バイオハザード6のファイル集


レオン・S・ケネディ
36歳。アメリカ合衆国大統領直轄エージェント。
合衆国政府が最も厚い信頼を寄せるエージェントで、その実力は折り紙付き。
かつて、ラクーンシティでの大規模なバイオハザードに遭遇した経緯から、バイオテロに対して強い憤りを抱いている。
冷静沈着な性格だが、状況に合わせ大胆な行動に出る柔軟性も持ち合わせている。
エージェントとして円熟し始めたレオンは、その言動に慎重さが増すようになった。
しかし、たまに軽口を叩くユーモアや、強い正義感は、かつて新米警官としてラクーンシティに配属された時から変わっていない。

そのレオンが設立に大きく関与した組織が、エージェント集団のDSO(Division of Security Operations)である。
設立直前の状況の一端を、下記の資料より確認することができる。

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「【DSO設立について】合衆国大統領アダム・ベンフォード 2011.2.2
レオン・S・ケネディ

以前から君と協議していたエージェントの新組織についてだが、正式に発足の運びとなったことを、ここに報告する。
合衆国は9.11以降、長いテロとの戦いに未だ明確に終止符を打てていない。それどころか、昨今はバイオテロという新しい脅威にもさらされており、これらに旧来の組織体系で立ち向かっていくことは、難しくなってきている。

よって前述の通り、君からの進言をもとに、大統領直轄エージェントの組織である
DSO(Division of Security Operations)を設立することにした。
DSOのサポートにあたっては、FOSが全面的にこれを執り行う。

レオン。君にはDSO立ち上げメンバーとして色々と動いてもらうことになるだろう。
バイオテロの脅威から合衆国を守るため。
忌々しいB.O.W.をこの世界から根絶するため。
共に、身命を賭して戦っていこう」


レオンとアダム
レオン・S・ケネディと合衆国大統領アダム・ベンフォードは、友人とも、同志とも呼べる関係であった。そもそも、レオンを合衆国のエージェントとして引き抜いたのは、当時、合衆国の政府高官を務めていたアダムだった。ラクーンシティでの事件以来、二人は「バイオテロの根絶」という共通の使命感に燃えていた。

歯に衣着せぬ言動で己の正義を貫く政治家のアダムと、冷静沈着にバイオテロを直接制圧するエージェントのレオン。二人の性格は正反対といえるものだったが、アダムは官僚として、レオンはエージェントとして共にバイオテロに立ち向かい、十年来の固い絆を結ばせるに至った。

だが皮肉にも、ラクーンシティの惨状と酷似した状況下で、レオンはアダムを撃ち殺すことになってしまった。

アメリカ合衆国北東部・トールオークスで発生した大規模なバイオテロ。被害はトールオークス全域に及ぶが、アダムが講演を行うため訪れていたアイヴィ大学が最も甚大な被害を被っていることから考えると、何かしらの生物兵器は、明らかに大統領暗殺を目的とし、大学を中心に使用されたとみて間違いない。

FOSからの情報によってアダムの死が決定的となって間もなく、合衆国の特殊部隊がトールオークスへ入っている。指令は、状況把握・情報収集、そして大統領の遺体の確保。その他にも数種の指令を受けていたが、詳細は機密である。以下は、バイオテロでパニック状態のトールオークスに入った特殊部隊と本部との交信の一部である

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更新記録《2013.6.29 21:02》
HQ「エドガー、状況の報告を」
E「こちらエドガー。現在アイヴィ大学構内。生存者の気配なし」
HQ「大統領は」
E「現在捜索中。−−誰だ!? 本部、正体不明の武装勢力と遭遇!そこで何をしている!
止まれ! 止まれ!」
《ここで銃声と共に通信途絶》


FOS
FOS (Field Operations Support)は、世界中に散らばる合衆国エージェントの統括およびそのサポートを行うオペレーターの連携を強化するため発足した組織。各々が異なる組織に身を置いていたエージェントを統括し、オペレーターをひとつの組織下で管理することで、年々複雑化を増すバイオテロに対し組織的に対抗することに成功した

組織の発案者はアダム・ベンフォード。レオン・S・ケネディとイングリッド・ハニガンが中心となり、2011年に発足した。

現在FOSは、レオンが所属するエージェント機関DSO(Division of Security Operations)のサポートを主としている。

トールオークスで発生した大規模なバイオテロと、それによる大統領暗殺事件では、大統領補佐官ディレック・C・シモンズの指示のもと、エージェントを総動員して状況把握にあたった。使用された生物兵器の正体がつかめず軍隊の派遣が難しい中、エージェントと、それを補佐するFOSは実質最前線となったのである。

以下は、トールオークスでバイオテロが発生した際、現場の状況をいち早くキャッチしたハニガンの、上層部に対する急報である。

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「こちら、イングリッド・ハニガン。現場にいたエージェントとの通信を試みた結果、USSSに出向していたヘレナ・ハーパーとの交信に成功。現場にはDSOのレオン・S・ケネディもおり、両人からの情報で、大統領のウィルス感染、および死亡を確認した。
両人はテロ首謀者の情報を掴んでおり、捜査のため行動を開始している。
繰り返す、現場にいたエージェント2名からの報告により、大統領の死亡を確認。現在エージェント2名が首謀者を追跡中」


ゾンビ
1998年、ラクーンシティ全域に「t-ウィルス」が流出する事故が発生。これに感染した人間は、一度生命活動を停止させた後、凶暴化して蘇ることが確認された。
その容貌には、目の白濁や、皮膚がただれたように剥がれおちるといった変化が見られたため、"生ける屍"の意味を込め「ゾンビ」と呼ばれていた。

今回トールオークスで発生したバイオテロでも、原因は不明だが、t-ウィルス感染者と酷似した人間が数多く目撃されている。彼らもまた「ゾンビ」として認識されている。

しかし、トールオークスで確認されたゾンビには、t-ウィルスの感染者とは違った特徴が見られる。

そのことについては、トールオークスでのバイオテロに巻き込まれ、危険な状況に晒されながらも、レオンがFOSに向けてまとめた報告から読み取れる。

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「From レオン・S・ケネディ
今回のバイオテロによる感染者の情報を手短に報告する。
まずは、身体能力の向上。多くの感染者が、走る、飛びかかってくるなど鋭敏な動きを見せた。また、つたないながらも道具を使用して襲いかかってきたことや、障害物を避けたり、乗り越えたりする動きを見せた。
t-ウィルス、およびG-ウィルスに感染したゾンビにこうした行動を取ったものがごく少数ではあるが存在したことは分かっている。しかし、これに関しては数がごく少なかったことと、原因の究明が出来なかったことから、合衆国調査機関のごく一部、そしてBSAAの記録にわずかに残るのみで、公にはされなかったはずだ。
だが今回、感染者の多くがこうした動きを見せた。従来の「愚鈍な動く死体」とは違い、明らかに凶暴で、有り体に言えば「強い」。慎重な調査が必要だ」


イングリッド・ハニガン
33歳。アメリカ合衆国FOS所属オペレーター。9年前に発生した「大統領令嬢誘拐事件」以降、レオン・S・ケネディのサポートを担当。聡明かつ冷静な性格で、高度な情報処理能力とハッキング能力を持つ。数々の危険なオーダーをこなしてきたレオンを支え続けた影の功労者。

レオンをはじめ、エージェントたちがハニガンに寄せる信頼は非常に厚く、また、FOS上層部も、非常時において彼女の越権行為をある程度黙認していることから、その存在が組織においてどれだけ重要視されているかが窺い知れる。

そんなハニガンだが、彼女のプライベートは一切が謎に包まれており、組織内では様々な憶測を呼んでいる。ただ二年ほど前、FOSの男性職員が、家族と電話で会話しているハニガンを見たことがあるという。ずいぶんとうんざりした様子で、下記のようなことを話していたとのこと。

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「母さん、いい加減にして。その話は何度もお断りしているはずよ。
−ええ、わかってる。でも今は仕事が第一なの。私は集中したいのよ。
結婚のお相手くらい、自分で探す。父さんにもそう伝えておいて」


レオンとラクーン事件
1998年、ラクーンシティで大規模なウィルス流失事故が発生した。10万人の市民がウィルスに感染し、ゾンビと化した史上最悪のバイオハザードは、通称「ラクーン事件」と呼ばれている。

新米警官としてラクーンシティに配属されたばかりのレオン・S・ケネディも、運悪くこの事件に巻き込まれた。ゾンビやB.O.W. (Bio Organic Weapon)の攻撃にさらされながらも、レオンは数少ない生存者と共にラクーンシティから脱出を果たした。
しかし、ウィルスの感染や敵の襲来によって、レオンの目の前で多くの命が失われたことは、その後の彼に影響を与えた。ラクーン事件で体験した恐怖と悲劇がきっかけとなり、レオンはバイオハザードに対して強い憤りを抱くことになった。

その後、ほどなくして合衆国エージェントとなったレオンだが、彼がラクーン事件について自ら口を開くことはほとんどなかった。レオンがラクーンからの生還者であることを知る政府関係者たちは、興味本位から事件の状況を訊きたがったが、はぐらかすばかりであったと言う。

そんな中、政府高官でのちに大統領となるアダム・ベンフォードと数年前に行われた会話で、彼はラクーン事件に関して下記のように述懐している。

「あのときは、とにかく生きて街から出ることに精一杯だった。もちろん事件を引き起こしたアンブレラへの怒りを行動力にしていたのも事実だが、それに対してどうこう、と本格的に考えたのは、ラクーンから出たあとの話さ。

"何としてでも生きて脱出する"、ラクーンでは、それがすべてだった。
ただ、あの地獄の中でそういったモチベーション保ち続けることは、正直なところ俺とクレアの二人だけでは厳しかったと思う。そりゃそうさ。あのとき俺はただの新米警官で、クレアにいたっては19歳の女子大学生だったんだ。
現に、絶望して自分の頭に鉛弾をぶち込んでやろうかと思ったことは一度や二度じゃなかったよ。

それでも諦めなかった理由?

もちろん、シェリーの存在だ。
詳しいことは言わなくても分かるだろ。あの子は、まだ十歳を越えたばかりの年で、あのラクーン事件のど真ん中にいた。大人たちの汚い陰謀で勝手にキーパーソンに祭り上げられて、バケモノ共に追われる身になっていたんだ。シェリーを、あの地獄の外へ出してあげたかった。そのためには、俺たちが諦めるわけにはいかなかった。きっとクレアは、俺以上にそう思っていたはずさ」


トールオークス教会と地下研究所
トールオークスのはずれに立つこの教会は、古来からシモンズ一族が管理する土地内にある。元々ここは、シモンズ一族が密談する際にも使用していた施設であり、特殊な仕掛けによって開かれる、隠し通路や隠し部屋が数多く存在する。

教会の地下にある研究所は、シモンズ家の現当主であるディレック・C・シモンズによって地下室の一部が改造されたものである。この地下研究所で、シモンズは「C-ウィルス」の研究を行っていた。

研究所はトールオークスのバイオテロのさなか、何者かに破壊され崩壊している。しかしその後の捜索の結果、書き殴ったようなメモが見つかっている。

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「10年の歳月と12235回の実験の末、ようやく完成した。
ありがとう、ミス・ラダメス。君のおかげだ。
2009年4月30日」


レポティッツァ
C-ウィルスの感染者が、変異の果てに生まれ変わった姿。レポティッツァとは、東欧の言葉で「美女」を意味する。

その体に空いた穴から噴き出すガスは、吸った人間のほとんどをゾンビに変えるという、恐るべき性質を持つ。ガスの拡散性は、一匹で半径3マイル四方。これまでのバイオテロに使用されるウィルスは、経口感染や血液感染などで拡散するものが主だったが、レポティッツァのガスは空気感染のため、回避することが非常に難しい。
レオンが最初に遭遇したトールオークスのゾンビ化バイオテロは、このB.O.W.によって引き起こされたものである。

レポティッツァはC-ウィルスによって生まれる様々な完全変異種の中で、組織ネオアンブレラが最初に発見したものと思われる。それは、トールオークス教会の地下にある研究所跡から見つかった下記の研究員の手記より確認できる。

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1年前のマルハワ学園における実用実験されたC-16(ナナン・ヨシハラ)。
そのサンプルから改良を重ねて生まれたレポティッツァは、無差別攻撃を仕掛けるにあたっては比類ない最強の兵器となった。

レポティッツァ数体を用意して一気にガスを拡散させれば、トールオークスはたちどころに感染者たちであふれかえることだろう。事前の調査でレポティッツァに変異すると確認されたサナギを、街の各所に設置した。あとはトールオークスが地獄に変わるのを待つのみだ。
念のため、街に置いたレポティッツァたちは、役目を終えれば自滅するようになっている。仮にこの研究所を突き止められたときのために、同じサナギをひとつ置いていくことにする。

決行の日が、楽しみだ


ヘレナ・ハーパー
24歳。アメリカ合衆国エージェント。
両親は他界しており、容姿端麗なヘレナに良く似た妹が、彼女の唯一の肉親。

今回のトールオークスのバイオテロの際には、USSS(アメリカ合衆国シークレットサービス)に出向し、大統領の警護の一端を任されていた。正義感、責任感が強く、自分の考えや信念を決して曲げない。人情に厚い性格だが、同時に感情に流されやすい。

しかし、感情的になりやすい面を除けば、実力的にはエージェントの第一線として活躍するのに申し分ない人材だった。エージェント組織DSOの拡充を補佐していたハニガンは、当時CIA所属だった彼女の意志の強さを高く評価していたらしく、将来的にDSOのメンバーとなることを見越して育成するよう、上層部に打診している。

「イングリッド・ハニガンより、DSOおよびFOS上層部へ。

大統領の指示によるDSOの人員拡充について、現在各組織よりメンバーを選抜中です。
選抜されたメンバーは、一年間に渡る適性の判断を行い、その後、一年から三年の訓練を経て合格すればメンバーとする予定になっています。本日まで、7人が適性判断の対象となり、うち5名が水準に達しないと判断されました。

そこで、新たに適性判断の対象として、CIAのヘレナ・ハーパーを推薦します。
感情に流されやすい欠点は承知の上ですが、彼女の強い信念と行動力には期待が持てます。いつも通り、極秘裏に適性の判断を開始してはいかがでしょうか」


ヘレナ・ハーパー2
ヘレナは、人一倍責任感、正義感が強く何事にも積極的だが、これは、感情に流されやすく冷静さを失いやすいという欠点にもなっていた。
彼女の、正義感の強さから来る感情的な一面は、当局がヘレナに抱く唯一の不安要素だった。そして、その不安は間もなく的中する。

連続殺人事件の捜査中、見事に犯人を取り抑えたヘレナだったが、その際、犯人に対して過剰な暴力を振るってしまい停職処分となった。当局の聴取に対しては、「犯人が、遺族の前での暴言を止めなかったため黙らせた」と答えている。

