バイオハザード5のファイル集


プレイングマニュアル:DYING
体力が0になると
「Dying(瀕死)」状態になります。


この「Dying」状態は、パートナーの手当て(近くで○)により
回復できます。
ただし、自分で回復することはできません。

「Dying」状態で一定時間放置、もしくはクリス、シェバ共に
「Dying」状態になった場合は「死亡(ゲームオーバー)」と
なるので注意が必要です。







プレイングマニュアル:コントロールタイプ
OPTIONS の CONTROLLER SETTEINGS から
以下の4つの操作タイプを選ぶことができます。

【タイプA】
 Lで移動と方向転換を行い、R2+□で銃を撃ちます。

【タイプB】
 Lで移動と方向転換を行い、L2+R2で銃を撃ちます。
【タイプC】
 Lで平行移動とRで方向転換を行い、
 R2+□で銃を撃ちます。

【タイプD】
 Lで平行移動とRで方向転換を行い、
 L2+R2で銃を撃ちます。



(荒れた筆跡のメモ)




(荒れた筆跡で文字が書き殴られている……)






招かれざる客には、裁きの刃を!

やつらに死の祝福を!

そして我らに救いを与えたまえ!!




プレイングマニュアル:BSAAエンブレム
ステージの各所にBSAAエンブレムが
セットされています。



BSAAエンブレムを壊した数に応じて、
BONUS FEATURESで交換できる景品が増えます。



プレイングマニュアル:仲間への指示
○を押すと仲間を呼ぶことができます。

また、○を押しながら十上下で指示
を切り替えられます。
 Assault: 敵の殲滅を優先
 Cover:  互いの身を守ることを優先




プレイングマニュアル:アイテムスロット





アイテムスロットを表示中にR2を押すと、
仲間の装備を確認できます。





仲間のアイテムの上で○を押すと、     また、「渡す」を選ぶことで、自分のアイテムを
そのアイテムを要求することができます。  仲間に渡すことができます。


□でアイテムをつかみ、好きな場所に
移動させる事ができます。

また、アイテムスロットの上下左右に納め
られたアイテムは、十を押すことで、
アイテムスロットを開かずに装備変更でき
ます。



“タイプ2”プラーガについて
ヨーロッパの寒村で発見された「プラーガ」には、寄生により
宿主をコントロールするという特徴がある。
この特徴を用いることにより、命令に忠実な兵士を作り出すと
いうのが、このプラーガ商品化の狙いである。
しかし、商品化には一つの問題があった。
プラーガは、宿主の体内に投与してから精神を支配するまで
の間に、絶対的なタイムラグが存在するのだ。

これはプラーガが卵の状態で投与されるため、ふ化して成長し、
中枢神経に取り付くまでにどうしても時間が必要なためである。
プラーガの成長は決して遅くはないが、我々の顧客にはせっか
ちな人間が多い。
必要な時に、“すぐに”効果がないと、商品としての成功は望め
ないだろう。


そこで改良型のプラーガが開発された。
我々は、この改良型を「プラーガ・タイプ2」と呼んでいる。
タイプ2では、すでに成長したプラーガを直接投与するため、
精神の支配が即時に行われるという特徴がある。




投与の方法は、経口投与。
つまりは、口から無理やり押し込むわけだ。
荒っぽい方法だが、時にはシンプルな方法が一番のこともある。
経口投与されたタイプ2は、食道を破って体内に侵入し、延髄
を手始めに、脳、脊髄などの中枢神経に寄生、
精神の支配を始める。


研究室内での実験では、タイプ2の投与から精神が支配される
まで、平均10秒以下というタイムを記録している。
また、原種プラーガが持っていた特徴も併せ持っていることが
確認された。
これだけの性能があれば、まずは商品として十分に売り物になる
だろう。


残るは実用データの蓄積だが、これはキジュジュ自治区で行う
ことにする。
実験項目は以下の3点である。





1.感染
タイプ2の一次投与は10対の被験者に留め、その後の感染
の拡散スピードを観察、調査する。
そのため、最初の10名の被験者には、あらかじめ十分な量の
タイプ2を渡しておく。



2.抑制
プラーガが感染者にもたらす凶暴性を、どこまで抑制すること
ができるかを実験する。
これには、同時にBSAA隊員を市街地深部まで誘導し、3番の
実験をスムーズに行うための効果も期待する。


3.戦闘
タイプ2の戦闘能力に関するデータを蓄積する。
戦闘対象は、現地に出動してきたBSAAの隊員とする。





以上の実験をもって、プラーガ・タイプ2の最終評価試験とする。









(なにかのメモ)




(なにかのメモのようだ……)




プラーガ → 体内で変異?

低確率だが強力。
セールスポイントになるか?

ただし光に弱い
  ↑
早急に改良を!!


定時報告



(無残な死体だ……
PDAに未送信のメールがある。)







「定時報告」




救援要請があったため出動したが、通信から現地到着前に
デルタチームはすでに全滅したと判断する。
だが、通信機から発信されるビーコンの一部が移動をしていた
ため、目標を変更しビーコンを追跡。生存者の可能性あり。




残念ながらビーコンの発信は途切れてしまったが、この先から
発信されていたのは間違いない。
扉が閉ざされているためこのままでは侵入できないが、方法は
あると思われる。
引き続き、捜索を続行する。

以上。



プレイングマニュアル:近接攻撃





敵の四肢を攻撃すると、わずかに     近接攻撃は、弾薬を節約できる
隙が生まれ、近接攻撃が可能       うえ、敵に大ダメージを与えるこ
になります。                  とができます。





腕・頭・脚など、攻撃した部位によって可能な
近接攻撃が変化します。






フック(シェバの場合はミドルキック)から、連携攻撃
をすることができます。交互にうまく攻撃すれば、
最大で三段階までの連携が可能です。


村の青年の日記
4月5日
村に油田の所長と名乗る男がやってきた。
油田のそばに住む住民全員に、伝染病の予防接種をしたいのだ
と言う。
あいつらは、我々の親の世代の者をだまして土地を手に入れ、あの
油田を作った。
その負い目があるのだろう。
ことあるごとに村に便宜を図ってくれる。
沼の行き来に不自由していると言えば、ワイヤーを張ってあの
ゴンドラを作ってくれたりもした。
時には外国の珍しい酒を振舞ってくれることもある。
今回もそういうことなのだろう。




村人たちは喜んで申し出を受けたが、俺は断った。
別に、はっきりとした理由があったわけじゃない。
なんとなく、村に来た油田の所長の目つきが気に食わなかった。
ただ、それだけだ。




4月8日
予防接種を受けるため、村の者たちは、全員油田へと出かけて
いった。
いつも騒がしい村が静かだ。
こういう日は、ゆっくりと昼寝をするに限る。



4月9日
昼寝をしすぎたせいか、なかなか寝付けないでいると外が騒がしい。
広場で、皆が真剣な様子で話し合っている。
なんでも、子供が大変な高熱で苦しんでいるのだと言う。
それも一人ではない。全員が、である。



母親たちは、汲んできたばかりの水で子供たちの体を冷やして
いるが、いっこうに熱は下がらない。
明け方、全員が息を引き取った。
朝になり、村長が油田へと出かけた。
皆、子供たちの死が、昨日の予防接種と関係あるのではない
かと思っていた。


戻ってきた村長は、子供たちの死は伝染病の初期段階かも
しれないので、もう一度予防接種を受けることになったと皆に
告げた。
俺は今回も拒否したが、伝染病にかかれば村の一大事だ。
皆に無理やり連れて行かれ、予防接種を受けさせられた。



4月10日
村で喧嘩が起こる。
男たちは、全員殺気立っている。
子供を亡くしたばかりだからだと思うが、どうも違うような気もする。
反対に、女性はぐったりとして元気がない。
すでに伝染病が広がり始めているのか?


4月11日
今日は、なぜか落ち着かない。
体の芯がうずくようで、じっとしていられない。
仕方がなく、外へ出て体を動かすことにした。
外に出ると、奇妙な格好をしている奴がいた。
服を脱いで武器を手にし、体中に戦士の模様をペイントしている。
村祭りの日ならともかく、なんて格好しているんだ。

一言いってやろうと声をかけたが、振り向いたその顔を見て何
も言えなくなってしまった。
顔の半分が醜く腫れ上がり、人とは思えない顔つきになって
いた。
一体、どうなっている!?



4月12日
昨日から、悲めいがたえない。
おとこたちは、昔にもどったかのようなカッコウであらそいをつづけ
ている。
おんなたちは、ほとんどが死んだか、殺されたかしたようだ。



4月13日
アタマぼーっとしている。
熱ある?
かんがえまとまらない。
今、マドの外、大おとことおった。
3メートルぐらいあった。
幻覚?

4月14日
いい気ぶん……

ひめい……おち着く……




たのしい……

オレも……だれか殺……したい……







プラーガ・タイプ3の実地試験について
この地で改良型プラーガ「タイプ3」の実地試験を開始して1週
間が経過した。
タイプ3は、これまでのプラーガではなしえなかった「身体能力の
飛躍的向上」をコンセプトに作られた改良型である。
原種プラーガでも、支配種と呼ばれる特別なプラーガを使用す
れば身体能力の飛躍的向上は見込める。


だが、支配種は絶対的に数が少なく、なによりも外見の劇的
な変化を伴ってしまうため、状況によっては使いにくい。
それではダメだ。
我々が目指すのは、外見的な変化を伴わず超人的な身体
能力を有する兵士を作り出すことなのだ。
それでこそ売り物になる。


別の研究チームでは、プラーガ以外を使用して似たようなコンセ
プトの商品を開発しているらしいが、人間との親和性を考えれば
プラーガを使用するのが一番いい。
どんなに優れた兵士を生み出すことができても、定着率が悪け
れば意味がない。



そこで我々は、従属種のプラーガ、いわゆる“普通の”プラーガ
に支配種プラーガの因子を移植することで、新しいプラーガを
開発することにした。
それが「プラーガ・タイプ3」である。
タイプ3が完成すれば、生物兵器市場のトレンドを一気に塗り替
えてしまうだろう。


だが、それは当分先の話のようだ。
今回の実地試験で、タイプ3の問題点がいくつか浮き彫りに
なった。

まず、定着率の低さ。
成人男性への定着率は92%と通常のプラーガ並みだったが、
女性と子供への定着率はほぼ0%だった。

これでは定着率の高いプラーガをベースに開発した意味がない。
また、外見的な変化も致命的だ。
体中のあらゆる部分に変化が見られた。
これは、支配種プラーガの因子が色濃く残りすぎているせいなのかも
しれない。



だが、失敗ばかりではない。
目指していた身体能力の飛躍的向上については、ある程度達成
されたと言ってもよい。
特に跳躍力については、目覚しい進化をとげた。




予想外だった点としては、一部の被験者が巨大化したことだろう。
3メートル近くまで巨大化した者もいる。
これも支配種プラーガの因子のせいだと考えられるが、まずは許容
範囲内といえるだろう。




今回の実地試験は残念な結果に終わったが、完全に失敗だった
わけではない。
失敗だったとしても、次に活かせばよいのだ。
まだ望みはある。






工事責任者/施設管理者の日誌




(古い紙と新しい紙が挟まれているクリップボードだ)








「工事責任者の日誌」




苦労してンディパヤ族を遺跡から追い出したのは、この“お花畑”
を奪うためだったと聞くが、その後の工事のお粗末さはどうだ。
遺跡の中にムリヤリ実験棟を作ったために、地下水脈の流れを
変えてしまった。
おかげで“お花畑”は干からび、花は枯れる寸前だ。



それもこれも、研究のことしか頭にない主任研究員のブランドンが
研究施設を当初の予定の3倍の広さにしたいなんて言い出す
からだ。
それを受け入れた結果、俺の前任だったピーターは、とうとう工事
責任者から解任されてしまった。
かわいそうに。


もっとも、この花を枯らしてしまったら俺も同じ運命だ。
あまり同情もしていられない。
早く新しい水源を確保しなければ。
地質調査の結果、ここの地下500メートルの位置に水脈が
存在するらしい。
かなり深いが、ファビアノ社製の最新型ポンプシステムを設置
すれば大丈夫だろう。

問題は、いつまでにそれをここまで持ってこれるかだ。
どう楽観的に見積もっても、年内に必要な機材を搬入し、設置
までするのは到底不可能だ。
それまでは人力で水を運び、水を絶やさないようにするしかない
だろう。
どうやら、俺の60年代最後のクリスマスは水汲みで終わってしま
うらしい。
最悪だ。




(ここからは紙が新しい)








「施設管理者の日誌」




地下水を汲み上げ、始祖花に水を供給しているポンプシステム
は、今はまだ正常に動作しているが早急なメンテナンスが必要
だ。
アンブレラがこのポンプを設置したのは30年以上前。それから水
を汲み上げ続けてきたのだから無理もない。
特に地下水をろ過するためのタンクはもう限界だ。これだけでも
早急に交換する必要がある。

幸いなことに、アンブレラの工事責任者の日誌が見つかった。
これによると、ここで使われているポンプシステムはファビアノ社製の
ものらしい。
ファビアノ社製のポンプシステムなら、うちの資源開発部門の施設
でも使っているはずだ。



たしか、ミスター・アーヴィングが所長をしている小さな油田がこの
近くにある。
そこからまわしてもらうことにしよう。







主任研究員ブランドンの日記・1




1966年




12月4日
あの日、スペンサー卿は食することで絶大な能力を手に入れること
ができる「太陽の階段」と呼ばれる花があるらしいと話していた。
最初、皆はそれをまゆつば物のただの噂のたぐいだと思っていたが、
それがこのような結果を招くとは!



最初にその可能性に気が付いたのは、我が師ジェームス・
マーカス博士だった。
博士は、それを未知のウィルスがDNAを変化させるために
起こる現象ではないかと考えた。
何たる慧眼か!
事実、その推測は正しかった。


我々は、花の中に未知のウィルス「始祖」を発見した。
アフリカまでやってきて、この地を探り当て、襲ってくるンディパヤ族に
神経をすり減らしながら過ごした
この3ヶ月の苦労がついに報われたのだ。
昨日まで憔悴しきっていたマーカス博士も、今ではすっかりご機嫌だ。
一刻も早く帰り、研究に没頭したいと意気込んでいる。


私も同じ気持ちだ。
一刻も早く、この始祖ウィルスの謎を解き明かしたい。










1967年




2月12日
我々は壁にぶち当たってしまった。
アフリカから持ち帰った始祖花を、我々はこの地で栽培しようと
した。
当初は始祖ウィルスの組織培養を試みたが、そのDNAを変質
させてしまうと言う特性のため、うまくいかなかった。


そこで、始祖花を栽培することにより、始祖ウィルスの量産を行うこと
となった。
最初は順調だった。
生命力の強い始祖花は成長も早く、わずかな期間で花をつけた。




だが、そこで問題が発生した。
この始祖花には始祖ウィルスが存在しないのだ!
栽培環境が始祖ウィルス発生に影響を与えているのだろうか。
さらなる検証が必要だ。




3月23日
完全に行き詰まった。
あれから様々な条件で始祖花の栽培を行った。
土、水、気温、湿度、日照時間。
あらゆる条件を同じにしても、始祖ウィルスは発生しなかった。
私は、マーカス博士と今後の研究方針について議論していた。


そこへスペンサー卿がやってきて「会社を興す」と言って来たが、
そんなことはどうでも良かった。

始祖ウィルスがなければ、会社なんて興しても無意味だ。
この男は、そんなこともわからないのか。
まったく嫌になる!




