☆ローズのごはん(2月) 6日 ライスシリアル つぶしたバナナ 7日 さつまいものポタージュ ほうれん草のクリーム煮 メモ:ハチミツ、黒砂糖はダメ。 あと、キノコ類は「絶対」NG! |
「ダルヴェイ有毒ガス事故 調査終了へ」 2017年に起きたルイジアナ州ダルヴェイの 有毒ガス流出事故について、事故調査委員会は 18日、事故原因を地下泥岩層からの自然噴出 によるものと結論付け、調査を終了することを 公式発表した。 |
事故では近隣に住むジャック・ベイカーさん (当時57歳)ら一家4人が犠牲になり、 また事故当時、現場を訪れていたと思われる イーサン・ウィンターズさん夫妻については 現在まで所在がわからない状態となっている。 事故現場の一帯は隔離壁で封鎖されており 会見によれば封鎖は少なくとも今後10年は 解除されないとのこと。 |
2021/02/06 またミアと喧嘩した。 はずみでつい、3年前の事件のことを 口にしてしまったのが原因。 ヨーロッパでの暮らしにも慣れてきて ローズの世話もできるようになった。 でも…俺の心の一部は、 まだあのベイカー邸に囚われたままだ。 |
ミアが神経質になるのもわかる。 だけど、全て忘れて過去を封印することが 本当に正しいんだろうか? ローズとの未来を紡ぐには、あの日俺たちが 経験したことに、もう一度向き合う必要が あるんじゃないか。 それがあの子への責任だと思う。 …本当は、ミアもわかっているはずだ。 でなければ病院であんな取り乱したりしない。 |
検診結果:ローズマリー・ウィンターズ 誕生日 2020/08/02 身長 62.3cm 体重 6.57kg 視診・触診・聴診 すべて問題無し 特記事項 追加実施の真菌感染症検査の結果については 検査協力機関のBSAAより別途連絡を お待ちください。 アッペルフェルド記念病院 |
【作戦概要】 ・目標の殺害および遺体収容 ・ローズマリー・ウィンターズ イーサン・ウィンターズ 両名確保 両名は検査のためサイトCまで移送。 最低2名の武装兵を添乗させること。 |
おお ライカンよ おとぎ話の 悪魔の狼どもよ 我らを食らいに来るがよい 血肉を食らいに来るがよい |
村を守る「魔除けの山羊」をお捧げする 「壊したり」すれば、ミランダ様の罰が下ろうぞ |
ルイザ、また家畜がやられた。 このままじゃ冬を越すのは無理だ。 消えたエルネストも、まだ見つかってない。 ミランダ様は、俺たちを見捨てたのか? |
01/05 レドニク様 納品 男1/女3 01/28 ミランダ様 奥様との会談 02/01 デューク様 商談 |
収蔵目録 「ノルシュティンの迷球模型」 19世紀末の造形作家の作。 祖国で異端の烙印を押され 放浪の果てに村に辿り着いたと言う。 ノルシュティンは「古城」「丘の館」 「水車」「鉄塔」の4作品を作り上げた後 拳銃で頭を撃って自殺した。 |
模型は可動式になっており、 専用の金属球を終点に導く遊具になっている。 4つの模型にはそれぞれ 色水晶で彩られた人骨が納められている。 一説によると、これらは彼の愛した 4人の妻の遺骨であるとも言われる。 |
ドミトレスク城におけるワイン醸造の歴史は 現在の城主様一家が移住されるより遥か昔 15世紀にまで遡ります。 オルチーナ様は伝統的製法に「独自の工夫」を 加え、むせ返るようなコクと芳香を与えることに 成功しました。 中でもその年で最も出来の良いワインは 「サン・ヴィエルジェ(処女の血)」と呼ばれ 花をあしらった特別なボトルに保存されます。 |
1958/06/09 今日からお城で勤めることになった。 使用人が女の人ばかりでびっくり。 城主様とお嬢様たちの機嫌だけは 損ねないように強く言われた。 どんな人たちなんだろう? |
1958/06/23 お城に来て、今日で2週間。 なんだかこの城は少し怖い。 同僚のアデラがダニエラお嬢様に粗相をして 顔をナイフで切られた。 夜になると、亡霊みたいな呻き声が聞こえる。 家に帰りたい…。 |
1958/07/08 どうしよう。 お嬢様たちが食事している時、 あまり暑いから、少しだけ食堂の窓を開けた。 そうしたらお嬢様たちが、いっせいに 私を見て叫んだ。「すぐに閉じろ!!」って。 きっと、私も地下に連れてかれる。 どうしよう。どうしよう。どうしよう。 |
‐適合‐ アリーナ ミハエラ ロイス イングリド ‐廃棄‐ ディアンドラ グレタ ナディン カメリア ビアンカ メリナ アストリド リュドミラ ロザリンダ リナ ステファナ ガブリエラ |
‐アリーナ 食欲旺盛 ‐ミハエラ 食欲旺盛 ‐ロイス 食欲旺盛 ‐イングリド 不安定 時おり意識覚醒 |
またひとり、地下送りになった。 あの娘は、スープを少しこぼしただけなのに。 みんなが知ってる。 地下に行ったら、もう帰ってはこれない。 血を抜かれて、恐ろしい幽鬼に変えられる。 骨と皮だけになったあの娘は 腐ったネズミの死骸をかじっていた。 次は誰の番かしらね。 |
ミランダお母様に呼ばれる。 「御子」の父の処遇を話し合えとのこと。 血の繋がりはないとは言え… 奴らと兄妹扱いされると虫唾が走る。 特にあのハイゼンベルク!! 下品で粗野な、卑しい血の男。 お母様が止めなければ この手で引き裂いていた。 |
なぜ…お母様はわたしを奴らと同じに扱う? 城を与えてくださったのも 従順な娘や不死の血肉を与えてくれたのも わたしが特別だからでは? 喉が渇く。 |
奥様の「口紅」を見つけた者は、 浴室に戻しておくこと。 非常に高級な特注品です。 決して良からぬ心を起こさぬように。 侍従長より |
術後1日目。 「処置」が終わってから 3人とも死んだように動かない。 「長女」となる娘の口から、1匹の羽虫が出る。 蝿のように見える。 |
術後2日目。 3人の体に、無数の虫が湧いている。 体の各部が虫に食われているように見える。 窓を開けると、虫がぽろぽろと床に落ちる。 どうやら冷気にあたると硬直する性質らしい。 慌てて窓を閉じる。 |
術後4日目。 ほぼ全身を虫に食い尽くされた。 ヒト型の黒い塊がうごめいている。 昼過ぎ、娘たちの体の部位ごとに 虫の色が変化してくる。 顔の虫は青白く、唇の虫は赤くといった具合。 |
術後6日目。 虫の塊が娘たちの姿に戻る。 もう人間にしか見えない。 3人が起き上がり、わたしを見つめる。 うつろな視線だが、親子の情を感じる。 名前はもう決めてある。 ベイラ、ダニエラ…そしてカサンドラ。 |
学名なし。体長5〜6cm。 体構造はオオクロバエに似るが、顎が異常発達。 肉食性で、性質は極めて獰猛。 カドゥが宿主の人体に産卵することで発生する。 卵管が退化しており、虫自体に生殖能力はない。 集合フェロモンで群体を形成し、人間に擬態。 獲物を油断させ接近、捕食する。 |
特徴として、急激な気温変化に弱い。 特に摂氏10度以下の外気に触れると 全身の筋肉が硬直し、生命活動を停止する。 クマムシやネムリユスリカに見られる クリプトビオシスと似た状態か。 |
「死花の短剣」なるものが、城にあると聞く。 それは中世の品で、なんでもその刀身には 古今東西のあらゆる「毒」が塗られているとか。 妄想にとりつかれたかつての当主が 悪魔や魔物を殺すために作らせたそうだ。 実に興味深い…が、もう誰も所在を知らない。 |
依頼されていた例の細工ができた。 洞窟から遺跡を抜けて 赤い煙突の家に運んでおいてくれ。 |