ヘレナは、己の正義と信念を決して曲げない女性なのである。
復帰後もその鋼の意志が生み出す感情的な行動は相変わらずで、ついには、妹・デボラの交際相手が、別れ話のもつれから彼女を傷つけた際、発砲して重傷を負わせるという取り返しのつかない失態を犯してしまった。

妹への愛情ゆえの事件だったが、さすがに当局もこれを看過するわけには行かず、ヘレナはUSSS(アメリカ合衆国シークレットサービス)の補佐に回された。出向という形だったが、事実上、エージェントとしては解雇である。

ハニガンは、ヘレナの信念の強さを評価して、DSOメンバーとしての資質を見極めようとしていたが、この一件によりすべて白紙となってしまった。
そのときの、ヘレナの上司からハニガンへ宛てた報告書が残っている。

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「イングリッド・ハニガン殿
本日付けで、ヘレナ・ハーパーをUSSS出向とした。
しばらくUSSSで様子を見るが、このままの流れでは遠からずすべての職を解くことになるだろう。彼女が一般人へ発砲をおこなった要因は、妹デボラに重傷を負わせた交際相手への怒りにある。家族を傷つけられた者の心理としては理解できるが、合衆国を守る使命にあるエージェントの行動としてはあまりに軽率だ。

君はヘレナをチェックしていたらしいが、上司の私から不適合との判断を伝える。DSOが大統領の剣であるならば、なるほどヘレナの切れ味は申し分ないだろう。しかし、彼女はいわば諸刃だ。振り上げれば、自分や、下手をすれば味方まで傷つけかねない」

感情的な一面、妹への溺愛、USSSへの出向。それらに目を付けられたヘレナは、シモンズによって大統領暗殺計画に利用されることになる。


カタコンベと地下洞窟
トールオークスの地下に広がるカタコンベには、400年近い歴史がある。
この墓所に納められているのは、シモンズ一族と、彼等に携わってきた「ファミリー」の人間である。公にされている墓所ではないが、様々な罠が仕掛けられている所から、墓泥棒やファミリーを探ろうとした者達が昔から侵入していたと考えられる。

カタコンベの地下には、原始的な洞窟や祭壇のようなものがあり、この地下空間がシモンズ一族の介入前より現地の人間によって使用されてきたことが推測できる。

カタコンベの奥深くから、シモンズがトールオークスの事件を起こす直前にファミリー内の部下へ出した指示のメモが見つかっている。

「行動の前に、地下の罠をすべて起動させるように。また、水槽に飼っていたブルザクも解き放て。混乱の中で、我らの墓所に迷い込んでくる人間がいないとも限らん。
計画は予定通りおこなう。トールオークスにいる人間は大統領もろとも皆殺しだ。ここに入り込んだ者とて例外ではない。命をもって、国家を守るための礎となってもらう」


デボラ・ハーパー
20歳。学生。ヘレナ・ハーパーの妹であるデボラ・ハーパーは、真面目なヘレナとは違い、自由奔放な性格の持ち主だった。やや遊び好きなところはヘレナの悩みの種でもあったが、唯一の肉親であるこの姉妹の絆は非常に強いものだった。

だが不幸にも、その絆に付け入ったシモンズに、デボラは誘拐されてしまう。彼とファミリーによって、C-ウィルスの実験材料にされたデボラは、ヘレナと再会して間もなくクリーチャーへと変異を遂げた。その姿は、かつてのデボラの面影を残す美しい姿だったが、人間としての理性は失われていた。

デボラを人質に姉・ヘレナを操ることに成功したシモンズの、その直後の行動が、ファミリーの一員が残したメモより窺い知れる。

「ヘレナが去ったあと、妹デボラの処遇については、"すぐさま殺すように"との命令が下った。どのみち計画が遂行されれば姉妹もろとも命はない。ここで殺した方が手っ取り早いだろう。しかし、命令通りこのまま殺してしまうには惜しい。明るいところで見ればこの女、肌つやも肉付きもまさに私の理想・・・。

痛めつけたので多少傷はついたが、思いがけず素晴らしい実験体が手に入った。C-ウィルスを打って、少し経過を見てみることにしよう」


レオンとエイダ
エイダ・ウォンは、裏社会で活躍する女スパイである。
しかし、その素性は一切が不明。エイダ・ウォンという名前すら、本名ではない。

エイダとレオンが出会ったのは、1998年のラクーン事件にまで遡る。当時、ラクーン市警に着任したてで事件に巻き込まれ、クリーチャーでひしめく街からの脱出を図っていた新米警官レオン。一方のエイダは、事件を引き起こした製薬企業「アンブレラ」と対立する企業から、あるオーダーを受け街に潜入していた。

地獄と化した街でレオンと遭遇したエイダは、オーダーを遂行するため、身分を偽ってレオンを利用しようと目論んだ。しかし、地獄のようなラクーンシティでのサバイバルは、二人の間に強い絆を生む。結果、エイダは利用するはずだったレオンを命がけで守るという行動に出た。両者はバラバラに街から脱出したが、その印象は互いの脳裏に深く刻まれたのである。

その後も、エージェントとなったレオンと、世界の裏を駆けるエイダは出会いと別れを繰り返す。レオンを利用して自分のオーダーをこなし去っていくエイダと、そんなエイダに翻弄されるレオン。互いを敵視するでもなく、かといって明確な友情も愛情も見られない。両者の関係は、他人から見れば奇妙なものに映るであろう。

エイダ・ウォンに関する記録は、非常に少ない。しかし最近のものではCIAの資料の中にその名を確認することができる。資料は、欧州にある東スラブ共和国で内戦が起こった際、現地に潜入していたCIAからの報告書である。

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調査の結果、BSAAのオブザーバーと称して共和国政府に介入していた人物は"エイダ・ウォン"と名乗っていたとのことである。BSAAはこの事実を否定。すでに欧州本部が揉み消したようである。...どうやらこの一件を知る者は、我らのみとなりそうだ」


ヘレナの犯行
妹を人質に取られたヘレナは、シモンズが計画する大統領暗殺に手を貸すことを約束してしまった。

ヘレナは、大統領が講演のために赴いていたアイヴィ大学に向けて、「大統領の命を狙う一団が大学構内に潜んでいる」とUSSS(アメリカ合衆国シークレットサービス)の回線を使用して嘘の情報を流したのである。これによって、大統領の警護体制に変化が起きた。講演の前までに安全を確保するべく、急遽USSSからも数名が構内の捜索に回されたのだ。スキが生じたのである。

しかし、最愛の妹の命がかかっているとは言え、国家を揺るがすテロに手を貸すことが、許されるのだろうか...?苦悶の末、ヘレナは大学へ乗り込み、警備体制を戻すよう必死で訴えかける。しかし、彼女のエージェント時代の失態を知るUSSSは、それを一蹴した。ヘレナが感情的に訴えれば訴えるほど、彼女の言葉は軽んじられていったのだ。

そして事件は起こってしまった。警備体制が崩れていた大統領周辺は退避が遅れ、事態は最悪の方向へと転がり落ちていった。

事件直前、USSSの一人が残したメモに、そのときの様子が記されている。

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「大統領暗殺計画の報告が入り、USSSからも数名、アイヴィ大学構内の緊急捜索にかり出された。現在のところ異常は見られない。デマだったのなら、それに越したことはないのだが...。

それにしても、さきほどからヘレナ・ハーパーがうるさい。ずいぶんと取り乱した様子で、「警備体制を戻せ」「シモンズが大統領を狙っている」「私が妹を人質に脅迫され嘘の情報を流した」と我々にわめき散らしている。

シモンズというのは、大統領補佐官のディレック・C・シモンズのことだろうか?馬鹿馬鹿しい。大統領とは親友でもあるあの人が、何を企むと言うのか。

そもそもこのヘレナは、"感情が高ぶると何をしでかすか分からない"という、国家を守るにはあまりにも不相応なレッテル付きで、CIAを追い出されてきた問題児だ。何のヒステリーだが知らないが、預かる我々の身にもなってもらいたい

コイツの言うことを聞いて、刺客を取り逃そうものなら大変な事態になる。どこか離れた小部屋あたりでおとなしくさせておいて、捜査を続けることにしよう。

...それにしても、さきほどから咳が治まらない。風邪でも引いたかな?」


ブルザク
C−ウィルスの感染者が、変異の果てに生まれ変わった姿。ブルザクとは、東欧の言葉で「激流」を意味する。

目や耳はほとんど機能しておらず、水中・水上の波の動きを発達した側線で感知し、獲物を捕食する。人間やゾンビなどの動くものに対して強く執着し、死体など、動かないものに興味を示すことは少ない。

"ファミリー"の研究者が記したメモから、ブルザクの凶暴性が垣間見える。

「このイカれたサメのバケモノ野郎は、水に落としたものだったら何でも食べやがる。昨日はいらなくなったパソコン数台を投げ込んでみたが、バリバリとまるでスナック菓子でもかじるような感じで、あっという間に平らげちまった。おかげでハードディスク内の情報を処分する手間が省けた。なかなか便利なヤツだ。

今日は、死んじまった実験体が山のようにある。動物とかならともかく、全部人間なもんだから、処分に困ってたところだ。ちょうどいい。これも、ヤツのエサにしてしまおう」


ラスラパンネ
C-ウィルスの感染者が、変異の果てに生まれ変わった姿。ラスラパンネとは、東欧の言葉で「解体」を意味する。

白くツルツルとした外皮は、腹腔内に潜むヒルのような形状をした本体を守るために形成されたものである。この外皮は、分裂しても本体に何も影響がないため、時には自ら分裂し、捕食する人間を探したり、拘束したりする。
また、軟体動物のように自身の形状を変化させることができるため、通気口やダクトなどの狭い空間に入り込むことができる。炎を苦手とし、高熱を感じると本体が身体の外に飛び出してくる。

C-ウィルスを研究していたネオアンブレラの研究者も、このあまりにも奇妙な変異種の誕生は予測できていなかったらしく、そのことは、ネオアンブレラの研究室に残されていたメモからも確認できる。

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「イレギュラー発生だ。理解に苦しむおかしな変異種が出来上がってしまった。ラスラパンネと名付けられたこの変異種は、その名の語源である「解体」が示すように、体を分離させて敵を攻撃する特徴がある。
この特徴は、多細胞分裂をおこなう生物の中でも特に再生力の強いプラナリアを想起させる。ただ、プラナリアは、例えば5つに切り刻めば、5体のプラナリアとして再生するが、ラスラパンネに関しては、分離した体の一部はそのままでありながら、本体とは別の意志を持って行動する点にある。また、分離したのち、集合して元の単一個体に戻ることも可能である。

さらに研究を要する謎が多い変異種だが、B.O.W.としての有用性は非常に高いと思われる」


ディレック・C・シモンズ
46歳。アメリカ合衆国大統領補佐官。
完璧主義者で、残忍な性格の持ち主。

その真の姿は、巨額の財力と世界各地に張り巡らせたネットワークを用いて、古代から国や歴史を操作し続けている巨大組織(ファミリー)の長である。ファミリーが作り上げた「変化のない安定した世界の構造」を維持するためなら、手段を選ばない。
ラクーン事件の公表により合衆国に「変化」をもたらそうとする大統領を、バイオテロに巻き込んで殺害したのは、そのためである。

シモンズ率いるファミリーの謀略によって命を落としたアダム・ベンフォード大統領が、ファミリーの存在を、そしてシモンズがファミリーの長であることを認識していたのか。その答えは、シモンズが残した手記に残っていた。

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「アダムには、再三にわたってラクーンの件の公表を中止するよう忠告したが、頑としてその意志を曲げようとしない。ファミリーを使って圧力をかけているが、どうやらこれにも従うつもりはないようだ。
ただアダムの唯一の過ちは、腹心である私がファミリーの長だという事実に気づいていないことにある。このような事態になることを想定して、私は常にアダムの傍にあり彼の動向を監視してきた。

そして彼は、とうとうファミリーを敵に回してしまった。もはや猶予はない。ファミリーの力と、私の大統領補佐官という立場を存分に利用し、世界の安定を維持するための行動を起こすとしよう」


変異シモンズ ケンタウロス
シモンズが、強化されたC-ウィルスを打たれて変異した姿。
上半身はかろうじて人間の姿を保っており、多少凶暴性が増しているが、人としての自我は保たれている。
下半身は獣のように変異しており、最高速度で走る電車を軽々と追い越すほどの圧倒的な脚力を有する。自身の骨の一部を武器にして、猛スピードで射出させて攻撃を行う。射出によって失われた骨は、C-ウィルスの効果で瞬時に再生される。

ファミリーは、自分たちの長がC-ウィルスを打たれてから、その動向をずっと監視していたようである。FOSの必死の傍受作戦により、そのときのファミリー内におけるやり取りの一部が入手できている。

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「ディレックは、もうダメだ。変異が進行し続けている。見ろあの姿を。ジュアヴォすらも比較にならん、下劣で醜いバケモノだ。
彼は、女一人に執着するあまり、長としての道を踏み外した。ディレックは廃棄だ。次の長を決めることにしよう」


変異シモンズ ダイナソー
シモンズに投与された強化C-ウィルスの作用が進み、さらなる変異を遂げた姿。
その容貌は巨大な恐竜そのものであり、見た目にふさわしい強靱な肉体を持つ。
シモンズが人の形を保っていた頃に比べ、その行動には本能的なものが多く見られる。しかし、執拗にレオンやヘレナを狙い、さらには上空からヘリでレオンたちを援護していたエイダに飛びかかるなど、シモンズとしての憎悪、殺意はしっかりと残されている。

ファミリーは、自分たちの長がC-ウィルスを打たれてから、その動向をずっと監視していたようである。FOSの必死の傍受作戦により、そのときのファミリー内におけるやり取りの一部が入手できている。

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「もはや、ディレックに人間としての意志はほとんど残っていない。あとは、合衆国のエージェントが彼を間違いなく処分してくれればよいのだが。

それにしても、ディレックが投与されたウィルスは一体何なのか。C-ウィルスを基盤にしているようだが、その変異は明らかに記録に残っているものは違う。おそらくは、エイダとネオアンブレラが造り上げたものだろう。
サンプルがあるのならば入手して、研究する必要がある。捜索を開始させよう」


変異シモンズ ヒュージフライ
強化されたC-ウィルスの影響を受けクリーチャーと化したシモンズが、人の屍を自分の意志のままに変異させ、肉体の一部として取り込み巨大化した姿。
もはや人としての面影はどこにも残っておらず、数多の昆虫の要素が混ざり合って作られたかのような、醜悪な容貌へと変化を遂げている。