主任研究員ブランドンの日記・2




1968年




4月15日
あれから一年以上、成果が出ぬままに時が過ぎた。
持ち帰った始祖ウィルスも底をついた。
これ以上時間を無駄にすることはできない。
マーカス博士と私はアフリカへ戻る決意をした。
また、ンディパヤ族の襲撃に神経をすり減らすことになるのは辛い
が、研究のためには必要な代償として諦めるしかない。

だが、その我々の悲壮な決意をスペンサー卿の一言が打ち砕
いてしまった。

「ならば、あの地を奪えばいい。簡単なことだ」

その時の我々は、いかに間抜けな顔をしていただろうか!


そんなこと、思いもつかなかったのだ。
いかにも俗物のスペンサー卿らしい発想だが、今はそれがあり
がたかった。
マーカス博士と私は、その提案を受け入れることにした。




8月19日
ついに朗報がやってきた!
あの地からンディパヤ族を追い出すことに成功したそうだ。
実際には地下遺跡の半分を奪取したにすぎないそうだが、
始祖花が生育しているあのエリアを手にすることができれば
なんの問題もない。


さらにスペンサー卿は、あの地に始祖ウィルスを研究するための
施設を建設すると言う。
彼にしては、素晴らしいアイデアだ。
早速、マーカス博士と私はアフリカへ向かう準備に取り掛かろう
としたが、スペンサー卿がそれを止めた。
マーカス博士には、ラクーンシティにある幹部養成所の所長をし
て欲しいと言うのだ。

最初はその要請に面食らったが、考えてみれば博士には落ち
着いて研究ができる環境が必要だ。
今、アフリカへ行ってもろくな研究設備はない。
研究所が出来上がるのは、まだ先の話だろう。
ならば私だけがアフリカへ出向き、始祖ウィルスをマーカス博士
へお届けすればよい。


マーカス博士もスペンサー卿も、私の考えに同意してくれた。
早速、アフリカ行きの準備を整えなくては。明日からは忙しくな
るぞ。





9月29日
アフリカに来て2週間が経つ。
やはり、博士はお連れしないで正解だった。
研究施設とは名ばかりの機材が積まれただけのテント、
ンディパヤ族の襲撃を警戒するために雇われた武装した兵士たち。
そして何よりも私をイラつかせるのが、研究施設を作るための工事の
騒音だ。

より高度な研究を行うためとは言え、これではおかしくなってしまい
そうだ。
こんなところで、まともな研究ができるわけがない!
ここで私ができることと言ったら、始祖花から始祖ウィルスを抽出
し、マーカス博士にお送りすることだけだ。
それだけに集中することにしよう。






1969年




6月15日
ついに研究施設が完成した。
これで、晴れてここは「アンブレラ・アフリカ研究所」となったわけだ。
だが、この9ヶ月間で分かったことがある。
この程度の研究施設ではダメだ。
もっと広く、充実した設備が必要だ。
そして、もっと研究員を増員しなくては。

ここは始祖ウィルス研究の最前線となるべき場所だ。
ここでの発見が、そのままマーカス博士の新ウィルス開発の助け
となるだろう。
幸い、これについては、あの守銭奴のスペンサーも同じ意見のよ
うだ。
あいつと意見が合うとは、珍しいこともあるものだ。




研究所所長ブランドンの日記




1998年




11月16日
研究所が閉鎖されることとなった。
不思議と、どうでもいい気分だ。
そう言えば、アークレイ研究所とラクーンシティが消滅したと聞い
た時も同じような感じだった。
こうなってしまったのは、いつからだろうか?


始祖ウィルスの抽出と研究に明け暮れた日々。
全てはマーカス博士のためだった。
……そうだ。
十年前、博士が亡くなったと聞いたあの日から、私は全てに
対して鈍感になった。



怒ることもなく、喜ぶこともなく、驚くこともなく、
ただ始祖ウィルスを抽出し、アンブレラの各研究所へ送る日々。
部下がもってくる研究の成果をただ評価し、使えそうなものは
本社へと報告するだけの、ただの機械だ。




私はすでに死んでいた。

そして、私の半生をかけて育てたこの研究所ももうすぐなくなる。

もう、未練はない。

そろそろ潮時だろう。



ジェームス・マーカス博士からの電報


ワレ t-ウィルスノ カイハツニ セイコウセリ

Jan.13.1978
ジェームス・マーカス




送り状の写し
アンブレラ幹部養成所 所長
ジェームス・マーカス博士

「始祖」のサンプル、5ケースをお送りします。

          Dec.15.1977
          アフリカ研究所所長
          ブランドン・ベイリー


トライセル研究員ミゲルの日記・1
2月19日
“あの”アンブレラのアフリカ研究所って聞いていたから少しは
期待していたけど、実際には研究所と名のつくところなんて、
アンブレラだろうがトライセルだろうが大して違いがあるわけじゃ
ないな。



すでに遺棄された研究所だから、ろくな資料も残されていない
し、ほとんどの機材が運び出されている。
まあ、予想していなかったわけじゃないから、それほどショックじゃ
ないけどね。
大事なのは始祖ウィルスだ。



これがなければ、わざわざアンブレラの古びた研究所まで来る
必要なんかない。
俺たちはすでに、t-ウィルスやG-ウィルス、t-Veronicaさえ
持っている。プラーガだってある。
何でも揃っている。



だが、肝心の始祖ウィルスがなかった。
それを、ついに手に入れたってわけだ。
こいつがきっと、俺たちの研究にブレイクスルーをもたらしてくれ
るはずだ。
ワクワクするね。



3月7日
リッカーって名前は誰が付けたんだろうな。
あの長い舌を見ていると、上手い名前をつけたもんだって思えるよ。
だが、研究者にとってはやっかいなB.O.W.だ。
完成されすぎていると言ったら褒めすぎか。
進化の袋小路に入っているのかもしれないな。


t-ウィルスの作用で変異したB.O.W.を始祖ウィルスで更に進化
させようとしたが、どうにも上手くいかない。
確かに、多少の能力の向上はあったよ。
感覚器官で言えば、嗅覚は多少鋭くなったようだ。




だけど、それだけだ。
相変わらず視力はないに等しいし、醜い外見もそのままだ。
大きく進化したと言えば、繁殖能力ぐらいか。
本当に世の中ってのは思い通りにいかないもんだ。
ま、これはこれでB.O.W.として需要があるから良しとするか。





友人へのメール
突然だが、休暇が取れそうだ。
新型ウィルスの開発がほぼ終了したので、それのご褒美と言った
ところだろう。
明日、研究スタッフ全員でここを出てこの国を離れる。
俺はそのまま、アリゾナへ戻るつもりだ。
久しぶりの故郷だ。
楽しみだよ。

もっとも、それ以上に、自称天才のミゲル様のそばから離れられる
ことが嬉しいんだけどな。
ミゲルってのは俺の隣に座る研究スタッフの一人だ。
確かに腕はいいし、発想や着眼点も悪くはないが、口を開けば
自慢しかしないような奴とずっと一緒にいなくちゃいけないのが
どれだけの苦痛か、お前には想像できるか?


……話がそれてしまったな。
とにかく、2〜3日のうちには戻ることができると思う。
昔みたいに一晩中飲み明かそう。
じゃあな。

ライアン




被験体データ
被験体。
白人女性、瞳の色はブルー。
長期間にわたり薬剤による保存状態にあるが、脈拍、呼吸、
血圧、体温などのバイタルサインは全て正常の範囲内で推移。




ただし、体内色素に異常が確認される。
影響が顕著なのは頭髪。
その他、肌も若干の白化が認められる。







施設内において変異発生した個体について
5月6日
ミサイルへのウロボロス・ウィルス積み込みテスト時に
火災事故が発生した。
周囲を一時、レベル4(BL-4)の隔離をするよう要請。




5月11日
汚染区域の隔離から5日後。
周囲に生息していた生物が突然変異を起こしているとの報告が
あった。
目撃証言によれば、外皮は異常に硬化。
ウロボロスに見られるウィルスのう胞は確認できないとのことだ。


ウロボロス・ウィルスの影響が限定的に現れたレアケースと
推測される。
明日にでも調査隊を編成、サンプル確保に向かわせよう。





5月12日
調査のため小火器を装備した兵士を向かわせたが、無残な結果と
なった。
別働隊により回収された遺体からは、鋭利な刃物で切り刻まれた
切創、巨大なやりで突き刺されたような刺創が多数確認された。
また、別の遺体から視神経に作用する化学物質も検出されている。


一体どのような変異を遂げているのか?

調査対象には新たなB.O.W.として見込みがあるかもしれない。
現状、調査対象を攻撃の特徴から「リーパー」と呼称しようと
思う。
調査は今後も継続する必要があるだろう。




ウロボロス・ウィルス、使用上の注意
警告!
・この取扱説明書には、ウロボロス・ウィルスの取り扱いに関す
 る重要な説明が書かれています。
・ここに書かれた方法以外で取り扱った場合、あなたの生命を
 危険にさらす可能性があります。
・ここに書かれた方法以外で取り扱った場合、あなた以外の
 周りの方の生命にも危険が及ぶ可能性があります。

・投与された被験者は、高確率で死亡します。
 被験者の選定には、細心の注意を払ってください。
・このウィルスは本書の指示に従い、正しく使用してください。





薬剤は、被験者の体重に応じて、以下の目安で投与してください。

60キロ以上      = 1本
40キロ以上60キロ未満 = 約2/3本
20キロ以上40キロ未満 = 約1/2本
20キロ未満      = 約1/3本


投与直後、被験者に以下のような症状がでることがありますが、
異常ではありません。

症状:発汗、呼吸の乱れ、譫妄または錯乱状態

投与後、ウィルスは被験者のDNAを識別、適合した場合、
ウィルスの活動は一旦沈静化します。

不適合だった場合、ウィルスは周囲の有機物質を取り込み、
自己増殖を始めます。
また、周囲の有機体に対して危険を及ぼしますので、被験者
の死体を隔離するか、焼却などの適切な方法で処分してくださ
い。



ウィルスは、被験者の体内にある物質を元に黒い蛭状のウィル
スのう胞を作り、体外に排出します。
ウィルスのう胞には、原始的な知能が確認されており、周囲の
有機物質を感知し、捕獲、捕食、増殖を行います。
個別のウィルスのう胞は、さして脅威ではありませんが、ウィルス
のう胞の集合体は活動中の生命体さえ取り込むので、細心の
注意が必要です。

なお、ウィルスの投与によりDNAの適合が認められた場合は、
速やかに必要なセクションへ報告することが義務付けられてい
ます。
また、不適合、かつ処分が困難な場合は、別紙に記載のセク
ションへ連絡してください。
連絡後は、そのセクションからの指示に従ってください。




情報漏洩対策実施報告書
指示の通り、下記の内容で任務を遂行したことを報告いたします。

8:53
 研究スタッフ全員がバスに乗車。

8:57
 研究所を出発。空港へ向かう。

9:22
 催眠ガスにより、全処理対象物がこん睡状態に陥る。

9:25
 停車後、車外にて処理開始。

9:44
 処理終了。
11:03
 処理対象物を回収後、研究所へ帰着。

11:35
 地下工場エリアの焼却炉において、処理対象物を焼却。
 あわせて、研究員の私物も焼却。


13:10
 全処理対象物、私物の焼却が終了。
 作戦の全行程を完了。

以上。





トライセル研究員ミゲルの日記・2
5月8日
俺たちが目指すのは、G-ウィルスやt-Veronicaを越えるウィル
スの開発だ。
過度の変異、精神汚染、安定性の欠如、これらの要素を排除
しなくてはならない。
定着率と拒絶反応については無視していいとは言われているが、
この3つをクリアするのでも大変だ。

もっとも、それは普通の研究者にとっては、という注釈付きではあ
るけどね。
2つについてはすでに解決のめどが立っている。
残りの1つについても、他の方法で何とかなりそうだ。
我ながら、自分の閃きが恐ろしくなることがあるよ。
これも才能ってやつかな。




“プロジェクトW”報告書 Aug.28.1998
ラクーンシティ・アークレイ研究所の事故発生に、“プロジェクトW”
被験体ナンバー013(通称:アルバート。以下、アルバートと記述)
の関与が認められるものの、当事者がこの事故により死亡したため
詳細は不明。
(死亡認定は情報部規定に基づく)



アルバートの死亡により、プロジェクトの達成率は18%の後退。
適格者数がプロジェクト遂行に必要な規定数を下回ったた
め、早急な対応が必要。
この状態での進行は、プロジェクト遂行に重大な事態をもたら
すと考えられる。



ただし、現時点において予備適格者は存在しないため、
これまでの選考において欠格と認定された者の中より再選考
を行う必要がある。
再選考後、調査を施し適格者数を規定値まで戻すことにより、
プロジェクトの進行はアルバート死亡前の93%まで回復すると
推測される。

アンブレラ情報部 アレックス・W


スペンサーの手帳
たった今、ラクーンシティが消滅したとの報告を受けた。
ついにアメリカが動いたか。
外敵からの戦禍をその身体に刻んだことのない国が、自らの手
で肉を裂くことになるとは、なんたる皮肉か。
だが、いかにt-ウィルスの脅威が現実的なものだったとは言え、
10万人以上の切り捨てをあの国の民衆が許すはずはない。


事実が白日の下にさらされれば、現政権維持は不可能だろう。
それをあの男が望んでいるとは思えない。
だとすれば、その矛先がアンブレラへ向くことは想像に難くない。
政府の愚行は隠蔽され、アンブレラがラクーンシティ消滅の責任
を一身に受けることとなるだろう。



アンブレラもまた、ラクーンシティと運命を共にする。
だが、それがいかほどのものか。
アンブレラは、始祖ウィルスの研究のために作られた“器”に過ぎ
ない。
“器”が砕けたとしても、中身が無事であればなんの問題もない。



困るのは“器”にしがみつくしかない無能な社員どもだけだ。
始祖ウィルスの秘密さえ守られれば、いつでも再興できる。
その為の準備は、抜かりなく行ってきた。





80年代末、それまで不可能だった始祖ウィルスの培養が可能
になったが、その供給元をアフリカ研究所に限定し、厳密な管
理を行ってきたのもそのためだ。
アフリカ研究所の所在は、社内でも一部の人間にしか知られな
いように厳しい情報統制を行ってきた。
人員の異動も最小限に抑え、アフリカ研究所から異動をする者
には、その後厳しい監視をつけた。

所長のベイリーなどは30年近くあの研究所に幽閉同然の身
で勤務することになったが、それもこの日のためだったと言って
よい。
後は、ただアフリカ研究所の閉鎖を命じればよい。
そうすれば、全て手はず通りに物事は進む。