向かいの煙突の家から、悲鳴が聞こえた。 これから様子を見に行くが ガレキが邪魔で、集落を大回りするしかない。 馬小屋の壁の穴が、こんな時に役立つとはな。 朝までに俺が戻らなければ… お前ひとりでルイザの屋敷まで行け。 レオナルド |
ご用の方へ 家主が長期不在のため、 家の鍵を預かっております ベネヴィエント家 庭師 ヨーゼフ・シモン |
2月1日 ミランダ様に、山羊2頭を献上。 |
2月3日 ミランダ様に、毛織物を献上。 指定された薬品と器具を 数日内に用意するよう言われる。 何に使われるのだろうか? |
2月8日 ミランダ様からの連絡なし。 やけに家畜どもが騒がしい。 |
2月9日 夜明け前、件の品を 岩の教会まで届けるよう言われる。 そこで私は…恐ろしいものを見た。 |
そこには、四人の貴族様と 見知らぬ赤子を抱くミランダ様がいた。 ミランダ様が何かつぶやき そっと…その子の顔に触れた。 すると…なんということだ… 見る間に赤子の身体が…白く… 結晶のように変わっていくではないか。 そして…その結晶を…ああ! |
わたしは思わず尋ねた。 いったいなぜ、こんなことを? ミランダ様は微笑み、言った。 この子は選ばれし子 いかなる姿になろうと、やがて元に戻る…と。 そして…貴族様たちが 結晶をひとつずつ授かり、去っていった。 |
わたしはミランダ様への礼儀も忘れ その場を逃げ出した。 恐ろしい。 いったいあの子は…何なのだ。 |
作戦記録 2021/02/09 記録者:NH 1135 事故現場到着。 EW/RWいずれも発見できず。 1210 村に侵入。数体のB.O.W.と交戦。 EWの痕跡を数点発見。RWは不明。 1310 小教会を一時拠点とし作戦会議。 LB/TD/KNは研究室の捜索。 NH/UEは菌糸の採取と分析。 R隊長は村外れの工場に単独潜入。 |
11月10日 ドナ様がミランダ様の養子となられた。 長年仕えた身としてこんな嬉しいことはない。 幼い頃より極度の対人恐怖を お患いだったドナ様。 ご両親の死後は閉じこもりがちになり お父上の作った「アンジー」という人形を 通じてしか、人と話せなくなってしまわれた。 ミランダ様の慈悲に感謝するばかりだ。 |
11月27日 ドナ様は、お加減がよろしいようだ。 気のせいか人形のアンジーまで 以前より生き生きとして見える。 今日も庭園に来て、アンジーを介して あれこれ楽しそうにお話しになっていた。 なんでも「お母様に力をもらった」とのこと。 |
11月29日 ドナ様が一輪の黄色い花を持ってこられ 庭園に植えるようお申し付けになられた。 クラウディア様の墓前に植えていると 花の香のせいか、どうにも頭がぼうっとする。 夢うつつに、死んだ家内が見える始末だ。 ドナ様に話すと、たいそうお喜びになって 明日、お屋敷に来るよう言われた。 もっと家内と会わせてくださるという。 何やらわからぬが…なんとお優しいことか。 |
傷が深い。もう長く保ちそうにない。 小屋のまわりを「あいつ」が うろついているのが聞こえる。 あいつは銃にひるみもしなかった。 俺の抵抗を、楽しんでいる風ですらあった。 あいつは…普通の狼じゃない。 |
だが畜生、もう少しだったんだ! 水車小屋まで行ければ あいつを「あの武器」で仕留められたのに。 小屋はもう、目の前なのに。 くそ、ひどく寒い。足に力が入らない。 俺を許してくれ、ルイザ。 |
ハンス親方が死んじまったから、 しばらく漁は止めだ。 ボートの鍵は 坑道の奥の小屋に返しておいてくれ。 親方が死んだのは事故なんかじゃねえ。 怪物に、舟ごと食われちまったのさ。 |
どうもクランクにガタがきてるようだ。 壊れちまったら、悪いが湖の反対側の 2号機まで替えを取りに行ってくれ。 |
10がつ 1にち はれ ミランダさまにおねがいして 村びとを 5にん つれてきてもらった。 くすりでねむらせて 「カドゥ」をおなかにうえつけた。 はやくこいつらのなかで カドゥがせいちょうするのが たのしみだ。 |
10がつ 2にち くもり あさになったら 4にんは死んでた。 ひとりはライカンに なりかけてたから 山のうえの じっけんじょうにおくった。 またしっぱいだ。おかあさまがほしいのは もっとつよい「うつわ」なのに。 もっといっぱい 村びとを おくってもらわないと。 |
ミランダおかあさまから ローズのびんを ひとつあずかった。 みんな 仲がわるいから 自分だけ ぎしきの なかまはずれにされると思ってる。 だから 4にんが1つずつローズをあずかるって ハイゼンベルクが 言いだしたんだ。 みんなあつまらないと ぎしきできないように。 おかあさまは「すきにしろ」って。 |
おかあさまが言ってた。 ローズが「うつわ」なんだって。 「うつわ」があれば おかあさまは ほんとうの子どもを 手にいれられる。 ずっとまえに 死んじゃったおんなの子。 |
でも そうしたらおれはどうなるんだろう? 本当の子どもじゃないから すてられるのかな? そんなのいやだ! |
いやだ!いやだ!いやだ!いやだ!い やだ!いやだ!いやだ!いやだ!いや だ!いやだ!いやだ!いやだ!いやだ! いやだ!いやだ!いやだ!いやだ!い やだ!いやだ!いやだ!いやだ!いや だ!いやだ!いやだ!いやだ!いやだ! いやだ!いやだ!いやだ!いやだ!い やだ!いやだ!いやだ!いやだ!いや だ!いやだ!いやだ!いやだ!いやだ! いやだ!いやだ!いやだ!いやだ!い やだ!いやだ!いやだ!いやだ!いや だ!いやだ!いやだ!いやだ!いやだ! |
ミランダおかあさまに 山をひとつもらった。 ここならカドゥの実けんがたくさんできる。 おれの ひみつのけんきゅう所だ。 |
きょうは 実けん台のおなかに カドゥを3つ入れてみた。 はじけて ぐちゃぐちゃになった。 |
きょうは 実けん台にカドゥを入れたあと せきずいに おおかみの血を 注しゃしてみた。 いきなりあばれだして 助しゅをくいころした。 てにおえないから おりに入れた。 もっとえさを つれてこないと。 |
DNAシークエンシング完了。 ダルヴェイの特異菌と99.95%一致した。 差分は人為的な加工のためと思われる。 おそらくは、こちらが原種。 コネクションがどうやって菌を見つけたのか 入手経路の調査が必要。 |
菌コロニーは村の地下全域に広がっている模様。 ベイカー邸の事例では、特異菌が感染者の 「意識ネットワーク」を形成していた。 ネットワークがここまで肥大化した場合 それ自体を一種の「データストレージ」と 見なすこともできるだろうか? だとすればミランダの求める「データ」とは? |
7月8日 今日は、あの太った行商人が来る日。 古新聞をいくつか譲ってもらう。 ミランダ様に禁じられてはいるが、 やはり外の話題は面白い。 新聞を読んでひとつ、妙な発見があった。 ある製薬会社に関する記事だったが その会社のエンブレムに見覚えがあったのだ。 |
そうあれは…村の「聖杯」にあった紋章だ。 たしか洞窟の壁画にも同じものが。 あの放射状の「傘」を思わせる紋章。 どうしてあれが、外の企業のエンブレムに? そういえば昔、この村に滞在した男がいたが… 考えすぎか。 |
明けに王の伝令が来て、我が軍の撤退を告げた。 国境の要害である砦を異教徒どもに明け渡すのは 口惜しい限りだ。あと少し時間を頂ければ、 戦の趨勢も変わったものを。 いや…それは建前だ。 私は、好奇心からこの地を離れたくないのだ。 |