身体の一部が欠損すると、再び人の死骸を変異させて取り込み、損傷個所を再生させる。そのため、周囲に死骸がある限りはほぼ不死身である。

ファミリーは、自分たちの長がC-ウィルスを打たれてから、その動向をずっと監視していたようである。FOSの必死の傍受作戦により、そのときのファミリー内におけるやり取りの一部が入手できている。

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「ディレック・C・シモンズの死亡を確認。
ネオアンブレラも、間もなく掃討されるであろう。
ファミリーの新しい長も決まった。
今まで通り、世界の安定のために尽くしていこうではないか」


クリス・レッドフィールド
39歳。対バイオテロ特殊部隊BSAAの北米支部所属。
かつて同部隊アルファチームを束ねていたが、記憶を失い、東欧の片隅で酒に溺れる自堕落な生活を送っていた。
中国でバイオテロが発生したのとほぼ同時期に、アルファチーム所属のピアーズ・ニヴァンスが彼を発見し、説得して復隊させた。記憶は失われたままだが、強い体力と不屈の精神力、チームをまとめあげる統率力を見せる。

ピアーズたちが、とある事件のあと行方不明になっていたクリスを東欧の外れで発見したのは、奇しくも中国でバイオテロが発生した直後だった。そのときの緊迫した状況は、BSAAに残っている記録から読み取れる。

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「ピアーズ・ニヴァンス、聞こえるか。こちら北米支部。非常事態。アメリカおよび中国にて大規模なバイオテロ発生。
現状どちらも詳しい状況は分からないが、アメリカのバイオテロへの介入は合衆国政府より拒否されている。よって、北米支部アルファ部隊は中国のバイオテロ鎮圧へ急行してくれ。
中国のバイオテロでは"ジュアヴォ"らしきB.O.W.が確認されている。ジュアヴォとの実戦経験がある北米アルファの力が不可欠だ。

クリス・レッドフィールド発見の報告は聞いている。彼の状況にもよるが、復隊すれば大きな戦力となるのは間違いない。至急クリス・レッドフィールドを連れて、中国・蘭祥に向かわれたし。


BSAA
2003年、製薬会社アンブレラの倒産により、同企業が秘密裏に研究していたB.O.W.(Bio Organic Weapon)の開発技術が闇ルートに流出。

結果、世界各国のマフィアやテロ組織によって、B.O.W.を使用した破壊活動が数多く行われることになった。このことから、製薬企業連盟は世間からの責任追及を危惧し、対バイオテロ特殊部隊「BSAA(Bioterrorism Security Assessment Alliance)」を結成する。

結成当初のBSAAは、バイオテロ対策の知識を持つ少数精鋭の民間組織でしかなかったが、年を経るごとにバイオテロの件数や脅威が増していったことで、事態への即応が可能な、国連管轄の実働特殊部隊として再編される。
公的機関になったことで、彼らには政府が存在する他国での捜査権や逮捕権、それに伴う武力行使などの権限が与えられた。

ただ、BSAAも、合衆国での事件には介入しないケースが多い。

その事情は、2005年にクリスが残した手記より確認できる。

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「ハーバードヴィル空港の調査が終了した。とはいえ、事件から一日の間でほとんど合衆国政府によって片付けられており、得たものは少ない。事件にt−ウィルス、G-ウィルスの関与が認められたくらいか。
合衆国は、ラクーン事件以降、長い間バイオテロと戦い続けてきた経緯から、独自の対バイオテロ特殊部隊が存在する。そのため、俺たちBSAAは合衆国内で事件が発生したときには、待機を余儀なくされることが多い。

今回の空港での事件も、結局俺たちが現場へ入れたのは事件の翌日だった。調査の結果、クレアがこの事件に関わっていたらしい。慌てて連絡を取ったが、特に問題はないようで、安心した。いつ、合衆国でラクーン事件に匹敵するようなバイオテロが起こるか分からない。BSAAと合衆国が歩み寄る日は来るのだろうか・・・」


ジュアヴォ
ジュアヴォとは、C-ウィルスの投与によって変貌した人間のことをさす。
理性のタガは外れているが、知能の低下はほとんど見られない。
これは、武器を使用する姿や、同じ言語を理解するジュアヴォ同志がコミュニケーションを取る姿をもって確認することが出来る。

C-ウィルスを投与される前に受けた命令を忠実に繰り返す傾向があり、その命令が生死に関わるような危険なものであっても、全く恐れずに遂行する。また、ウィルスの影響から、体温が非常に高い。負傷するとウィルスが活性化し、さらに体温が上昇する。

傷の修復が追いつかなくなると、ウィルスの活動の激化によって身体が発火するほどの熱を帯び、焼死に至る。

一般の人間であれば致命傷となる傷も、ウィルスが活動している限り多くの場合わずかな時間で再生する。

この恐るべき生態については、あるBSAA隊員の日記にも書かれている。

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「ようやく東欧での作戦を終えて、母国へ引き上げる。今回の敵・ジュアヴォは、プラーガやマジニとも異なる、全くの新種だった。撃てども撃てども傷を再生させながらこちらへ向かってくる。
しかも知能、身体能力が高く、戦場におけるヤツらの動きは、まさに訓練された兵士たちのそれであった。今回は、戦場だったからまだよかったが、もし、あんな連中が無抵抗な一般人だらけの街に解き放たれたら・・・?想像するのも恐ろしい・・・」


変異ジュアヴォ
変異ジュアヴォとは、C-ウィルスの投与によって変貌した人間「ジュアヴォ」が肉体の一部を変異させた状態をさす。

ジュアヴォは、肉体の一部が大きく損傷すると、これを修復すために体内のC-ウィルスが活性化する。その結果、損傷個所が昆虫の形態に似たものへと変異することがある。
ジュアヴォの変異には、腕をカマや盾のように変異させたものや、羽を生やし飛行できるよう変異したものなど、多くのバリエーションがあることが確認されている。

これらの変異したジュアヴォの呼称は、BSAA欧州本部技術研究局の研究者によって名付けられている。

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「ピアーズ・ニヴァンス殿

新種B.O.W."ジュアヴォ"の変異サンプルをありがとう。
現在、バラしたり繋いだり潰したりして色々と研究しているところだ。
しかしこれは、実に興味深いバケモノだね。新種というものは、いつも我々研究者の心を熱く燃えたぎらせてくれる。まじめな君は、こういうことを言うときっと怒るんだろうけども。
とりあえずは、ジュアヴォという呼称がセルビア語を語源にしているということで、こちらに届けられた検体もそれに基づいて名前を付けてみた。

腕が大きな鎌のように変異したジュアヴォは、ジュアヴォ ルウカ・スルプ。
ルウカはセルビア語で腕、スルプは鎌という意味だ。

足が蛾の羽のようになる華やかなジュアヴォについては、ジュアヴォ ノガ・レトゥ
ノガは脚、レトゥは飛行という意味だ。

どうかな? なかなかいいネーミングだとは思わないかい?
まあ、こんな調子で、新種にはどんどん名前を付けていこうと思う。・・・と、私が頑張ってみたところで、どうせ君たち現場の人間は、面白みもないコードネームで呼ぶんだろうね。
ともかく、また新しい変異ジュアヴォが見つかったらどんどん送ってくれたまえ。首を長くして待っているからね」


ピアーズ・ニヴァンス
26歳。BSAA北米支部所属。
クリス・レッドフィールド率いる部隊の狙撃手。

優れた動体視力と驚異的な集中力を持ったスナイパーで、彼の実力を上回るスナイパーはBSAAに存在しない。人一倍責任感が強く、また頭が切れるため、戦場に限らず様々な局面において瞬時に最適な手段を見出して行動に移すことが出来る。思慮深く真面目な男だが、普段の性格はいたって明朗で、誰にでも分け隔てなく接する優しさも持ち合わせている。

そのため、記憶を失う前のクリスからも、「将来はBSAAを背負って立つ存在になる」と一目置かれていた。ピアーズ自身も、部下たちを「家族」と呼び、「仲間たちの存在と結束こそがBSAAを強くする」と信じるクリスに、尊敬と信頼を寄せていた。

クリスが行方不明になっていた間、隊長だった彼の役目を一時的に引き継いでいたのはピアーズだった。

そのときのピアーズの様子は、BSAA上官の手記より確認できる。

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「ピアーズがアルファ部隊の隊長代行となって一ヶ月あまりだが、さすがはクリスが見込んでいたエースだ。なかなかよくやっている。クリスほどの見事な統率力にはまだ及ばないが、合格点だ。

このまま経験を積ませてゆくゆくはアルファの正式な隊長につかせても構わないと考えているが、ピアーズ本人としては、クリスの復隊しか頭にないようだ。エージェントを使ってクリスの捜索をさせながら、自身も時間を見つけては東欧を中心に飛び回り、クリスを捜している。ピアーズにとっては、彼なくしてのBSAAなどあり得ないのだろう。一刻も早く、クリスが見つかればよいのだが」


オグロマン
イドニア共和国の内戦でB.O.W.を使用している反政府軍が実戦投入した、新型B.O.W.の一種。オグロマンとは、東欧の言葉で「巨体」を意味する。

その名の通り、これまで確認されてきたB.O.W.の中でもトップクラスの巨体と並外れた腕力で、目標を徹底的に攻撃・破壊する。ただし知能は低く、できる行動と言えば与えられた命令を遂げるためにひたすら暴れるのみである。

ただ、背中に生命維持器官と直結した装置があり、そこを充分な火力で攻撃すれば、容易に仕留めることが出来る。このように、致命的な弱点を抱えたまま実戦に投入されたのは、追い詰められたイドニア反政府軍の焦りもあったようだ。

そのことは、イドニア反政府軍を指揮する人物の手記からも分かる。

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「BSAAはついに我々の本拠地である市庁舎へと迫っている。ここを抑えられれば、もはや勝ち目はない。やむを得まい。あのアジア人の女が"オグロマン"と呼んでいた、バカでかいバケモノを投入することにしよう。

女は"決定的な弱点のカバーができていないので実戦で使うのは早い"とかほざいていたが、知ったことではない。あの巨体であれば、現状でも戦力としては申し分ないはずだ。オグロマンを軸に攻撃を仕掛け、BSAAを叩き潰してやる」


C-ウィルス
体内に投与することで、人間を「ジュアヴォ」と呼ばれるB.O.W.(Bio Organic Weapon)へ変異させる新型ウィルス。

これは、東欧の紛争地帯で栄養剤として配られ、投与した傭兵が次々にジュアヴォと化した事件を皮切りに、世界各地で目撃されるようになった。「C」は「Chrysalid(さなぎ)」を意味する。

BSAAの研究員は、C-ウィルスの調査の結果、「不可解な点が多く全容解明には時間がかかる」としながらも、下記のような所感を残している。

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「C-ウィルスは、生物の血液細胞を侵蝕し、奇怪な変異を引き起こすRNAウィルスだ。特徴から推測するに、1998年、ロックフォート島の事件で使用された「t-Veronica」を基盤にしていると思われる。理由としてはt-Veronicaに見られる虫や植物の特徴が混ざった変異が顕著であるからだが、おそらくこれに、ラクーン事件にあった「G」を掛け合わせているのではないだろうか。

この2つを組み合わせ、進化させたものがC-ウィルスである、というのが現段階の予測である。ただ、この仮定が事実であれば、いったい何者がこのようなウィルスを生み出したのか。このような悪魔の発明、並の頭脳でできるものではない...」


ナパドゥ
C-ウィルスの感染者が、変異の果てに生まれ変わった姿。ナパドゥとは、東欧の言葉で「突撃」を意味する。

硬い外皮で覆われた強靭な肉体を持つ。腕を振り回して攻撃するさまや、興奮すると両手で胸を叩くしぐさは、ゴリラなどの哺乳類を思わせる。

ジュアヴォ以上に体温が高く、身体から常に蒸気を噴き出すことで体温を一定値に保っている。ある程度ダメージを与えると外皮が砕け、筋肉がむき出しになる。背面部の外皮の下に中枢神経があり、そこを破壊すると即死する。

相対したBSAAの隊員は、ナパドゥと戦闘しながら、HQへその特徴を伝えている。

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「とんでもないヤツが出てやがった!」
「このクソ野郎! なんて馬鹿力だ!」
「近づけるな! ぶっ飛ばされるぞ! 遠距離からありったけの弾をぶち込め!」
「外側が殻に覆われてる! くそっ! 壊せない!」
「ショットガンを叩き込んで殻を壊せ! 今のままじゃダメージが与えられない!」


フィン・マコーレー
22歳。BSAA北米支部所属。BSAA北米支部のルーキー。
イドニア共和国の内戦において、クリスの部下として初めて実戦に参加した。実直な性格で、少し気弱な面もある。

バリケードや高射砲の爆破作戦において活躍を見せるが、エイダの罠にはまり、無残にもクリーチャーへと変異してしまう。B.O.W.となって自我を失ったフィンは、その後、追加投入されたBSAAによって射殺された。

フィンが、イドニア共和国へ行く前日、母親へ送った手紙が見つかっている。

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「愛するお母さん。その後、風邪など引いてませんか。
僕は、いよいよ明日、BSAA北米支部アルファ部隊の隊員として、イドニア共和国へ行ってきます。まだまだ新米ですが、栄えあるアルファ部隊に入ることが出来て幸せです。ベテランの皆さんの足を引っ張らないよう、精一杯役目を果たして帰ってきます。

アルファ部隊の隊長は、クリス・レッドフィールドという方です。長年バイオテロと戦い続けてきた伝説の人で、僕にとっても憧れの存在でした。まだ、挨拶はできていません。チャンスはあったのですが、 正直、見た目がとても怖くて、声がかけられませんでした。次に挨拶する機会は、向こうに着いてからになりそうです。今度は怖がらず、いつもお母さんに言われているように、元気にハキハキと挨拶します。
何せ行き先は戦場ですのでお土産は用意できないと思いますが、必ず無事に帰ってきます。

それでは、しばらくの間、お別れです。行ってきます」


失踪中のクリス
イドニア共和国でエイダ・ウォンの術中にはまり、ほとんどの部下を死なせてしまったクリス・レッドフィールドは、自身も重傷を負って同国内の病院に緊急搬送される。

目を覚ましたクリスは一切の記憶を失っていたが、精神を押し潰してしまうような強力な罪悪感に支配されていた。クリスは、この罪悪感から逃げるようにして病院を抜け出し、そのまま行方をくらましてしまう。

ピアーズ・ニヴァンス率いるBSAAに発見されるまで、クリスは東欧の片隅で酒におぼれる生活を送り、激しい焦燥をごまかしていた。

クリスが入り浸っていた東欧の酒場の女店主は、BSAAの聞き取りにこう答えている。

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「アイツがこの辺に来たのは、5ヶ月くらい前かしらね。名前も覚えちゃいないって言うんで、周りからは"野良犬"って呼ばれてたわ。まあ、あのガタイじゃ野良犬ってよりは"野良熊"って方がしっくるけど。