アフリカ研究所の存在は、アンブレラの全ての資料上から消え
去る。
残される資料はレベル10の情報にアクセスできる上級幹部の
記憶だけに限られ、それ以外の者は研究所の存在と同様の運
命をたどる。
全ては完璧な機密保護のためだ。
宝の在り処を知る者は、少なければ少ないほどいい。





(手帳にプリントアウトされた紙が挟まれている)








「機密情報アクセス権リスト」




○レベル10
 オズウェル・S(死亡)
 ヘニング・P(投獄中)
 マサキ・T(死亡)
 ジェニー・K(所在不明)
 カルロス・M(所在確認→情報収集後、殺害)


○レベル9
 ブランドン・B(死亡)
 フランク・E(死亡)
 イザベラ・C(死亡)
 グレッグ・A(死亡)
 リー・D(死亡)
 マイケル・K(死亡)
 イーサン・W(死亡)


衛星レーザー・シャンゴ操作マニュアル
衛星レーザー・シャンゴは、照射位置情報を「L.T.D.」(ロケット
ランチャー型の位置測定送信デバイス)から受け取ることにより、
数十センチ単位の誤差で目標物への射撃を可能にする高高
度射撃システムです。

操作方法は、以下の通り。


1.L.T.D.を構え、ターゲットスコープで目標物を捉えます。

2.目標物を捉えると、衛星への情報送信が開始されます。
 送信中は、赤色のリングがターゲットスコープ中心に向かって
 集束していきます。



 ※ 目標認識AIにより、ターゲットスコープから目標物が外れ
  たと認識された場合は、衛星への情報送信が中断されま
  す。

3.「LOCK ON」の文字が表示されたら衛星への情報送信
 完了です。トリガーを引き、レーザーを発射します。

4.再発射には、一定の充電時間を必要とします。


ウロボロス計画実行書
ウロボロス・ウィルスが及ぼすヒトDNAへの影響。
それは劣等な遺伝子しか持たない価値のなき者には致命的な一撃
となる。
多くの者はその選別に耐えることはできず、地を這い自らを飲み込む
無限の蛇と成り果てる。
残るのは価値のあるひと握りの者、真に優秀な遺伝子を持つ者のみと
なるだろう。

この先の世界では、資格のない者に用はない。
明日昇る太陽の恵みは、選ばれし者のみが享受できる。

今夜、ウロボロス・ウィルスは、世界に解き放たれる。

かねてからの計画通り、爆撃機に搭載されたウロボロス・ミサイルは、
対流圏界面に到達と同時に発射される。

ミサイルより飛散したウィルスは、対流圏上部に流れる偏西風にのり、
世界中にその選別の根を下ろしていくこととなるだろう。

ウィルスに感情はない。
あらゆる人間を選別する。
そして選ばれなかった者は、そのままウロボロスの宿主として次の宿主
を探す。

その連鎖を止めることは、誰にもできない。
60億の悲鳴が全ての歴史を塗り替えるだろう。










VIEWERS


バイオハザードの歴史
【1960年代】
・技術者マイケル・ウォーレン(後のラクーンシティ市長)がラクーンシティの電化
 を開始。

・アシュフォード家の5代目当主、エドワード・アシュフォードが「始祖ウィルス」
 の捜索に着手。





【1962年】
・オズウェル・E・スペンサーが建築家ジョージ・トレヴァーに洋館の設計、
 建築を依頼。








【1966年】
▼12月
・オズウェル・E・スペンサーがジェームス・マーカス、エドワード・アシュ
 フォードらとともに生体の遺伝子を組み換えてしまう「始祖ウィルス」
 を発見。





【1967年】
▼11月
・ラクーンシティ郊外アークレイ山中に洋館・研究所完成。

・建築家のジョージ・トレヴァーの妻ジェシカと娘のリサに「始祖ウィルス
 変異体」が投与される。
 ジェシカはウィルスの定着化に失敗し廃棄処分に、リサはウィルスの
 定着化に成功し、保護観察下に置かれる。

・ジョージ・トレヴァー、実験の被験体とされるが、廃棄処分となる。

【1968年】
・欧州でラクーンシティの路面電車製造開始、開通。

・オズウェル・E・スペンサーが、ジェームス・マーカス、エドワード・アシュ
 フォードらとともにカモフラージュ企業である製薬会社アンブレラを設立。

▼7月
・エドワード・アシュフォードが「始祖ウィルス」に感染し死亡。
 息子であるアレクサンダー・アシュフォードがアシュフォード家の6代目当
 主に就任。

▼8月
・アンブレラがアークレイ山中に幹部養成所を設立。
 ジェームス・マーカス博士が初代所長に就任。








【1969年】
▼2月
・アレクサンダー・アシュフォードがアンブレラ南極基地建設計画を始動。
 地下に極秘プロジェクト「コード:ベロニカ」のための研究所を秘密裏に
 設置。

▼11月
・アンブレラ南極基地及び研究所が完成。



【1971年】
・「コード:ベロニカ」計画成功。
 アルフレッド・アシュフォード、アレクシア・アシュフォードの双子の兄妹が
 誕生。







【1977年】
・アルバート・ウェスカー、ウィリアム・バーキンが幹部候補としてアンブレラ
 幹部養成所に配属。








【1978年】
▼1月
・ジェームス・マーカス博士、「t-ウィルス」の開発に成功。

▼7月
・アンブレラ幹部養成所の閉鎖が決定。
 アルバート・ウェスカー、ウィリアム・バーキンとともに「t-ウィルス」の
 研究はアークレイ研究所に移行。
 ジェームス・マーカス博士は、養成所の施設を用い独自に研究を
 続行。

【1981年】
▼7月
・アレクシア・アシュフォードが10歳にして有名大学を首席卒業。
 アンブレラ南極研究所の主任研究員となる。

・ウィリアム・バーキンがアレクシア・アシュフォードにライバル意識を抱く。





【1982年】
・アレクシア・アシュフォード、父アレクサンダーに「t-Veronica」を投与
 するも、実験は失敗に終わる。
 公には、当主アレクサンダーは謎の失踪として処理される。







【1983年】
▼12月
・アルバート・ウェスカーが「t-ウィルス」の二次感染性を調査。
 オズウェル・E・スペンサーの計画を疑問視。

・アレクシア・アシュフォードが「t-Veronica」を自らに投与。
 15年間のコールドスリープに入る。
 公には感染事故死と発表。



【1987年】
・マイケル・ウォーレンがラクーンシティの市長に就任。









【1988年】
・アルバート・ウェスカーが、オズウェル・E・スペンサーの命令により
 ジェームス・マーカスを暗殺。

・ウィリアム・バーキン主導による「t-ウィルス」計画において、B.O.W.
 の究極形態「タイラント」を開発。

・アンブレラがヨーロッパ第六研究所において「ネメシス」計画を発動。



【1991年】
・アンブレラがラクーンシティの地下に巨大地下研究所を建設開始。

・オズウェル・E・スペンサーがウィリアム・バーキン立案の「G-ウィルス」
 計画を承認。同計画始動。

・アルバート・ウェスカー、情報部へ転属。




【1992年】
・アンブレラの援助金により、ラクーンシティの市庁舎が改修、総合病院
 が設立。
 市庁舎にマイケル・ウォーレン市長の銅像が設置される。







【1993年】
・ラクーン市警察署長ブライアン・アイアンズがアンブレラと癒着。

・ウィリアム・バーキンがラクーンシティ地下研究所に転属。ラクーン市警察
 署長と密約を交わす。

・アルフレッド・アシュフォードがイギリスの大学を卒業。アンブレラ南極基地
 所長に就任。アンブレラ幹部となり、ロックフォート島の基地の司令官にも
 就任。


▼12月
・ロックフォート島に対B.O.W.対策部隊の軍事訓練所が完成。









【1994年】
・アークレイ研究所に、ウィリアム・バーキンの後任としてシカゴ研究所から
 ジョンが赴任。

・アルフレッド・アシュフォードがロックフォート島に私邸と刑務所を建設。






【1996年】
・ラクーン市警管轄の特殊部隊「S.T.A.R.S.」設立。隊長にはアルバート・
 ウェスカーが就任。

・ハンク(後のアンブレラ特殊工作部隊員)が、ロックフォート島の訓練所
 で軍事訓練を受ける。





【1998年】
▼5月
・アンブレラ幹部養成所でジェームス・マーカス博士の擬態が出現。

・アークレイ研究所において、大規模なウィルス漏洩事故。
 研究所は壊滅。

・ケルベロスによる最初の犠牲者。20歳前後の女性のバラバラ死体が
 発見される。


▼6月
・ケルベロス目撃情報がラクーンシティの週刊誌で報じられる。









▼7月
・アンブレラが、幹部養成所に2回に分けて調査隊派遣。
 第一次調査隊が養成所内のB.O.W.によって全滅。

・アークレイ山地で遭難者及び行方不明者が多発。ラクーン市が
 S.T.A.R.S.の捜査介入を決定。

・出動したS.T.A.R.S.ブラヴォーチームのヘリが謎のエンジントラブル
 により、アークレイ山中へ不時着。


・S.T.A.R.S.ブラヴォーチームがアンブレラの黄道特急及び幹部養成所
 跡地を調査。アンブレラ幹部養成所が消滅。

・連絡の途絶えたS.T.A.R.S.ブラヴォーチーム捜索のため、同じくアルファ
 チーム出動。

・洋館事件発生。

・アルバート・ウェスカーの正体がS.T.A.R.S.ブラヴォーチームのエンリコ・
 マリーニ隊長にばれる。
 ウェスカーはエンリコを射殺。
・ウィルスに侵食されたアークレイ研究所・洋館が自爆。
 S.T.A.R.S.アルファチーム4人、ブラヴォーチーム1人が生還。
 (以下のリスト参照)

  クリス・レッドフィールド
  ジル・バレンタイン
  バリー・バートン
  ブラッド・ヴィッカーズ
  レベッカ・チェンバース

・アルバート・ウェスカー、自爆直前のアークレイ研究所から脱出。
▼8月
・元S.T.A.R.S.隊員のクリス・レッドフィールドは「G-ウィルス」の情報を
 つかみ、ヨーロッパへ出発。
 反アンブレラを掲げる。







▼9月
・ウィルスがネズミを媒介に流出、ラクーンシティの市街地全域がバイオ
 ハザードに見舞われる。
 市街地では「人食い病」が多発。事件が報道される。

・ウィリアム・バーキンにより「G-ウィルス」完成。

・ゾンビ集団がラクーン市警察署内へ侵入。

・ラクーン市警察署が壊滅。ブライアン・アイアンズ署長が狂乱。マイケル・
 ウォーレン市長は娘を置いてラクーン市を脱出。
・U.B.C.S.(アンブレラ・バイオハザード対策部隊)がラクーンシティに
 到着、民間人救出作戦を開始。

・新人警官レオン・S・ケネディがラクーンシティに到着。
 同じ頃、クレア・レッドフィールドも市内に到着。

・アンブレラが新型B.O.W.「ネメシス-T型」を投入。
 元S.T.A.R.S.隊員ジル・バレンタインの追跡を開始。

・アンブレラが量産型タイラントをラクーン市内に投下。

・レオン・S・ケネディとクレア・レッドフィールドは救出したウィリアム・バーキン
 の娘シェリーを連れてラクーンシティを脱出。

・米軍が介入し、市に戒厳令が発令される。

・U.B.C.S.の生存者がアンブレラの「監視員」ニコライ・ジノビエフに利用
 され、次々と死亡。ラクーンシティの病院が爆発。




・エイダ・ウォンとアンブレラ特殊工作部隊のハンクが、それぞれ
 「G-ウィルス」のサンプルを回収。

・ラクーンシティ地下研究所が消滅。







▼10月
・米国政府が「滅菌作戦」の決行を決議。
 大統領命令によりラクーンシティがミサイル攻撃を受け、消滅する。








▼12月
・クレア・レッドフィールドがアンブレラ・パリ研究所に潜入するも捕らえられ、
 ロックフォート島の刑務所に投獄される。

・アルバート・ウェスカー率いる謎の特殊部隊が島を襲撃し、島全体に
 「t-ウィルス」が流出。

・ロックフォート島の刑務所から脱獄したクレア・レッドフィールドが、電子
 メールでレオン・S・ケネディに救助を要請。
 居場所が兄クリスに伝わる。

・ラクーンシティを脱出したジル・バレンタインが、クリス・レッドフィールドのアジト
 に到着するが、クリスはすでにロックフォート島に出発。

・アルフレッド・アシュフォードがロックフォート島から脱出。

・クリス・レッドフィールドがロックフォート島に到着後、アルバート・ウェスカーと
 再会。




・アンブレラ南極研究所でアレクシア・アシュフォードがコールドスリープ
 から目覚める。

・アルフレッド・アシュフォードが死亡。

・クレア・レッドフィールドがアンブレラ南極基地で兄クリスと再会。
 2人で協力してアレクシアを倒す。

・クリスとクレアがアンブレラ南極基地を脱出。
 同基地消滅。

【2002年】
・ジャック・クラウザー、事故を偽装して死を装いアルバート・ウェスカー
 率いる秘密組織に加わる。








【2003年】
▼2月
・アンブレラ・コーカサス研究所(ロシア)におけるB.O.W.破壊作戦に
 クリス・レッドフィールドとジル・バレンタインが参加。
 新型B.O.W.「T-A.L.O.S.」の破壊に成功。






【2004年】
・アメリカ大統領の娘、アシュリー・グラハムがロス・イルミナドス教団に
 誘拐される。
 (実行犯はジャック・クラウザー)

・アシュリーの警護役になる予定だったレオン・S・ケネディが、誘拐事件
 の捜査を命じられる。




・レオン・S・ケネディがヨーロッパのとある村にて、寄生体プラーガの卵を
 植えつけられる。
 その後、同じく卵を植えつけられたアシュリー・グラハムを教会にて保護。

・レオンとアシュリー、古城に一時避難するも教団の信者であるサラザール
 家8代目当主ラモン・サラザールの手によってアシュリーが再び捕らわれ、
 クラウザーに孤島へと連れ去られる。レオンはサラザールと対峙し、これを
 倒す。



・レオン・S・ケネディは孤島へ向かい、アシュリー・グラハムと合流。
 ジャック・クラウザー及び教団の教祖オズムンド・サドラーを倒す。
 また、孤島にあった設備でレオンとアシュリーの体内の寄生体を除去。

・エイダ・ウォンがレオンから寄生体のサンプルを奪取。

・レオンとアシュリー、ジェットスキーで孤島から脱出。






BSAA
ラクーンシティ消滅後、その責任を追及するために提訴された数多くの訴
訟はアンブレラに大打撃を与えた。
だが、アンブレラ以上にダメージを負った団体があった。それが全世界の
製薬企業が加盟する業界団体「製薬企業連盟」である。
アンブレラが「有機生命体兵器(B.O.W.)」の開発と実験、そして闇市場
への流通を行っていたと言うことは、製薬業界全体の信頼を貶め、
さらにはアンブレラ自体が製薬企業連盟の理事企業の一つであったこと
もそれに拍車をかけた。