この地には、村人が「先史者」と呼ぶ 古代人の遺跡がいくつも残されている。 祭祀場の巨大な四座像。 紋章の刻まれた洞窟壁画。 聖杯と呼ばれる石の台座。 彼らはどこから来て、どこに消えたのか? それを知らず去ることこそ、真に口惜しい。 |
「カドゥ」移植実験記録 被験者174〜181 |
■被験者174 ミハイ・M 素体:21歳/男性/肺炎の既往歴あり 銀細工職人。 結果:適合率低。カドゥ成長せず。 体組織変異と知能低下。 (ライカン症例) 放牧地へ。 |
■被験者177 ベルナデッセ・B 素体:21歳/女性/既往歴なし 特記事項なし。 結果:死亡。 |
■被験者181 オルチーナ・D 素体:44歳/女性/先天性血液疾患あり 没落貴族の末裔。村の人間ではない。 結果:適合率極めて高。知能低下見られず。 体組織変異を、任意で制御可能。 認識操作処置の後、特別観察対象へ。 |
機械化死体兵「ゾルダート」 ───────────────────── ver.1.00 成人男性の死体を素体に使用。 心臓を切除し「カドゥ」を移植。 電気刺激による起動に成功。 脳死状態のため高度な思考は不能。 破壊本能のままの行動に留まる。 |
ver.1.01 頭部に制御ヘッドギア装着。 電極からの擬似脳波で挙動安定化に成功。 ライカンとの戦闘試験実施。 3分ほどで解体され、捕食される。 破壊・殺傷能力に課題。 |
ver1.10 下腕部を切除し工業用ドリル移植。 出力不十分のため稼働せず。 素体に死体を用いた弊害か。 |
ver1.15 胸部に「カドゥ制御リアクター」移植。 出力の大幅向上に成功。 ライカンとの第2次戦闘試験実施。 約1分でライカン3体を殺害。 良い結果だが、リアクターの耐久性が課題。 破壊された場合、即座に活動停止する恐れ。 |
ゾルダート強化発展計画 「ゾルダート・ジェット」 ────────────────────── 「ゾルダート」にロケットエンジンと 頭部安定翼を装着。噴進飛行により 機動性の低さを抜本的に改善する。 試験では短時間の飛行に成功。 長距離航行は難しいが、起伏の激しい地形で 立体的な機動が可能となった。 |
ゾルダート強化発展計画 「ゾルダート・パンツァー」 ────────────────────── 「ゾルダート」に、アルミ合金製の 全身装甲を装着。胸部リアクターや 死体露出部の絶対防御を図る。 試験では通常火器に無敵の防御力を発揮。 だが爆弾などで強い衝撃を受けると、 装甲自体が剥離することがある。要改善。 |
試作機「シュツルム」 ───────────────────── 払い下げのターボプロップ・エンジンを使用。 リアクター出力を強くしすぎたためか 突進ばかりでほぼ制御不能となった。 正面には無敵の性能を誇るものの 自身の腕をプロペラで切断する 長時間の稼働で熱暴走するなど問題が多い。 結論:完全な失敗作。 |
ミランダが憎い。 あの女の欺瞞が憎い。 |
あの女にとって俺は ただのカドゥの実験台だ。 貴族なんて身分も、たまたま他の村人より 適合率が高かったからにすぎない。 そんな俺を、あの女は「息子」と呼ぶ。 それが…心の底から、許せない。 |
あの女は、とっくに壊れている。 あの狂った女には 「優れた実験台」も「家族」も同じだ。 俺の身体を変えやがっただけでなく 尊厳まで奪いやがったミランダ。 あいつを殺さないと… 俺の人生は、永久に俺のものにならない。 |
だが…ミランダは恐ろしい女だ。 あいつは膨大な「菌」を操り どんな姿にでも自身を変えられる。 カギは、あのローズとか言う餓鬼だ。 あいつの「力」とやらを利用すれば…。 そういえば…父親のイーサンって男も なかなか「面白い」身体らしい。 うまく仲間に引き込めば…。 |
to:「ハウンドウルフ」各員 工場内の捜索を完了した。 「組織」とのつながりを示す証拠を 見つけたかったが、空振りに終わったようだ。 だが一方、ミランダの研究に関する資料を いくつか押収した。 どれも、俺たちの推論を裏付けるものだ。 |
ミランダは、自身の身体に特異菌を感染させ いくつもの能力を手に入れたらしい。 そのひとつが「擬態」。 ヤツは細胞分裂をコントロールすることで 他人に「化ける」ことができる。 |
ミランダはミアに擬態し ウィンターズ家に侵入した。 目的は言うまでもなく、ローズの誘拐だ。 母親であるミアの姿のほうが ローズを制御しやすいと考えたのだろう。 |
だが俺たちに攻撃されたヤツは 死体に「擬態」し、機を伺うことにした。 ヤツは輸送車のなかで蘇生すると 乗員を殺害し、ローズを連れ去った。 ミランダにとって予定は狂ったが… 当初の目的は達したというわけだ。 |
だがそれも、ここまでだ。 これから工場を爆破して、そちらに合流する。 ハイゼンベルクと戦闘になるだろう。 ヤツお手製の自走砲を見つけた。 磁力に影響されないポリマー素材製らしい。 こいつを改造して、逆にヤツにぶつけてやる。 連絡は以上。また後で会おう。 |
被験者:サルヴァトーレ・モロー カドゥ適合率、やや低い。 著しい知能の低下が見られる。 カドゥによる内臓組織の変質が激しく エラや浮き袋に近い臓器が形成された 魚類に近い体構造を持つ。 また不定期に細胞分裂が暴走し、 巨大な魚に似た水棲形態に変異する。 この変異は本人の意思では制御不能。 欠陥が多い。エヴァの「器」には不適。 |
被験者:オルチーナ・ドミトレスク カドゥ適合率、極めて良好。知能に問題なし。 新陳代謝の増加が著しい。 外傷を受けても瞬間的に組織を再生し 爪を短時間で成長させることもできる。 代謝向上に伴い、身体の巨大化が見られる。 特記事項として、先天性の血液疾患により 定期的に他者の血を経口摂取する必要あり。 また毒物などで代謝バランスが崩れた場合 細胞分裂を制御できなくなる懸念もある。 優れた個体だが、エヴァの「器」には不適。 |
被験者:カール・ハイゼンベルク カドゥ適合率、極めて良好。知能に問題なし。 胸部に、シビレエイなどの強電魚に見られる 「発電器官」と同様の臓器が形成されている。 この器官は脳神経と直結している。 脳を通じて全身の神経網に電流を流すことで 自身をコイルと化し、周囲に磁界を形成。 磁力で金属を操作することが可能。 優れた個体だが、エヴァの「器」には不適。 |
被験者:ドナ・ベネヴィエント カドゥ適合率、良好。 知能に問題ないが、重度の精神疾患あり。 肉体的には普通の人間とほぼ変わらないが 特殊なシグナル物質を分泌、放散することで 「特異菌に感染した植物」を操作できる。 また特定の植物の花粉を吸引させ 他生物に幻覚・幻聴を誘発させることも可能。 ただし精神的に未発達であり、愛用の人形に 自身のカドゥを株分けし遠隔操作している。 エヴァの「器」には不適。 |
我が師 ミランダ このような形での再会となる非礼を 深く謝罪させて頂きます。 本来なら再び村を訪ね、直接ご報告すべきところ 雑事に忙殺されそれもままなりません。 …あるいは、悠久の時を生きる貴女のことです。 雪道で死にかけていた医学生のことなど もはや覚えていないかもしれませんね。 |
15年前、村で過ごした日々は 私の人生で最も啓示に満ちた時間でした。 貴女の研究成果には圧倒されるばかりで 「生物を感染によって変異させる」発想には 稲妻のごとき衝撃を受けたものです。 これこそ「人類の高次への進化」という 私の理想を体現する手段と確信しました。 二度の世界大戦を経てもなお… 次の最終戦争を迎えようとする人類を見るに 今もこの考えは少しも変わりません。 |
