だ。
あいつの「力」とやらを利用すれば…。

そういえば…父親のイーサンって男も
なかなか「面白い」身体らしい。
うまく仲間に引き込めば…。









クリスの端末
to:「ハウンドウルフ」各員

工場内の捜索を完了した。
「組織」とのつながりを示す証拠を
見つけたかったが、空振りに終わったようだ。

だが一方、ミランダの研究に関する資料を
いくつか押収した。
どれも、俺たちの推論を裏付けるものだ。








ミランダは、自身の身体に特異菌を感染させ
いくつもの能力を手に入れたらしい。

そのひとつが「擬態」。

ヤツは細胞分裂をコントロールすることで
他人に「化ける」ことができる。










ミランダはミアに擬態し
ウィンターズ家に侵入した。

目的は言うまでもなく、ローズの誘拐だ。

母親であるミアの姿のほうが
ローズを制御しやすいと考えたのだろう。










だが俺たちに攻撃されたヤツは
死体に「擬態」し、機を伺うことにした。

ヤツは輸送車のなかで蘇生すると
乗員を殺害し、ローズを連れ去った。

ミランダにとって予定は狂ったが…
当初の目的は達したというわけだ。









だがそれも、ここまでだ。
これから工場を爆破して、そちらに合流する。

ハイゼンベルクと戦闘になるだろう。
ヤツお手製の自走砲を見つけた。
磁力に影響されないポリマー素材製らしい。
こいつを改造して、逆にヤツにぶつけてやる。

連絡は以上。また後で会おう。










モローの施術書
被験者:サルヴァトーレ・モロー

 カドゥ適合率、やや低い。
 著しい知能の低下が見られる。

 カドゥによる内臓組織の変質が激しく
 エラや浮き袋に近い臓器が形成された
 魚類に近い体構造を持つ。

 また不定期に細胞分裂が暴走し、
 巨大な魚に似た水棲形態に変異する。
 この変異は本人の意思では制御不能。

 欠陥が多い。エヴァの「器」には不適。





ドミトレスク夫人の施術書
被験者:オルチーナ・ドミトレスク

 カドゥ適合率、極めて良好。知能に問題なし。

 新陳代謝の増加が著しい。
 外傷を受けても瞬間的に組織を再生し
 爪を短時間で成長させることもできる。
 代謝向上に伴い、身体の巨大化が見られる。

 特記事項として、先天性の血液疾患により
 定期的に他者の血を経口摂取する必要あり。

 また毒物などで代謝バランスが崩れた場合
 細胞分裂を制御できなくなる懸念もある。

 優れた個体だが、エヴァの「器」には不適。



ハイゼンベルクの施術書
被験者:カール・ハイゼンベルク

 カドゥ適合率、極めて良好。知能に問題なし。

 胸部に、シビレエイなどの強電魚に見られる
 「発電器官」と同様の臓器が形成されている。
 この器官は脳神経と直結している。

 脳を通じて全身の神経網に電流を流すことで
 自身をコイルと化し、周囲に磁界を形成。
 磁力で金属を操作することが可能。

 優れた個体だが、エヴァの「器」には不適。






ドナの施術書
被験者:ドナ・ベネヴィエント

 カドゥ適合率、良好。
 知能に問題ないが、重度の精神疾患あり。

 肉体的には普通の人間とほぼ変わらないが
 特殊なシグナル物質を分泌、放散することで
 「特異菌に感染した植物」を操作できる。

 また特定の植物の花粉を吸引させ
 他生物に幻覚・幻聴を誘発させることも可能。

 ただし精神的に未発達であり、愛用の人形に
 自身のカドゥを株分けし遠隔操作している。

 エヴァの「器」には不適。



スペンサーの手紙
我が師 ミランダ

このような形での再会となる非礼を
深く謝罪させて頂きます。

本来なら再び村を訪ね、直接ご報告すべきところ
雑事に忙殺されそれもままなりません。

…あるいは、悠久の時を生きる貴女のことです。
雪道で死にかけていた医学生のことなど
もはや覚えていないかもしれませんね。






15年前、村で過ごした日々は
私の人生で最も啓示に満ちた時間でした。

貴女の研究成果には圧倒されるばかりで
「生物を感染によって変異させる」発想には
稲妻のごとき衝撃を受けたものです。

これこそ「人類の高次への進化」という
私の理想を体現する手段と確信しました。

二度の世界大戦を経てもなお…
次の最終戦争を迎えようとする人類を見るに  
今もこの考えは少しも変わりません。




ただ私は…貴女と毎夜語らうなかで
貴女との決定的な違いに気づきました。

貴女の目的は、ひとりの死者の復活。
私が目指すものは、人類全ての進化。

つまり…貴女の研究する「菌類」では
私が求める「爆発的感染力」は実現できない。
やはり専攻の「ウィルス」こそ手段に相応しい。

それが、私が貴女のもとを去った理由です。
別れを告げなかったことを後悔しております。





思い出話はこれくらいに。
便りを差し上げたのは、あるご報告のためです。

私は…「進化の鍵」を見つけました。
アフリカの奥地に眠る「始祖」たるウィルスを。

研究基盤となる企業も友人たちと興す予定です。
会社の名前は「アンブレラ」…
貴女と語らった、あの洞窟の紋章が由来です。

いよいよ我が理想の実現が迫りました。
貴女に成果をお見せできる日が待ち遠しい。

全てはミランダ、貴女の教えがあってこそ。

         終生の師に敬慕を込めて
         オズウェル・E・スペンサー


ミランダの手紙
私のエヴァ…

100年前、母さんは「スペイン風邪」から
あなたを救えなかった。

あの時、母さんは何の力もないただの女だった。

でもやっと…「菌根」に囚われたあなたを
この世に蘇らせることができる。

生命力を試すために
ローズを菌根の制御器たる「聖杯」で復元し…
そして菌根と融合させる。

悲願の「儀式」が、ついに実現するのよ!