それだけであればイメージの悪化だけで済んだかもしれない。
現代では、薬と医療は不可分である。
必要とあれば、薬を使用するのにイメージなど気にしていられない場合も
ある。

だが、訴訟が進むにつれ状況が変化しはじめた。
検察側から提出された証拠に、様々な製薬企業の名前が登場し始め
たのだ。



アンブレラは、各製薬企業が開発した薬品や技術を、兵器開発のあらゆ
る局面で巧みに取り入れていた。
それだけならまだしも、開発の一部を生物兵器開発のそれと悟らせないよ
うに、各製薬企業へと開発を委託していたのだ。
各製薬企業からすれば、知らず知らずのうちに生物兵器開発に加担し
ていたことになる。
これまで連盟の加盟企業の中でも、アンブレラ問題は対岸の火事と見る
向きもあった。
しかし、一転、被告企業となれば話は違ってくる。


何十万人が死亡した事件の責任を背負わされようとしているのだ。
敗訴となれば、会社の存続は絶望的。
例え無罪となったとしても、そのイメージ失墜は売り上げだけではなく、
各国政府の許認可にも大きな影響を与えるだろう。
製薬企業にとって、開発した薬が認可されないのは死刑宣告も同じで
ある。
これには製薬企業連盟の加盟各社も、対抗措置を取らざるを得なかっ
た。



製薬企業連盟は、検察側に司法取引を持ちかけた。連盟は今回の事
件解決に全面的に協力し、アンブレラを追い詰めるためにはどんな企業
機密も喜んで提供すると告げた。
この提案はアンブレラ壊滅に執念を燃やす検察側に好意的に受け入れ
られ、製薬企業連盟各社への起訴は見送られることとなった。

そして2003年、アンブレラの全面的敗訴が決定した。アンブレラは崩壊し、
製薬業界全体を巻き込もうとしていた一大スキャンダルは終息するかと
思われた。


だが、事態は予想外の展開を見せ始めた。
アンブレラの崩壊により、B.O.W.が世界中の闇市場へ流出し始めたのだ。
それらが一部の国家、ゲリラ、テロリストたちの手に渡ったため、B.O.W.の
脅威が一般の人々にまで降り注ぐようになった。
このため製薬企業連盟は、更なる対抗措置を取らざるを得なかった。






そこで組織されたのが、対バイオテロ部隊
「BSAA(Bioterrorism Security Assessment Alliance)」
である。
BSAAは、当初11名の精鋭のみで組織され、各国軍隊、警察の
対バイオテロ作戦へ、オブザーバーを派遣するにとどまっていた。
しかし、バイオテロの脅威は予想をはるかにうわまわっており、その
ような方法ではすぐに対処しきれなくなってしまった。




そのため、事態への即応が可能な実働部隊結成が検討され始めたが、
BSAAはあくまで民間主導の組織である。
政府が存在する他国での捜査、逮捕、それに伴う武力行使には、おのず
と限界が生じる。
だが、バイオテロの脅威は、すでに全世界的な問題となりつつあった。
そこでBSAAは、国連管轄の対バイオテロ部隊として再編成されることと
なった。




国連管轄の特殊部隊であれば、国連加盟国ではある程度受け入れの
素地が整っていると言っていい。
事実、BSAA結成に関する決議では、加盟国の7割が国内でのBSAA
の活動を認め、残りの国も制限付きながら活動を認めるに至った。
こうして、現在のBSAAが誕生した。






BSAA本部はイギリスにあるが、詳しい所在地は非公開である。
BSAAの部隊は、管轄内の地域であれば12時間以内に部隊を展開さ
せることが可能であるため、ハブ空港、もしくは空軍基地の近くにその拠
点を構えていると考えられる。
また、同一支部内でも管轄地域内にいくつかの拠点が存在すると言わ
れている。





BSAA各支部の管轄地域は、以下のようになっている。

欧州本部
 →西部ロシア地域を含む欧州地域

中東支部
 →アフリカ大陸の一部を含む中東地域

北米支部
 →北米大陸全域(クリス・レッドフィールドが所属)

南米支部
 →南米大陸全域

西部アフリカ支部
 →アフリカ大陸西部(シェバ・アローマが所属)

東部アフリカ支部
 →アフリカ大陸東部

極東支部
 →インド以東のアジア地域と極東ロシア地域
オセアニア支部(※)
 →オーストラリアを中心とするオセアニア地域

※アンブレラ南極研究所のあった南極大陸は、オセアニア支部の管轄と
 なる。






BSAAは各支部に相当数の実働部隊を擁しており、その多くは各国
警察の特殊部隊、軍隊の経験者により構成されている。

また、実働部隊のサポートスタッフとして、各国の政府組織から相当数
の現役職員が出向しているとも言われている。
彼らもまた、実働部隊の隊員たちをテクニカル、メディカル、フィジカル、
メンタルの各方面から支えるサポートのエキスパート集団である。




BSAAの実働部隊は、大きく2つの種類に分けられる。

まず、「特殊作戦部隊(=Special Operations Unit)」と呼ばれる
チームと、そこに所属する隊員たち。
チーム編成で行動する彼らは、突入、交戦、鎮圧のプロフェッショナルで
ある。
基本は12名の分隊規模の編成で、さらにその12名を4名ずつの3班に
分けて行動することもある。



SOUの特徴は、その柔軟な人員の運用にある。
作戦規模に応じて別チームからの班単位の合流は日常的に行われて
おり、ある合同作戦では、各支部の精鋭70名以上が作戦に参加したと
する記録もある。

本作戦では、アルファチームをダン・デチャントが率いているが、その
チーム編成も従来のデチャントの部下と別チームの班を混成させた
即製チームである。
(よって、アルファチームという呼び方も本作戦でのみ使用される呼称で
ある)

このような特殊な部隊運用は、これまでにない対生物兵器戦闘におい
ては既存の編成法だと対応しきれないという事情と、従来の部隊編成
が持つ管理、運用面での長所を考慮した結果と言える。








もう1つが「特殊作戦要員(=Special Operations Agent)」である。
通常は、ただ単にエージェントと呼ばれる場合が多い。
チームで動くSOUに対して、エージェントは個人で動く。
エージェントは、捜査、諜報活動を主な任務としており、言わばBSAAの
目として活躍する存在である。
また、作戦の性格上、表立って部隊が投入できない場合はエージェント
が作戦に従事することもある。
その場合、作戦遂行の最小単位は2名、2マンセルが基本である。



なお、エージェントの中には支部を越えて作戦に従事する者もいる。
その多くは、複数地域で行われる非合法活動を追うエージェントであり、
本作戦でのクリス・レッドフィールドもその一人である。

エージェントは単独で行動できる能力を有していることから、SOUの隊員
よりも格上と見られることが多いが、実際には能力、技術よりも心理面、
適性が大きく考慮された上で選抜される。よって、個々の能力だけを比
較すればSOUの隊員の方が優秀であることも珍しくない。



このように、BSAAは多国籍部隊的な要素を持つ公的組織ではあるが、
その結成の経緯から、活動資金の多くが製薬企業連盟から捻出され
ていることは広く知られた事実である。
このような状態はしばしば批判の的とされるが、資金提供がなければ加
盟国に多額の負担金を強いることになるため、事態の改善には至ってい
ない。
また、製薬企業連盟にとってもBSAAに出資していることは業界全体の
姿勢をアピールする上で重要と考えられているため、この関係は当分の間
続くとみられている。


最後に、BSAA結成当初から所属していた11名は、隊内では敬意を
持って「オリジナル・イレブン」と呼ばれている。
これは、アメリカのマーキュリー計画で選抜された7名の宇宙飛行士が
オリジナル・セブンと呼ばれたことに由来している。
オリジナル・イレブンの中にはクリス・レッドフィールドも含まれており、現在
も数名の隊員が同隊で活躍中である。







マジニ
欧州の旧家、サラザール家が統治する城の地下に封印されていた寄
生生命体「プラーガ」。
このプラーガが人間に寄生して中枢神経と同化すると、その人間は理
性を失い、支配種と呼ばれる別種のプラーガ(もしくはそれに寄生され
た人間)からの命令のままに人を襲うようになる。
寄生された人間は理性こそ失うが、人間の知能までは失われておらず、
お互い言葉を交わしての意思疎通が可能である。
また、道具を使い、敵を集団で追い込む狡猾さも持ち合わせている。



このような状態になった人間をレオン・S・ケネディが記したレオン・レポート
では「ガナード」と呼んでいる。

本作戦でも、このプラーガの存在が確認されている。
なぜ、欧州で確認されたプラーガが、アフリカに出現したのか。
その影には、生物兵器の密売人リカルド・アーヴィングの存在がうかがえる。





BSAAアルファチームがその命を賭して得た情報によると、このプラーガ
は欧州で回収された後、生物学的、遺伝学的な改造を施され、兵器と
しての純度が高められた改良型プラーガであることが分かった。
この改良型プラーガは、開発者の間では「プラーガ・タイプ2」と呼ばれて
いることが関係する資料から確認されている。






タイプ2の特徴は、その寄生方法にある。

欧州で確認されたオリジナルのプラーガは、卵の状態で人間に寄生、
ふ化し、体内で成長することにより精神の支配を行う。
しかしこのタイプ2は、成長した状態で人間に寄生する。
そして、その寄生方法は経口摂取、つまりは口から押し込むのである。





荒っぽい方法ではあるが、その結果、オリジナルでは寄生から精神の支配
まで数時間から数日を要したのに対し、タイプ2の効果は即時に現れる。
この点が兵器としての利便性を高めた結果なのであろう。
なお、この寄生の様子は、作戦に参加したBSAA隊員によっても目撃さ
れている。






タイプ2に寄生された人間は精神を支配されて理性を失い、命令のまま
に人を襲い始める。
(兵器として運用することが前提となっているため、命令権を持つ人物が、
必ずしも支配種プラーガである必要はないと考えられる)
知性もそのままなのと、身体的な能力は寄生された人間の能力に依存
するという点も、原種からの特徴として受け継がれている。





ただし、積極的にプラーガを寄生させ、仲間を増やそうとする行動も見受
けられるため、兵器としての拡散性も高められていると推測される。
入手した資料によると、このタイプ2に感染させられた人間のことを、武器
商人たちは「マジニ」と呼称していたようである。
これは現地の言葉で「悪霊」という意味である。

なお、タイプ2というコードネームから3、4以降の改良型プラーガの存在も
予想されるが、現在のところ、その存在は確認されていない。





クリス・レッドフィールド
彼のキャリアは、アメリカ空軍で幕を開ける。
いかなる状況でも信念を曲げない強い意志、たゆまない努力、そしてほん
の少しの運を味方にしたクリスは、戦闘機のパイロットとして任に就く。
まっすぐな性格はパイロット向きで、将来も嘱望されたが、その性格ゆえに
当時の上官と意見が対立することも多かった。
その対立関係は解消されることなく、ほどなくクリスは退役の道を選ぶ。





退役後、その卓越した射撃能力と近接戦闘技術、そして固定翼機だけ
ではなくヘリコプターの操縦資格も持つ多才さを買われ、ラクーン市警察
所属の特殊部隊「S.T.A.R.S.」にスカウトされる。
S.T.A.R.S.ではアルファチームのポイントマン(PM)を任されることとなった。
PMとは、チームから先行して偵察、陣地確保を行う斥候である。
その任務の性格上、単なる射撃能力、戦闘技術の高さだけではなく、幅
広い銃器を扱える応用力の高さも必要とされる。




彼はその点も非常に優秀で、小銃から重火器まで必要に応じて柔軟か
つ的確に扱う才能を持ち合わせていた。









S.T.A.R.S.での任務を順調にこなしていたクリスであったが、1998
年7月、状況は一変する。
ラクーンシティ近隣の山中でS.T.A.R.S.ブラヴォーチームが消息を
絶った。
捜索に向かったクリスたちアルファチームは、凶暴化した野犬(後に
「ケルベロス」と呼ばれる有機生命体兵器(B.O.W.)と判明)の襲撃
を受け、追い込まれるように洋館へと逃げこんだ。




その洋館こそ、世界的規模の製薬企業「アンブレラ」が運営していた
アークレイ研究所と呼ばれる生物兵器の開発、実験施設であった。
ここで彼と、そのパートナー、ジル・バレンタインは、アルバート・ウェスカー
の企みにより、数々のB.O.W.との戦闘を強いられる。
ウェスカーは、S.T.A.R.S.の隊長、つまりクリスとジルの上司であったが、
同時にアンブレラの情報部員であった。彼は、洋館へ幾多のB.O.W.
を投入することにより、様々な状況での戦闘データを収集しようとして
いたのだ。



この通称「洋館事件」と呼ばれるアークレイ研究所での惨事は、
ウェスカーの死亡とクリスとジルによるタイラントの破壊、そして
研究所の自爆により幕を閉じた。








帰還後、クリスは洋館での凄惨な事件とアンブレラの危険性を各所に
訴えるが、アンブレラの息がかかったラクーンシティ上層部は言うに及ば
ず、政府さえもその言葉に耳を貸そうとはしなかった。
立ち向かおうとする組織は巨大かつ、強力な影響力を有していたが、
逆にそれがクリスの闘志に火をつける。
クリスは独自の調査を進めるため、家族にもその行き先を告げずにヨー
ロッパへ旅立っていった。




家族に危険が及ばないようにするための彼なりの配慮であったが、それ
が裏目に出た。
兄と連絡が取れないことを心配した妹のクレア・レッドフィールドが、ラクー
ンシティへやってきたのだ。
クレアはt-ウィルスがもたらしたラクーンシティの大混乱に巻き込まれるが、
そこで出会ったレオン・S・ケネディと共に闘い、窮地を脱する。
この事件中につかんだ事実を基に、クレアはクリスを追ってヨーロッパへと
向かうが、そこでアンブレラの手に落ちてしまう。



その事実をレオンから伝え聞いたクリスは、妹を救出するため、クレアが
捕らえられているロックフォート島へと向かった。
そこでクリスは、様々な事実と直面することとなる。








アンブレラ南極研究所。

アレクシア・アシュフォード。

t-Veronicaウィルス。

……そして、アルバート・ウェスカー。




洋館事件の首謀者。
死んだと思っていたかつての上司。
彼は、陰謀の影を再びこの事件に落としていた。
そしてクリスは、この因縁浅からぬ男と対決することとなる。
人であることを捨てたウェスカーの戦闘能力はクリスを圧倒していた。
だが、辛くも勝利を収めることができた。
炎の中に消えるウェスカーを見て、クリスは諸悪の根源であるアンブレラ
壊滅の決意を新たにする。



そして時は流れ2003年。
クリスはロシアの空にいた。
隣には、かつてのパートナー、ジル・バレンタイン。
この時、アンブレラは窮地に立たされていた。
ラクーンシティ崩壊の責任を問われ、際限なく吹き荒れる訴訟の嵐、株価
の暴落。
アンブレラの崩壊は、時間の問題と思われた。




その最中、クリスはアンブレラが新たなB.O.W.開発計画を推し進めつつある
という情報を入手した。
それがこの地、ロシアのコーカサス研究所で秘密裏に行われていた
「T-A.L.O.S.」計画である。
情報を掴んだ2人は、現地の対バイオハザード部隊と共に研究所を強襲。
その災厄の芽を摘み取ったのだった。