ただ私は…貴女と毎夜語らうなかで 貴女との決定的な違いに気づきました。 貴女の目的は、ひとりの死者の復活。 私が目指すものは、人類全ての進化。 つまり…貴女の研究する「菌類」では 私が求める「爆発的感染力」は実現できない。 やはり専攻の「ウィルス」こそ手段に相応しい。 それが、私が貴女のもとを去った理由です。 別れを告げなかったことを後悔しております。 |
思い出話はこれくらいに。 便りを差し上げたのは、あるご報告のためです。 私は…「進化の鍵」を見つけました。 アフリカの奥地に眠る「始祖」たるウィルスを。 研究基盤となる企業も友人たちと興す予定です。 会社の名前は「アンブレラ」… 貴女と語らった、あの洞窟の紋章が由来です。 いよいよ我が理想の実現が迫りました。 貴女に成果をお見せできる日が待ち遠しい。 全てはミランダ、貴女の教えがあってこそ。 終生の師に敬慕を込めて オズウェル・E・スペンサー |
私のエヴァ… 100年前、母さんは「スペイン風邪」から あなたを救えなかった。 あの時、母さんは何の力もないただの女だった。 でもやっと…「菌根」に囚われたあなたを この世に蘇らせることができる。 生命力を試すために ローズを菌根の制御器たる「聖杯」で復元し… そして菌根と融合させる。 悲願の「儀式」が、ついに実現するのよ! |
あなたを喪ったあと… 死に場所を探して迷い込んだ洞窟で 「菌根」を見つけたのは、偶然だった。 流れ出る「黒いもの」に触れると 頭に膨大な「情報」が流れ込んできたわ。 それは、これまで菌根が分解・吸収してきた 死者たちの、意識の残滓。 わたしは思った。 菌の中にあなたの意識が保存されているなら 再び復元することだって、できるはず。 そう…菌根に適合する「器」さえあれば。 |
村に戻ると、村人どもに菌を植え付けて 母さんを崇拝するよう、意識操作した。 そのほうが人体実験を行うのに都合が良いから。 「器」を作るため、何百人も実験に使ったわ。 効率化のために、線虫から「カドゥ」という 感染を媒介する寄生体も作ったけど… 研究はうまくいかなかった。 稀にオルチーナみたいな半適合例もあったけど ほとんどは、理性のないライカンに成り果てた。 |
研究協力したいという組織に 菌と、あなたの胚を提供したこともある。 結果は出来損ないの「エヴリン」だったけど。 でも奴らからローズの情報を知ったのは収穫。 求めていた「器」だと確信したわ。 妨害もあったけど、ローズの「検証」は済んだ。 いよいよ、研究が完成するのよ。 エヴァ…母さんはお前が待ち遠しい。 |
家族の記録 1.ローズの一番のお友だち。 2.あの子のお気に入り。子守歌替わりね。 3.私たちにとって、何よりも大切なもの。 4.祖母がくれた祝福の音色。 5.イーサンがくれた、永遠の約束の証。 |
水門の操作手順 大雨で漁場に被害が予想される際は、 速やかに下記の手順を実行してください。 1.「クランク」で風車を動かし通電させる。 2.通電後、レバーで水門を開ける。 |
2月9日 / 未明 / どこかの森 それはいつも通りの、静かな夜のはずだった。 だが…俺たち家族の平穏は クリス・レッドフィールドに破壊された。 泣き叫ぶローズが連れ去られ… ミアは俺の目の前で、クリスに殺された。 俺も気絶させられ 目を覚ますと雪深い森にいた。 いったい何が…どうなってるんだ。 |
2月9日 / 明け方 / 村の広場 森を抜けた先の村では 獣人の群れが住人を襲い、食らっていた。 「ローズはこの村にいる」 襲撃の後に出会った老婆は俺にそう告げた。 あの子を見つけなければならない。 やつらの餌食になる前に。 |
2月9日 / 朝 / ルイザの屋敷 村の顔役と思しきルイザの屋敷には、 惨劇の生存者が身を寄せ合っていた。 だが彼らも、豹変した老人に虐殺された。 獣人は、村人の成れの果てだったのだ。 一人生き残った俺は ローズを探して「城」に向かうことにした。 |
2月9日 / 朝 / 廃坑 城に向かう俺を捕らえたのは 5人の異様な怪人たちだった。 金槌使いの「ハイゼンベルク」。 巨躯の女「ドミトレスク」。 人形を抱いた「ドナ」と醜顔の「モロー」。 そして奴らが母と敬う「ミランダ」…。 奴らは獣人たちを操っていた。何者だ…? |
2月9日 / 午前 / 城の前 馬車から現れた「デューク」と名乗る商人は 何やらこちらの事情に詳しそうだった。 どうにも胡散臭い男だが… 今はそれより、城でローズの手掛かりを 探すことが先決だ。 |
2月9日 / 午前 / 城の寝室 村を見下ろす古城は、 怪人の1人・ドミトレスクと その娘たちの住処だった。 ローズの手掛かりを求めて、 俺は囚われた寝室から逃げだした。 |
2月9日 / 午前 / 城の中庭 城にローズの姿はなかった。 初めからいなかったのか あるいは、どこか別の場所に…? いずれにせよ、もうこんな城に用はない。 脱出するだけだ。 |
2月9日 / 昼 / 城の礼拝塔 怪物と化したドミトレスクを殺し、城を脱出。 結局、手に入れたのは 奇妙なガラス瓶一つだけだった。 「おまえはローズに会えない」 やつの遺した一言が気になる…。 |
2月9日 / 昼 / 聖杯の祭壇 ローズの体が…瓶の中に? いったい誰が、なぜ? 混乱して思考が追い付かない…。 しかしデュークは確かに言った。 「助ける方法がある」と。 にわかには信じがたいが…ヤツの言う通り 「赤い煙突の家」の男を訪ねるほかなさそうだ。 |
2月9日 / 午後 / 聖杯の祭壇 ローズの体は4つの瓶に収められ、 ドミトレスク、ドナ、モロー、ハイゼンベルク 4人の貴族が所有しているらしい。 「全てを集めればローズを救える」 デュークを信用したワケではないが 俺はやれることをやるだけだ…。 |
2月9日 / 午後 / 山中の庭園 霧の中にミアを見た。 どうして、彼女が? …俺はまだ、彼女の死を 受け入れられていないらしい。 |
2月9日 / 午後 / ベネヴィエント邸 館での悪夢は 「貴族」の1人、ドナの仕業だった。 だが、ミアが俺に言えない「何か」を抱え 悩んでいたのは事実だ。 そしてそれを知る機会はもうない…。 残る瓶はあと2つ。 ローズだけは、必ず…。 |
2月9日 / 午後 / 洞窟 首尾よく3つ目の瓶を手に入れたものの 「貴族」の1人、モローに脱出路を塞がれた。 どこか別の出口を探すしかない。 そういえば…ヤツは言っていた。 「ミランダは子供を取り戻したいんだ」と。 どういうことだ…? |
2月9日 / 午後 / 湖 湖畔の船小屋で クリスと、その部下らしき連中に遭遇。 何か調査していたが…何を企んでいる? 聞きたいことは山ほどあったが 怪物と化したモローに襲撃を受ける。 まずはこの湖から脱出しなければ。 「出口は水中だ」とヤツは言っていたが…。 |
2月9日 / 午後 / モローの部屋 モローを倒し、湖を脱出しようとした矢先 TVモニターから語りかけてきたのは 最後の「貴族」ハイゼンベルク。 最後の瓶は、村はずれの砦にあるという。 やつの取引に付き合うのは気が進まないが そこへ向かう以外、選択肢はなさそうだ。 |