あなたを喪ったあと…
死に場所を探して迷い込んだ洞窟で
「菌根」を見つけたのは、偶然だった。

流れ出る「黒いもの」に触れると
頭に膨大な「情報」が流れ込んできたわ。

それは、これまで菌根が分解・吸収してきた
死者たちの、意識の残滓。

わたしは思った。
菌の中にあなたの意識が保存されているなら   
再び復元することだって、できるはず。

そう…菌根に適合する「器」さえあれば。


村に戻ると、村人どもに菌を植え付けて
母さんを崇拝するよう、意識操作した。
そのほうが人体実験を行うのに都合が良いから。 

「器」を作るため、何百人も実験に使ったわ。

効率化のために、線虫から「カドゥ」という
感染を媒介する寄生体も作ったけど…
研究はうまくいかなかった。

稀にオルチーナみたいな半適合例もあったけど
ほとんどは、理性のないライカンに成り果てた。





研究協力したいという組織に
菌と、あなたの胚を提供したこともある。
結果は出来損ないの「エヴリン」だったけど。

でも奴らからローズの情報を知ったのは収穫。
求めていた「器」だと確信したわ。 

妨害もあったけど、ローズの「検証」は済んだ。
いよいよ、研究が完成するのよ。

エヴァ…母さんはお前が待ち遠しい。









※以下はトロフィー入手に関係のないもの。せっかくなので、ついでに置いておく。

家族の記録

 1.ローズの一番のお友だち。

 2.あの子のお気に入り。子守歌替わりね。

 3.私たちにとって、何よりも大切なもの。

 4.祖母がくれた祝福の音色。

 5.イーサンがくれた、永遠の約束の証。








水門の操作手順

 大雨で漁場に被害が予想される際は、
 速やかに下記の手順を実行してください。

 1.「クランク」で風車を動かし通電させる。

 2.通電後、レバーで水門を開ける。













探索記録

2月9日 / 未明 / どこかの森

それはいつも通りの、静かな夜のはずだった。
だが…俺たち家族の平穏は
クリス・レッドフィールドに破壊された。

泣き叫ぶローズが連れ去られ…
ミアは俺の目の前で、クリスに殺された。

俺も気絶させられ
目を覚ますと雪深い森にいた。
いったい何が…どうなってるんだ。



2月9日 / 明け方 / 村の広場

森を抜けた先の村では
獣人の群れが住人を襲い、食らっていた。

「ローズはこの村にいる」
襲撃の後に出会った老婆は俺にそう告げた。

あの子を見つけなければならない。
やつらの餌食になる前に。





2月9日 / 朝 / ルイザの屋敷

村の顔役と思しきルイザの屋敷には、
惨劇の生存者が身を寄せ合っていた。

だが彼らも、豹変した老人に虐殺された。
獣人は、村人の成れの果てだったのだ。

一人生き残った俺は
ローズを探して「城」に向かうことにした。





2月9日 / 朝 / 廃坑

城に向かう俺を捕らえたのは
5人の異様な怪人たちだった。

金槌使いの「ハイゼンベルク」。
巨躯の女「ドミトレスク」。
人形を抱いた「ドナ」と醜顔の「モロー」。
そして奴らが母と敬う「ミランダ」…。

奴らは獣人たちを操っていた。何者だ…?




2月9日 / 午前 / 城の前

馬車から現れた「デューク」と名乗る商人は
何やらこちらの事情に詳しそうだった。

どうにも胡散臭い男だが…
今はそれより、城でローズの手掛かりを
探すことが先決だ。







2月9日 / 午前 / 城の寝室

村を見下ろす古城は、
怪人の1人・ドミトレスクと
その娘たちの住処だった。

ローズの手掛かりを求めて、
俺は囚われた寝室から逃げだした。







2月9日 / 午前 / 城の中庭

城にローズの姿はなかった。

初めからいなかったのか
あるいは、どこか別の場所に…?

いずれにせよ、もうこんな城に用はない。
脱出するだけだ。






2月9日 / 昼 / 城の礼拝塔

怪物と化したドミトレスクを殺し、城を脱出。
結局、手に入れたのは
奇妙なガラス瓶一つだけだった。

「おまえはローズに会えない」
やつの遺した一言が気になる…。







2月9日 / 昼 / 聖杯の祭壇

ローズの体が…瓶の中に?
いったい誰が、なぜ?
混乱して思考が追い付かない…。

しかしデュークは確かに言った。
「助ける方法がある」と。

にわかには信じがたいが…ヤツの言う通り
「赤い煙突の家」の男を訪ねるほかなさそうだ。




2月9日 / 午後 / 聖杯の祭壇

ローズの体は4つの瓶に収められ、
ドミトレスク、ドナ、モロー、ハイゼンベルク
4人の貴族が所有しているらしい。

「全てを集めればローズを救える」

デュークを信用したワケではないが
俺はやれることをやるだけだ…。





2月9日 / 午後 / 山中の庭園

霧の中にミアを見た。
どうして、彼女が?