それからほどなくして、アンブレラは崩壊した。



しかし、アンブレラが蒔いた災厄の種は、世界中で闇色の花を咲かせて
いた。
紛争地域だけではなく、一般市民を巻き込むテロでも使用される
B.O.W.。
その壊滅を目的に結成された「BSAA」に参加するのは、クリスとしては
当然の成り行きだった。
それは、ジルもまた同じであった。
クリスとジルは、背中を預けられるパートナー同士として、世界中の生物
兵器犯罪に立ち向かっていったが、ここでもアンブレラの影が彼らの運
命に大きな影を落とす。

アンブレラの創始者オズウェル・E・スペンサーの逮捕に向かった二人が
見たものは、死体となり横たわるスペンサーと、その手を血に染めてたた
ずむ仇敵ウェスカーであった。
クリスは、三度ウェスカーと対決することとなった。
だが、この顛末は、ジルがウェスカーと共に底知れぬ崖下へ消えるという
悲劇で幕を閉じた。
BSAAによる3ヶ月にも及ぶ捜索をもってしてもジルの死体は発見されな
かった。



結果、ジルはBSAAより公式に死亡と認定されるに至った。
死体のない墓地の前で、クリスがなにを誓ったのかは定かではない。
ただ確かなのは、彼がかつて以上に生物兵器犯罪の捜査、撲滅に
情熱を燃やすようになったことだった。
BSAA北米支部に所属しながらもその捜査の範囲は世界中に及び、
作戦行動への参加数はBSAAの全隊員の中でトップを記録した。





その渦中で、クリスはリカルド・アーヴィングがアフリカで大規模なB.O.W.
の取引を行うという情報を入手する。
アーヴィングとは、最近裏の世界でよく名前を耳にする生物兵器の密売
人である。
クリスは情報をアフリカ支部に通報後、アーヴィング逮捕作戦に志願を
する。





そこにはクリスの隠された思いがあった。
情報の裏に見え隠れする、かつてのパートナーの名。

生きているかもしれない……

だが、クリスはそれを誰にも漏らすことなく、わずかな希望と決意を胸に
人類発祥の大地へと降り立った。
そして彼は、この地で再びバイオハザードに立ち向かうこととなったのだ。





シェバ・アローマ
彼女の生まれ育った町には工場があった。

アンブレラ第57プラント。

数字が与えられただけの古びた工場であったが、街にとっては潤いをもた
らす貴重な現金収入源であった。
街の大人の8割がその工場で働き、シェバの両親もその例に漏れなかっ
た。
両親の稼ぎはそれほど多くはなかったが、安定した現金収入のおかげで
シェバは比較的裕福な子供時代を送ることができた。

だが、その幸せな時間は長くは続かなかった。
8歳の頃、彼女がいつものように通りで友達と遊んでいると、突然の
サイレンが彼女を包んでいた明るく穏やかな空気を吹き飛ばした。
サイレンは工場からだった。

同時に立ち昇る不吉な黒煙。

なにか悪いことが起こっている。

それを直感的に感じたシェバは、工場へと走った。

しかし、工場の中へ入ることはできなかった。
いつもはにこやかに子供たちを通してくれる気のいい年老いた守衛の
姿はなく、そこには見慣れない大人たちがいた。
頭をすっぽりと覆うマスクのおかげで表情は分からない。

「対バイオハザード用の防護装備よ。
 きっとアンブレラの特殊部隊ね」

後のシェバはそう語る。


マスクの下から聞こえてくる声はくぐもって聞こえにくかったが、手にした
アサルトライフルがシェバに向けられたことで、その意思は十分すぎる
ほど伝わった。
街の近くには少ないが、政情不安定なこの国では反政府ゲリラも多い。
子供とは言え、銃が持つ暴力性は十分に理解している。
そのうち、街に残っていた大人たちも集まってきたが、鈍く光る小火器に
逆らう者はいなかった。
シェバは、近所に住む大人に手を引かれ家に帰った。



その夜は、シェバにとって最も長い夜となった。
一睡もせずにドアを見つめたまま、夜を過ごした。
夜が明け、太陽が長い影を作り始めても両親は戻ってこなかった。

夜になり、ドアの外に気配を感じた。
シェバは飛び上がり、ドアへと駆け寄った。
ずっと座っていたので足の筋肉はこわばっていたが、そんなことは気にして
いられない。
こけそうになりながらドアへとたどり着くと勢いよくドアを開け、力一杯叫ん
だ。

「お帰りなさい!」

そこにいたのは両親ではなく、目を丸くして驚いている遠縁の叔父だった。

「お前の両親は死んだ。工場の事故でだ」

そして、自分が彼女を引き取ると言うのだ。
シェバの気持ちなど、おかまいなしだった。
叔父は金になりそうないくらかの家財道具を手早くまとめて古いピックアッ
プトラックの荷台に載せると、シェバを遠く離れた自分の家に連れ帰った。

だが、そこでの生活は長く続かなかった。
叔父の家は貧しく、その上7人の子供がいた。
工場から補償金をふんだくる皮算用がなければ、血縁とは言えシェバ
を引き取ることはなかっただろう。

そして、叔父の目論見は外れた。
アンブレラから補償金はもらえなかったのだ。
叔父が叔母に向かってぶつくさと「工場が消えた」と言っていたが、
シェバにとってはどうでもよかった。
それよりも、その日を境に満足な食事も与えられなくなったことの方が
大問題だった。
空腹は、やさしかった両親をより愛おしくさせた。
そしてシェバは、本当は両親が生きているかもしれないと思うに至った。

そうだ、自分は両親の死体さえも見ていないのだ!
もしかしたら生きているかもしれない!

その思いは日に日に強くなっていった。
2ヵ月後、満月がサバンナを照らす夜、シェバは叔父の家を抜け出して
生まれ育った街へと向かった。


シェバの両親への想いは強かった。
だが、サバンナの広大さはそれを打ち砕くのに十分だった。
二日目の夜、折からの栄養不足も重なり、シェバは倒れた。

サバンナの夜は意外とうるさい。
動物たちの足音、咆哮、虫の鳴き声、乾いた風ですれる草の音。
街育ちのシェバにとっては新たな発見だったが、それももうすぐ無意味に
なりそうだった。



その時、聞き慣れた音が耳に届いた。
低いエンジン音、砂利をかくタイヤ、整備不足なのかカラカラという異音が
混じっている。
トラックだった。
トラックはシェバのそばで止まった。
助手席から出てきた男は、シェバを覗き込むと二言三言声をかけてきた。
その時、シェバはなんと返事をしたのか覚えていないと言う。
だが、男はシェバを抱き上げると、荷台に乗せ、その場を離れた。



男は反政府ゲリラの一員だった。
彼はシェバに暖かい食事と、まずは快適と言える寝床を与えてくれた。
だが同時に、残酷な事実も告げられた。

アンブレラの工場で起こった事故は、ただの事故ではなかった。
工場で製造されていた生物兵器。
その最終実験が、老朽化した工場を使用して行われたのだ。
そこで働いていた、何も知らない従業員を巻き込んで。
シェバの父も……そして母も……


実験が終了した後、アンブレラは事実を隠蔽するため政府に働きかけて
軍隊を出動させ、工場を街ごと破壊した。
それも徹底的に。
彼女が生まれ育った街は、もはや存在しなかった。

シェバは憎んだ。
身勝手な理由で両親を奪ったアンブレラを。
そのアンブレラに尻尾を振る政府を。
そして彼女は、そのまま反政府ゲリラのグループに身を置くことを決意した。


最初は洗濯や食事の用意などの雑用しかできなかったが、数年もすると
銃を手にするようになった。
ゲリラ時代の話を、シェバはあまり語りたがらない。
あまりいい思い出はないのか、それとも当時の行いを恥じているのか、どち
らかだろう。

シェバがゲリラに身を置くようになって、7年の歳月が過ぎ去ろうとしていた。
その日、シェバは買い出しのために街へ来ていた。
買い出しは、彼女の重要な任務のひとつだった。


長年ゲリラとしての生活を続けているとは言え10代の少女である。
時々見せる鋭い眼光を封じ込めれば、街中にいてもそう怪しまれることは
ない。
そのシェバに一人の男が近づいてきた。
地元の人間に見えたが、その言葉にかすかな外国語訛りが感じられた。
男は警戒するシェバに一枚のメモを渡すと、早口でこう告げた。





「メモを読め。信じるなら、2時間後、裏通りにある教会に来い」

それだけ告げると男は雑踏の中に消えた。
シェバがそのメモを素直に受け取ったのは、そこに見覚えのある単語を
目にしたからだった。

「アンブレラ」

身勝手な実験でシェバの両親を奪った製薬企業。
あの実験さえなければ、ゲリラに身を落とすこともなかっただろう。

メモにはこうあった。

シェバが所属する反政府ゲリラが大規模な生物兵器テロを計画して
おり、それにより政府転覆を狙っている。
その為、近々アンブレラとの取引を行うらしい。
そして、シェバに、その取引阻止の手助けをして欲しい、と。





政府側の罠かとも思ったが、真実だと直感した。
なぜそう思ったのか、当時を振り返り、シェバはこう語る。

「あの国はフランスの影響が強いから、フランス語っぽいしゃべり方をする
 役人は多くいたけど、あの男は違った。あの時は分からなかったけど、
 ほんの少しだけ英語訛りがあったの」

直感は正しかった。
シェバは教会で二人の男に会った。


一人はさっきメモを渡してきた男。
そしてもう一人のノーネクタイのスーツ姿の男は、自らを「アメリカ政府の
職員」と名乗った。

スーツ男の目的はシンプル。
アンブレラの壊滅、ただそれだけだった。
今回の取引で、ある男が現場に現れる。
その男が何らかの鍵を握っているらしい。
また、その男を逮捕するため、シェバの手助けが欲しいと言うのだ。
そして、その男を逮捕することができればゲリラには興味がないと言う。

逮捕もしなければ、政府に引き渡すこともない、スーツ男はそう約束した。
スーツ男の話は、真実のように思えた。
しかし、長年の仲間を裏切ることになる……
その迷いを見透かしたかのように、彼はシェバに問いかけてきた。

「アンブレラが憎いか?」

シェバは、一も二もなくうなずいた。



「それが我々が君を選んだ理由だ。それともう一つ、アンブレラと戦い
 たければ、今の仲間と手を切ることだ」

「で、あんた達の仲間になれって?」

「そうだ。しょせんは反政府ゲリラだ。目的のためには手段を選ばない。
 だが我々は違う。正しい目的のために、正しい手段のみを選ぶ」

「ご立派なこと。だけどさ、15歳の小娘になに期待しているわけ?」


「歳は関係ない。アンブレラを憎み、そして戦う意志と力があるならば
 立派に我々の仲間だ。
 ……もっとも、年上に対する口のきき方は少し教え込む必要が
 ありそうだがな」

そう言うと、スーツ男は皮肉たっぷりに笑った。





3日後、特殊部隊が取引現場を急襲した。
シェバは取引現場であるビルの入り口の鍵を開けておき、身に着けた
盗聴マイクで現場の状況を待機していた特殊部隊に中継した。
作戦は成功だった。
目的だったアンブレラの男は速やかに捕獲され、そのまま現場から連れ
出された。
その後、シェバがその男の姿を目にすることはなかった。




シェバもゲリラ仲間と一緒に逮捕され、アメリカ領事館へと連行された
が、仲間は2日後に解放された。
それを見届けた後、シェバはスーツ男が用意したプライベートジェットに
乗り込んだ。
その手には、アメリカのパスポートが握られていた。

シェバはアメリカで万全の教育を受けた。
元々聡明だった彼女は半年で英語をマスターすると、2年後には大学
へ進むほどの学力を有するに至った。もちろん、その間に年上への口の
きき方も含む様々なマナーも叩き込まれたのは言うまでもない。

大学卒業後、後見人代わりのスーツ男の勧めもあり、結成されたばかり
の「BSAA」に入隊することとなった。
数年前にアンブレラは崩壊していたが、シェバの志はすでにアンブレラだけ
に縛られていなかった。
入隊後の基礎訓練期間を終えた後、シェバはジョッシュ・ストーンが率い
る分隊へと配属された。
そこで8ヶ月間、実戦経験を通じて訓練の仕上げを行ったシェバは、その
後、BSAAのエージェントに抜擢される。
そして、世界中で活躍することとなったのだ。




リカルド・アーヴィング
表向きはトライセル・アフリカ支社の資源開発部門が所有する油田の所
長である。
性格は尊大で横柄、態度は粗暴、徹底した拝金主義者。
そして、その性格を見込まれ、開発された有機生命体兵器(B.O.W.)を
闇市場へと流す窓口的役割を任されている。
彼が行う闇取引で得られた利益はアフリカ支社が行う生物兵器開発の
資金源として利用されており、また、デモンストレーションを兼ねた生物兵
器の運用試験も行っているため、生物兵器開発ビジネスの全貌を知る
数少ない人物と言える。


ただし、その活動とトライセル・アフリカ支社の関係は完璧に隠蔽されて
いる。
彼がBSAAに出資している製薬部門ではなく、表向きだけでも資源開
発部門に籍を置いているのはそのためである。

(トライセルには「海運」「資源開発」「製薬」の3部門からなる複合企業体
 である。各部門が独立採算制をとっているため、部門が違えば別会社と
 言ってもよい。
 もちろん、各支社間に存在する壁も無視できない要素である)


よって、今回BSAAが取引の情報を掴んだ際も、彼の個人的な違法行
為として認識されていた。
そのため、今回の作戦は「対生物兵器作戦」ではなく、「密売人の逮捕
作戦」として立案されたという経緯がある。
そして、そこにアーヴィングがつけ込む隙があった。






作戦の情報を掴んだアーヴィングは、取引現場をキジュジュ自治区外に
ある鉱山に変更。
BSAA側が取引現場と思い込んでいる自治区内に、罠を張り巡らせる。

まず部隊が現地へ到着する前に、新たに開発された「改良型プラーガ」
を街にばら撒き、市民全員を「マジニ」とした。
これは、バックアップチーム(クリス・レッドフィールドとシェバ・アローマの2名)
への威嚇と同時に、商品を闇市場へ流通させる前段階のデータ収集
のためと推測される。


また、突入部隊であるアルファチームに対しては、暴走したウロボロス・ウィ
ルスを用意。
この目論見は見事に的中し、ダン・デチャント率いるアルファチームを全滅
させている。

だが、彼にとって予想外だったのは、暴走したウロボロス・ウィルスがクリス
とシェバに倒されたことである。
また、情報の一部が保管されていたハードディスクを奪取されたことも
想定外であった。
これにより、クリスと車馬に本当の取引現場である鉱山の存在を知られ
てしまうこととなった。
予想外の事態に直面したアーヴィングは、次の手を打たざるをえなかった。
彼は、取引相手に商談の延期を連絡すると、鉱山に用意してあった各種
資料、書類などの回収に向かった。
そして、その最中にクリスとシェバに踏み込まれたのである。
ただし、彼にとって、この事態はある程度予想の範囲内であった。