陰気くさい上に乱暴で、大酒カッ食らう割りには払いも悪くて...ホント、ロクな男じゃなかったわよ。だけどまあ、見た目通りケンカだけはやたらと強かったんで、用心棒的な仕事をして金を稼いでたみたい。その金で、近場の安いホテルを点々としてたらしいわ。

...で、あの野良熊が何なわけ?
そんなに話を聞きたがるってことは、実はすごい人だったりするの?ハハッ、まさかね」


ポイサワン
ポイサワンは、中国・ランシャンのワイイプ地区内にある、城砦の跡地に建造された巨大なスラム街である。クリス率いるアルファチームが、ステルス性能を持つB.O.W.を追って潜入した場所。

1900年代前半のイギリスの植民地時代にポイサワン周辺を統治していた清国の軍や政庁が排除され、事実上、管理者のいない無法地帯となった。その後、各地から流民が次々とバラックを増設。無計画な増設は、迷路のように複雑な独特の環境を生み出した。

テロ直後、ポイサワンの住民のうち半数は速やかに避難したようだが、残り半数の行方が分かっていない。戸籍がない者たちばかりだったのでその数は定かではないが、行方不明の住人たちがどうなったか、その手がかりとなるメモが見つかっている。

バイオテロが発生する数日前に書かれたものらしい。

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「ウォンとかいう、ずいぶんと綺麗な女がポイサワンにやって来た。若くて健康な男を集めている、というので、興味本位と淡い期待を持って行ってみたら、何やら新薬の実験に協力して欲しいとか呼びかけていた。報酬ははずむというので金額を聞いてみたら、確かに軽く一年は楽して過ごせるくらいの結構な額だ。どんな薬かは知らないが、これだけの金をもらえるんなら悪い話じゃない。

そう言えば、スラムに住んでる金のない連中に声をかけて、報酬を渡して薬の実験をして回ってる女がいると噂に聞いたが、このウォンがそれか。薬の実験ってんでちょっと怖いのはあるが、報酬は魅力的だ。俺は、ウォンの話に乗ってみようと思う」


イルジヤ
C-ウィルスの感染者が、変異の果てに生まれ変わった姿。イルジヤとは、東欧の言葉で「幻影」を意味する。

蛇のような外見をしており、外皮を周囲の光景と同化させることができる。これはイルジヤが獲物を見つけた時など、興奮している状態でよく見られる。体力の低下により肉眼で姿を見つけやすくなるが、この状態の外皮は、著しく硬化している場合が多く、攻撃が通りにくくなる。

イルジヤに関して、ネオアンブレラの研究者が残したメモがある。

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「偶発的に生まれたこのB.O.W.は、"イルジヤ"と名付けられた。非常に優れた攻撃擬態の能力を持ち、周囲の光景に同化し姿を消すことができる。擬態・硬化というB.O.W.としては理想の外皮を有しているが、それ以外...要は内臓部分だが、これは普通の生物と大差ない。

また、擬態の能力も外皮だけなので、ターゲットを攻撃するために口を開いたときなどはそこだけ完全に視認できる状態にある。露出した口内は当然ながらイルジヤ最大にして唯一の弱点となるので、攻撃の瞬間こそ最も危険と言える」


クリスの経歴
クリスはかつて米空軍に在籍し、戦闘機のパイロットとして活躍していたが、信念を曲げない性格が災いし上官と衝突、退役する。その後、航空機の操縦技術と戦闘能力を買われ、ラクーン市警の特殊部隊S.T.A.R.S.にスカウトされた。

1998年にラクーンシティ郊外で発生したバイオハザード、通称「洋館事件」を生き延び、この事件の黒幕であり、B.O.W.開発で莫大な利益を得ていた製薬会社アンブレラを打ち倒すため、独自で捜査をはじめる。

2003年、アンブレラが崩壊した後、対バイオテロ特殊部隊BSAAに参加。

2009年には、かつてアンブレラに所属し、様々なバイオテロに関与してきたアルバート・ウェスカーとアフリカで対峙。ウェスカーを倒すことで長きにわたるアンブレラとの因縁を断ち切った。

そして2012年、イドニア共和国での作戦行動中、テロ組織ネオアンブレラの罠にかかりピアーズ以外の部下全員がB.O.W.へと変異。彼らから攻撃を受けてしまう。その戦闘で負傷し記憶を失ったクリスは、半年後ピアーズに発見されるまで、東欧の片隅で酒に溺れる日々を送っていた。

BSAAの象徴とも言えるクリスが、搬送されていた病院から姿を消したことは、組織全体に大きな衝撃を与えた。ピアーズの指示のもと捜索が続けられる中、BSAA各支部が可能な限りの協力を行っていたことは、ピアーズに届けられた一通のメールからも分かる。

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「北米支部ピアーズ・ニヴァンス殿
今回のクリス・レッドフィールドの失踪については、我々も驚きと共に衝撃を受けています。彼はBSAAになくてはならない人物であり、私が所属する西部アフリカ支部にとっても、そして私個人にとっても大切な恩人です。
何か協力できることがあれば連絡をください。西部アフリカ支部は協力を惜しみません。
西部アフリカ支部シェバ・アローマ」


クリスとレオン
BSAA北米支部に所属するクリス・レッドフィールドと、アメリカ合衆国の大統領専属エージェントを務めるレオン・S・ケネディ。
接点が無いように見えるこの二人を繋いだのは、クリスの妹であるクレア・レッドフィールドだった。

1998年、洋館事件を経て、クリスはその元凶となったアンブレラの打倒を誓う。クリスは、妹がアンブレラに狙われることを懸念し、あえて彼女に伝言を残さぬまま、単独でアンブレラの拠点がある欧州へと旅立った。

クレアは、兄を探すためラクーンシティを訪れ、同市で発生したバイオハザードに巻き込まれる。そこでレオン・S・ケネディと出会ったクレアは、彼と共闘し街から脱出した後、アンブレラの管理下にあるロックフォード島でクリスとの再会を果たした。クレアにとって、クリスはバイオテロに真っ向から立ち向かう尊敬すべき存在であり、レオンは共にラクーンシティの地獄から脱出した戦友である。

やがてレオンとクリスは、クレアを介して対面の時を迎える。しかし合衆国大統領直属のエージェントと、BSAAの中心人物という互いの立場から、許された接触の時間はごくわずかだった。だが、共にB.O.W.を憎み、その駆逐に命を捧げた二人が、意志と信念を通じ合わせるには充分な時間だった。

レオンとクリスの会話の内容は、トップシークレットとなっている。ただ、対面の場に立ち会ったハニガンは、そのときの様子をアダム・ベンフォードへ報告書という形で残している。

その一部が、下記のものである。

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「仲介したテラセイブのクレア・レッドフィールドによって互いが紹介され、レオンとクリスは笑顔で固く握手を交わしました。その様子は、まるで、何十年かぶりに再会した親友同士のようでした。会話はそれほど多くはありませんでしたが、言葉の量など関係なく、二人は対面した短い時間で、お互いの今までの苦労とバイオテロへの意志を感じ取ったと思います。

合衆国とBSAAの関係は、決して良好であるとは言えません。私は、この日の対面が、膠着した関係を氷解させるきっかけになればと期待して止みません」
※「ロックフォード」は原文ママ。
※クリスとの再会を果たしたのはロックフォートではなく南極基地である。


ネオアンブレラ
BSAAがイドニア共和国で出会った謎の女エイダ・ウォンは、クリス達を罠にはめ、C-ウィルスを使って彼の部下たちをB.O.W.へと変異させた。

エイダが総統であるバイオテロ組織「ネオアンブレラ」は、中国にある研究所でC-ウィルスを研究し、イドニア共和国の内戦に乗じて極秘で傭兵たちにウィルスを投入。C-ウィルスによって生まれるB.O.W.であるジュアヴォと化した彼らのデータを収集していた。

クリスには、数々のバイオテロを引き起こしてきた製薬会社「アンブレラ」と長きにわたって死闘を繰り広げてきた過去がある。「ネオアンブレラ」の名を耳にしたとき、クリスが強い危機感を抱いたであろうことは想像に難くない。エイダ・ウォンが、なぜ自身の組織を「ネオアンブレラ」などと名付けたのか。それは、彼女にしかわからない。

東欧・イドニア共和国の作戦で、アルファ部隊はネオアンブレラとエイダ・ウォンに接触し部隊をほぼ全滅に追い込まれている。しかし、イドニア共和国の内戦に関与した段階では、ネオアンブレラという組織の存在を立証するものがなく、また、エイダと名乗った女性の言葉が狂言だった可能性もあったことから、捜査は慎重に進められた。

やがて、中国でのバイオテロが発生。
ネオアンブレラより正式に犯行声明が出され、総統エイダ・ウォンの存在も確認されたことから、いよいよBSAAは忌まわしき"アンブレラ"の名を冠したテロ組織と相対することになる。

BSAA北米支部に所属するマルコ・ローズの手記より、その時の様子が窺える。

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「今日、中国でのバイオテロに北米支部も駆り出されることになった。まあ、事件の規模を見てれば妥当だろう。俺はブラボーを率いて現地へ飛ぶ。

噂だが、アルファは、ついにピアーズが行方不明だったクリスを見つけたらしい。すぐさま復隊の準備を整えたらしいので、アルファはクリスが率いて来るだろう。向こうで会えるのが楽しみだ。それにしても、テロを起こした連中が"ネオアンブレラ"を名乗ってるとは、実にクソッタレな話だ。

すべてのバイオテロのきっかけになった憎むべきアンブレラの名を使うとは、ふざけてるとしか思えねぇ。エイダとかいうクソ女をとっ捕まえて、全人類の前で土下座させてやるぜ」


ネオアンブレラのメモ
「ネオアンブレラ各員に報告 本日23:29を持って、総統エイダ・ウォンの脈拍、心拍数、呼吸の停止を確認。
これにより、同時刻をもってプランDを発動する。極東地域に待機する研究員は、速やかに指定安全区域まで退避せよ。
なお、この退避命令は、ジュアヴォを含むB.O.W.には適応されない。 また、プランDの発動に伴い、ネオアンブレラ海底研究所へ緊急信号を送る」

「プランD
1. ミサイルによって、ターチィを中心に蘭祥全体を感染地域に変える。
2. 混乱のスキをついて、中国外海に眠る"ハオス"を強制的に覚醒させ、地上へ送り出す。
これによって総統エイダ・ウォンの悲願は滞りなく完遂される。
世界中で"ラクーン"が再現され、永遠に安定しない世界が訪れる」


ピアーズの経歴
曾祖父の代からの軍人家系に生まれたニヴァンス家の長男ピアーズは、物心ついた頃から自分の進むべき道は軍隊しかないと考え、それ以外の道は考えたこともなかった。
士官学校を優秀な成績で卒業したピアーズは、その狙撃能力の高さを買われて陸軍特殊部隊へ配属される。
しかし、軍に入って間もなく、明確な戦う意義が見つからず行き詰まってしまった。
「自分はなんのために戦っているのか...?」
悩みながらも、ピアーズはただ無心に訓練に打ち込む日々を送っていた。

2010年、ピアーズは訓練によってさらに磨きをかけた狙撃能力を買われて、クリス・レッドフィールドから直々にスカウトを受けBSAAへ入隊する。

ピアーズは、BSAA創設時からのメンバー「オリジナル・イレブン」であり、トップクラスのエージェントであったクリスが、若い世代を育成するため、いわば特権階級であった自分の立場を捨て、最前線であるアルファチームの隊長に就任したことを知り、衝撃を受ける。

さらにクリスは、自身の部下たちを「家族」とまで呼び、BSAAの未来を担うのは若い世代であると考え、部下たちの命と意志を何よりも尊重して指揮を執っていた。
かつて所属していた部隊では見られなかったその姿勢にピアーズは深く感銘を受け、クリスこそ自分が目指すべき人物と確信し、その先に戦う意義を見いだしたのである。

およそ一年前、ピアーズが後輩たちに語ったクリスについての話がある。聞いていた後輩の一人が、よほど印象に残ったのかメモに書き残していた。

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「この間、隊長に聞いたんだ。"隊長が俺の年齢のとき、何をしてましたか"ってな。俺、今25だろ? 隊長は25のとき、ちょうどあの"洋館事件"に遭遇してたんだ。俺と同い年で、ラクーン事件のきっかけとも言える出来事に立ち向かってたんだぜ。
ほとんど一人で、当時まったく未知の生物だったB.O.W.と戦って、生き残った。そこからして、もう普通じゃないよな。

それで終わりじゃない。隊長は、その三ヶ月後に、今度はアンブレラが管理していたロックフォート島に、妹さんを助け出すために単独で潜入してる。ラクーンじゃ見られなかった未知のウィルスと戦い、あのアルバート・ウェスカーともそこで戦ったんだ。決着はつかなかったらしいけどな。

まったく、B.O.W.も恐ろしいモンばかりだけど、俺にはよっぽど隊長の方が恐ろしいよ。今の俺に、当時の隊長と同じ事なんて、きっと出来やしない。
だからこそ、あのクリス・レッドフィールドって人はBSAAの生きる伝説なんだろうけどな。追いつくなんて出来ないだろうけどさ、ああいう風になりたいよ。
BSAAの一員としても、軍人としても、人としてもな」


クリスとウェスカー
クリス・レッドフィールドと、ジェイク・ミューラーの父であるアルバート・ウェスカーの間には、浅からぬ因縁がある。

二人はかつて、ラクーンシティの特殊部隊S.T.A.R.S.に所属し、共に1998年、史上初めてB.O.W.が確認された「洋館事件」の対処にあたった。しかし、実はこの事件の黒幕はアンブレラと繋がっていたウェスカーであり、彼の裏切りによってクリスは多くの仲間を失うことになる。

これを機にアンブレラ打倒に立ち上がったクリスと、B.O.W.による数々の事件で暗躍するウェスカーとの長い戦いが幕を開ける。

そして、2009年。
アフリカで世界規模のバイオテロを企んでいたウェスカーと対峙したクリスは、B.O.W.となったウェスカーを死闘の末に倒した。十数年におよぶ二人の因縁は、こうして終止符が打たれたのである。

この時の心境を、クリスは下記のようにつづっている。

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「ウェスカーを倒したことが、ひとつのターニングポイントになることは間違いない。今回の戦いで、俺は"何のために戦うのか"という意義を見いだした。だが同時に、多くのバイオテロに関与してきたウェスカーをようやく倒したことで、"俺の役目は終わった"という思いも強く抱いている。

バイオテロとの戦いをやめるつもりはない。だが、これから先、第一線でそれを担うべきは、俺と同じ志を持った若い世代だ。いつかまた、ウェスカーのような存在が現れる可能性はゼロではない。