…俺はまだ、彼女の死を
受け入れられていないらしい。








2月9日 / 午後 / ベネヴィエント邸

館での悪夢は
「貴族」の1人、ドナの仕業だった。

だが、ミアが俺に言えない「何か」を抱え
悩んでいたのは事実だ。
そしてそれを知る機会はもうない…。

残る瓶はあと2つ。
ローズだけは、必ず…。




2月9日 / 午後 / 洞窟

首尾よく3つ目の瓶を手に入れたものの
「貴族」の1人、モローに脱出路を塞がれた。
どこか別の出口を探すしかない。

そういえば…ヤツは言っていた。
「ミランダは子供を取り戻したいんだ」と。
どういうことだ…?






2月9日 / 午後 / 湖

湖畔の船小屋で
クリスと、その部下らしき連中に遭遇。
何か調査していたが…何を企んでいる?

聞きたいことは山ほどあったが
怪物と化したモローに襲撃を受ける。

まずはこの湖から脱出しなければ。
「出口は水中だ」とヤツは言っていたが…。




2月9日 / 午後 / モローの部屋

モローを倒し、湖を脱出しようとした矢先
TVモニターから語りかけてきたのは
最後の「貴族」ハイゼンベルク。

最後の瓶は、村はずれの砦にあるという。

やつの取引に付き合うのは気が進まないが
そこへ向かう以外、選択肢はなさそうだ。





2月9日 / 夕刻 / 森の砦

ついに全ての瓶が揃った!

だが、ローズを救うには
ハイゼンベルク曰く「あと一手」が必要らしい。

瓶を台座に収め、ヤツのところへ向かうことに。
だが…本当にローズは生き返るのか?
ハイゼンベルクは信じられるのか?





2月9日 / 夕刻 / 橋のたもと

四つの瓶が収まった聖杯を祭祀場に供えると
巨大な橋が架かった。

対岸に見える工場が
ハイゼンベルクの住処ということか。

ローズのもとを離れるのは心苦しいが
あと少しの辛抱だ、待っていてくれ…。





2月9日 / 夕刻 / 工場地下

「俺と組まないか」
ハイゼンベルクの目的は
ローズを兵器として復活させる事だった。

ミランダもハイゼンベルクも、
ローズの「力」を求めて争っていたのだ。
「奴ら全員でもかなわない」ほどの力を。
冗談じゃない…あの子はただの赤ん坊だ。

地上に脱出し、ローズのところに戻らなければ。



2月9日 / 夕刻 / ジャンクヤード

クリスが語ったのは、
にわかに信じがたい内容だった。

あの時、俺の目の前で撃たれたミアは、
彼女に擬態したミランダだった。

奴は「特異菌」の実験のためローズを狙い
クリスはそれを阻止しようとしたのだ。

3年前、ルイジアナの悪夢が
再び俺の家族を引き裂こうとしている。


2月10日 / 未明 / 聖杯の祭壇

俺は、2つの真実を知った。

1つは、ミランダの本当の目的。
ヤツは菌根に記憶された「死んだ娘の意識」を
ローズの体に入れ、蘇らせようとしている。

もう1つは、ミアが俺に隠していた秘密。
俺は3年前のベイカー邸事件で、死んでいた。
俺は菌に感染した「生ける屍」だったのだ。

だがそろそろ、この身体も限界らしい。
でも…安心しろよローズ。
お前だけは、パパが助けてやるからな。
※「祀」の左半分の「示」部分は、文中では「ネ」になっている。



体験版


紙切れ
いつか、ここから逃げようとするあなたへ

このメモが、あなたを救う助けにあるはず。
死にたくないなら、私を信じて。

まず、この独房から出なさい。
這いつくばってでも、手立てを探すのよ。

地下牢の出口のカギは隠されてるわ。
希望はいつだって、たくさんの血に塗れてる。







牢から出ると、部屋に行き当たるはず。
扉はまやかし。光差すところに本当の道はある。

行き止まりに見えても諦めないで。
きっと何かを見落としてる。

梯子が見えたら、もう地上は目の前よ。
だけど「あいつら」には気をつけて。
もし見つかったら…。

わたしは今晩、逃げるつもりよ。
あなたがうまくいくことを祈ってる。









ボーナスコンテンツ


The Baker Incident Report






ベイカー邸事件 調査ファイル













これは、ベイカー邸事件の
「その後」に関する調査ファイルである。












2017年7月に発生した「ベイカー邸事件」。

アメリカの片田舎にある屋敷で、幾人もの命が奪われた
口にするのもおぞましい惨劇だ。

被害者の正確な数は、今でも判明していない。










生還者であるイーサン、ミアのウィンターズ夫妻によって
事件の全容が明らかになり、
世間に大きな衝撃を与える――はずだった。

だが、事件の真相は隠蔽された。

そして…ウィンターズ夫妻も消息を絶った。









事件の裏には「何か大きな力」が働いている。

わたしはそう確信し、
ベイカー邸事件の「その後」を追跡調査することにした。

確信したのには、理由がある。

わたしも――事件の「当事者のひとり」だったからだ。










まずは――事件の発覚当初、
事件がどのように報じられたのか。

そして、世間にどう受け止められたのかを
当時の記録から見てみることにしよう。












1 事件の発覚







■地元新聞紙『ダルヴェイ・デイリー』 2017年7月22日版


 『ダルヴェイ郡で一家4人が不審死』

   ダルヴェイ郡保安局の発表によると、21日、州北部ダルヴェイ郡の
   ジャック・ベイカーさん宅で、住人全員が死亡しているのが発見された。

   事件の詳細は不明だが、死亡したのは家主のジャックさん、
   妻のマーガレットさん、息子のルーカスさん、娘のゾイさんの4人。

   なお現場付近では、19日夜からデイビッド・アンダーソン郡保安官補佐の
   行方がわからなくなっており、ベイカーさん宅に聞き込みに訪れた
   同じく保安官補佐のライリー・ウィットフォード氏によって事態が発覚した。




■事件に関するSNS投稿(2017年7月22日)


  >事件があったの、黒いバケモノの目撃があったあたりじゃ?