2月9日 / 夕刻 / 森の砦 ついに全ての瓶が揃った! だが、ローズを救うには ハイゼンベルク曰く「あと一手」が必要らしい。 瓶を台座に収め、ヤツのところへ向かうことに。 だが…本当にローズは生き返るのか? ハイゼンベルクは信じられるのか? |
2月9日 / 夕刻 / 橋のたもと 四つの瓶が収まった聖杯を祭祀場に供えると 巨大な橋が架かった。 対岸に見える工場が ハイゼンベルクの住処ということか。 ローズのもとを離れるのは心苦しいが あと少しの辛抱だ、待っていてくれ…。 |
2月9日 / 夕刻 / 工場地下 「俺と組まないか」 ハイゼンベルクの目的は ローズを兵器として復活させる事だった。 ミランダもハイゼンベルクも、 ローズの「力」を求めて争っていたのだ。 「奴ら全員でもかなわない」ほどの力を。 冗談じゃない…あの子はただの赤ん坊だ。 地上に脱出し、ローズのところに戻らなければ。 |
2月9日 / 夕刻 / ジャンクヤード クリスが語ったのは、 にわかに信じがたい内容だった。 あの時、俺の目の前で撃たれたミアは、 彼女に擬態したミランダだった。 奴は「特異菌」の実験のためローズを狙い クリスはそれを阻止しようとしたのだ。 3年前、ルイジアナの悪夢が 再び俺の家族を引き裂こうとしている。 |
2月10日 / 未明 / 聖杯の祭壇 俺は、2つの真実を知った。 1つは、ミランダの本当の目的。 ヤツは菌根に記憶された「死んだ娘の意識」を ローズの体に入れ、蘇らせようとしている。 もう1つは、ミアが俺に隠していた秘密。 俺は3年前のベイカー邸事件で、死んでいた。 俺は菌に感染した「生ける屍」だったのだ。 だがそろそろ、この身体も限界らしい。 でも…安心しろよローズ。 お前だけは、パパが助けてやるからな。 |
いつか、ここから逃げようとするあなたへ このメモが、あなたを救う助けにあるはず。 死にたくないなら、私を信じて。 まず、この独房から出なさい。 這いつくばってでも、手立てを探すのよ。 地下牢の出口のカギは隠されてるわ。 希望はいつだって、たくさんの血に塗れてる。 |
牢から出ると、部屋に行き当たるはず。 扉はまやかし。光差すところに本当の道はある。 行き止まりに見えても諦めないで。 きっと何かを見落としてる。 梯子が見えたら、もう地上は目の前よ。 だけど「あいつら」には気をつけて。 もし見つかったら…。 わたしは今晩、逃げるつもりよ。 あなたがうまくいくことを祈ってる。 |
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これは、ベイカー邸事件の 「その後」に関する調査ファイルである。 |
2017年7月に発生した「ベイカー邸事件」。 アメリカの片田舎にある屋敷で、幾人もの命が奪われた 口にするのもおぞましい惨劇だ。 被害者の正確な数は、今でも判明していない。 |
生還者であるイーサン、ミアのウィンターズ夫妻によって 事件の全容が明らかになり、 世間に大きな衝撃を与える――はずだった。 だが、事件の真相は隠蔽された。 そして…ウィンターズ夫妻も消息を絶った。 |
事件の裏には「何か大きな力」が働いている。 わたしはそう確信し、 ベイカー邸事件の「その後」を追跡調査することにした。 確信したのには、理由がある。 わたしも――事件の「当事者のひとり」だったからだ。 |
まずは――事件の発覚当初、 事件がどのように報じられたのか。 そして、世間にどう受け止められたのかを 当時の記録から見てみることにしよう。 |
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■地元新聞紙『ダルヴェイ・デイリー』 2017年7月22日版 『ダルヴェイ郡で一家4人が不審死』 ダルヴェイ郡保安局の発表によると、21日、州北部ダルヴェイ郡の ジャック・ベイカーさん宅で、住人全員が死亡しているのが発見された。 事件の詳細は不明だが、死亡したのは家主のジャックさん、 妻のマーガレットさん、息子のルーカスさん、娘のゾイさんの4人。 なお現場付近では、19日夜からデイビッド・アンダーソン郡保安官補佐の 行方がわからなくなっており、ベイカーさん宅に聞き込みに訪れた 同じく保安官補佐のライリー・ウィットフォード氏によって事態が発覚した。 |
■事件に関するSNS投稿(2017年7月22日) >事件があったの、黒いバケモノの目撃があったあたりじゃ? >全員化け物に食われたって? ホラー映画の見すぎだよ。 >ジャックっておっさん、かなリヤバい噂多かったよね。 あちこちでトラブル起こしまくってた記憶ある。 >結局、父親のジャックによる一家皆殺し&自殺で確定か? |
■郡保安局 苦情窓口の通話記録 「…おかしいでしょう? もう事件から2日も経ってるんですよ! 殺人か、事故か、自殺かすら発表しないなんて…。 だいたいなんで、あんなに広い範囲を州兵が封鎖してるんです? 保安局は、なにか隠してるんじゃないですか?…」 |
ベイカー邸事件が発覚して当初、 事件の詳細は報道されず、噂や憶測が飛び交った。 現場周辺が封鎖されたことや、 一家が地域コミュニティから孤立していたことも それに拍車をかけた。 |
思えばこの時点で、報道には何らかの「圧力」が かかっていたに違いない。 |
この時わたしは、「ある組織」によって隔離状態にあり、 報道を見ることはできなかった。 数日後、ようやくTVを見ることを許されたわたしは その内容と事実の食い違いに、愕然とすることになる。 |
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■地元新聞紙『ダルヴェイ・デイリー』 2017年7月30日版 『ベイカー邸事件の原因は硫化水素 郡保安局が公式発表』 21日に発覚した、ジャック・ベイカーさん一家変死事件について、 ダルヴェイ郡保安局は「地中の硫化水素ガス噴出による中毒死」の 可能性が極めて高いと発表した。 現場一帯は地盤の緩い湖沼地帯であり、 何らかの原因で汚泥中の硫化水素が地表に大量噴出した結果、 ベイカーさんらを死に至らしめたという。 ガスの噴出は現在では止まっているが、 事故の再発防止のため、一帯は隔壁で封鎖される模様。 |
なお、現在判明している事件の被害者は以下の通り。(敬称略) 死亡 ジャック・ベイカー マーガレット・ベイカー ルーカス・ベイカー ゾイ・ベイカー デイビッド・アンダーソン クランシー・ジャービス アンドレ・スティックランド ピーター・ウォーケン 負傷 イーサン・ウインターズ ミア・ウインターズ |
■事件に関するSNS投稿(2017年7月30日) >硫化水素って…マジか? >事件の日、現場で軍のヘリや兵士を見たって情報がある。 政府が関わってるのは間違いない。 >出たよ陰謀論。 ラクーンシティ事件の時もいたよなこういうヤツ。 >黒いバケモノの件もあるし、衛星写真に写った難破船?とか、 あのあたりは何かおかしい。 |
■雑誌『インスペクター』 ミンデン大学 地質学教授 サリー・ボールドウィンへのインタビュー ――では、ガス事故という保安局の発表は誤っていると? 「断言はできませんが、非常に考えにくいと言わざるを得ません。 硫化水素は火山性ガスですが、ダルヴェイ郡は火山活動とは まったく無縁の土地ですからね。 1998年に私の研究室が行った地質調査でも、 そういったガス成分はまったく検出できませんでした」 |
「地中のガスによる悲劇の事故」―― それがベイカー邸事件の「公式な真相」だった。 |