その時、俺のあとに続いて、バイオテロに立ち向かってくれる仲間が必要になる。俺は、エージェントをやめて部隊へ行く。BSAAの未来のため、最前線で、若い同志たちを育てていかなければならない」


海底の研究所
ネオアンブレラが所有する海底基地は、B.O.W.を生み出すための研究施設として使われていた。ネオアンブレラは、海底からマグマを引き上げ、高温環境でも活動可能な細菌や微生物を研究し、C-ウィルスにその特性を汲みこむことで、過酷な環境下でも生存できるB.O.W.を生み出そうとしていた。

ネオアンブレラが、海底に基地を造り上げるほどの莫大な資金をどこから得ていたのかは不明である。

海底基地にいた研究者のメモが見つかっている。

「命令を受けてここへ来てもう一週間。まさか、海の底にこんな施設があるなんて、いったい誰が信じるだろう。何よりの驚きは、この施設が"ハオス"のためだけに造られた、という事実だ。
いわば、この基地全体が"ハオス"のための保育器というわけである。我らの組織の悲願成就のためとは言え、何とも贅沢な金の使い方だな」


HAOS
HAOS(ハオス)とは、ネオアンブレラの最終兵器として生み出された巨大B.O.W.の事を指す。

外皮は透き通っており、人間のような骨格や内臓を肉眼で確認することが出来る。その身体に、人間をゾンビへと変えるガスを作る器官を持っており、巨大な体から噴出されるガスは、同種のガスを出すレポティッツァと比較しても数千倍の濃度と拡散性を持っている。

さらに、地上に解き放たれると同時に無限の分裂を繰り返すようにプログラムされており、すべてが計画通りにいった場合、世界は数日で滅ぶと考えられる。

この計画はネオアンブレラの最高権力者であるエイダ・ウォンが死亡しても実行されるようになっており、彼女が死亡した場合、完全体になるのを待たずにハオスが解き放たれるようあらかじめ制御されていた。

果たして、エイダ・ウォンはハオスが完全体になるのを待たずして命を落とす。これにより強制的なハオス覚醒、および解放のプログラムが発動した。エイダの死の瞬間、ハオスがいる海底基地の動きが分かる記録が見つかっている。

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「23:29、エイダ・ウォンの死亡を確認。
プランD発動。
ハオスのサナギに強制覚醒信号を送信。
現在ハオスの形態完成度70.3%。外皮、および下半身が未完成。
しかし計画遂行に問題はなし」


ジェイク・ミューラー
20歳。イドニア共和国の反政府組織に属する傭兵。卓越した戦闘能力と、サバイバル能力を持った青年。

ひねくれた態度でしか他者と接することが出来ないため、彼が所属していた傭兵部隊の中でも孤立していた。
ジェイクが信用できるものは金だけであり、他者に心を開かない。金銭によってでしか、心は満たされないものと思い込んでいる。

イドニア共和国でも戦った経歴を持ち、現在は別の戦場にいるとある傭兵は、ジェイクのことを覚えており、当時ジェイクについて調査を行っていたシェリーに下記のように語っている。

「ジェイク・ミューラー? ああ、覚えてるよ。イドニア時代は一緒にいることが多かった。別にいいヤツじゃあなかったな。かと言って、根っからの悪党ってわけでもなかったけどさ。

しょせん、俺もヤツも、世の中、金がすべてって考えなんだよ。馴れ合いなんざ、必要ねぇ。俺たちは思想のない殺し屋みてぇなもんだから、情なんてもんは一切捨てて、さくさくと与えられた仕事をこなして金を頂くだけだ。要は、俺とジェイクもその程度の関係よ。ただまあ、あの野郎に関しては、その傾向が人一倍強かったかもな。

で? アンタは、ジェイクのカノジョかなんかかい?まだティーンだろ? それでこんなところまで来るなんて、健気なこったな。
え? ティーンじゃない? それにしちゃ、ずいぶん若く見えるんだな。
は? カノジョでもない? じゃあ何の用事でこんな戦場まで来てんだよ。

まあいいぜ。それよりも、疲れてんじゃねぇのか?どうだ、俺んトコでちょっとばかり休憩していけよ。おいおい、そんなに警戒しなくても大丈夫だって。いいから来いよ。あっ! 逃げんな、ちくしょう!待て! 待てって! ああ、クソ!」


傭兵部隊
ジェイク・ミューラーは十代半ばから傭兵として戦場の最前線で活躍していた。

傭兵部隊に入隊して間もない頃、ジェイクはある練達の傭兵の元で戦闘技術を叩きこまれた。彼の指導は厳しいものだったが、隊員を思いやり、部隊の存続を第一に行動する姿に、ジェイクは母親以外の人間に初めて信頼を置くことになった。

しかし、実は敵部隊のスパイだったその男の裏切りによって、ジェイクの部隊は壊滅してしまう。父のように慕っていた人間に裏切られたことは、ジェイクの心に深い傷を負わせた。この事件を機に、ジェイクは他人を信用できなくなってしまう。
その後、過酷な傭兵生活も手伝って、彼の心は荒んでいった。

その事件は、3年前の南米で起きた。ジェイク17歳の時である。

男の裏切りによって壊滅した部隊で、ジェイクと共にかろうじて生き残った人物の証言が残っている。

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「ああ、そうだ。あれは3年前の南米だな。よく覚えてるよ。俺らがいた部隊の隊長が、敵方と通じてやがってさ。あっという間に俺たちの部隊は敵兵に囲まれて大ピンチよ。
必死で応戦したが、相手の数が多すぎた。どんどん味方は死んでいって、気がつけば俺とジェイクの二人だけ。相手は、銃器をしまってナイフでジェイクに迫っていった。弾をけちってたらしい。

...で、そのあとどうなかっただって?
ジェイクの死にものぐるいの抵抗よ。ありゃあ凄かった。ジェイクもとっくに弾が切れて素手だったんだが、その素手でのジェイクがまた強いこと。
そうこうしてる間にこちら側の増援が来て、どうにか切り抜けた。ジェイクもボロボロだったよ。よくもまあ、あそこまで粘ったもんだ。

結局助かったわけだが、ジェイクは、あれから一切、他人を寄せ付けなくなっちまった。裏切った隊長のことを相当信頼してたみてぇだから、まあ人間不信になっちまったんだろうよ」


B.O.W.
B.O.W.(Bio Organic Weapon)とは、有機生命体兵器 、または生物兵器のことである。ウィルス等を生物に投与し、兵器として改良を加えたものをさす。

B.O.W.を生み出す代表的なウィルスとして、1998年にラクーンシティに流出した「t-ウィルス」があげられる。

t-ウィルスが生み出したB.O.W.でもっとも優れていると言われたのが、「タイラント」である。1998年の洋館事件、同年のラクーン事件において生存者たちを妨害し続けたことで、記録にも多く残っている。

高い知能と戦闘力を有するタイラントはB.O.W.の研究者たちには興味深い研究対象で、BSAAにも記録が残っている。

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「タイラントという名称は、"t-ウィルス"の頭文字"t"が意味するタイラント(暴君)がそのまま用いられている。人間ベースのB.O.W.としてはまさに究極形だ。
圧倒的な戦闘力と、B.O.W.としては非常に高い知能を有し、ラクーン事件の際は、G-ウィルスの回収命令に従い目標を追跡し続けた。今後、あれ以上のB.O.W.はなかなか出てこないのではなかろうか...」


ウスタナク
ネオアンブレラがジェイク・ミューラーを捕獲するために放った刺客。ウスタナクとは、東欧の言葉で「決起」を意味する。

不死身に近い肉体と、驚異的な怪力を駆使してジェイク達を執拗に追跡する。右手には、ジェイクを捕獲するための金属製のアームを装着している。これに捕まった者は、アームに付属するシリンジによって体液を採取される。

ジェイクがシェリーと接触し、イドニア共和国からの脱出を開始した際、ネオアンブレラの研究者が残した記録がある。

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「15:01 ジェイク・ミューラー捕縛のため、ウスタナクを使用することになった。ウスタナクは、あのお方の命令にしか従わないが、一度命じられれば、命が尽き果てるまでその命令を遂行しようとする。まさに捕縛者としてはうってつけの存在だ。

今、あのお方がウスタナクにジェイク捕縛を命じている。優しく、まるで母が我が子に言い聞かせるように。...ウスタナクは了解したようだ。さて、ここからが見物だな」


シェリ−・バーキン
26歳。アメリカ合衆国大統領補佐官直属エージェント。1998年に発生した「ラクーン事件」の数少ない生存者。

ラクーン事件の折に、その身体に「G-ウィルス」と呼ばれる希少なウィルスを保有したことから、事件後は合衆国の監視下におかれ、実験に耐える日々をおくっていた。
2009年に、政府からエージェントとなることを持ちかけられ、それを承諾。依然として合衆国の監視下にあるものの、軟禁生活からは解放された。エージェントとしては未熟な面もあるが、まだ若いジェイクを諌め、精神的にサポート出来るだけの器量がある。

過酷な幼少期を送ったが、周りの人間に支えられ、強い心と信念を持った包容力のある女性に成長した。

共にラクーン事件を脱出したレオン、クレアとは今も親交が続いている。

シェリーが指令を受けてイドニア共和国へ旅立つ前、クレアに送った手紙がある。

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「クレア。例によって任務の内容も場所も言えないけど、指令を受けたのでちょっと海外へ旅立ちます。クレアは、私にエージェントをやめるよういつも言ってくれるよね。それが、私の身を心配してのことだというのも、よくわかってる。
だけど他に選択肢がないし、この仕事を全うすることで、一人でも私のようなウィルスによる被害者が減らせるのなら、本望よ。今回の任務は、そういう任務になるわ。何が何でも、やりきってみせる。

優しいあなたのことだから、きっと私の身を案じて不安になっているよね。でも大丈夫。どうか心配しないで。絶対に、命を粗末にするような真似はしない。
だって、クレアとレオンに助けてもらった、大切な大切な命だから」


G-ウィルス
G-ウィルスは、シェリー・バーキンの実父であるウィリアム・バーキンによって発見・改良された、驚異的な生命力と繁殖能力を持つウィルスである。G-ウィルスを投与された者は、自我を失って凶暴化し、自身と遺伝子情報が近い相手にウィルスの「胚」を植えつけることで、ウィルスの子孫を残そうと行動する。

1998年のラクーン事件の最中、G-ウィルスを狙う人間に襲撃され、致命傷を負ったウィリアムは、ウィルスを自らに投与し、これを守ろうとした。結果、ウィルスの影響を受けたウィリアムは、繁殖本能に従い行動し、彼と遺伝子情報が最も近い娘のシェリーに、ウィルスの胚を植えつけるに至った。

シェリーは、クレア・レッドフィールドが入手した抗体を接種したことでウィルスの進行を食い止めたが、体内に微量のG-ウィルスを残すことになってしまった。
ラクーン事件以降、シェリーは合衆国の管理下に置かれ、G-ウィルスに関する様々な実験を受けることになった。その過程で、彼女はウィルスの力を完全に制御できるまでに成長し、肉体の再生能力やウィルス耐性のみを身体に反映させることに成功した。

また、彼女が実年齢より若く見えるのも、G-ウィルスの影響と思われる。

シェリーの研究に携わった合衆国研究機関の関係者による手記が残されている。

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「どす黒い絶望に塗りたくられたラクーン事件の中で、たったひとつの希望が残ったとすれば、それはシェリー・バーキンという"奇跡"であろう。微量とはいえG-ウィルスをその体内に残し、活発な活動をさせながらも、ウィルスが肉体に及ぼす負の影響を完全に制御している。

それどころか、ウィルスが持つ肉体の再生能力のみを引き出し、ほぼ不死身に近い肉体を手に入れていることに成功。さらには他のウィルスに対する強い耐性を手に入れた他、二十歳前後からほぼ老化がストップしている。このことが、彼女に幸せをもたらした、とは思わない。


メセツ
C-ウィルスの感染者が、変異の果てに生まれ変わった姿。メセツとは、東欧の言葉で「月影」を意味する。

カラスのような外見をしており、鳥のように空を旋回し、獲物を探す。死肉を好むため、生きたままの獲物を食べることは少ない。獲物を掴んで上空から地面に叩き落とし、殺した上で、その死体を啄ばむ。また、完全変異種の中では珍しく、道具使う性質があり、ドラム缶などを空から落とし、捕食対象に当てようとする姿も目撃されている。

メセツを生み出したネオアンブレラの研究者のメモが残っている。

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「メセツは、見た目も動きも、カラスに近いB.O.W.だ。知能は、他の変異種に比べれば高い方だろう。カラスは鳥類の中でも非常に頭がよいとされ、固い木の実の殻を割るため、車道にそれを置いて車に踏みつぶさせていたという話もある。

メセツも道具を巧みに使ったり、エサとなる死肉を可能な限り高い鮮度にするためか、即死を狙った殺し方をするなどの工夫が見られる。
実にエクセレント。素敵なB.O.W.が出来上がった。
明日は実験体として用意していた人間を山に解き放って、メセツに狩りをさせてみよう」


オコ
ウスタナクの背面にある器官から生み出されたクリーチャー。外見は昆虫のようだが、挙動は蝙蝠を思わせる。オコとは、東欧の言葉で「目」を意味する。

視機能が弱いウスタナクにかわり、発達した聴覚と超音波を用いて索敵を行う。感覚器官をウスタナクと共有しており、標的を見つけた後は、ウスタナクにのみ感知できる羽音と光を発して知らせる。壁などに遮られると音波が跳ね返ってしまうため、索敵がし辛くなる。戦闘能力は持たず、体ももろいため、個体としては脅威でない。

オコを解き放った際のネオアンブレラの一員のメモがある。

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「計算によると、ジェイク・ミューラーはD24地点の洞窟へ入る可能性が高い。ここにウスタナクを待機させ、さらにターゲットを確実に捕縛するため、サポートとして"オコ"を各所にセットする。

ウスタナクにも新しい武器を装備させておいた。もう、肉片でもいいからさっさとジェイクを捕縛して欲しい。新鮮な血液さえあればどうにでもなるからな。

連れの女に関しては、ぜひ生け捕りにして連れてきてほしい。少々ガキくさいが、綺麗な顔をしているし、スタイルも悪くない。そそる女だ。生きたまま麻酔なしで解剖すれば、きっといい声で鳴くに違いない。
ああ、辛抱できなくなってきた。
解剖したい。
あの女の白くてきめ細やかな肌にメスを滑らせ、中をじっくりと観察したい」


ジェイクの家庭環境
ジェイク・ミューラーは極貧の家庭に生まれた。父は行方知れずのため、ジェイクの幼少時代、家計は病弱な母によって支えられていた。

彼女が患っていた病気は、治療を受ければ完治できるものだったが、家は、母の治療費どころか、日々の生活を送る事さえ厳しいほどに圧迫されていた。ジェイクの母は懸命に働き、ジェイクに惜しみない愛情を注いで育てた。