  >全員化け物に食われたって? ホラー映画の見すぎだよ。

  >ジャックっておっさん、かなリヤバい噂多かったよね。
   あちこちでトラブル起こしまくってた記憶ある。

  >結局、父親のジャックによる一家皆殺し&自殺で確定か?







■郡保安局 苦情窓口の通話記録


 「…おかしいでしょう?
  もう事件から2日も経ってるんですよ!
  殺人か、事故か、自殺かすら発表しないなんて…。

  だいたいなんで、あんなに広い範囲を州兵が封鎖してるんです?
  保安局は、なにか隠してるんじゃないですか?…」









ベイカー邸事件が発覚して当初、
事件の詳細は報道されず、噂や憶測が飛び交った。

現場周辺が封鎖されたことや、
一家が地域コミュニティから孤立していたことも
それに拍車をかけた。












思えばこの時点で、報道には何らかの「圧力」が
かかっていたに違いない。










この時わたしは、「ある組織」によって隔離状態にあり、
報道を見ることはできなかった。

数日後、ようやくTVを見ることを許されたわたしは
その内容と事実の食い違いに、愕然とすることになる。









2 隠蔽工作







■地元新聞紙『ダルヴェイ・デイリー』 2017年7月30日版


 『ベイカー邸事件の原因は硫化水素 郡保安局が公式発表』

   21日に発覚した、ジャック・ベイカーさん一家変死事件について、
   ダルヴェイ郡保安局は「地中の硫化水素ガス噴出による中毒死」の
   可能性が極めて高いと発表した。

   現場一帯は地盤の緩い湖沼地帯であり、
   何らかの原因で汚泥中の硫化水素が地表に大量噴出した結果、
   ベイカーさんらを死に至らしめたという。

   ガスの噴出は現在では止まっているが、
   事故の再発防止のため、一帯は隔壁で封鎖される模様。




なお、現在判明している事件の被害者は以下の通り。(敬称略)

  死亡
    ジャック・ベイカー  マーガレット・ベイカー
    ルーカス・ベイカー  ゾイ・ベイカー
    デイビッド・アンダーソン  クランシー・ジャービス
    アンドレ・スティックランド ピーター・ウォーケン

  負傷
    イーサン・ウインターズ  ミア・ウインターズ





■事件に関するSNS投稿(2017年7月30日)


  >硫化水素って…マジか?

  >事件の日、現場で軍のヘリや兵士を見たって情報がある。
   政府が関わってるのは間違いない。

  >出たよ陰謀論。
   ラクーンシティ事件の時もいたよなこういうヤツ。

  >黒いバケモノの件もあるし、衛星写真に写った難破船?とか、
   あのあたりは何かおかしい。




■雑誌『インスペクター』
 ミンデン大学 地質学教授 サリー・ボールドウィンへのインタビュー


   ――では、ガス事故という保安局の発表は誤っていると?

    「断言はできませんが、非常に考えにくいと言わざるを得ません。
     硫化水素は火山性ガスですが、ダルヴェイ郡は火山活動とは
     まったく無縁の土地ですからね。

     1998年に私の研究室が行った地質調査でも、
     そういったガス成分はまったく検出できませんでした」









「地中のガスによる悲劇の事故」――

 それがベイカー邸事件の「公式な真相」だった。












まったくの嘘だ。

報道は、あの館で繰り返されていた殺人にも、
館に巣食う、恐るべき怪物たちにも触れていなかった。

何者かが…事件を隠蔽したのは明らかだった。










そして、何よりわたしにとってショックだったのは…
犠牲者リストに、自分の名前を見つけたことだった。

わたしはまだ、「組織」によって隔離状態にあった。

このまま報道のとおりの結末になるのではと想像し、
わたしは恐怖に震えた。









…結論から言えば、それは杞憂だった。

「組織」は、わたしに偽の名前と身分証を与えると
あっさりと解放した。

もう得られる情報はないと判断したのかもしれない。

わたしは、別人として生きるよう告げられた。
それが、わたしの安全のためだとも。









わたしは、同じ生還者であるイーサンとミアに
連絡を取ろうとした。

彼らは、わたしの命の恩人だったからだ。
一言でいい、礼を言いたかった。

だが… 彼らの行方は、杳としてわからなかった。











彼らの行方は「組織」が知っているはず。

そう考えたわたしは
その組織――「BSAA」について、調べることにした。








BSAA (Bioterrorism Security Assessment Alliance)