まったくの嘘だ。 報道は、あの館で繰り返されていた殺人にも、 館に巣食う、恐るべき怪物たちにも触れていなかった。 何者かが…事件を隠蔽したのは明らかだった。 |
そして、何よりわたしにとってショックだったのは… 犠牲者リストに、自分の名前を見つけたことだった。 わたしはまだ、「組織」によって隔離状態にあった。 このまま報道のとおりの結末になるのではと想像し、 わたしは恐怖に震えた。 |
…結論から言えば、それは杞憂だった。 「組織」は、わたしに偽の名前と身分証を与えると あっさりと解放した。 もう得られる情報はないと判断したのかもしれない。 わたしは、別人として生きるよう告げられた。 それが、わたしの安全のためだとも。 |
わたしは、同じ生還者であるイーサンとミアに 連絡を取ろうとした。 彼らは、わたしの命の恩人だったからだ。 一言でいい、礼を言いたかった。 だが… 彼らの行方は、杳としてわからなかった。 |
彼らの行方は「組織」が知っているはず。 そう考えたわたしは その組織――「BSAA」について、調べることにした。 |
BSAA (Bioterrorism Security Assessment Alliance) 国連管轄下の、バイオテロリズム対策部隊。 アンブレラ社の倒産後、 バイオテロが拡散するのを防ぐため設立された。 中国やヨーロッパなど、各地のテロ鎮圧で成果をあげ 「バイオテロの警察」として高い信頼を受けている。 ベイカー邸事件にも、最終的にBSAAが介入し わたしやイーサンたちを救出した。 |
わたしは、隔離生活のなかで 何人かのBSAA職員と個人的に親しくなっていた。 彼らに事情を話し、機密資料を提供してくれるよう なかば強引に説得した。 |
資料を集めて明らかになったのは… ベイカー邸事件の真相を隠蔽したのが BSAAに他ならないという事実だった。 |
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■雑誌『インスペクター』 『保安局長 国際組織幹部と密会』 本誌記者の取材で、ダルヴェイ郡保安局長のコールリッジ氏が 国連直轄組織「BSAA」の幹部と密会していたことが判明した。 ベイカー邸事件をガス事故とする、保安局の発表には疑問の声も多い。 保安局とBSAAの間で、事件の本当の原因を隠蔽するための 何らかの取引きがあったのではないだろうか? 保安局は取材に対し、一切のノーコメントを貫いている。 記者 エドガー・マクリントック |
■BSAA調査官による 「ベイカー邸事件」最終報告書 以下は、ルイジアナ州ダルヴェイで発生した生物災害事案、 通称「ベイカー邸事件」の経緯に関する調査報告書である。 なお本資料は、クラスC以下の職員の閲覧を禁ずる。 |
結論から述べると、ベイカー邸事件は 生物兵器「エヴリン」による、偶発的な汚染事故である。 住人はエヴリンの操る「特異菌」に感染。 彼女の命じるまま犠牲者を拉致・殺害していた。 住人の肉体は菌の作用で大きく変異し、 住居内には菌で構築された「モールデッド」と呼ばれる B.O.W.も発生していた。 |
エヴリンを製造したのは、 国際的犯罪組織「コネクション」のミュンヘン研究所である。 BSAAはエヴリンを破壊すべく派兵したが、これに失敗。 エヴリンの逃亡を許してしまう。 その後エヴリンは、監視役のミア・ウィンターズとともに 船でアメリカに向けて移送された。 |
だがエヴリンは移送中に暴走。 船員の大半を殺害したのち、船を破壊した。 その後エヴリンは船の残骸もろとも、 ベイカー邸近くの沼地に流れ着いたと推測される。 |
先述したように、エヴリン抹殺作戦において われわれBSAAがミスを冒し、 結果として民間人の感染に繋がったことは否定できない。 この事実が報道された場合、 BSAAへの貴任追及は避けられないと思われる。 |
よって、マスメディアに対して カバーストーリーを発表することで BSAAとしては事件を隠蔽することを提案する。 (以下省略) |
■「E型特異菌」分析レポート ベイカー邸から採取された 「E型特異菌(以下「特異菌」)」の性質について、 生物調査部による分析結果が出ましたので報告いたします。 |
特異菌はクラドスポリウム(黒カビ)に似た構造を持ち、 極めて高い繁殖力を誇ります。 また生命体に寄生すると細胞を侵食し、 宿主のDNAを書き換える性質があります。 さらに、菌どうしが結合することで、 筋肉組織や、脳に似た神経ネットワークを 形成することも明らかになっております。 |
これらの結果として、特異菌に感染した生物は 不死とも言える「怪物」へと変異します。 (以下省略) |
■少女型B.O.W.「エヴリン」調査報告書 ヒト胚に菌を移植して作られた人工生物。 特殊な脳信号で菌ネットワークに介入し 自在に操ることが可能。 エヴリンはその生育環境から「家族」に執着し 菌で支配した人間を、疑似的な「家族」にしていた。 ただしエヴリンの染色体には先天的欠陥があり、 急速に細胞が老化、死亡した。 (以下省略) |
■犯罪組織「コネクション」調査資料 決まった拠点を持たない、ネットワーク型の犯罪組織。 組織規模は不明だが、活動範囲は全世界におよぶ。 近年では東欧での活動が活発化している模様。 主な活動内容は、「B.O.W.の製造および販売」。 「特異菌」および「エヴリン」も彼らの「商品」である。 |
信頼できる情報源によれば 「コネクション」の創設者は、ブランドン・ベイリー。 かつて、アンブレラ社長オズウェル・E・スぺンサーの片腕として 辣腕を振るった人物である。現在の生死は不明。 ベイリーはスぺンサーと思想の違いから離反。 アンブレラ・アフリカ研究所の所長時代の人脈を駆使し 独自の犯罪ネットワークを作り上げたと思われる。 組織の目的が純粋な営利活動なのか それ以外にあるのかは調査中である。 (以下省略) |
BSAAの機密資料には、 わたしが知るベイカー邸事件の真相が 無機質に記されていた。 |
あの嵐の夜、タンカーが沼地に流れ着いたこと。 タンカーの残骸から、 ジャックがエヴリンという少女を家に連れてきたこと。 そして…エヴリンが一家を狂わせ 人ならざる怪物に変えていったこと。 |
BSAAは、事件の真相を把握しながら メディアに圧力をかけ、隠蔽していた。 国連直轄の組織なら、造作もないことだったろう。 エヴリン流出の原因を作ったのが自分たちだと 知られるわけにはいかなかったのだ。 |
わたしは資料を収集し続け… ついに、イーサンとミアの行方に関する 手がかりを見つけた。 |
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■BSAA調査官による イーサン・ウィンターズ聴取記録 (録音開始) ――では、聴取を始めようか。まず名前と職業を。 「…イーサン。イーサン・ウィンターズ。 システムエンジニアだ。 もう何回目だ? いつになったら解放してくれる?」 |
――これまでの聴取で、 どうやら君には何も「ウラ」がない… つまり、事件に巻き込まれただけの被害者だと ようやく納得ができたよ。 「それはつまり… 解放してくれるってことか?」 |
――ああ。…だが、1つ条件がある。 「…条件?」 |