温厚な母だったが、ジェイクが行方不明の父親に対して文句を言ったときだけは、厳しく注意した。母は、自分たちを捨てた夫を、それでも心から愛していたのだ。その影響を受け、ジェイクも父親に対して悪い印象を持つことはなくなった。

成長したジェイクは、反政府軍の傭兵となって戦うことを決意する。全ては母のためであり、彼女の治療費を稼いで恩を返そうとしていたのである。しかし、ジェイクが傭兵となって間もなく、母は病死してしまった。

極貧の家庭で育ったことと、金がなかったために母を病から救えなかったこと。母の死と、その後の傭兵生活によってすさんだジェイクの心には、金に対する強い執着だけが残った。

ジェイクの母が病床でつづった手紙がある。

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「愛する息子、ジェイク。先に逝ってしまうお母さんを許して。
そして、どうかお父さんを憎まないで。
お父さんは今も、きっとあなたのことも、心から愛してくれているわ。
いつか会える日を信じて、強く生きて」


監禁施設
イドニア共和国でネオアンブレラに拉致されたジェイク・ミューラーとシェリー・バーキンは、中国にあるネオアンブレラの研究所に監禁された。

この研究所は、巨大で華美な邸宅をカモフラージュにして築かれており、建物周囲から研究所の存在を知ることは不可能である。邸宅内には、百体近いジュアヴォが常時待機しているだけでなく、数多くの銃器と装甲車が備えられており、非常時にも即応して戦闘態勢をとることが出来る。

ジェイクとシェリーが監禁されていた当時、その監視を任されていた人物の日記が残っている。

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「監視を初めてもう4ヶ月。ジェイク・ミューラーは、おとなしくこちらの実験に応じている。シェリー・バーキンを監視しているヤツに聞いたら、向こうもおとなしく言うことを聞いているそうだ。

おそらく、互いの身を案じて余計な抵抗をしないようにしているのだろう。あと二ヶ月くらいで、強化したC-ウィルスが完成するらしい。そうなれば、二人とも用済みだ。さて、どうしてくれようか。

それにしても、毎日毎日、半裸の男をモニターでひたすら監視し続ける仕事はいい加減に飽きた。
シェリーの監視と代わって欲しい」


研究員の手記
「2011.6.20

奇跡だ!あの方が、私を選んでくださった!
様々な調査の結果、私はC-ウィルスとの適合性が高いことがわかったらしい。
いよいよ私は、この軟弱な体を捨て、強靱な肉体と不死に近い生命力を持ったB.O.W.へと生まれ変わる。

自我が失われるかも知れないが、そんなことは恐れるに足らない。私は、あの方の邪魔をする存在の全てを打ち砕き、あの方の望むものがあれば、いかなる手段を用いてでも手に入れて献上する...

そんな騎士となるのだ。ああ、なんと幸せな気分なんだろう...」

「2011.6.27
今日 あの方が自ら わたし にC-ウィルスを打って くださった
とても  名誉だ  うれしい
あの方  の しなやかな指先が  私に触れ  た  瞬間
私は 幸せの あまり  涙と  震え が  止まら な かった
私 だ けに  見せ てくださっ た  あのえがお
うるわしい お声   いい におい
ああ なんて  うつくし い   私の  め がみ
わたし は  あの方 の  どれい
あの方の  のぞむこ となら  なんでも  やる
あのかたの ために  あのかたの  ために
ああ   なんだか
ああ   なん だ か
すごく   こうふ ん   す る
ぼっ」


ストゥレラツ
C-ウィルスの感染者が、変異の果てに生まれ変わった姿。ストゥレラツとは、東欧の言葉で「射手」を意味する。

テリトリーに侵入してきた者を激しく威嚇し、ガスを噴射したり、針のように変形した身体の一部を飛ばして攻撃してくる。至近距離まで接近すると、逃げ出すことが多い。壁や天井を這いずり回る姿は、トカゲそのものである。

実際にストゥレラツと交戦したBSAA隊員の手記が残っている。

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「例のトカゲ野郎と遭遇した。アルファのフィンから入っていた報告通り、すばしっこくて面倒なヤツだった。ちょこまか動き回っては、針のようなものを飛ばしてきやがる。なかなか捉えることができず苦労しているうちに、その針で隊員の一人が脚を串刺しにされてしまった。命に別条がなくて何よりだったが...。

スキを見ての一斉射撃でどうにか仕留めたが、あの素早さと針攻撃には今後も要注意だな」


シェリーとラクーン事件
1998年、シェリー・バーキンの実父であるウィリアム・バーキンは、自身が発見した「G-ウィルス」を独占しようとしたことで上層部の反感を買い、彼が属する組織の特殊工作部隊にウィルスを奪われそうになった。

その際に、「G-ウィルス」とは別の、人間をゾンビへと変える「t-ウィルス」が研究所外部に流出してしまう。これがラクーン事件の発端となった。シェリーもこの事件に巻き込まれるが、二人の人間と出会い、彼らの助けを得たことで、ゾンビパニックに陥ったラクーンシティから生還を果たした。

その人間こそ、レオン・S・ケネディと、クリス・レッドフィールドの妹であるクレア・レッドフィールドである。特に、事件後も親身になってシェリーを支え続けたクレアは、両親にまともに愛されずに育ったシェリーにとって、肉親以上に信頼を置く存在になった。

クレアがシェリーに与えた影響は大きく、彼女の母性や包容力は、シェリーに受け継がれていった。

軟禁が解けてエージェントとなったシェリーは、制限付きとはいえ自由を手に入れた。現在、NGOに所属し世界を飛び回るクレアと、合衆国エージェントであるシェリーは互いに多忙な身の上だが、スケジュールが合えば一緒に過ごす親密さを見せている。

シェリーが、誤って同僚に送信してしまったクレア宛てのメールが残っている。

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「クレア、あなたがアメリカに帰ってくるって言ってた来月末、私も休暇をもらったわ。
話したいことがいっぱいあるの。会えるのが楽しみよ。
ラーニーちゃんにも連絡しておくわね。あなたが帰ってくると聞けば、とても喜ぶわ」


軟禁生活
ラクーン事件後、その身体にG-ウィルスを宿したシェリー・バーキンは、政府によって、軟禁に近い形をとってその身柄を保護されていた。見知らぬ大人達に囲まれ、様々な実験に耐えるシェリーを支えたのは、恩人であるクレア・レッドフィールドと、彼女の保護者の代わりを務めたディレック・C・シモンズだった。

クレアは、シェリーの元を頻繁に訪ね、どんなに辛い過去を背負っても強く生きることを彼女に教えた。クレアはシェリーが最も信頼を寄せる人間になるのと同時に、憧れの存在となり、彼女が目指すべき目標になる。

シモンズは、天涯孤独のシェリーへ支援と援助を惜しまなかった。彼は、政府にとって最高機密の存在であるシェリーと、外部の人間であるクレアの面会を許可し、シェリーの心の安定に努めた。

シェリーの軟禁生活は、彼女が合衆国に保護されてから11年後の2009年まで続くことになった。

軟禁中のシェリーに、クレアがこっそりと渡そうとした手紙がある。

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「シェリー。あなたを傷つけたくはないけれど、どうかあのシモンズという男には気をつけて。シモンズがシェリーを全面的に支援しているのは事実だし、彼のおかげで私とあなたは自由に会えているけれど、あの人の目は、今まで私が見てきた何かを企んでいる者の目と同じ気がするの。

まあ、こう言ったところで結局は証拠もないし、女のカンでしかないけどね。ちょっとシェリーは人を信じやすいところがあるから、心配なの。とりあえず、気に留めておいてくれればそれでいいわ。しばらく忙しくなるから会いに行けないけど、どうか元気で」

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この手紙は、途中で政府関係者に見つかり、シェリーの手には届かなかった。しかし、見つけた政府関係者というのがクレアやシェリーの境遇に同情的な人物だったため、手紙はシモンズに届くことなく極秘裏に処分された。


実験記録
「2011.6.27

C-ウィルス投与から5日が経過。被検体のバイタルサインは安定している。
被検体の状態はまだ完璧とは言えないが、過去322回におよぶ実験で、全てのサンプルがウィルス投与から1日以内に死亡していることを考えれば、今回の実験は成功と言えるのではないか。
あの方の人選は正しかったのだ。ただ、実験中の事故において被検体の右腕が失われてしまった。C-ウィルスを用いて再生を試みたが、うまくいかない。
しかし、それを補ってあまりある能力を秘めたB.O.W.が完成すると思われる。
被検体も、あのお方に選ばれたことを喜んでいた。本望であろう」

「2011.7.2
ウスタナクと名付けられたこの被検体の身体能力、思考力の高さはジュアヴォのそれを大きく上回っている。
特に戦闘実験においては、ターゲットに応じて数ある武器を取捨選択し、最も状況に応じた戦術をとる。あのお方からは、ウスタナク専用の武器を造るよう命令が下った。
彼の失われた右腕の代わりとなる武器を、早急に造り出すことにしよう」

「2011.12.10
ウスタナクのための武器を制作中。現在、バルカン、ショットガン、あと接近戦を想定してドリルを用意した。
これで充分かと思っていたが、あのお方から「人間の捕獲を想定したアームを造れ」との命令が下った。ウスタナクを使って誰かを捕まえるおつもりなのだろうか。

まあ深く詮索しては失礼だ。我々は命令に従うのみ。しかし、捕獲を想定したアームとは、なかなかの難題だ。ウスタナクほどのB.O.W.がわざわざ捕まえるべき人間となれば、ただの一般人ということはまずあるまい。そのあたりも想定して、造っていかなければ...」


ウビストヴォ
C-ウィルスの感染者が、変異の果てに生まれ変わった姿。ウビストヴォとは、東欧の言葉で「殺害」を意味する。

人間のシルエットを保っているが、本来は背骨や肋骨、心臓だった部分が右腕へと移動しており、チェーンソーのような形状に変異している。右腕の心臓部分が全ての動力になっているため、これを破壊すると即死する。
その痩躯な外見からは想像できないほどの、高い生命力と耐久力を持つ。また、一度標的を決めると、それを破壊することに執着する傾向が見られる。

標的を殺害するためには敵味方を一切区別しないため、生み出したネオアンブレラも扱いには苦慮したことが、研究員の手記から読み取れる。

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「ウビストヴォの戦闘力・生命力は非常に高い。チェーンソー状の武器は強力で、どんな相手でも一瞬でなぎ倒してしまうほどだ。ただ、敵味方の区別を一切つけずに暴れ回る性質のため、こちら側にも損害を及ぼしかねない厄介なヤツでもある。
結論として、無差別な殺戮以外に使い道がない」


ジェイクの父
ジェイク・ミューラーの父であるアルバート・ウェスカーは、極めて希有な体質の持ち主であった。彼は様々なウィルスに対して耐性があるだけでなく、逆にウィルスを自らに投与し、ウィルスの利点のみを取り込み自身の体組織を強化することができた。

ウェスカーの実子であるジェイクにも、その強いウィルスへの耐性が受け継がれており、ジェイクがC-ウィルスを直接投与しても何ら影響がなかったのは、そのためである。

ウェスカーは、世界規模のバイオテロを画策したことでクリス・レッドフィールド率いるBSAAによって殺害されている。ジェイク自身は父と一切の面識がなく、彼の素性も知らない。

ジェイクが中国で監禁生活を強いられていた中、気まぐれで書いていた手記に父親への複雑な心境が書かれている。

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「ここに拉致られて二ヶ月くらいか。最近、ようやくネオアンブレラの連中が話してる中国語が分かるようになった。ヤツらのトレンドな話題は、俺の親父についてだ。それとなく聞いてみると、あの栄養剤を配っていた姉ちゃんが言ってた、アルバート・ウェスカーってのが俺の親父だって話は、残念ながらマジだったようだ。

そのウェスカーが、世界を滅ぼそうとしたイカれモンスターだってのも、どうやらマジ。まさかそんな野郎が俺の親父だったとはな。まったく笑えねぇ。シェリーは、たぶんそれを知ってて俺に近づいてきたんだろう。なんで教えてくれなかった?

くそったれ。考えれば考えるだけ、頭の中がグチャグチャしてきやがる」


合衆国との取引
ラクーン事件後、シェリー・バーキンが合衆国の監視下に置かれたのには、二つの理由があった。

一つは、彼女の身体に宿る「G-ウィルス」を研究するため。
もう一つが、「G-ウィルス」を狙うアルバート・ウェスカーにシェリー自身が狙われる可能性があり、保護が必要だったためである。

その後、ウェスカーが所属していた組織の崩壊と、2009年にウェスカー自身がクリス・レッドフィールド率いるBSAAによって殺害されたことで、彼女の身柄を脅かす者はこの世からいなくなった。保護の必要がなくなったシェリーは、軟禁を解くこととの交換条件として、合衆国のエージェントになることを持ちかけられた。

近年のバイオテロの増加によって、自分のような犠牲者が増えることを危惧していたシェリーは、この話を受け入れ、自分の保護者代わりを務めていたディレック・C・シモンズ付きのエージェントに就任した。
エージェントとしての教育を受けたシェリーは、C-ウィルスの抗体を持つジェイク・ミューラーの保護およびアメリカへの移送を命じられた。

シェリーがエージェントとなった際、シモンズが残した手記が見つかっている。

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「軟禁を解く交換条件としてエージェントとなること、シェリーは受け入れたようだ。
呆れるほどに心優しい彼女のことである、"自分がエージェントになることで、一人でも自分のような辛い思いをする人を救いたい"という思いからだろう。

私の専属エージェントとなることも決まった。シェリーは、一通り実験が終わった用済みとはいえ、まだまだ利用価値はある。手元に置いておいて、損はあるまい」


ウスタナク2
ウスタナクは「完璧なB.O.W」を目指して作られた。この素体となった人間は、自らにC-ウィルスを投与し、クリーチャーと化したネオアンブレラの科学者である。

素体となった人間の能力が強く反映されており、B.O.W.でありながら論理的な思考が可能なため、単独での任務遂行を命じられた。また、複雑な機構の武器や装備を、瞬時に使いこなせるところからもその知能の高さを垣間見ることが出来る。

ネオアンブレラの研究員が残したメモが見つかっている。
ジェイクとシェリーが海底の施設に拉致されたあと、ウスタナクについて書かれたものである。

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「あのお方が亡くなった。こうなってしまっては、ウスタナクを制御できる者は誰もいない。しかし、ヤツはそのことを知らない。教えたところで、理解もできんだろう。
ウスタナクは、ただひたすら守り続ける。例え殺してでも、ジェイクとシェリーを捕縛せよという、あのお方の命令を」