国連管轄下の、バイオテロリズム対策部隊。

アンブレラ社の倒産後、
バイオテロが拡散するのを防ぐため設立された。

中国やヨーロッパなど、各地のテロ鎮圧で成果をあげ
「バイオテロの警察」として高い信頼を受けている。

ベイカー邸事件にも、最終的にBSAAが介入し
わたしやイーサンたちを救出した。








わたしは、隔離生活のなかで
何人かのBSAA職員と個人的に親しくなっていた。

彼らに事情を話し、機密資料を提供してくれるよう
なかば強引に説得した。












資料を集めて明らかになったのは…

ベイカー邸事件の真相を隠蔽したのが
BSAAに他ならないという事実だった。












3 隠された「真相」






■雑誌『インスペクター』


 『保安局長 国際組織幹部と密会』

   本誌記者の取材で、ダルヴェイ郡保安局長のコールリッジ氏が
   国連直轄組織「BSAA」の幹部と密会していたことが判明した。

   ベイカー邸事件をガス事故とする、保安局の発表には疑問の声も多い。

   保安局とBSAAの間で、事件の本当の原因を隠蔽するための
   何らかの取引きがあったのではないだろうか?

   保安局は取材に対し、一切のノーコメントを貫いている。


                     記者 エドガー・マクリントック





■BSAA調査官による 「ベイカー邸事件」最終報告書


  以下は、ルイジアナ州ダルヴェイで発生した生物災害事案、
  通称「ベイカー邸事件」の経緯に関する調査報告書である。

  なお本資料は、クラスC以下の職員の閲覧を禁ずる。









結論から述べると、ベイカー邸事件は
生物兵器「エヴリン」による、偶発的な汚染事故である。

住人はエヴリンの操る「特異菌」に感染。
彼女の命じるまま犠牲者を拉致・殺害していた。

住人の肉体は菌の作用で大きく変異し、
住居内には菌で構築された「モールデッド」と呼ばれる
B.O.W.も発生していた。








エヴリンを製造したのは、
国際的犯罪組織「コネクション」のミュンヘン研究所である。

BSAAはエヴリンを破壊すべく派兵したが、これに失敗。
エヴリンの逃亡を許してしまう。

その後エヴリンは、監視役のミア・ウィンターズとともに
船でアメリカに向けて移送された。









だがエヴリンは移送中に暴走。

船員の大半を殺害したのち、船を破壊した。

その後エヴリンは船の残骸もろとも、
ベイカー邸近くの沼地に流れ着いたと推測される。










先述したように、エヴリン抹殺作戦において
われわれBSAAがミスを冒し、
結果として民間人の感染に繋がったことは否定できない。

この事実が報道された場合、
BSAAへの貴任追及は避けられないと思われる。










よって、マスメディアに対して
カバーストーリーを発表することで
BSAAとしては事件を隠蔽することを提案する。


(以下省略)










■「E型特異菌」分析レポート


  ベイカー邸から採取された
  「E型特異菌(以下「特異菌」)」の性質について、
  生物調査部による分析結果が出ましたので報告いたします。









特異菌はクラドスポリウム(黒カビ)に似た構造を持ち、
極めて高い繁殖力を誇ります。

また生命体に寄生すると細胞を侵食し、
宿主のDNAを書き換える性質があります。

さらに、菌どうしが結合することで、
筋肉組織や、脳に似た神経ネットワークを
形成することも明らかになっております。










これらの結果として、特異菌に感染した生物は
不死とも言える「怪物」へと変異します。

(以下省略)






■少女型B.O.W.「エヴリン」調査報告書


  ヒト胚に菌を移植して作られた人工生物。

  特殊な脳信号で菌ネットワークに介入し
  自在に操ることが可能。

  エヴリンはその生育環境から「家族」に執着し
  菌で支配した人間を、疑似的な「家族」にしていた。

  ただしエヴリンの染色体には先天的欠陥があり、
  急速に細胞が老化、死亡した。


(以下省略)



■犯罪組織「コネクション」調査資料


   決まった拠点を持たない、ネットワーク型の犯罪組織。

   組織規模は不明だが、活動範囲は全世界におよぶ。
   近年では東欧での活動が活発化している模様。

   主な活動内容は、「B.O.W.の製造および販売」。
   「特異菌」および「エヴリン」も彼らの「商品」である。




信頼できる情報源によれば
「コネクション」の創設者は、ブランドン・ベイリー。

かつて、アンブレラ社長オズウェル・E・スぺンサーの片腕として
辣腕を振るった人物である。現在の生死は不明。

ベイリーはスぺンサーと思想の違いから離反。
アンブレラ・アフリカ研究所の所長時代の人脈を駆使し
独自の犯罪ネットワークを作り上げたと思われる。

組織の目的が純粋な営利活動なのか
それ以外にあるのかは調査中である。

(以下省略)








BSAAの機密資料には、
わたしが知るベイカー邸事件の真相が
無機質に記されていた。












あの嵐の夜、タンカーが沼地に流れ着いたこと。

タンカーの残骸から、
ジャックがエヴリンという少女を家に連れてきたこと。

そして…エヴリンが一家を狂わせ
人ならざる怪物に変えていったこと。










BSAAは、事件の真相を把握しながら
メディアに圧力をかけ、隠蔽していた。

国連直轄の組織なら、造作もないことだったろう。

エヴリン流出の原因を作ったのが自分たちだと
知られるわけにはいかなかったのだ。












わたしは資料を収集し続け…
ついに、イーサンとミアの行方に関する
手がかりを見つけた。













4 ウィンターズ夫妻の行方








■BSAA調査官による イーサン・ウィンターズ聴取記録

 (録音開始)

  ――では、聴取を始めようか。まず名前と職業を。


    「…イーサン。イーサン・ウィンターズ。
      システムエンジニアだ。

      もう何回目だ?
      いつになったら解放してくれる?」






――これまでの聴取で、
  どうやら君には何も「ウラ」がない…

  つまり、事件に巻き込まれただけの被害者だと
  ようやく納得ができたよ。


   「それはつまり… 解放してくれるってことか?」










――ああ。…だが、1つ条件がある。


   「…条件?」









――ふたりには今後、
  われわれの監視下で生活してもらいたい。
  住む国も、家も、すべて我々が用意する。


   「…何を言ってる?
    それは…別人になれってことか? どういう… 

    待て、『住む国』?
    外国に引っ越せって言うのか?」








――東ヨーロッパの、某国とだけ言っておこう。


   「…ヨーロッパ…? 嘘だろ…!?