アーヴィングは、外で待機していたフードの人物に救出されるとそのまま
逃走。
二人に対し、本来取引で使用するために用意していた「ポポカリム(コウ
モリをベースに生み出されたB.O.W.)」を差し向けた。

これは、取引をふいにされたアーヴィングの個人的な腹いせに過ぎないと
思われる。
合理主義的なビジネスマンという一面の裏に、そういう子供っぽい面も合
わせ持つのが、アーヴィングと言う人物の本質なのである。


さらに予想外の事態は続く。
鉱山から逃走してきたアーヴィングであったが、自治区内で待機してい
たジョッシュ・ストーン率いるデルタチームに発見されてしまったのだ。
その場は取引用として用意していた「ンデス(欧州で確認された「エル
ヒガンテ」のデータを基に作られたB.O.W.)」を使用することで窮地を脱
したが、取引をふいにされただけではなく、二体の大型B.O.W.を失った
ことは痛恨の極みであった。




そのため、粛清を免れないと判断したアーヴィングは密かに貯めこんでい
た私財を手に逃走を計るが、直後にフードの人物に取り押さえられてし
まう。
その人物は、アーヴィングにプラーガが入った注射器を差し出した。
これを使ってクリスとシェバを倒し、責任を取れと言うのだ。
だが、その注射器に入ったプラーガは、ただのプラーガではなかった。
それは「支配種プラーガ」だった。




支配種プラーガは、BSAAの資料によるとレオン・S・ケネディが欧州で遭
遇した事件でも、何度か使用が確認されている。
通常のプラーガと違い、寄生されても意識を支配されることはないが、体
に著しい変化をもたらしてしまう。
支配種プラーガを寄生させることは、人間として生きることをあきらめるの
と同義であった。





アーヴィングにとって、油田の爆破は最後の悪あがきだったに違いない。
そもそも、油田の地下に眠る原油は枯渇しかかっていた。
爆破による証拠隠滅と共にクリスとシェバが死ねば、支配種プラーガを
使用する必要はなくなる。
彼にとっては、まさに命を懸けた大博打であったが、それにさえも彼は勝
つことはできなかった。

結果、アーヴィングは支配種プラーガを自ら投与。
醜く変貌したその姿で二人に挑むが、力及ばず、あえなく最後を迎える
こととなった。



ンディパヤ族
沼地に独自様式の木造建築を作り、そこに居住。
高度な建築技術は広く知られており、世界中の破壊された遺跡の復興
で活躍している。
それが、世間でよく知られているンディパヤ族の姿である。







だが彼らには、部族の者以外には決して漏らさぬ秘密があった。
それが地下に広がる大遺跡群の存在である。

はるか昔、この近辺にはンディパヤ族が治める一大王政統治国家が
存在した。
大遺跡群は、その当時の王都であったと伝えられている。





特筆すべきは、その統治者選出方法である。
この国家は王政でありながら世襲制ではなかった。
王になろうとする者は、生まれの確かさではなく、その能力と資質を万民に
示すため、ある儀式に挑戦する必要があったというのだ。
儀式では、王都の深部にあるという「太陽の庭」でのみ生育するある植物
を用いた。

その植物は、現地の言葉で「太陽の階段」と呼ばれていた。



太陽の階段は非常に毒性が強く、食する者のほとんどを死に至らし
めた。
だが、稀にその毒に打ち勝つ猛者が現れた。
毒に打ち勝ったものは、その対価として人を超えた能力と人々の賞賛、
そして王の座を得ることができたという。

(この儀式については、現在でもンディパヤ族が年に1回行う祖先の
霊を慰める祭りの中で、その名残を見ることができる)



ただし、その毒に対抗しきれる者は極めて稀で、そのような猛者が現れな
かったため、一人の王が数百年王国を統治したという言い伝えも残され
ている。
この伝承が、新たな能力を得た王が数百年の時を生きたという証左な
のか、不正確な口伝によって生み出されたただの伝説なのかは、現在
では確かめるすべはない。

しかし、繁栄を極めたであろうこの王国も衰退し、滅亡したのは確かな事
実である。


なぜンディパヤ族の人々が王都を捨て、沼地にその住居を移したのか。
その理由については、いくつかの不正確な伝承が残されているのみで
よく分かってはいない。

だが、ンディパヤ族の人々は王都を離れた後もその地を神聖視し、その
存在を部族外の者に明かすことはなかった。
さらには、ンディパヤ族の男は13歳から25歳の間に2年間、王都を警
備する兵士として派遣されることをしきたりとしてこの地を守った。



公表されればアフリカだけではなく、世界の文明史さえも書き換える可能
性があるこの巨大地下遺跡群は、このような彼らの努力で現代まで誰に
も知られることなく存在し続けた。

だが、ある企業がこの遺跡の秘密をかぎつけた。1960年代のことである。
彼らは件の儀式で使われていた植物目当てに、武力をもってこの地へ進
出してきたのだ。
当然、ンディパヤ族の人々は必死で抵抗した。
平時は優秀な技術者だが、戦時には勇猛な戦士へと変貌する。
それが、彼らンディパヤ族である。

独自の兵器と優れた身体能力を武器に、彼らは勇敢に戦った。
だが、数の面で圧倒的に不利だった。
(人を超えた能力を得るため太陽の階段を口にした若者が多くいた
ためとも言われている)
その結果、彼らは太陽の庭より奥の地区を、その企業に割譲せざるを
得なかったのである。

だが、彼らはまだあきらめてはいない。
いずれの日か新たな王が現れ、王都全域を取り戻す日を待ち望んで
いるのである。



U-8
「U-8」は、寄生生命体「プラーガ」を利用した兵器開発プロジェクトで
生み出された有機生命体兵器(B.O.W.)の一種である。

様々な種類の生物の遺伝子が配合、改良されて組み込まれているが、
特に甲殻類の遺伝子が色濃くその外見に反映されており、その結果、
強固な甲殻装甲を手に入れることに成功している。
その甲殻装甲は無類の防御力を有しており、性能評価試験報告による
とRPGの直撃にも耐えたとされる。



また、その巨体も特徴の一つとして上げられる。
全長数十メートルに及ぶ体躯は、それ自体が一つの武器と言え、特に
3メートルを越える巨大鉄脚は、白兵戦で絶大な効果を発揮する。
両方の鉄脚から繰り出される一撃はスピードこそそれほど速くはないが、
その超重量級の一撃は威力十分で、戦車程度の装甲であれば簡単に
貫いてしまう。





さらにU-8は、本来抱卵のために使用される腹部分に、飛行型B.O.W.
を共生させている。
この飛行型B.O.W.は、その収納部分からU-8の幼生と勘違いされるこ
とがあるが、全く別種のB.O.W.である。
1対1の近接先頭では無敵の強さを発揮するU-8だが、多数の敵を相
手にした場合は、その巨体をもてあますこともある。
またその巨大さから、遠距離からの狙撃では格好の的となってしまう。
その弱点を補うための飛行型B.O.W.であり、それは空母と艦載戦闘機
の関係に似ている。


このように兵器として完璧に思えるU-8であるが、欠点も存在する。
まず最大の武器であるその巨体だが、それがあだとなり、行動には膨大
なエネルギーを必要としてしまう。
そのため、U-8の連続活動時間は短く、長時間遂行される作戦には向
かない。
トライセルの営業用資料によると、拠点防衛、もしくは短時間で完遂され
る強襲作戦での運用が効果的とされている。
(ただし、強襲作戦の場合は作戦目的地までの輸送手段を確保する必
要がある)


また、あまりに急激な巨大化を促したため、その防御の要である甲殻装甲
が一部欠損している。
決して広い部位ではないが、この部分への攻撃はU-8にとって致命的で
ある。







しかし、いくつかの欠点は存在するものの、その汎用性と戦闘力の高さ、
またコントロールのしやすさには定評があり、U-8は生物兵器市場で人気
の高い商品である。
記録によると、初期生産型のU-8と改良型(甲殻装甲の多層化による
防御力強化型。欠点であった露出していた部位にも甲殻が生成されて
いる)の「U-8'」、あわせて十数体がリカルド・アーヴィングの手により売却
されたとある。




ちなみに、防御力を犠牲にして軽量化し、活動時間の増大と高速化を
見込んだ再改良型のU-8開発も立案されていたようだが、計画段階で
開発中止になったようだ。
本作戦でクリス・レッドフィールドとシェバ・アローマが遭遇したのは、甲殻
装甲の欠損が認められることから、初期生産型のU-8と推測される。

なおU-8の「U」は「ウロボロス(Uroboros)」の「U」ではなく、「アルティメイ
ト(Ultimate)」の「U」とされている。





トライセル
トライセルとは、「海運」「資源開発」「製薬」の3部門を主軸とする複合
企業体である。

トライセルの歴史は、大航海時代と呼ばれている時代までさかのぼる。
欧州の豪商であったトーマス・トラヴィス、彼が経営する「トラヴィス商会」
がトライセルの前身である。
トラヴィス商会はアジア方面との貿易で莫大な利益を上げ、今日のトライ
セル海運部門の基礎を築いた。トラヴィス商会は海運貿易会社として順
調に発展し、19世紀を迎える。


19世紀、トラヴィス家の7人兄弟の末子であった「ヘンリー・トラヴィス」は、
私財をなげうってアフリカ探検へと出発した。
当時は、デヴィッド・リヴィングストン等のアフリカ探検に関する記事が新聞
紙面を賑わしていた時代である。
それに触発された形のアフリカ探検であったが、それがその後のトラヴィス
商会の運命を決めることになる。





ヘンリーのアフリカ探検は大陸全域を対象とし、五度にわたり実施され
た。彼の探検はトラヴィス家の豊富な資金力に支えられていたため、幾
度かの中断の際も本国に帰ることはなく、アフリカ沿岸の街に居を構え
て次の探検の準備をするスタイルをとっていた。
そのため、彼が帰国したのは五度目の探検が終了した後、実に本国を
出発してから34年もの歳月が経過していたと言われている。





そして彼の探検の記録は「博物総覧」と言う全72巻に及ぶ大探検史と
して編纂されたのである。
この本は、アフリカの動物、植物、昆虫、鉱物、地質などの博物学的な内
容だけではなく、アフリカに住む人々の生活、文化、習慣、歴史などにも
言及した民俗学的な要素も併せ持っており、さながら当時のアフリカ百
科事典とも言える内容であった。
だが、この博物総覧は全巻が出版されたものの、その緻密すぎる内容
から世間からはヘンリーの創作として受け止められたため、
一部の好事家が愛読するだけの珍奇本の類として小部数が出版され
るにとどまった。

この事態に絶望したヘンリーは、帰国後2年目の夏、失意の内に他界
する。

現在では、これは当時のトラヴィス商会の当主(ヘンリーの長兄に当たる)
が、末弟の本をフィクションだという噂を故意に流したためと言われている。
なぜそのようなことをしたのか?
それは、トラヴィス商会が、この情報を他者に利用されることを恐れたため
である。



彼らが特に重要視したのは、地質学的な要素をまとめた第17巻から
第24巻の8冊である。
この情報を基に、トラヴィス商会は19世紀末、アフリカの鉱物資源開発
に乗り出す。
これによりトラヴィス商会は、アフリカ各地にいくつものレアメタル採掘鉱山、
油田、天然ガス田等を発見、開発し、莫大な利益を上げていった。
これがトライセルの資源開発部門の起源である。




また、アフリカに確固たる足場を築いたトラヴィス商会は、20世紀中ごろ
より動植物、昆虫などを積極的に採取し始める。
この採取の際も、博物総覧が積極的に活用されたことは言うまでもない。
採取された素材を基に薬品開発を行い、それを事業化。今日の製薬
部門の設立となった。






トラヴィス商会の基礎を築いた「海運部門」。

ヘンリーが記した博物総覧に基づき開発が進められた「資源開発部門」。

そして、アフリカの動植物から採取された素材を基に独自の開発を行う
「製薬部門」。

主要3部門が揃った1960年代、トラヴィス商会は企業名を3部門の複合
企業体であることを示す「トライセル」に改称し、今日のトライセルが誕生した。


なお、ヘンリーが記した博物総覧に目をつけたのは、トラヴィス家だけでは
なかった。
アンブレラの創始者であるオズウェル・E・スペンサーもまた、この本の民俗
学的側面に着目。
ンディパヤ族の儀式に関する記述から、始祖花の存在を予測し、それが
始祖ウィルスの発見に繋がったとされている。







ジル・バレンタイン
華奢な体つきに端正な顔立ち。
街を私服で歩いていれば、彼女が精鋭S.T.A.R.S.の元隊員であるとは
誰も思わないだろう。
だが、一旦有事となれば彼女は誰よりも優秀な兵士となる。
銃器の扱いはもちろんのこと、キーピックにより簡単な鍵であれば開錠して
しまう器用さ、さらには爆発物処理のスキルと多彩な才能を備えている。

それがジル・バレンタインである。



ジルは、クリスと共にS.T.A.R.S.アルファチームに所属。
一緒に忌まわしいアークレイ研究所での惨事、通称「洋館事件」に巻き
込まれる。
洋館内ではクリスと別行動を取ったジルだったが、最後にはクリスと共に
事件の真相へとたどり着くこととなった。
仲間であったバリー・バートンの裏切り、そしてそれを裏で糸を引いていた
S.T.A.R.S.の隊長アルバート・ウェスカー。
人間をゾンビのようにしてしまうt-ウィルスの存在、そして巨大製薬企業
アンブレラの陰謀。


それらの真実が、その後のジルの運命を決定した。
洋館からの生還後、彼女はクリスと共にアンブレラの危険性を訴えるが、
一向に調査は進まなかった。
それに業を煮やした二人は、独自の調査をすることにした。
調査対象は欧州にあるアンブレラの本拠地。
だが、彼女がS.T.A.R.S.の隊員として守るべきラクーンシティにもアンブレラ
の重要研究施設が残っていた。
それを調査するため、彼女はクリスに遅れて欧州へ向かうことにしたのだった。



そして、それがジルをもう一つの事件へと誘う。
調査の最中、アークレイ研究所からt-ウィルスが漏れ出し、それがネズミ
を媒介にして市全域に蔓延してしまったのだ。
t-ウィルスに汚染されたラクーンシティは、ゾンビが徘徊する文字通りの死
の街となった。
そして、この事態にいち早く反応したのは、事件の元凶であるアンブレラ
であった。




バイオハザード対策部隊「U.B.C.S.」を現場に送り込み、さらには生き
残ったS.T.A.R.S.隊員の口をふさぐためネメシス-T型と呼ばれる生物
兵器を投入してきたのだ。
ネメシス-T型に追われながらも街からの脱出を図るジルは、そこで一人
の男と出会う。
U.B.C.S.の生き残り、カルロス・オリヴェイラである。





自分たちの部隊が市民の救出を目的としていると信じて疑わないカルロ
スは、協力して街から脱出することを提案してくるが、ジルはその言葉を
素直に受け止められずにいた。
だが、事態は切迫していた。
米政府はラクーンシティのウィルス汚染を問題視、「滅菌作戦」と称され
る特殊爆弾攻撃を決行しようとしていた。
さらにはジルがt-ウィルスに感染してしまい、脱出は絶望的かと思われた。
だが、その窮地を救ってくれたのがカルロスだった。