「新たな武器である鉄球と、あのお方と同じフックショットを装備させ、ウスタナクを、海底基地から脱出を図っているジェイクとシェリーに向けて放った。しかし、気になったのは、いつもとウスタナクの様子が違ったことだ。
静かだった。しかし、底知れぬ怒りと悲しみを感じた。
...もしかすると、主人であったあのお方の死を分かっているのかもしれない」


アンチC
アンチCとは、合衆国においてジェイク・ミューラーの血液より精製されたC-ウィルス・ワクチンの仮称。

C-ウィルスに感染していない人間に投与すれば、C-ウィルスに耐性ができる。C-ウィルスを投与された直後の人間に関しては、ジュアヴォとしての特徴が出る前であれば、ほんのわずかだが生存が確認されている。ジュアヴォ、サナギ、完全変異種に関しては、アンチCの投与直後に全ての個体が死亡する。

現在のところアンチCの効用は完璧とは言い難いが、C-ウィルスの脅威を大きく軽減する存在であることは間違いないと言える。

しかし、合衆国政府の研究員がまとめたレポートの一文からは、アンチCがあっても、C-ウィルスは未だ大きな脅威であることを示している。

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「アンチCにより、C−ウィルスの脅威はいったん取り除かれたといえる。一刻も早く、これを可能な限りの人に投与し、今後C−ウィルスを使った事件が発生した場合の被害を最小限に食い止めるよう、対処しなければならない。

しかし、C−ウィルスは、投与した人間に多彩な「変異」をもたらす、今までにないタイプのウィルスであった。つまりは、C−ウィルス自体も今後変異していく可能性が非常に高く、アンチCが通用しない新たなC−ウィルスが生まれるのは、時間の問題と考える。今後も、注意深く経過を見守っていく。

また、今後、進化したC−ウィルスが誕生した場合などは、再びジェイク・ミューラー(ジェイク・ウェスカー)の力が必要となるであろう。現在、BSAAがその行方を追っている」


エイダ・ウォン
年齢不詳。所属組織不明。世界を股に掛ける女スパイ。その素性、目的は一切不明で、エイダ・ウォンという名前すら本名ではない。

どんなに困難な依頼でも、冴えわたる頭脳とズバ抜けた身体能力で難なくこなす。また、屈強な精神も備えており、厳しい局面に対しても常に余裕を持って対処する。しかし、何かエイダ自身の「真の目的」が存在するらしく、その達成のためであれば、組織や依頼人を裏切ることも厭わない。

1998年、G-ウィルスを奪取するためラクーンシティに潜入した際には、当時、ラクーン市警の新米警官だったレオン・S・ケネディと出会う。その後、合衆国エージェントとなったレオンに対して助言を与え、サポートするが、エイダ自身の目的を達成するために彼を巧みに利用しているフシもある。

今回の事件では、ラクーン事件以降連絡を断っていたディレック・C・シモンズに呼び出され、彼が指定した潜水艦へと潜入した。そこでエイダは、記憶にないオーダーと、予期せぬ通告を受けることになる。

潜水艦でエイダが見た、彼女の記憶にないオーダーだが、何者かの手によって遂行されていた。

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「ディレック・C・シモンズへ
ジェイク・ミューラー捕獲、失敗したわ。
一緒にいたシェリー・バーキンと一緒に、現在行方不明。
爆撃に巻き込まれて、二人とも粉々になったのかもね」


ジェイク・ミューラーに関する報告書
「ディレック・C・シモンズ殿へ、依頼にあった調査の結果を報告します。
アルバート・ウェスカーの実子ジェイク・ミューラーの極秘調査は問題なく終了しました。

ジェイク・ミューラー(20)
国籍はイドニア共和国。白人男性、瞳の色ブルー、身長190cm程度。
5年前にイドニア共和国内に存在する傭兵部隊に所属。
それ以後、欧州、中東、南米など世界各国の紛争地へ出征した記録あり。
採取した組織片からアルバート・ウェスカーの実子であることは確定。

解析の結果、アルバート・ウェスカーの特異な体質がジェイク・ミューラーへ高確率で遺伝していることが発覚しております。この特異性を解明できれば、現行のC-ウィルス研究の躍進が期待できます。
しかし、入手した組織片は極微量のため、解析の続行が不可能となっております。さらなる研究のため、ジェイク・ミューラーの体液、血液、粘膜、骨髄の確保を要求します。この確保の任務には、シモンズ殿の部下であるエイダ・ウォンが適任かと考えます」

「ディレック・C・シモンズ殿へ、依頼にあった調査の結果を報告します。
ジェイク・ミューラーの母についてですが、すでに病死していることは間違いないようです。イドニア共和国に生まれ、二十代の始め頃に単身アメリカへ移住。
詳細は不明ですが、そこでアルバート・ウェスカーの子を身ごもる機会があったようです。間もなく、彼女はウェスカーのその事実を告げず故郷のイドニアに帰り、ジェイクを生んでいます」


潜水艦
エイダ・ウォンがディレック・C・シモンズの陰謀を暴くために侵入した潜水艦は、彼女の掌形や声紋を認識するセキュリティシステムが稼働しており、全てが謎に包まれているはずのエイダに関する情報も存在した。

艦内にはシモンズの趣味嗜好が反映されたと見られる部屋や仕掛けもあり、この船の雰囲気をいっそう不気味なものにしている。何の目的で作られたのか、誰が使用するものなのか、不可解な点が多い。

しかし、その手がかりとなる手紙が艦内から見つかっている。

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「エイダ・ウォン。
ファミリーが持つ軍事力は日々強大となり、このシモンズ一人の手には余るようになってきた。
よって、極東アジア方面の兵力は、君に指揮権を預けることにする。
この潜水艦は、プレゼントだ。預けた兵を有用に使うため、役立てるといい。
引き続き私に忠誠を誓い、期待に応え続けてくれたまえ」


グネズド
C-ウィルスの感染者が、変異の果てに生まれ変わった姿。グネズドとは、東欧の言葉で「巣」を意味する。

ハチのような姿をした小型のクリーチャーが無数に集まり、人間の姿を形成している。アリやハチのように群れを作って行動し、その中で各個体がそれぞれ別の役割を持つ。

上記の昆虫の生態と違う点として、女王蜂にあたる種が、繁殖ではなく司令塔的な役割を担い、群れを統率している点があげられる。グネズドの場合、女王にあたる個体は他の個体と感覚神経を共有しているため、その個体が失われると、他の個体も消滅してしまう。

逆に、女王が生存するかぎり、群れは維持される。通常、女王にあたる個体は群れの中に隠れて身を守っているが、群れが攻撃を受けると、これを守る役割のクリーチャーが散開するため、その姿を確認することが出来る。

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「最初は、人だと思ったんだよ。女がいる、と思った。
だけど、近寄ってみたら、虫の集まりが人の形をしていただけだった。怖くなって逃げ出したけど、人の形からただの虫の群れになって、俺に襲いかかって来やがったんだ。
体中食いつかれて、血だらけになって...。どんだけ暴れも、相手は小さな虫の群れだから、どうにもなりゃしねぇ。生きて帰れただけでも、奇跡だよ...」

...中国で"グネズド"に遭遇した現地人の証言である。


エイダとシモンズ
ディレック・C・シモンズの信条は「安定」。
彼が裏で操る組織「ファミリー」もまた、シモンズにとって安定した世界の維持のため、世界の裏側で暗躍している。

しかし、エイダ・ウォンとの出会いが、彼のそれまで平坦だった精神に初めての波風を立たせた。優秀なスパイであるエイダ・ウォンを高く評価していたシモンズは、己の理想と野望のために、彼女にいくつものオーダーを課し手元に置いていた。
しかし、1998年のラクーン事件の際、ラクーンシティを焼き払った「滅菌作戦」の実行にシモンズが深く関わっていたことを知ったエイダは、シモンズを危険視し始め、一切の関係を断ち切った。

この一件が、初めてシモンズに動揺をもたらした。彼は自分と同じ天才性を持つエイダに対して、歪んだ執着心・愛情を抱いており、「エイダ・ウォンが自分の元を去った」という事実を認めることが出来なかったのだ。シモンズは、「エイダを取り戻す」ため、狂気に満ちた計画を実行することになる。

シモンズがエイダを失った際に残した手記がある。

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「エイダが私の元を去った!
なぜだ? 私たちは最高のパートナーだったはずだ。
彼女は、私が唯一認めた、この世で最も美しく聡明な存在。
私と、唯一、肩を並べることが許される存在。彼女も、それが分かっていたはずだ!

ああ、エイダ・ウォンが、私の傍からいなくなってしまった...。

いなくなったから、造るしかない」


滅菌作戦とシモンズ
滅菌作戦とは、1998年に発生したウィルス流出事故「ラクーン事件」を収束させるため、合衆国政府によって実行されたミサイル攻撃のことである。

ウィルスによってゾンビパニックに陥っていたラクーンシティに直接ミサイルを撃ち込み、10万人の市民とともに街を焼き払ったこの作戦は、政府高官を務めていたディレック・C・シモンズが中心となり実行に移された。

そもそもラクーン事件は、シモンズにとってケーススタディだった。「ゆくゆくはバイオ兵器が現行の兵器に取って代わる」という確信と、バイオ兵器の脅威がデータとして残せた以上、後は事実の隠ぺいさえ出来ればいいと考えたシモンズは、大統領と政府の急進派を煽り、早急にこの計画を推し進めた。

今回のトールオークスで、彼がラクーン事件を模倣するようなバイオテロを演出したのは、大統領がラクーンの真実を公開しようとしたことに対する政府関係者への見せしめと、ここまで大規模なバイオテロを起こせるだけの組織が存在することを世界に思い知らせるために他ならなかった。

果たして、すべてはシモンズのもくろみ通りになった。

シモンズがトールオークスの滅菌作戦直後、中国に向かうプライベートジェットの中で、ファミリーに対して送ったメッセージがある。

中国から帰還したDSOのレオンが、FOSに提出したもののひとつである。

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「私の計画通り、トールオークスの滅菌作戦は成った。
ラクーンのときとは異なり、この一件は隠蔽されない。全世界に公表される。

アメリカは大統領をバイオテロで殺され、政府は正体不明のウィルスから国家を守るため、やむなく滅菌作戦を実行した。これにより、世界は再認識するだろう。

"世界を脅威に陥れる強大なテロ組織"と、"その先頭を切って戦う、最強の国家・アメリカ"という、世界の本来あるべき形を。

台頭する中国に、アメリカの力を見せつけることが出来るのだ。

アメリカが頂点にある世界の情勢こそ、我らファミリーが最も力を振るえる安定の図式である。その安定を崩そうとする愚かな指導者アダム・ベンフォードはもういない。
世界は、これからもファミリーのもと安定し続けるのだ」


研究室に残されたメモ
「私の たった一人の家族 ヘレナ
私を 心の底から 愛してくれたのは
世界で 姉さんだけだったわ
それなのに 勝手なことばかりして ごめんなさい

さっき 変な薬を注射されて 頭が ぼうっとしてる
ヘレナのことを忘れてしまいそう こわい
ヘレナ あなたを 愛していた
いつも 正しい姉さん 私の 誇り
ヘレナが私を 愛してく れ た と 同じく らい

誰 か ヘレ ナ 愛し てくれ ま よ に」

デボラのメモが残されていた研究所には、ファミリーの一員が書いたと思われるレポートも残されていた。

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「ヘレナ・ハーパーがこちらの計画通りに動いたので、用済みとなったデボラは始末するよう命令が下った。しかし、研究者たちがデボラの健康的な肉体を見て"どう変異するか見たい"と言い出したため、C-ウィルスを投与することになった。どうせ殺して捨てるだけだ。そのくらいのお遊びは別に構わないだろう。

ウィルスを投与して一時間ほど。めだった変化は見られない。しかし、研究者たちは、もう少しすれば素晴らしい変異種が生まれると口々に言っている。だが、我らもなるべく急いでトールオークスから脱出しなければならない。計画通りならば、数時間内に街のすべてが焦土となるからだ。研究者の好奇心のために命をかけるつもりはない。

早くデボラを地下へ廃棄して、ここを出ることにしよう」


シュリーカー
シュリーカーは、ゾンビの一種である。ゾンビの聴覚を刺激する大きな音を発して、ゾンビを呼び寄せる。

シュリーカーの発する音には、ゾンビが反応し、集まりやすい音域が含まれているだけでなく、ゾンビの神経を刺激し凶暴化させる作用がある。また、シュリーカーが放つ音波が乱れると、ゾンビも影響を受け、高音波による刺激に耐えきれず、聴覚と脳の一部が破壊される。

トールオークス跡地で見つかった殴り書きのメモに、シュリーカーについて書かれたものがある。女性が書いたものらしい。

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「ああ、またアイツが、叫び声を上げてるわ!
鼓膜が破れそう! 頭の奥にガンガン響いてくる!

うるさい! うるさい! もうやめて!
アイツが叫ぶと、他のゾンビたちが
どこからともなくワラワラと集まって来る。
何がどうなってるの!? ワケがわからない!

アイツ、さっきから私の家の周りで叫び続けて、仲間を呼んでる。
家の中にいる私を狙ってるんだわ。
嫌、死にたくない! 死にたくない!