    どうして俺たちが、そんな…」









――事件の目撃者である君たちは
  現在、ある犯罪組織に狙われている。

  彼らから守るための、やむを得ない措置だ。
  一種の「証人保護プログラム」だと思ってほしい。


   「だけど…ヨーロッパで暮らすなんて、急に…」







――すべてを忘れ、別人としてやり直すんだ。
  それが、ふたりのためでもある。


   「…忘れられるわけがない。あんな出来事…

    そうだ、ミアと会わせてくれ。
    彼女と話さないと…ミア!」

 (録音終了)






■BSAA調査官による ミア・ウィンターズ聴取記録

 (録音開始)

  ――検査の結果、体内の「菌」は
    ほぼ完全に除かれていたよ、ミア。


    「……。
     彼には、話したの? わたしの過去のこと…」





――いいや。
  BSAAは、君がかつて「コネクション」に
  所属していたことには関知しない。

  組織の情報提供をしてもらった礼だよ。


   「…わたしは、彼との生活を取り戻したいだけ。

     すべて忘れて…イーサンと
     新しい人生をやり直したいだけよ」

 (録音終了)







イーサンとミアは、ヨーロッパにいる!

ようやく発見した足取りに、
わたしの心は躍った。

だが…









調査はそこで、暗礁に乗り上げてしまった。

BSAAのガードは固く、
協力者たちの手を借りても、イーサンたちの
詳しい所在を知ることはできなかった。

国際的な犯罪組織から守ろうと言うのだから、
それも当然だったかもしれない。












そして何も得られないまま――2年が過ぎた。














わたしは、ニューオーリンズの小さな新聞社で
見習い記者として働くようになった。

ベイカー邸事件のことは、
いつしか人々の記憶から消えつつあった。












そんなある日、わたしの住むアパートメントに
一通の手紙が届いた。

差出人の名は…
なんと、ミア・ウィンターズだった。








■ミアからの手紙


   ハイ、元気?

   本当にひさしぶり。
   BSAAが、なかなか手紙やメールを
   許可してくれなくて…

   この手紙は、職員の人に
   直接届けてもらったから安心して。

   ヤツらに居場所がバレることはないわ。





ずっと…お礼を言いたかった。

あなたが助けてくれなかったら
イーサンもわたしも、
あの館で命を落としてたと思う。

たったひとりで、孤独に戦ってたあなたを
わたしは心から尊敬する。

本当に…ありがとう。






くわしい場所は言えないけど、わたしたちは元気よ。
「こっち」の生活にも、ようやく慣れてきた感じ。

BSAAが用意してくれた家もすっごい大きくて…
なんだか得しちゃった。


…ああ、そうだった!

手紙を書こうと思ったのは、
お礼のほかにもうひとつ理由があって…








わたしたち、赤ちゃんが産まれたの!

写真を同封しておく。

言っておくけど…
かわいすぎて気絶しないでね。












名前は「ローズマリー」。
素敵でしょ?









いつか、あなたを招待できる日が来ると思う。
イーサンも会いたがってるわ。

郷土料理だって、いくつか覚えたのよ。
きっと気に入るから。

それじゃあ、また。
返事は書かなくていいわ。

…くれぐれも気を付けて。


             ミア・ウィンターズ







イーサンとミアからの、突然の連絡。

さらに、ふたりには赤ちゃんが。

彼らを見つけることを諦めかけていたのもあり…
わたしは思わず、涙をこぼしていた。












ふたり…いや、3人は異国の地で、
やっと幸福を手に入れたのだ。














郵便受けを閉めようとして…
わたしはもう一通、封筒が入っているのに気づいた。














「BSAA」のロゴが入った封筒には
 差出人が記されておらず
 中には1枚の書類が入っていた。









■BSAA本部による
 クリス・レッドフィールドへの警告書


   クリス、最近のきみの行動について、われわれは強く懸念している。

   報告によれば、きみは精鋭部隊「ハウンドウルフ・スクァッド」を
   私物化し、無断で運用しているという。

   機密ファイルへの、無許可のアクセス記録もある。

   きみは、何をしようとしている?








きみと、きみの部隊は、東ヨーロッパで何をしている?

通信に頻出する「ミランダ」とは、何者だ?

なぜ今になって、ウィンターズ夫妻の周辺調査をしている?









ベイカー邸の事件以来、
BSAAに対する批判的言動も目立つ。

創設メンバー「オリジナル・イレブン」のひとりとはいえ、
これ以上の暴走は処分せざるを得なくなる。

繰り返す。
クリス、きみは何をしようとしている?