――ふたりには今後、 われわれの監視下で生活してもらいたい。 住む国も、家も、すべて我々が用意する。 「…何を言ってる? それは…別人になれってことか? どういう… 待て、『住む国』? 外国に引っ越せって言うのか?」 |
――東ヨーロッパの、某国とだけ言っておこう。 「…ヨーロッパ…? 嘘だろ…!? どうして俺たちが、そんな…」 |
――事件の目撃者である君たちは 現在、ある犯罪組織に狙われている。 彼らから守るための、やむを得ない措置だ。 一種の「証人保護プログラム」だと思ってほしい。 「だけど…ヨーロッパで暮らすなんて、急に…」 |
――すべてを忘れ、別人としてやり直すんだ。 それが、ふたりのためでもある。 「…忘れられるわけがない。あんな出来事… そうだ、ミアと会わせてくれ。 彼女と話さないと…ミア!」 (録音終了) |
■BSAA調査官による ミア・ウィンターズ聴取記録 (録音開始) ――検査の結果、体内の「菌」は ほぼ完全に除かれていたよ、ミア。 「……。 彼には、話したの? わたしの過去のこと…」 |
――いいや。 BSAAは、君がかつて「コネクション」に 所属していたことには関知しない。 組織の情報提供をしてもらった礼だよ。 「…わたしは、彼との生活を取り戻したいだけ。 すべて忘れて…イーサンと 新しい人生をやり直したいだけよ」 (録音終了) |
イーサンとミアは、ヨーロッパにいる! ようやく発見した足取りに、 わたしの心は躍った。 だが… |
調査はそこで、暗礁に乗り上げてしまった。 BSAAのガードは固く、 協力者たちの手を借りても、イーサンたちの 詳しい所在を知ることはできなかった。 国際的な犯罪組織から守ろうと言うのだから、 それも当然だったかもしれない。 |
そして何も得られないまま――2年が過ぎた。 |
わたしは、ニューオーリンズの小さな新聞社で 見習い記者として働くようになった。 ベイカー邸事件のことは、 いつしか人々の記憶から消えつつあった。 |
そんなある日、わたしの住むアパートメントに 一通の手紙が届いた。 差出人の名は… なんと、ミア・ウィンターズだった。 |
■ミアからの手紙 ハイ、元気? 本当にひさしぶり。 BSAAが、なかなか手紙やメールを 許可してくれなくて… この手紙は、職員の人に 直接届けてもらったから安心して。 ヤツらに居場所がバレることはないわ。 |
ずっと…お礼を言いたかった。 あなたが助けてくれなかったら イーサンもわたしも、 あの館で命を落としてたと思う。 たったひとりで、孤独に戦ってたあなたを わたしは心から尊敬する。 本当に…ありがとう。 |
くわしい場所は言えないけど、わたしたちは元気よ。 「こっち」の生活にも、ようやく慣れてきた感じ。 BSAAが用意してくれた家もすっごい大きくて… なんだか得しちゃった。 …ああ、そうだった! 手紙を書こうと思ったのは、 お礼のほかにもうひとつ理由があって… |
わたしたち、赤ちゃんが産まれたの! 写真を同封しておく。 言っておくけど… かわいすぎて気絶しないでね。 |
名前は「ローズマリー」。 素敵でしょ? |
いつか、あなたを招待できる日が来ると思う。 イーサンも会いたがってるわ。 郷土料理だって、いくつか覚えたのよ。 きっと気に入るから。 それじゃあ、また。 返事は書かなくていいわ。 …くれぐれも気を付けて。 ミア・ウィンターズ |
イーサンとミアからの、突然の連絡。 さらに、ふたりには赤ちゃんが。 彼らを見つけることを諦めかけていたのもあり… わたしは思わず、涙をこぼしていた。 |
ふたり…いや、3人は異国の地で、 やっと幸福を手に入れたのだ。 |
郵便受けを閉めようとして… わたしはもう一通、封筒が入っているのに気づいた。 |
「BSAA」のロゴが入った封筒には 差出人が記されておらず 中には1枚の書類が入っていた。 |
■BSAA本部による クリス・レッドフィールドへの警告書 クリス、最近のきみの行動について、われわれは強く懸念している。 報告によれば、きみは精鋭部隊「ハウンドウルフ・スクァッド」を 私物化し、無断で運用しているという。 機密ファイルへの、無許可のアクセス記録もある。 きみは、何をしようとしている? |
きみと、きみの部隊は、東ヨーロッパで何をしている? 通信に頻出する「ミランダ」とは、何者だ? なぜ今になって、ウィンターズ夫妻の周辺調査をしている? |
ベイカー邸の事件以来、 BSAAに対する批判的言動も目立つ。 創設メンバー「オリジナル・イレブン」のひとりとはいえ、 これ以上の暴走は処分せざるを得なくなる。 繰り返す。 クリス、きみは何をしようとしている? BSAA欧州本部 査察部 |
書類の裏には、 手書きで短い言葉が記されていた。 |
「事件は まだ 終わっていない」 |
以上が、わたしが収集した ベイカー邸事件に関する資料のすべてだ。 このファイルはあくまで個人的なもので 一般に公開するつもりは、今のところない。 |
調査はこれからも続けていく。 妨害や嫌がらせを受けたことも少なくないが、 死んだ「家族」のためにも、やめるつもりはない。 そしていつか必ず、イーサンとミアに 直接あの日の礼を言う。 それがわたしの夢だ。 |
わたしはゾイ・ベイカー。 あの惨劇の生き残りだ。 |
了 |
ミランダの研究によると、特異菌の菌根は 死者の情報を「記憶」しているという。 併せて、過去の事例において 特異菌が感染者の意識を結ぶ一種の ネットワークを構築していたこともわかっている。 |
この2つの情報から、特異菌適合者は 特異菌のネットワークを介して 菌根内に蓄積された死者の「記憶」に 接触可能なのではないかと仮説を立てた。 そして――この研究室には、 16年前に例の村から回収した 菌根の一部が保管されている。 つまり、特異菌適合者の協力さえあれば、 前述の「仮説」を検証することができるのだ。 |
しかし、倫理的な問題や組織的な事情がある。 我々研究者から特異菌適合者への連絡が 禁止されている以上、本件は検証不可能だ。 この仮説が真であったなら、人類の発展にも 大きく寄与する大発見になるだろうに―― |
捕らえたウサギの死骸を加工し、 オブジェにする。 腐敗を気にする必要はない。 ※生き生きと見せるために 多少は化粧をしてやること。 |
前略 「大役」をお任せいただき、 心より御礼申し上げます。 また、此度の任務のために賜った「黒領域」が 素晴らしい働きをしていることを ご報告しておきます。 私の狩人たちの移動を助けるばかりか、 獲物に絡みついて足止めし、 さらにはそのまま飲み込んでしまうとは! これがあれば、必ずやご期待通りの結果を お出しすることができるでしょう。 |
使えるものは全部使う。 メモ:「ハーブ」と「薬液」、 「ガンパウダー」と「薬液」 組み合わせると使えるようになる。 他にも色々あるかもしれない。 何を使ってでも、生き延びたい。 |
特異菌同士が交信に使っている 化学物質(オートインデューサー)を 強い干渉力で遮断すると、特異菌の働きは 極端に鈍くなることがわかった。 例えば、特異菌の塊である「菌核」に対して 化学物質の遮断を一定時間行うと 組織がボロボロと自壊していくのが確認できた。 |
「菌核」は特異菌が新たな場へ進出しようと する際、その足掛かりとして形成される。 強い干渉を受けるなどして 「菌核」が危機に晒された場合、 その菌核の根付いた黒領域も自壊してゆく。 特異菌がその場を生息に不適格と 判断するためであろう。 |