扉が破られた。
バリケードが崩れていく
もうダメ  逃げられない

来ないで



たべないで

いた い

わた しの  腸が

ちょう が」
※生きながらにして腸を食われつつある異常な状況にもかかわらず
そんな状況を書き残した この女性は何者なのだろうか。
痛みを感じているあたり、無痛症でも下半身マヒというわけでもなさそうだが……


二人のエイダ・ウォン
今回の事件には、二人のエイダ・ウォンが登場する。
一人は、トールオークスでレオン・S・ケネディの前に現れた女スパイ、エイダ・ウォン。
もう一人は、半年前のイドニア共和国で、ジュアヴォを引き連れクリス・レッドフィールドやジェイク・ミューラーの前に立ちはだかったネオアンブレラのエイダ・ウォンである。

前者はオリジナルのエイダ・ウォンであり、後者はエイダに執着するディレック・C・シモンズがC-ウィルスを用いて造り出した彼女の複製である。

ネオアンブレラのエイダは、オリジナルのエイダに連絡をとり、自らが引き起こすバイオテロを予告するという謎めいた行動をとる。彼女の目的を探るため、オリジナルのエイダは中国へと向かった。

ネオアンブレラのエイダが生まれた瞬間は、トールオークスの地下にあるビデオテープに収められていた。そのときにシモンズが記したと思われる手記の一部が見つかっている。

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「ようやく、いなくなったエイダの代わりが出来た。
彼女をこれからしっかりと教育して、見た目だけでなく、思考も、身体能力も、仕草もクセも...すべてをエイダ・ウォンにする必要がある。

私に従順で、決して裏切ることのないエイダ・ウォンに教育する...。胸が躍るな。
さて、最初は何からしつけるとしようか...」


エイダとラクーン事件
1998年、エイダ・ウォンはジェイク・ミューラーの父であるアルバート・ウェスカーからの依頼を受け、ラクーンシティに潜入していた。

エイダに課せられたオーダーは、シェリー・バーキンの実父ウィリアムが独占をもくろむ「G-ウィルス」を回収すること。オーダーの遂行にあたり、エイダは夫の開発したウィルスを渡すまいとするシェリーの母でありウィリアムの妻、アネットから妨害を受けるが、ラクーンシティで出会ったレオン・S・ケネディを利用してウィルスのサンプル入手に成功。ウェスカーの元へ帰還を果たした。

2004年、エイダはウェスカーからの指示を受け、寄生体「プラーガ」を入手するためヨーロッパの辺境へ赴く。そこでレオンと再会を果たしたエイダは、再びレオンを利用し、彼からプラーガのサンプルを奪取し、任務を遂行した。

その後、エイダはウェスカーにプラーガのサンプルを渡すことなく、自身の「真の目的」を達成するため、サンプルを持って逃亡する。エイダにとっては、ウィルスを使って世界を支配しようとしたウェスカーすら本当の目的を達成するための駒でしかなかったのだ。

やがてそのウェスカーも、BSAAとの戦いの末、アフリカにおいて命を落とす。"ウェスカー死す"の情報は間もなく裏社会を駆け巡り、エイダの耳にも入った。

そのとき、彼女が書き残したメモがある。

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「ウェスカーがBSAAとの戦いの末に死んだ、との情報が入った。私の果たすべき真の目的のため、彼と組んでいた期間は短くない。悲しくはないが、あれほど強大な存在がいなくなったことに対して、わずかばかり空虚な気持ちを感じていることは、否定できない。
裏社会においてB.O.W.を浸透させ、その覇権を牛耳っていたウェスカーの死は、表裏問わず様々な勢力図を塗りかえることだろう。さしあたって、シモンズ率いるファミリーがどう動くのか、注意が必要だ。

ただ、どうなったところで、私の真の目的は何も変わらない今までも。そしてこれからも」


ファミリー
ファミリーとは、ディレック・C・シモンズが長を務める巨大組織のことである。
アメリカ建国以前に、シモンズ一族によって築かれたこの組織は、強大な財力と世界規模のネットワークを用いて、古来から歴史を自在に操ってきた。

ファミリーの目的は、「世界の安定」を維持することである。言い換えれば「ファミリーにとって最も有益となる世界情勢」を維持することにあたり、この目的を達成するためなら、手段を選ばない。

ファミリーは「アメリカを頂点とするピラミッド型の権力構図」の「安定」に努めることが最良だと考えていた。そのため、ラクーン事件の公表によってこの構図が崩壊することを恐れ、シモンズの指示のもとバイオテロを起こし、大統領を暗殺した。

トールオークスの事件後、ファミリーに出したシモンズの指示が、エイダからレオンに渡されたデータの中に入っていた。

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「大統領の暗殺は成功した。トールオークスに放ったレポティッツァは用済みだ。
すぐにプログラムを起動して自壊させよ。続けて、トールオークスの滅菌作戦に向けて準備を開始するように」

「レオン・S・ケネディとヘレナ・ハーパーが生還し、私を追って中国へ向かっている。
FOSから死亡したとの報告が出ているが、虚報だ。
早急にレオンとヘレナが搭乗する飛行機を突き止め、そこにレポティッツァを仕掛けろ。
確実に、二人を葬るのだ」


ブラッドショット
ごくまれにだが、今回のテロで確認されたゾンビの中には、頭部の破壊によって新たな種へと姿を変えるものが存在する。この種のゾンビは「ブラッドショット」と呼ばれており、全身の筋肉が剥き出しになったような外見をしている。

通常のゾンビとは比べ物にならないほど高い身体能力を持ち、素早い動きで人間に飛びかかり、肉を食いちぎろうとする。ゾンビに、C-ウィルス特有の「変異」の効果が現れたものと推測される。

トールオークスでブラッドショットと遭遇したレオンの、FOSに向けた報告がある。

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「t-ウィルスのときと同様、感染者には様々なバリエーションが確認できた。中でも特徴的だったのは、攻撃を受けることでウィルスが活性化したと見られ、異種のB.O.W.として突然変異したタイプがあったことだ。

ブラッドショットと名付けられたその新種を見たとき、t-ウィルスでもこれに非常に似た変化を目にしていたことを思い出した。
"リッカー"だ。
ラクーンシティで、多くの生存者をあの世に送ったバケモノ。アイツも、感染した人間が、さらにt-ウィルスに肉体を浸食され、突然変異を遂げたものだった。

ブラッドショットは、これと同じC-ウィルスによる突然変異の一種で、感染者の体内でウィルスが活性化し、肉体を急激に変化させて生まれたものと考えられる」


カーラ・ラダメス
カーラ・ラダメスは、C-ウィルスを発見した人物であり、ディレック・C・シモンズの腹心だった。

15歳の若さで大学の博士課程を修了したカーラは、そのままシモンズの財団が所有する研究所へスカウトされ、ウィルスやB.O.W.の研究に打ち込んできた。カーラの天才的な頭脳と研究結果をシモンズは気に入り、彼女も自身に正当な評価を与えてくれるシモンズに傾倒していった。

カーラは心酔するシモンズの役に立ちたい一心でC-ウィルスの発展に尽くしたが、シモンズにとっては所詮コマのひとつに過ぎなかった。やがて彼女はシモンズによって「エイダの再現」のための実験体に選ばれてしまい、「カーラ・ラダメス」としての人生に幕を下ろしたのである。

カーラがC-ウィルスの開発を開始したのは、2001年からのことである。クアッドタワーに残されていたカーラの手記からは、C-ウィルスの意外なルーツが確認できる。

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「無害化して廃棄予定だったウィルス、t-Veronicaを手に入れることが出来た。シモンズから新型生物兵器の研究を任された私は、まずはこれの改良から始めることにした。

まず、始祖ウィルス最大の特性であり、t-ウィルスが生まれるにあたって強化されていた"DNAを変異させる特性"のみを抜き出すことに成功。
私はこれをt-Veronicaと組み合わせ改良を重ねることで、最大の欠点であった脳細胞への強い拒絶反応を打ち消した「t-02」を完成させた。

本来、拒絶反応なしにt-Veronicaを人体に適応させるには、投与後、長いコールドスリープを経て共生と免疫を保持しなければならなかった。しかし、私が生み出した「t-02」はその問題をクリアにしている。あとは、シェリー・バーキンから採取したG-ウィルスとの合成がうまくいけば、最高のウィルスが完成する。

あと何年かかるか分からないが、シモンズの期待に応えるため、必ず成し遂げてみせる」


シモンズとカーラ
エイダ・ウォンの複製を造ることに妄執するディレック・C・シモンズは、数え切れない被験者を使ってC-ウィルスを投与し、実験を繰り返させた。しかし、複製を生み出すにはエイダの遺伝子と配列が近しい人物が不可欠である。それがなかなか見つからず、実験は暗礁に乗り上げていた。

そんな中、ファミリーの調査で、腹心の科学者であるカーラ・ラダメスの遺伝子配列がシモンズの理想とする形であることが分かった。シモンズはカーラをだまし、実験へと参加させる。シモンズに心酔するカーラは、まさか自分が被験者にされるなどとは、考えてもいなかっただろう。

そしてシモンズの予想通り、カーラはエイダ・ウォンの完璧な複製として生まれ変わったのである。

オリジナルのエイダとはビジネス上の関係しか持てなかったシモンズは、外見上、完全にエイダとなったカーラに、積もり重なっていた歪んだ愛情や征服欲を本能のままにぶつけ、身も心もエイダとして振舞うよう彼女を調教し始める。

やがて、カーラ・ラダメスは自我のほとんどを失い、心身共にエイダ・ウォンとして生まれ変わった。しかし、その奥底にほんのわずかだけ残されていたカーラとしての意識は、自分の全てを否定したシモンズに対する激しい憎しみへと形を変えていたのである。

エイダ・ウォンに生まれ変わって間もない頃のカーラの手記が残っている。

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「私は、シモンズの忠実なしもべ、エイダ・ウォン。
シモンズに絶対の忠誠を誓った、シモンズだけのエージェント。
彼の望むことなら、何だってする。
その代わり、彼も私の望みを何だって聞いてくれる。
私たちは最高の主従関係。誰にも邪魔されない、理想のつながり。

だけど、最近、彼の目を見るたび、心の奥でどす黒い感情がわき上がってくる。
理由はわからない。
私が生きる道は、シモンズと共に在ることしかないはずなのに。

頭の中で、誰かが私に叫び続けている。
「あいつを許すな」「あいつを殺せ」「シモンズの理想の全てを叩き潰してやれ」
叫びは日に日に大きくなっていく。

なぜ?

あんなにも私を愛してくれるシモンズに、憎しみを抱く理由なんてひとつもない。
私だって、彼のいない世界なんて考えられないほどに、彼を愛している。
私はシモンズに何もかも捧げた身。
彼の理想とする世界を害するなんて、あり得ない。
あってはならない」


カーラの手記
「もうすぐ、あの男が最も憎む世界を生み出すことが出来る。
海の底のあの子も、順調に育っている。
手元のサナギも、じきに孵化する。
私の最高の作品たちが、最高の世界を創ってくれるわ。

あの男に最も不似合いで、この私に最もふさわしい世界...。

でも、仲間はずれも可哀相ね。
せっかくだから、あの男も新しい世界にふさわしい体に変えてあげようかしら。

彼が大好きな、安定。
決して揺るがない均衡。
それが永遠に得られない、無限に変異し続ける体に...」


無限変異カーラ
中国でのバイオテロを成功させ、目的が達成されることを確信したカーラだったが、シモンズが放った刺客によって撃たれ、致命傷を負ってしまう。

「死ぬのなら、せめてシモンズの世界の崩壊と、私の世界の誕生だけでも見届けたい」

カーラは最後の力を振り絞り、手元にあった強化C-ウィルスを自らに投与した。
部下を使って、シモンズに投与したものと同じものである。結果、彼女の肉体は空母の内外を覆い尽くすほど肥大化し、かつては一人の人間であったとは思えないほどの変貌を遂げた。

カーラは、空母と一体化した肉体のどこからでも、意志を持った自らの分身、「カーラスポア」を生み出すことが出来る。エイダに成り代わろうとしたカーラの意志の強さからか、カーラスポアの形状はエイダの姿と酷似している。


完全変異種
ジュアヴォの体内で活動するC-ウィルスが活性化すると、ある時点で外皮が硬化を始め、サナギのような形態へと変異する。

この時、サナギの中ではC-ウィルスの作用によって体組織の溶解と再構築が行われており、ジュアヴォとは全く異なるクリーチャーへと姿を変えたのち、硬い外皮を破り出てくる。このような変異をとげたジュアヴォは、「完全変異種」と呼ばれている。

この種には、ディレック・C・シモンズがエイダ・ウォンの再現を試みた過程で副産物的に生まれたものが少なくない。レポティッツァやグネズドがそれに当てはまり、これらの姿にどこか女性らしさが残るのは、シモンズがエイダを追い求めた結果と言える。

また、C-ウィルスと生物の遺伝子を掛け合わせることで、その生物の特性を反映した変異種が生まれることに気付いたシモンズは、爬虫類や哺乳類など、多くの遺伝子をC-ウィルスに組みこみ、完全変異種を兵器として使用することを考えた。
結果、ひとつのC-ウィルスから多様な完全変異種が生まれるまでにウィルスを安定させることに成功した。


強化C-ウィルス
強化C-ウィルスとは、C-ウィルスをジェイク・ミューラーの血液によって強化させたものをさす。これは、カーラ・ラダメスによって開発された。

ジェイクの血液は多くのウィルスへの耐性を持っており、その特性を取り入れることで、カーラはC-ウィルスを強化させることに成功した。
通常、C-ウィルスを投与された場合、サナギを経て生まれ変わった後に再び変異することはないが、強化C-ウィルスの場合はそれと異なり、サナギの過程を経ることなく、強化と変異が永遠に進行し続けることになる。

このウィルスの精製方法は非常に難しい上に、カーラ・ラダメス以外にその製法を知る者がいない。そのため、今後このウィルスが量産される可能性は極めて少ないと言える。


シモンズの野望と最期
唯一の理解者だと思い込んでいたエイダ・ウォンが、ラクーン事件を機に自身の元から離れて行ったことは、ディレック・C・シモンズの平穏だった精神にはじめてのざわめきを起こした。

その結果、シモンズは「エイダが傍にいないのならば、自身に忠実なエイダを作り出せばいい」という常軌を逸した考えに至る。

彼は、カーラ・ラダメスが研究していた「投与した人間の身体を作り替える」というC-ウィルスの特性に注目し、これを応用してエイダを作り出す計画を実行に移した。
数え切れないほどの人間を犠牲にして実験を繰り返し、シモンズはついにエイダ・ウォンと全く同じ人間を作り出すことに成功する。

エイダの再来に歓喜するシモンズだったが、自身が作り出したエイダからも見放された彼は、強化C-ウィルスを投与され、無限に変異を続けるクリーチャーへと変貌してしまった。その後、オリジナルのエイダ・ウォンによって攻撃を受け、致命傷を負う。彼が欲した「忠実なエイダ・ウォン」は、とうとう最期まで手に入れることができなかった。


カーラの復讐
カーラ・ラダメスは、C-ウィルスの作用と、ディレック・C・シモンズの常軌を逸した調教の末に、エイダ・ウォンとして生まれ変わった。
だが、彼女の根底にはカーラとしての意思がわずかに残っており、それはカーラという存在のすべてを否定したシモンズへの復讐に捕らわれていた。

シモンズに極秘でネオアンブレラを立ち上げたカーラは、C-ウィルスの強化実験と、彼のファミリーが守ってきた「安定した世界」を破壊するための準備を始める。
彼女は、人間をゾンビに変えるレポティッツァのガスを搭載したミサイルと、研究の末に生み出した、究極のB.O.W.ハオスを使い、世界を崩壊させることで、組織体としての国家の権威と枠組みを崩そうと企んだ。

中国でのテロを成功させ、全てが計画通りに進んでいく中、カーラはオリジナルのエイダ・ウォンに連絡を取り、事件へと巻き込むという不可解な行動をとる。

作られたエイダ・ウォンとしての自我が、オリジナルを葬るために彼女を呼び寄せたのか、それとも、カーラとして残る人間としての自我が、自身の暴挙に耐えられずオリジナルに助けを求めたのか。その真意を知る者は誰もいない。