               BSAA欧州本部 査察部










書類の裏には、
手書きで短い言葉が記されていた。















「事件は まだ 終わっていない」














以上が、わたしが収集した
ベイカー邸事件に関する資料のすべてだ。

このファイルはあくまで個人的なもので
一般に公開するつもりは、今のところない。










調査はこれからも続けていく。

妨害や嫌がらせを受けたことも少なくないが、
死んだ「家族」のためにも、やめるつもりはない。

そしていつか必ず、イーサンとミアに
直接あの日の礼を言う。

それがわたしの夢だ。











わたしはゾイ・ベイカー。

あの惨劇の生き残りだ。













ベイカー邸事件 調査ファイル










Shadows of Rose


菌根に関する仮説
ミランダの研究によると、特異菌の菌根は
死者の情報を「記憶」しているという。

併せて、過去の事例において
特異菌が感染者の意識を結ぶ一種の
ネットワークを構築していたこともわかっている。











この2つの情報から、特異菌適合者は
特異菌のネットワークを介して
菌根内に蓄積された死者の「記憶」に
接触可能なのではないかと仮説を立てた。

そして――この研究室には、
16年前に例の村から回収した
菌根の一部が保管されている。

つまり、特異菌適合者の協力さえあれば、
前述の「仮説」を検証することができるのだ。






しかし、倫理的な問題や組織的な事情がある。
我々研究者から特異菌適合者への連絡が
禁止されている以上、本件は検証不可能だ。

この仮説が真であったなら、人類の発展にも
大きく寄与する大発見になるだろうに――













処置室のメモ
捕らえたウサギの死骸を加工し、
オブジェにする。

腐敗を気にする必要はない。


※生き生きと見せるために
 多少は化粧をしてやること。











黒領域についての手紙
前略

「大役」をお任せいただき、
心より御礼申し上げます。

また、此度の任務のために賜った「黒領域」が
素晴らしい働きをしていることを
ご報告しておきます。

私の狩人たちの移動を助けるばかりか、
獲物に絡みついて足止めし、
さらにはそのまま飲み込んでしまうとは!

これがあれば、必ずやご期待通りの結果を
お出しすることができるでしょう。




使えるものが無いときは
使えるものは全部使う。

メモ:「ハーブ」と「薬液」、
   「ガンパウダー」と「薬液」

組み合わせると使えるようになる。

他にも色々あるかもしれない。
何を使ってでも、生き延びたい。










特異菌同士の交信について
特異菌同士が交信に使っている
化学物質(オートインデューサー)を
強い干渉力で遮断すると、特異菌の働きは
極端に鈍くなることがわかった。

例えば、特異菌の塊である「菌核」に対して
化学物質の遮断を一定時間行うと
組織がボロボロと自壊していくのが確認できた。









「菌核」は特異菌が新たな場へ進出しようと
する際、その足掛かりとして形成される。

強い干渉を受けるなどして
「菌核」が危機に晒された場合、
その菌核の根付いた黒領域も自壊してゆく。

特異菌がその場を生息に不適格と
判断するためであろう。










活動個体への干渉について
一定以上のオートインデューサーへの
干渉を行うと、自律行動をするような
「活動的な個体」であっても
動きが極度に鈍くなることがわかった。

ただし、一時遮断程度では枯死までは至らない。

また、直接干渉していない個体にも
特異菌の交信により干渉が伝染するが、
干渉範囲については限られている。









仮面の公爵の手記
何も覚えていない。
私が何者だったのか、どのように生きてきたのか。
何もわからない。

この仮面の下の顔が崩れているように
私の記憶も崩れ去ったというのか。

ただ残るのは、誰かをいたぶり惨たらしい姿を
見たいという渇きにも近い感情だけ。

さて、次はどうするか。
そろそろ、とっておきの奴を向かわせてもいい。
顔がたくさんあっても知能の無いアイツのことだ。
容赦なくウサギを追い詰めるだろう。





優秀個体の楽しみ方
ようこそ 絶望のギャラリーへ

ここでは、1つでも仮面を入手したことがある
優秀個体を額装して展示いたします。

数ある我がコレクションの中でも
選りすぐりのウサギたち。
その脆弱かつ苦痛に満ちた姿を
ありのままに芸術とした逸品を集めています。

本コレクションを通して「いのちの輝き」を
違った視点から眺めていただければ幸いです。







ショットガンの弾、パイプ手榴弾の作り方
・ショットガン弾
 ガンパウダー+スクラップ

・パイプ手榴弾
 スクラップ+ガンパウダー+ハーブ

上記の組み合わせで作り出せる。
 →ショットガンは食堂にある。

これで逃げ切ってみせる。









少女の日記
1月5日

今日から小学校に通うことになった!
ずっと行きたかったの!
クリスにおれいを言わなきゃ。

テレビや本でよんだとおり、
わたしと同じ年の子がいっぱいいた。
あいさつするのは少しきんちょうしたけど
それよりずーっとワクワクしたよ。

お友だちがたくさんできるといいな!
明日は、わたしから話しかけてみよう。




1月8日

ゆう気を出して、何人も話しかけたけど
だれも、一人も、
ちゃんとへんじしてくれなかった。

べんきょうはとってもカンタンだった。
ぜんぶママとやったことばかり。
だけど、すぐに答えを言っちゃダメみたい。
(後ろのせきの子が、
 わたしのわる口を言ってた)

すごく困ったり、きんちょうしたりすると
手から白いあせが出ちゃう。
今日はそれがとってもひどかった。


2月10日

よごれたハンカチをずっと持ってるのは
よくないって、先生にちゅういされた。

男子に「ローズはきたない」って言われた。
まい日おふろに入ってるし、服もハンカチも
ちゃんとせんたくしてるのに。

手から白いあせが出たらハンカチでふくけど
止まらない時は、ずっと持ってるしかない。

この「あせ」で他の人をびょうきにしたりは
しませんって、クリスに言ってもらったのにな。



4月4日

はじめて話しかけられた!
同じクラスのルーシーが
「本当はずっと
 お友だちになりたかったの」 だって!!