一定以上のオートインデューサーへの 干渉を行うと、自律行動をするような 「活動的な個体」であっても 動きが極度に鈍くなることがわかった。 ただし、一時遮断程度では枯死までは至らない。 また、直接干渉していない個体にも 特異菌の交信により干渉が伝染するが、 干渉範囲については限られている。 |
何も覚えていない。 私が何者だったのか、どのように生きてきたのか。 何もわからない。 この仮面の下の顔が崩れているように 私の記憶も崩れ去ったというのか。 ただ残るのは、誰かをいたぶり惨たらしい姿を 見たいという渇きにも近い感情だけ。 さて、次はどうするか。 そろそろ、とっておきの奴を向かわせてもいい。 顔がたくさんあっても知能の無いアイツのことだ。 容赦なくウサギを追い詰めるだろう。 |
ようこそ 絶望のギャラリーへ ここでは、1つでも仮面を入手したことがある 優秀個体を額装して展示いたします。 数ある我がコレクションの中でも 選りすぐりのウサギたち。 その脆弱かつ苦痛に満ちた姿を ありのままに芸術とした逸品を集めています。 本コレクションを通して「いのちの輝き」を 違った視点から眺めていただければ幸いです。 |
・ショットガン弾 ガンパウダー+スクラップ ・パイプ手榴弾 スクラップ+ガンパウダー+ハーブ 上記の組み合わせで作り出せる。 →ショットガンは食堂にある。 これで逃げ切ってみせる。 |
1月5日 今日から小学校に通うことになった! ずっと行きたかったの! クリスにおれいを言わなきゃ。 テレビや本でよんだとおり、 わたしと同じ年の子がいっぱいいた。 あいさつするのは少しきんちょうしたけど それよりずーっとワクワクしたよ。 お友だちがたくさんできるといいな! 明日は、わたしから話しかけてみよう。 |
1月8日 ゆう気を出して、何人も話しかけたけど だれも、一人も、 ちゃんとへんじしてくれなかった。 べんきょうはとってもカンタンだった。 ぜんぶママとやったことばかり。 だけど、すぐに答えを言っちゃダメみたい。 (後ろのせきの子が、 わたしのわる口を言ってた) すごく困ったり、きんちょうしたりすると 手から白いあせが出ちゃう。 今日はそれがとってもひどかった。 |
2月10日 よごれたハンカチをずっと持ってるのは よくないって、先生にちゅういされた。 男子に「ローズはきたない」って言われた。 まい日おふろに入ってるし、服もハンカチも ちゃんとせんたくしてるのに。 手から白いあせが出たらハンカチでふくけど 止まらない時は、ずっと持ってるしかない。 この「あせ」で他の人をびょうきにしたりは しませんって、クリスに言ってもらったのにな。 |
4月4日 はじめて話しかけられた! 同じクラスのルーシーが 「本当はずっと お友だちになりたかったの」 だって!! 明日から、ランチをいっしょに 食べるやくそくもした。 うそでしょ!? ゆめみたい!! ルーシーの友だちのキャサリンとも 仲よくなれるといいな。 |
To do: 完了: 飾り付けをする (リビング) 完了: ワインを買う (キッチン) 完了: "もう一つのプレゼント"を用意する (書斎) |
イーサンへ 2月2日はローズにとって初めての記念日。 とびきり可愛いケーキを作るつもりよ。 あなたも期待してて! これからお祝いの度に、特別なケーキを 作ろうと思ってるの。 写真を撮るのは、もちろんあなたに任せるわ。 私たち家族のアルバムが 分厚くなっていくのが楽しみね。 |
2月2日はローズのハーフバースデーだ。 あっという間の半年だったな。 この瞬間の気持ちを 記録しておきたくて、手紙を書いた。 少し感傷的になったかもしれない。 誰かに見られたら恥ずかしいから、 今は棚の引き出しに入れておく。 これなら見つからないだろう。 カギは…お気に入りの写真の裏に隠しておくか。 |
菌根は全ての生物の「記憶」を吸収するが、 その内部にて展開される世界には ある種の法則が見られる。 1つ―― 「記憶」は現実に忠実というわけではない。 2つ―― 個としての意識を保つことができるのは 生前より菌感応力を得ていた者に限られる。 ここまでは、生前より時折見える「啓示」からも 推察が可能であった。 |
肉体が減び、私の全てが 完全に菌根の中に入り込んだことにより その驚異的な仕組みへの理解が深まった。 私が長年生きてきたことは 無駄ではなかったのだ。 積み上げてきた膨大な「記憶」は 菌根内でより大きなカとなった。 この力を駆使すれば… 他人の記憶に干渉することも可能だ。 |
しかし、問題も山積みだ。 何より頭が痛いのは… 大切な「ただ一人」の記憶が有象無象に 溶け込んで、なかなか吸い上げられないことだ。 記憶を抽出する際に受け皿となる 「器」が必要となるだろう。 となれば、それに相応しいのは――実績のある ローズマリー・ウィンターズしか居ない。 |
〜故人らの記憶を復元・編集する試みについて〜 菌根内に保持された「記憶」から 故人の「編集」および「復元」を試みた。 没後、時間が経った者の記憶は菌根内に拡散し 他者の記憶と混じりゆく傾向にある。 そのため、特定の個人の記憶のみを 抽出することは困難を極めた。 今回は、記憶の欠損部を 他者の記憶で埋めることの可能性を検証した。 |
【結果】 故人の記憶の寄せ集めから 一人の人間をこの世界に創り出すことには成功。 しかし、想定外の挙動が多い仕上がりとなった。 特徴的な顔面の欠損、 嗜虐性が強く歪んだ人格、 そして何故か見覚えのある風体…。 【結論】 「編集」は破綻が生じやすく 安定性に大きな問題があるようだ。 「器」作成には不適な技術と判明。 |
ローズマリー・ウィンターズの完全な複製を 作り出し、「器」とする想定だった。 しかし、何らかのノイズが入るようで 完全なローズの複製を造り出すことができない。 現れるのは動く人形のような、 無力な抜け殻ばかり。 これでは「器」としては使えない。 |
一体何が原因となっているのか―― さらなる試行が必要だ。 ノイズとなりうる要素としては 1.本人が存命であること 2.内部からの何らかの干渉 3.複製プロトコルの欠陥 などが考えられる。 どれも可能性としては低く、対処は困難だ。 ローズ本人をこの世界へ連れ込み、 自ら器となるよう仕向けられたなら―― それが最良ではある。 |
【追記】 実験系廃棄物ともいえるローズの抜け殻 (ここではコピーローズとする)も 何らかの刺激を与えれば 本物のローズと同じく機能し始める可能性あり。 一緩の望みをかけ、 コピーローズへのストレス実験を開始。 本件は「仮面の公爵」に任せる。 |
個人の「記憶」を抽出する試行を繰り返すうち、 この世界に想定外のゴミが紛れ込んだようだ。 このゴミ――エヴリンとかいう出来損ないの 勝手な行動により、計画に狂いが出てしまった。 本来であれば、 今頃ローズマリー・ウィンターズは 生への執着と、その能力を すべて捨て去っているはずだったのに。 |
満ち満ちて統べたる黒き神よ。 今こそ新たな世を創り賜え。 黒き叡智による恵みを 再び授け賜え。 失われて散ったいとし子が この地に落ちた血によりて 虚るの眠りから真に目覚め すべからく救われんことを。 |
何か強い力を感じてここまで来たけど もう動けない。 目に入る、あの青い光の先に 求めるものがあると思ったのに。 勇気を出して、もっと早く来れば良かった。 こんな風に、動けなくなる前に。 |