ワクチンを入手したカルロスは、t-ウィルスに感染したジルにそれを投与。
無事に回復したジルはカルロスと協力し、ラクーンシティ脱出に成功する
のだった。

そして、2003年。
ロシアで行われた「T-A.L.O.S.阻止作戦」を経て、ジルはクリスと共に
BSAAの初期メンバー(オリジナル・イレブン)として世界中の生物兵器
犯罪に挑むこととなった。



アジアでの生物兵器テロ阻止、南米の生物兵器研究所の壊滅作戦、
欧州での密売人の逮捕作戦、様々な作戦に従事した二人であったが、
再びその前にアンブレラの影が横たわることになるとは思ってもみなかった
だろう。
その影は、深く濃い黒だった。
アンブレラの創始者オズウェル・E・スペンサーの存在である。





スペンサーの居場所を突き止めた二人は逮捕に急行、スペンサーの
部屋に踏み込むが、そこにいたのはかつての上司、そして仇敵である
アルバート・ウェスカーであった。
ウェスカーの足元に転がるスペンサーの骸を確認した二人は、急遽
ウェスカー逮捕に作戦を変更した。
2対1、絶対的に有利な状況である。
だが、ウェスカーはすでに人間を超えた存在になっていた。
二人は、全くウェスカーに歯が立たなかった。



そして、ウェスカーの拳がクリスの胴体を貫こうとした瞬間、ジルは反射
的に走った。
勢いのままウェスカーに組み付いたジルは窓を突き破り、そのままウェス
カーを道連れに奈落の底へと消えていった。
その場に残ったのは、クリスと、彼の叫び声だけであった。






その後、BSAAの手による大規模な捜索が行われたが、死体どころか
遺留品ひとつも発見されなかった。

そして2006年11月23日、ジル・バレンタインは公式に死亡と認定され、
BSAAの殉職者リストに名を連ねることとなった。






だが、彼女のストーリーはまだ終わっていなかった。
崖下に消えた彼女は、あろうことかウェスカーに救出されていたのだった。
ジルを救出したウェスカーは、そのまま彼女を冷凍睡眠状態で生かし続
けた。
「ウロボロス計画」が完成した際には、被験体第一号として彼女を利用
しようとしていたのである。
これは、ウェスカーのささやかな復讐であった。




しかし、事態はジルに味方をした。
ジルの生命反応を監視していたセンサーが、異常な数値を検知したのだ。
彼女の体内で何かが起ころうとしており、それが再びウェスカーの興味を
引くこととなった。
検査の結果、彼女の体内に変異したt-ウィルスが存在することが確認
された。
それは、かつてラクーンシティで感染したt-ウィルスの残滓であった。




t-ウィルスはワクチンで完全に駆逐されたわけではなく、彼女の奥深くに
潜み行き続けていたのだ。
それが長時間の冷凍睡眠状態で活性化、表に顔を出してきたのである。
そのt-ウィルスは、程なくして消滅してしまった。
だが、残った物もあった。
体内から、強力なウィルス抗体が発見されたのだ。
長年体内にt-ウィルスを潜伏させ続けた末に、彼女の自己防衛能力
が生み出した一つの奇跡といえるだろう。

そして、この事実はウェスカーを歓喜させた。

ウロボロス計画の中心であるウロボロス・ウィルスであるが、開発は予想
以上に難航していた。
始祖花から生成された初期のウロボロス・ウィルスは、毒性が強すぎて、
そのままでは使用できなかった。
人類の進化を促すどころか、死へと誘ってしまうのだ。
ウェスカーはその毒性を弱めるため、ジルが持つ抗体の利用を思いつい
たのである。
ジルは抗体の生体工場として生かし続けられた。
生物兵器テロを人一倍憎み、数々の陰謀を阻止してきた彼女が、最悪
の陰謀のために利用されようとしている。
これほどの皮肉はないだろう。
そして、ウロボロス・ウィルスが完成した。
用済みになったジルであったが、ウロボロス・ウィルスの被験体には
ふさわしくない。
彼女の体内には、純度の高いウィルス抗体が充満しているのだ。
そこでウェスカーは、違うやり方で彼女を利用することにした。






始祖ウィルス研究の副産物として生み出された薬品があった。
その薬品に正式な名前はなく、研究員の間ではただ単に「P30」と呼ば
れていた。
これを投与されると、被験体は精神を支配されるのと同時に、超人的な
パワーを身に付けることができる。
つまりは一種のドーピングである。
ウロボロス計画の目的は、新たな人類への進化である。
その意味では、この薬品の存在価値は低い。
だが、商品としては使えるかもしれない。


こうして、同じく決して反抗することのない最強の兵士を生み出すための
「プラーガ計画」と平行して研究が続けられた「P30」であったが、大きな
欠点があった。
効果時間が極端に短いのである。
代謝されて体外に排出されればほとんど後遺症が残らないのは長所だ
が、効果時間が短すぎるのでは商品として売り物にならない。
そこで考案されたのが、体外装置による薬剤の継続投与であった。




だが、効果時間が短いとは言え強力な薬品に違いはない。
継続投与は、どれほど体にダメージを与えるか分からない。
それを知るため、ジルを被験体とすることにしたのだ。

胸に付けられた体外装置は、継続的にジルに薬剤を投与し続けた。
そして、その精神を蝕み続け、かつてのパートナー、クリスがその呪縛を
解き放つ時まで、ウェスカーとエクセラの“玩具”として彼女を生かし続け
たのである。





エクセラ・ギオネ
エクセラが育ったギオネ家は、ヨーロッパでも名の通った貿易商の一家
である。
また、祖母はトライセルの創業者一族であるトラヴィス家の出身であるため、
由緒ある血筋の一族の出身と言える。
名家で生まれ育ったその出自ゆえにプライドが高く、さらにはその美貌
から周りの人間(特に男性)を見下す傾向が強い。

だが、ただ見た目が良いだけの富豪令嬢であれば、彼女が今の地位
につくことはなかっただろう。
エクセラの本質は、その明晰な頭脳にある。

父親譲りの経営の才能に加え、飛び級で入学した大学では遺伝子工
学を専攻、その才能は祖母の実家が経営するトライセルからも高く評価
され、わずか18歳の時にトライセル製薬部門の一員となることとなった。

だが、いくら創業者一族出身で才能豊かとは言え、彼女自身は傍流の
ギオネ家の出身である。
社内で何十もある研究チームの1つを与えられたにすぎなかった。
人の風下に立つことを良しとしない彼女の性格を考えると、これは相当な
屈辱だったに違いない。


そのような時に彼女に接近してきたのがアルバート・ウェスカーである。
ウェスカーは、彼女の才能とその気性に目を付け、自らが持つt-ウィルス
などの情報をエクセラに提供した。

これらは、エクセラの確かな武器となった。
彼女がもたらした情報と技術により、トライセルの生物兵器開発は飛躍
的な発展を遂げた。




さらに、生物兵器市場でのトップシェアを誇っていたアンブレラの崩壊とい
う幸運も重なり、トライセルは順調にシェアを拡大していったのである。
そして、それは開発における最大の功労者であるエクセラの発言力も同
時に高めていき、いつしか、彼女の言動は製薬部門全体の方針さえも
左右するようになっていた。
これは、ウェスカーの狙い通りの結果でもあった。





次にエクセラは、トライセル・アフリカ支社の支社長のポストを要求。
生物兵器事業を材料に甘言、恫喝を巧みに使い分け、まんまとこの
ポストを手中にするのであった。

このアフリカ支社長への就任劇がウェスカーの差し金であったことは、
想像に難くない。
ウェスカーは、エクセラが持つ自身への恋愛感情を利用し、「ウロボロス
計画」にエクセラとトライセル・アフリカ支社を利用しようとしていたのだ。



彼女がアフリカ支社長に就任してまず行ったのは、すでに遺棄されていた
「アンブレラ・アフリカ研究所」を復活させることであった。
この研究所は、アンブレラにより始祖ウィルス研究のために建設されたも
ので、ウロボロス計画完遂のためには絶対に必要な施設である。
研究所復活後は、手駒の一つであるアーヴィングを用いて生物兵器の
売買を行い、研究資金の確保をしつつウロボロス・ウィルスの研究を行っ
ていった。




そして、ウロボロス計画は最終段階を迎える。

彼女自身は計画終了後に訪れる新世界での女王の地位を夢見ていた
が、王となる男、ウェスカーの手によりウロボロス・ウィルスを投与されてし
まう。
ウロボロス・ウィルスはエクセラの遺伝子を拒絶すると暴走を開始、体を突
き破ったウィルスにより巨大なウロボロスに変貌した彼女は、その生涯を
終えた。





アルバート・ウェスカー
洋館事件、ラクーンシティでの惨事、ロックフォートに端を発するアンブレラ
南極研究所での事件、ロシアのコーカサス研究所における事件、そして
アメリカ大統領子女誘拐事件。

全ての事件において、表舞台、裏舞台関わらずその存在が確認される男。
それがアルバート・ウェスカーである。
今回の事件は、その彼の行動が発端となったと言っても過言ではない。




ウェスカーは、これまでt-ウィルス、G-ウィルス、t-Veronica、プラーガと
数々のウィルス、生物を手中にしてきた。
それらを武器にアンブレラのライバル企業でのし上がり、地位も富も名誉も
手に入れた。
物質的には満たされた。

だが、彼の中には常にある違和感が存在し続けた。
それが、アンブレラの創始者オズウェル・E・スペンサーの存在である。



ウェスカーは、昔からスペンサーの真意を測りかねていた。
彼の過剰なまでの有機生命体兵器(B.O.W.)開発に対する投資は異
常とも言えた。
本来、生物兵器のメリットは安価に開発できる点にある。
通常の兵器システムとの併用を考えれば、ここまで極端なB.O.W.開発
は必要ない。
どうしてそこまでB.O.W.に固執するのか。
かつてウェスカーは、その答えを探るため、アンブレラの情報部へと身を置
いたこともあった。


その疑問が、再び頭をもたげるようになったのだ。
ウェスカーは、その疑問の答えを求めてスペンサーの行方を捜した。
しかし、アンブレラ崩壊後、いやそのもっと以前からスペンサーは表舞台
から姿を消し、行方知れずとなっていたのだ。
持てる物は全て使った。
金も時間も、組織の力も全て使い、ついにウェスカーはスペンサーの行
方を捜し出したのだった。




欧州の古城、雷が鳴り止まぬ初秋の夜、ウェスカーはスペンサーのもとを
訪れた。
驚くかと思われたスペンサーは、ウェスカーの姿を見ると、その干からび
落ち込んだ眼窩の底で暗い歓喜を光らせた。

「戻ったか……」

スペンサーは、そう呟くと乾いた咳混じりに笑った。



ウェスカーは、またもこの老人の真意を測りかねていた。
アンブレラにいた当時、何度も味わったこの感覚。
この枯れ枝のように弱々しい体を持つ老人から発せられる重く、粘つく
ような存在感。
全てを飲み込み、この自分さえも掌で踊らせてしまうような絶対的な
意志の力。
これが自分をイラつかせる元凶であり、内に潜む最大の違和感の正体
だった。
その内面を見透かしたかのように、スペンサーは語り始めた。


彼にとって有機生命体兵器開発は、真の目的を達成させるための
手段でしかなかった。
彼の真の目的は、ウィルスによる人類の強制進化。
20万年続いた現生人類の終焉と、新生人類の誕生。
新たな人類により理想郷を創造し、そこで神となるのが彼の真の目的
だったのだ。

そして、その歪んだ理想を実現させるために彼が必要としたものが3つ
あった。


一つは「始祖ウィルス」。
始祖ウィルスがなければ、彼の理想郷創造など彼自身の夢想にしかす
ぎない。
その夢を現実世界へと引きずり出したのが、始祖ウィルスの存在だった。

二つ目は「アンブレラ」
彼の真意を誰にも悟られることなく始祖ウィルスの研究を進めるのに、兵
器利用目的の開発というのはうってつけだった。
そのためのアンブレラであり、彼にとって、ここから得られる利益など副次的
なものに過ぎなかった。

そして三つ目が「ウェスカー」である。
スペンサーが思い描く理想郷。
そこに住まう者たちも、理想的な人類でなくてはならない。
では、理想的な人類とは?

始祖ウィルスにより進化を促された新生人類。
もちろん、それは大前提である。
しかし、進化を促された者が自分の意に沿わないような人物であったら
どうなる?


進化し、超人的な肉体と知性を手に入れたとしても、その者の知識、
倫理観、常識は変わることはない。
怠惰で無能な者が新生人類として選ばれたとすればどうなるか。
それは彼の理想郷を汚す、決して落ちないシミとなってしまうだろう。
どうしても避けねばならない事態である。
そのためスペンサーは、一つの計画を実行することにした。

この計画は、主任研究者の名前を取り「ウェスカー計画」と呼ばれる
こととなった。


計画に沿い、世界中のあらゆる人種から数百名の子供が集められた。
いずれも才能あふれる両親から生まれた子供たちである。
知識、倫理観、常識を変えることができないのであれば、最初からこちら
が望むものを与えてしまえばいい、彼はそう考えたのだ。







こうして集められた子供たちは、それぞれに「ウェスカー」の名前が与えら
れ、世界中へ解き放たれた。
当然、本人に気付かれることなく厳重な監視が付けられた上でである。
彼らは分野こそ違うが、それぞれが最高の教育を受けられる環境で成長
することになるのだった。

そして数年後、特に優秀と認められた一人の青年がラクーンシティにある
「アンブレラ幹部養成所」へと送られた。
それが「アルバート」の名前を与えられたウェスカーである。


その後のアルバート・ウェスカーの行動は、スペンサーを喜ばせるもので
あった。
彼の基準に沿えば、このウェスカーには十分に新生人類の資質ありと
言えた。
またそれは、その他のウェスカーたちも同様であった。

そこでスペンサーは、計画を次の段階へと進めることにした。
全てのウェスカーに、試作段階のウィルスを投与することにしたのだ。



言わばこれは、真に優秀なウェスカーを見極めるための“ふるい”である。
ある者は親友から勧められ、ある者は治療の一環として、ある者は強制
的に試作段階のウィルスを投与されることとなった。

当然、アルバート・ウェスカーも例外ではない。
彼はライバルであるウィリアム・バーキンから試作段階のウィルスを受け取
り、策謀のために自らの手で投与したのである。




結果、この“ふるい”は厳しすぎたと言えるかもしれない。
ほとんどのウェスカーは死に、生き残ったのはわずかであった。
そして生き残りの一人アルバート・ウェスカーは、いずこかへと消え去った
のである。







だが、スペンサーはあわてなかった。
全てのウェスカーには、安全装置が取り付けられていたのだ。

それが「スペンサーの存在感」である。

それが、ウェスカーが感じ続けた違和感の真の姿だった。
ウェスカーはスペンサーのことが気になっていたのではなく、気になるよう
に仕向けられていたのだ。
そして、スペンサーの思惑通り、ウェスカーは戻ってきたのだった。