明日から、ランチをいっしょに
食べるやくそくもした。
うそでしょ!? ゆめみたい!!

ルーシーの友だちのキャサリンとも
仲よくなれるといいな。






やることリスト
To do:

 完了: 飾り付けをする (リビング)

 完了: ワインを買う (キッチン)

 完了: "もう一つのプレゼント"を用意する (書斎)












夫への書き置き
イーサンへ

2月2日はローズにとって初めての記念日。
とびきり可愛いケーキを作るつもりよ。
あなたも期待してて!

これからお祝いの度に、特別なケーキを
作ろうと思ってるの。
写真を撮るのは、もちろんあなたに任せるわ。
私たち家族のアルバムが
分厚くなっていくのが楽しみね。








ローズのハーフバースデー計画
2月2日はローズのハーフバースデーだ。
あっという間の半年だったな。

この瞬間の気持ちを
記録しておきたくて、手紙を書いた。
少し感傷的になったかもしれない。

誰かに見られたら恥ずかしいから、
今は棚の引き出しに入れておく。
これなら見つからないだろう。
カギは…お気に入りの写真の裏に隠しておくか。








意識の世界の法則
菌根は全ての生物の「記憶」を吸収するが、
その内部にて展開される世界には
ある種の法則が見られる。

 1つ――
  「記憶」は現実に忠実というわけではない。

 2つ――
  個としての意識を保つことができるのは
  生前より菌感応力を得ていた者に限られる。

ここまでは、生前より時折見える「啓示」からも
推察が可能であった。




肉体が減び、私の全てが
完全に菌根の中に入り込んだことにより
その驚異的な仕組みへの理解が深まった。

私が長年生きてきたことは
無駄ではなかったのだ。

積み上げてきた膨大な「記憶」は
菌根内でより大きなカとなった。
この力を駆使すれば…
他人の記憶に干渉することも可能だ。






しかし、問題も山積みだ。
何より頭が痛いのは…
大切な「ただ一人」の記憶が有象無象に
溶け込んで、なかなか吸い上げられないことだ。

記憶を抽出する際に受け皿となる
「器」が必要となるだろう。

となれば、それに相応しいのは――実績のある
ローズマリー・ウィンターズしか居ない。









記憶の編集および復元について
〜故人らの記憶を復元・編集する試みについて〜

菌根内に保持された「記憶」から
故人の「編集」および「復元」を試みた。

没後、時間が経った者の記憶は菌根内に拡散し
他者の記憶と混じりゆく傾向にある。
そのため、特定の個人の記憶のみを
抽出することは困難を極めた。

今回は、記憶の欠損部を
他者の記憶で埋めることの可能性を検証した。





【結果】
故人の記憶の寄せ集めから
一人の人間をこの世界に創り出すことには成功。
しかし、想定外の挙動が多い仕上がりとなった。

特徴的な顔面の欠損、
嗜虐性が強く歪んだ人格、
そして何故か見覚えのある風体…。


【結論】
「編集」は破綻が生じやすく
安定性に大きな問題があるようだ。
「器」作成には不適な技術と判明。





器複製の試行について
ローズマリー・ウィンターズの完全な複製を
作り出し、「器」とする想定だった。

しかし、何らかのノイズが入るようで
完全なローズの複製を造り出すことができない。

現れるのは動く人形のような、
無力な抜け殻ばかり。
これでは「器」としては使えない。








一体何が原因となっているのか――
さらなる試行が必要だ。

ノイズとなりうる要素としては
 1.本人が存命であること
 2.内部からの何らかの干渉
 3.複製プロトコルの欠陥
などが考えられる。
どれも可能性としては低く、対処は困難だ。

ローズ本人をこの世界へ連れ込み、
自ら器となるよう仕向けられたなら――
それが最良ではある。




【追記】
実験系廃棄物ともいえるローズの抜け殻
(ここではコピーローズとする)も
何らかの刺激を与えれば
本物のローズと同じく機能し始める可能性あり。

一緩の望みをかけ、
コピーローズへのストレス実験を開始。
本件は「仮面の公爵」に任せる。










真新しいメモ
個人の「記憶」を抽出する試行を繰り返すうち、
この世界に想定外のゴミが紛れ込んだようだ。

このゴミ――エヴリンとかいう出来損ないの
勝手な行動により、計画に狂いが出てしまった。

本来であれば、
今頃ローズマリー・ウィンターズは
生への執着と、その能力を
すべて捨て去っているはずだったのに。









捧げられた書物
満ち満ちて統べたる黒き神よ。
今こそ新たな世を創り賜え。
黒き叡智による恵みを
再び授け賜え。

失われて散ったいとし子が
この地に落ちた血によりて
虚るの眠りから真に目覚め
すべからく救われんことを。










洞窟に残されたメモ
何か強い力を感じてここまで来たけど
もう動けない。

目に入る、あの青い光の先に
求めるものがあると思ったのに。

勇気を出して、もっと早く来れば良かった。
こんな風に、動けなくなる前に。