だが、スペンサーは一つだけ計算違いをした。
ウェスカーの深層心理に刻み込まれた安全装置は、謎だったからこそ有効
だったのだ。
正体さえ分かれば、ウェスカーがそれにおとなしく縛られている理由はない。
ましてや、それが老いさらばえ、死期の間近な老人であればなおさらである。

「神か……なるほど。俺が引き継ごう」

その言葉と共に、ウェスカーは自ら鎖を断ち切った。


そこにかつての部下であるクリス・レッドフィールドとジル・バレンタインが
踏み込んできたのは、ただの偶然だったのだろうか。
ウェスカーには、それが啓示に思えた。
幾度も自分の計画を邪魔してくれた現生人類。

確かに、まだ進化の余地はありそうだ。

ウェスカーは内心呟いた。



そして、その場を切り抜けたウェスカーは、とある製薬企業で手にしていた
地位を利用して研究成果とウィルス、そして資金を持ち出し、再び地下
へと潜った。
真の「ウロボロス計画」を決行するため、次世代の神となるための階段を
上り始めたのである。










5AE


誰かの日記の写し



(誰かの日誌の写しのようだ。
 ところどころページが抜けている)



May 9.1998
夜、警備員のスコットとエリアス、研究員のスティーブと
ポーカーをやった。
スティーブの奴、やたらとついてやがったが、
きっといかさまにちがいねェ。俺たちをばかにしやがって。



May 10,1998
今日、研究員のおえら方から、新しい化け物の世話を頼まれた。
皮をひんむいたゴリラのような奴だ。





なんでも、研究所で事故があったらしい。
研究員の連中ときたら、夜も寝ないで、実験ばかりやってるから、
こんな事になるんだ。

May 12,1998
昨日から、このいまいましい宇宙服をつけたままなんで、背中が
むれちまって、妙に、かゆい。

May 16,1998
昨日、この屋しきから逃げ出そうとした研究いんが一人、
射さつされた、て 話しだ。
夜、からだ中あついかゆい。
胸のはれ物 かきむし たら 肉がくさり落ちやがた。
いったいおれ どうな て


May 19.1998
やと ねつ ひいた も とてもかゆい
今日 はらへったの、いぬ のエサ くう





4

かゆい
うま








(最後のページにメモのようなものが挟まっている…)




※「May 9.」と「May 19.」の「.」は原文ママ。
他の日付は「,」が使われている。
※抜けているのは10日の途中〜11日の途中、12日の途中〜14日、21日。


パトリックの手記1
一時期はもち直したかに見えたオズウェル様の体調だったが、
ここのところ再び思わしくなく、自室へとこもられている時間が
日に日に多くなっている。
ここで食事をとられたのも、いつの日以来だろう。
もっとも、私が心をこめて作った食事をお持ちしても、口をつけ
られるのはスープ程度なのだが。


一体、いつの日からこうなってしまったのだろうか。
代々スペンサー家が生活の場とし、さらには欧州社交界の
中心地のひとつであった館はすでに人手に渡っており、
今は多くの別邸のうちのひとつで隠者同然の身で暮して
おられる。
数代にわたりスペンサー家の執事としてお仕えする我が一族
だが、祖父の代、いや父の代であっても、このような状況は
想像できなかったであろう。
昔は良かった。
あれはいつの日だっただろうか。
たしか50年ほど前。
執事長であった父は健在で、私は見習い執事として館の端を
家人の目に止まらぬよう駆け回っているころだった。



オズウェル様は貴族仲間であるアシュフォード卿、ご学友であった
ドクター・マーカスと、この別邸へと避暑へやってこられており、
先代の命で、父と私もお三方の世話のために同道していた。





私はただ一人の年下とあってか、お三方によくからかわれ、
そして可愛がられたものだ。
初めてスコッチを口にしたのも、あの夏の日だった。
たしかアシュフォード卿が勧めてくれたと記憶している。
すべてが良き思い出だ。
遠き日の、二度と戻らぬ。


父は無論のこと、アシュフォード卿、ドクター・マーカスもすでに
この世にはおらず、悲しいかなオズウェル様もそう長くはないだろう。

オズウェル様の代でスペンサー家は終焉を迎える。
そして、我らが一族の務めも。
今はその日を、この地で静かに待つほかない。






(最後のページにメモのようなものが挟まっている…)






パトリックの手記2
地下に閉じ込められたあの者たちの声が、耳から離れない。
オズウェル様の指示でウィルスを投与して1週間。
すでにあの者たちは人間ではない。





これまで私は、数多くの実験のお手伝いをしてきた。
科学の知識を持たぬ一執事の身ではどこまでお役にたてて
いるか怪しいところだが、オズウェル様が周りにいるすべての者に
疑いの目を向けている今、私のみに心を開き、実験のお手伝いを
させていただけることを、
まずは誇りに思うべきだろう。


だが、今、私の思考と精神の間に小さくゆっくりとだが隔たりが
生まれつつある。
頭ではオズウェル様の実験の手伝いができることを喜ばしく
思っているが、心は低く、体中に響くように悲鳴を上げている。

方法は二つある。
お暇をいただき心を守るか、心を殺すか。

考えるだけ無駄だろう。

「忠義と礼節」

代々スペンサー家に仕えた我が一族の家訓だ。
この言葉を支えに、オズウェル様に最後まで仕えることが、
これまでの自分の人生を裏切らないことにもなる。
分かりきったことではないか。
さあ、時間だ。
地下へ下り、あの者たちの様子を観察して報告する。

忠義を果たすことにしよう。
礼節を持って。





スペンサーの手記1
私はオズウェル・E・スペンサー。
アンブレラの創始者であり、支配者。
人類を高みへといざなう指導者。
私の名は神と同義といっても過言ではない。

そうなるはずであった。


だが、私にはできなかった。
人の中で蛇のようにからまる鎖を断ち切ることを。

私は侵されている。
老いという病魔に。
顔に深く刻まれたしわ、細く枯れ木のように衰えた腕、
自らの体も支えることのできぬ脚。
すべてがこの病魔のせいだ。
私は決断する。
人類を高みへといざなうという高貴な使命は、一時中断せねば
なるまい。
まずは、この病魔を食い止めねば。




俗人は言う。
人は死あればこそ、生の喜びを知ると。

だが、それは死を持つ者の言葉でしかない。
死を恐れるゆえのごまかしにすぎない。
死を持つ者が、持たぬ者の意義を知ることはできない。
それを知らずして、なぜ人の意義を断じることができるだろうか。

老いを駆逐し、人類をいざなうにふさわしい健全な体を手に入れる。
そして人類に新たな価値観を示すことも、私に託された使命であろう。






私は持っている。
不老不死への扉を開く鍵を。
アンブレラが研究し作り出したウィルスの中には、
テロメアの消滅を抑制し無限の細胞分裂をもたらすものもある。
その不死の命をもたらす無限連鎖を、この手にすることができれば。



そして、私にはある。
それを実現させる力が。
アンブレラ崩壊後、多くの人材が野へ下った。
だが、本当に優秀な一握りの者は私のもとにある。
我が子、アレックスもその一人だ。



私は信じている。
アレックスならば、この病を根絶する方法を見つけ出してくれると。

それは紛れもない真実である。






スペンサーの手記2
私はアレックスの要求をすべてのんだ。

アレックスには卓越した能力がある。
それは適切な時期を見極め、必要な要素を揃え、とどこおりなく、
それらを運営していく能力だ。
他の子供たちがただひたすらに自らの能力に頼り生きていこう
とするのに対し、アレックスは他人の能力を自らのものとすることに
長ける。
それもまた人の上に立つ者の資質と、私は高く評価している。

私はアレックスとその配下の者たちに研究の場を与えた。
必要な資金、機材、研究資料、そして被験体を。
自由にさせなかったのは時間だけだ。



研究の場に選ばれたのは、南洋に浮かぶある孤島。
かつてはとある国の軍事施設があったが、今は遺棄されて久しい。
機材と研究員、そして数百人の被験体を連れ、アレックスは
そこへと渡った。




私は吉報が届くのを待った。
だが、一月後に届いたのは、被験体の追加を要求する
一本の電話だった。
奴は、わずか一カ月の間に数百人の被験体をすべて
使い切ったのだという。



アレックスは言った。

「喜んでください、実験は順調です」と。

私はさらに待つことにした。





スペンサーの手記3
私は待ち続けた。
実験を始めてから一年。
未だ吉報は届いていない。
島に送った被験体は万を超える。




アレックスは、改良したウィルスを手当たり次第に被験体へ投与している。
改良したウィルスを検証している時間の余裕はない。
とにかく見込みのありそうなウィルスを被験体に与え、経過を観察する。
アレックスの行為は理にかなっている。




私は追い詰められていた。
老いはすでに外だけにとどまらず、内も蝕みつつある。
多くの器官が機能不全を起こし、それをごまかすために機械の
世話になるというていたらくだ。
もはや時間がない。

我が手に不死の無限連鎖を。
アレックスよ、急ぐのだ!


スペンサーの手記4
私は聞いた。

実験成功の報を。

気分は久々に晴れ渡った。

昨夜は、執事のパトリックが用意した料理とワインを、存分に味わった。

だが、今の心持ちはその対極にある。

アレックスが消えた。

いや、それだけではない。



その部下も!

被験体も!

そして研究の資料と我が身を癒すウィルスさえも!



私は裏切られた!

一度ならず二度までも!

まさか、あの男アルバートと同じだとは!



絶望と言う名の獣が暗い口を大きく開け、私を飲み込もうとしている。

もはや信用できるのは、パトリックしかいない。

我が身を癒す方法は二人で見つけなくてはならない。



間に合うのか。

分からない。

それは私がなるはずだった神のみぞ知ることだ。





パトリックの手記3
長年オズウェル様にお仕えしてきたが、今度ばかりは
その真意を図りかねている。
これまでオズウェル様は、外界との接触を断ち、自らの居場所も
細心の注意をもって秘密とされてきた。




だがオズウェル様は、自らの居場所をある男に伝えるよう、
いやその情報が意図的に流されたものと悟られることなく、
その男の耳に届くようにと私に指示を下された。
その男の名は「アルバート・ウェスカー」。
この名前を耳にするのは、いつ振りだろうか。
一度だけ会ったことがある。
もう10年以上前のことだろうか。

人の顔を覚えるのも執事の仕事ではあるが、恥ずかしながら
顔をはっきりと思い出すことができない。
理由は、あの目だ。
あの硬く温度の感じられない目が私の視線を釘付けにし、
その他の印象をおぼろげなものにしている。
ともかく私は、オズウェル様の意図通りにことが進むよう、
まずはある男に情報を託すことにした。

情報屋とうそぶくケチなチンピラだが、謝礼次第でこちらの
意図通りに情報を流してくれるし、何よりもハッタリがきく男だ。
そして何よりも重要なのが、ウェスカーの部下であるあの女スパイが
情報屋の一人として使っているという事実である。




あの男(たしかリカルドかロベルト…そんな名前だ)に十分な謝礼
と必要最低限の情報を渡しておけば、結果はおのずと望む通りと
なるだろう。

私は自らの役目を完璧にこなしたと考えている。
だが、一番不可解な事態はその後に訪れた。


オズウェル様は私にお暇を出された。
どうしてだ。
私は初めて、オズウェル様にその意図を問いただした。
だが、それに答えてはくださらなかった。
それが音もなくあげられた終焉の合図だった。
スペンサー家、そしてオズウェル様に仕えることこそが私の
人生だった。
そして、それは今静かに幕を閉じた。
後に残るのは、オズウェル様が決して心を許しておらぬSPたちと、
地下に閉じ込められたあの者たちだけだ。
奴らがオズウェル様の満足なお世話をできるとは思えない。

まさか、オズウェル様は自分の死期を…
いや、それはない。
オズウェル様に限って、それだけは。
道半ばで死を覚悟される方ではない。
きっと、私などが思いもつかぬ壮大かつ深遠なお考えを
お持ちなのだろう。

ともかく、今はオズウェル様の意思に従い舞台を下りるのが、
真の忠義というものだろう。
そう思うしかない。





(もう一つファイルがある。
 実験に使われた人名のリストのようだ…)







「被験体リスト」




001:ハンス
002:フェリシア
003:マルコ
004:ヨナ
005:イルマ
006:ケン
007:ローラ

008:ウィリアム
009:ヒロ
010:デレク
011:マイルズ
012:アレックス
013:アルバート


以上の13名を第一候補とする。












小ネタ

U-8戦 直前にクリスが操作していた端末のリスト
SHOKO NAKATA
ULPU AHTI
YUL AZEF
LOLO ALBIOL
ALCIDE TOLO
ADAM ZOE
JULIE VELLE
JESSICA SMITH
CHRIS WESTWOOD
ORIOL BELEN
ELJA KAMU
HARRY TAYLOR
LARK STAYWALKER
TICKY AMEDEE
AAPO WILEN
IVAN TITOTOVS
JOJO CHARLES
LUCA SALI
RIZ DORIA
ALEX ROLL
CURT HAHN
LINA KOZYA
HERMAN RYTI
OLIVER WILSON
TSUYOSHI IRIE
TOIVO CANTY
STEVEN CHAPMAN
ELIEL TOLAU
BERTI LANG
RAUL BENITO
AIGG VEGDOTEIO
GENTILE TONTI
VEURA BAAL
JULIE VELLE
KAUKO PELLI
NADJA DOL
MINO MUTI
SONYA BUBUKA
HILMA JARV
EMMA BROWN
JULIE VELLE
VERA COBISI
SALVA BOIA
REMU BOBER
UNAI CORERA
KIMIHIRO TOMINO
CHUB DIEGO
FRANK EAST
ROSA KUSH
DANIEL DAVIS
LOIC CHARLES
GEORGE LOCKMAN
VIRPI AITTA
RAMI KALU
MILLY BUBKA
YOSHIKO KAMEKAWA
AIGG VEGDOTEIO
IVAN KIROV
PILAR VIDES
MALIA GIULY
BJORN KEHL
PATXI GRACIA
JACOB SMITH
HERMAN RYTI
PETER ALMURO
RYOHEI MURAKAMI
JOSEPH MOORE
GLEB ZHIROV
GARA ZARZO
ABIGAIL MILLER
ETHAN WILSON
JILL VALENTINE
GRAZIELLA BAVA
OSITA FELEILA
SELMA DZAKA
MINNA ENKE
MARIE JACOB
CAMILLA MEDDI
OLIVIA WILLIAMS
CHIE KURAMOTO

※日本人と思しき名前の者の一部は、スタッフロール由来と思われる。
・TSUYOSHI IRIE:-Cinematics- Sub-Cut Scene Direction
・KIMIHIRO TOMINO:-Cinematics- Lighting & Animation
・RYOHEI MURAKAMI:-Cinematics- Technical Directors
※LARK STAYWALKER、FRANK EASTは それぞれ
LUKE SKYWALKER、FRANK WESTのパロディだろうか。
※HERMAN RYTIとAIGG VEGDOTEIOが2回ずつ、JULIE VELLEが3回 出てきているが、原文ママ。